競技トレーニングにおける負荷管理

トレーニング指導者と負荷マネージャー


一般的にストレングスコーチは「パフォーマンスを向上させるためのトレーニング種目をたくさん知っている人」のように思われやすいが、1年間のほとんどをゲームシーズンとして過ごすようなプロチームでは、どちらかと言うと「いかにパフォーマンスを維持しつつ傷害発生可能性を低減させるか」が仕事の焦点になる。

一方で年間試合数が少ない大学などのカテゴリーでは傷害予防よりもパフォーマンス向上に割ける時間が多くなる。

筆者自身はバスケットボールの世界で高校からプロチームまでサポートを経験してきたが、最もトレーニング期間を長く取れるのは大学バスケットボールであった。

例え同じ競技であっても、カテゴリーや試合スケジュールが異なれば、優先的に管理しなければいけない指標は異なってくる。なので、競技チームでのストレングスコーチは単にトレーニング種目を多く知っているとか、筋肥大のためのトレーニングプロトコルに詳しい・・という事だけでなく、いかに負荷をマネジメントできるか、という能力が必要となる。

これは言ってみれば、トレーニング指導者とパフォーマンス&スポーツサイエンティストの違いと言っても良い。

負荷のマネジメントは多様な観点から議論されるため、チームに関わる専門職の数が増えすぎて意志統一に支障を来しているチームさえあると言う。船頭多くして船山に登ると言うが、それぞれの専門職が細分化・分業化すれば当然意見の相違や各人のエゴによって注力の方向性が分散しやすくなる。それぞれが主観的感覚で負荷を「管理」するような状態では、SC対AT、SC対コーチなど様々な役職間で軋轢が発生するのは致し方ない事であろう。

なので、他職種が関わるチームであればあるほど、負荷マネジメントの客観的指標策定が重要な業務となる。

 そういう訳で、本講では負荷マネジメントおよびモニタリングについて説明したい。

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