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『君に幸あれよ』櫻井圭佑監督インタビュー

こんにちは、映画チア部大阪支部です。
最近どんどん気温が暖かくなってきていて、春らしさを感じる日が増えてきましたね🌸

3月18日からシアターセブンで公開予定の映画『君に幸あれよ』の監督、櫻井圭佑さんにインタビューいたしました🎤
今回お話を伺っていく中で、監督はとても優しい心をもっているお方で、その優しさが作品の登場人物やストーリーにすごく表れている…というのが伝わってきておりました。

ぜひ、この作品から滲み出る「優しさ」を皆さんにも体感していただきたいです。
学生ならではの視点でインタビューをいたしましたこちらの記事もお楽しみいただけますと幸いです🕊

(聞き手 : かんな)

櫻井圭佑監督
©植一浩

チア部:真司と理人の対照的なキャラクターが魅力的でした。映画の登場人物を考えるにあたってどのようなことを重視していますか?

櫻井監督:この映画は、真司役の小橋川建と理人役の髙橋雄祐と僕の3人で企画をしました。登場人物を見てもらうと、最初はバイオレンスな少し怖い映画なのかなと思われることが多いです。でも、自分自身が描くキャラクターは真司も含めて悪い人間は居なくて、心の底では温かい人間が出てきています。それは、小橋川と髙橋という人間をずっと想像しながら手描きのような感じで描いたからと言えるのではないでしょうか。だからこの作品には悪い人間は居ないし温かいキャラクターを入れ込んでいる作品になります。

チア部:俳優部、スタッフ含めて若い世代だけで構想から制作までされた作品だと知りました制作に至った経緯について教えてください。

櫻井監督:2年前は緊急事態宣言中だったんですけれども、主演の小橋川が30歳を迎え、コロナの影響で仕事もオーディションも無くなって、身動きが取れないという状況になったときに、もう辞めるか辞めないか一か八かの最後のけじめをつけるために主演映画をやりたいという話が3人で居たときに挙がったんです。「じゃあ、撮ろうよ」という風になって、僕は監督と脚本はやったことが無かったんですけど、その2日後に脚本を書いて2週間後にはクランクイン。

チア部:早いですね…!

櫻井監督:早いです(笑)元々は小橋川の主演映画を作りたいという思いから、3人で企画して始まったという衝動的な作品です。

チア部:ちなみに3人はどのようにして出会われたのでしょうか?

櫻井監督:元々、小橋川とは事務所が一緒だったんです。6年前ですかね、そのときに撮影の現場で出会ってからすごく可愛がってもらっている先輩です。高橋は当時バベルレーベルという藤井道人監督が所属されている会社があるんですけど、その藤井監督が主催のワークショップで出会いました。そのときに私たち3人が同じグループに居て、もちろん小橋川とは知り合いだったんですけど、髙橋という俳優がすごく輝いていて、とても演技が素敵だったんですよ。そこから気になっていた存在ではあって、でも別にプライベートで会ったり、仲良かったりするわけではなかったんです。でも、たまに連絡を取り合ったりしている仲で、今回映画を作るってなった際にすごく深く関わったという感じ。出会いは藤井道人監督のワークショップでした。

チア部:作品を観て、チア部の部員同士でロケーションがとにかく最高だったという話をしておりました。ラーメン屋、タバコ屋、コインランドリーや居酒屋の店など…。ロケ地についてこだわりがあれば教えてください。

櫻井監督:最初は小橋川が沖縄出身だったので、沖縄で撮ろうってなっていたんですよ。でも、直前で緊急事態宣言が発令されて駄目になってしまって、じゃあどこで撮ろうか…となって。クランクインまで2週間しかなかったので、どこにしようかとなったときに千葉県の鴨川っていう場所があって、映画の中で海とスナックとラーメン屋と、ちょっと出てくる居酒屋のシーンがあるんですけど、その場所は鴨川の海から500m圏内に存在する本当のお店なんですよ。その場所が、ロケハンに行ったときにとても哀愁があって雰囲気が素晴らしい場所だったんですね。そこを基盤に、スナックを出たシーンの繋がりを考えたときにここと合う場所はどこだろうと考えて東京の蒲田で撮影をしたり、あとは渋谷もミックスさせたりしているんですけど、今回は千葉県の鴨川というエリアがこの作品のとてもいいロケーションになった場所です。

チア部:ロケ地はどのようにして探されましたか?

櫻井監督:今回は色々な方が関わってくれたんですけど、その中の制作に関わってくれたマネージャーさんやお知り合いの方が鴨川でサーフィンをやっていて、サーフィン協会の方と仲が良かったんです。サーフィン協会の方々は町の清掃だったりクリーニング活動をされているので、町の方々と深くかかわっている方が居て、そこからまず海を使えるかどうかを聞いてみてくださったり、交渉したり、たくさんの方々のつながりでという感じですね。一般的には、撮影をする際には申請を出すのですが、それだととても時間がかかってしまうので、今回は周りの人たちのおかげでこうしてロケ地が決まったという感じです。

チア部:タイトルが『君に幸あれ』ではなく『君に幸あれよ』、「よ」が語尾についていることで、切なる祈りのようなニュアンスを感じました。タイトルにはどのような思いを込められたのでしょうか?

櫻井監督:タイトルというのは映画を作る過程の中で変わっていくというのはよくあることだと思うんです。元々、この作品も『叫』という1つ漢字だけだったんですけど、『君に幸あれよ』というのは、まず「君に」というのはこの作品の中で慎司という人間が、誰に対しても興味を持つことを止めたり、信じることを止めた人間なんだけど、実はその人が気づいていない場所でたくさんの人から思われている「君に」という真司への言葉と、製作過程でアソシエイトプロデューサーの方とお話した際にもっとこの作品を観てくださった方や作品を通して出会った方などの第三者に対して「幸あれ」という意味も含めて「幸」という文字が浮かびました。これを観てくれた人にも「幸あれ」という意味も含んでいます。「よ」をつけた理由としては、例えば、「頑張れ」って人に言うとき何だか少し寂しい気がするんです。一緒に頑張ろうよだったり、一緒に頑張ろうねだったり、何か1つ包んであげるようなイメージがあったので一緒に頑張ろうというようなニュアンスが欲しくて最終的に『君に幸あれよ』は押し付けるのではなく、この映画を観て出会ってくれた人たちと一緒に頑張りたいという思いを込めてつけました。

チア部:タイトルは映画を撮る前から撮り終わるまでの間で徐々に変わっていったという感じでしょうか?

櫻井監督:そうですね、割とクランクインまで仮のタイトルでやるのはそんなに珍しいことではないと思っています。最初はこの作品に登場する人物はみんな何かしらの叫びを抱えていて、それを解消していくというような構想があったので叫ぶという漢字にしていましたが、1年ほど編集をしていくうちにタイトルというものが自分の頭の中から消えていて、最後に改めてこの作品のタイトルをどうするか向き合いました。

チア部:写真家や俳優としても活躍されていますが、そうした活動が映画監督をするにあたって活きていると感じる部分はありますか?

櫻井監督:それってすごく難しくて、体感として何かが活きた、写真家や俳優として入れ込もうという意識みたいなものは全くないです。なぜなら、何も通用しないと思っていたし、映画製作には映画製作でセオリーがあるし、郷に入っては郷に従えじゃないですけど、やっぱり映画製作に対してプロフェッショナルな方が集まっていたから自分は写真家としてこういうのがやりたい、こういうのが使えるんじゃないかって持っていっても、それは一緒に作ってくれる人たちに対してリスペクトがないなと思っていました。本当にゼロから入ったので自分の中でこれは活きたなというのはないですね。でも、やっぱり俳優と写真家を経験してきているから、俳優とのコミュニケーションの取り方だったり、画のライティングや良し悪しが撮影監督とスムーズにコミュニケーションが取れたりしたので、終わってみて振り返ってみるともしかしてそういった部分は活かせていたのかなとは思いますね。でも、現場に入るときには写真家や俳優としての経験は通用しないものだと思い、意識をしないようにしました。

チア部:映画を作りたいという思いはいつからありましたか?

櫻井監督:一切思っていないです!映画監督志望でもないですし、元々映画に対して特に愛情があった人間ではないので全く脚本も書いたことが無かったです。今回、僕が監督と脚本をやると言ったときからが初めてだったから、全く今まで映画を作りたいと思ったことはなかったですね。でも、こうして映画を作ってたくさんの仲間と出会って、1本の映画を完成させて、それが公開された今はすごく映画に対して愛情を持ちましたし、映画を作ることすごく興味が湧きました。

チア部:今回、監督をして1番大変だったことは何ですか?

櫻井監督:そうですね…、ずっと大変だったから何が大変で大変じゃないか分からないですね…。でも、大変だと思っていなかったかもしれないですね。楽しかったので。だから、何か答えるとすれば、今作はインディーズ映画なのでやっぱりどうしても予算のやりくり、プロデューサーが入っていなかったので、映画祭の費用だったり、プリプロとポスプロっていう製作や宣伝でかかるお金だったり…。やはり映画を作る上でお金に関してはすごくシビアな問題だと思います。予算のやりくりが難しかったです。

チア部:次は、監督の学生時代についてお聞きしたいです。私自身これから就職について考える時期なのですが、学生時代には将来どのような仕事をしたいと思っていましたか?

櫻井監督:僕、大学1年半で中退しているんですよ。なので、就活もしていなくて本当に偉そうなことは本当に言えないんですけど、元々ずっとスポーツしかやってこなかったんです。大学にも、今までちゃんと勉強をしたことがなかったので、受験勉強をしてみたいなと思って勉強して、入りました。明確に何かやりたいことがあって入ったわけではなかったので、やりたいことを見つけたいと思い入学したら案の定何もなくて、家庭の事情もあり、辞めようと決めたときに漠然と芸能界というのが自分の目の前に浮かびました。そこで、履歴書を自分で書いて送ったんですよ。そこからなので、何かになりたい、何になろうかなと考えて学校に行っていた人ではないので、今もそうなのですが常にそのときの感覚に従って色んなことを選択してきたため、特に将来に向けてやりたいと思っていたことはなかったと思います。芸能界には20歳の頃から入っているので、もうそこからは俳優のこと、芸能界における色々なことに向き合っていた時期でした。

チア部:ちなみに、これから挑戦されたいお仕事はありますか?

櫻井監督:本当に今は俳優、写真家、映像作家として色々とやれることに挑戦したいと思っているんですけど、別にそこに固執したいとは思っていなくて、もっとやりたいこと、やれることというのを見つけたいし、直接的に関わる仕事もやってみたいなと思います。俳優も、作品に対して間接的に誰か関わったり、写真もそうですし、映像作家も作品を作って誰かに届けるプロセスだと思うんです。もっと、東京以外の地方や海外で直接関われるお仕事をやりたいです。

チア部:学生時代に観て影響を受けた作品はありますか?

櫻井監督:映画というのは小学生の頃に観ても一生残る作品だと思うし、中学生、高校生、大学生と僕の中では別に分かれていなくて、自分の中での年表をあまり意識したことがないので難しいですが…。その時代って僕は本当に部活しかやっていなかったので映画は全然観なかったんですよ。多分映画を観てきていない人間なので…。小学生の頃はよく観ていたのですが、中学生、高校生になってからは映画に触れる時間がなかったという感じはあります。ジャンルで言えば、戦争映画は小さい頃からずっと観ていて、歴史的な映画にはすごく惹かれてきました。でも学生時代に観て救われたというような映画は今は思い浮かばないです。

チア部:もし今後、映画監督として作品を撮るとなったときに作りたい作品のイメージはありますか?


櫻井監督:自分自身がすごく優しく育てられて、周りも優しい方が多いです。だから、温かい映画を作りたいという思いはあります。自分の大切な人や周りの人が死なない世界、誰も死なない世界というのにすごく惹かれていて、そういうものを脚本で書けたらいいなと思う。2年前から何本か脚本は書いているのですが、何本も没にしてというのをやってきています。でも、やっぱり人間の死というのは回避できないのに、それから逃避、目を反らさなきゃ明日を待てないみたいな非日常に苦しさを感じたりするので、誰も死なないをどうやって描いたらいいのかなと考えたりはしています。優しい、温かい映画を作りたいですね。

チア部:最後に、これから作品を観られる方々に向けてメッセージをお願いします。

櫻井監督:映画チア部の記事を読んでくださった皆さん、ありがとうございます。この映画は直接的に何かを救えるというよりは、映画を観た後の瞬間だったり、映画を観た帰り道や翌日だったり、1ヶ月後でもいつでもいいんですけど、あるシーンやある一言だけを思い出して少しでも楽になってもらえたらいいなと思っている部分があります。この映画はコロナ禍で作った映画で、出来上がったときには僕自身もこの映画を観たときに傷つきたくないなって思って描いた映画なので、本当に温かい気持ちになってくれたら嬉しいですし、ちょっと悩んだり、モヤモヤしたりしていたら、ふらっとでもいいので近くの劇場で上映していたら是非足を運んでいただけたら嬉しいです。温かい映画なので女性にも観ていただきたいなと思います。よろしくお願いします。

『君に幸あれよ』は、3月18日(土)よりシアターセブンにて公開です!ぜひご覧ください🎬

この日の16:55の回上映後に櫻井監督、小橋川建さん、高橋雄祐さんの舞台挨拶が決定しました✨
ご都合の合う方はぜひ劇場へ!!


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