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思えば思わるる

この胸の高まりは一体何なのだろう。

その答えに私はまだ、たどり着けていない。






︎ ✧






外から差し込む光。
図書室の温度が光により暖まる。

私は持ってきた本を開き窓の外を見る。
放課後の校庭では部活前の生徒と彼。
楽しそうにボールを追いかけている。

彼は隣のクラスの〇〇くん。

明るくていつも元気
無邪気で人懐っこい性格な彼は、どんな人とも直ぐに友達になれるらしい。

女子の人気も高い…と思う。
クラスの女子もよく彼らの話を話しているから。



「私とは正反対」



暗くて静かな場所が好き。たまにボーっとするのも悪くない。

だからだろうか、私とは違う彼が気になるのは。

そんな彼は以外にも私と同じ図書委員。
彼が言うには「誰も立候補しなかったから」らしい。

学年も同じだから当番が同じ日が多い。
私はあまり話すのが得意じゃない。だけど彼はそんな私にも積極的に話しかけてくれる。

廊下ですれ違ったときなんかも。嬉しかった。

でも、周りの人は良く思っていないみたい。

私にも聞こえる声で
『〇〇くんとは住んでる世界が違うのに』
なんて言われるときもある。

私だってそう思う。
彼の気まぐれに振り回されているだけなんだ。
そのはずだと分かってはいる。

なんてネガティブになっていると、校庭の彼と目が合ってしまった。
私は反射的に持っている本で視界を隠す。



「やっちゃった…」



後悔しても遅い。本の上からチラリと覗く。
先程まで校庭にいた彼の姿が見えない。



「なんで私ってこうなんだろう…」



後悔や恥ずかしさからだろう、心臓がバクバクしている。開いている本に視線を落とす。読み慣れている文字がまったく頭に入ってこない。



「なぁ、さくら」

「えっ」



突然、後ろから声を掛けられる。その声に肩をびくっと振るわせる。

後ろに居たのは



「〇〇くん?」



彼だった。視線がぶつかる。
彼の真っ直ぐな瞳が私を離さない。



「今から暇?」

「う、うん」



私はつまりながらも返事を返す。



「じゃあ、外に出ようぜ!」



そう言いながら、私の腕を掴む。



「え、えぇ」

「いいから、早く!」



彼に腕を引かれながら校舎の中を走る。
すれ違う生徒たちの視線が私たちに向けられる。



「ま、待ってよ」



そんな私の言い分は通るわけもなく、笑顔のままの彼に連れられてきたのは駐輪場。



「ほら、早く乗って」



自転車の後ろを叩く。



「二人乗りって…」

「細かいことは良いから、ほらほら」



言われるがまま、彼の自転車の後ろに乗り、手は彼の肩に。



「しっかりつかまっててね!」



ペダルを漕ぎ出す。彼は私が乗っていないかのようにグイグイと加速していく。

心臓は先程よりもドキドキしている。







︎ ✧








あまりの速さに私は目を瞑っていた。
暫く走ると、自転車のスピードが減速する。



「次はこっち」



自転車を降りるとまた彼に手を握られる。
振りほどく間もなく、腕を引かれ走り出す。

雑木林を抜けた先が今回の目的地らしい。

久しぶりの全力疾走で、目的地に着いた時にはうつむき呼吸を整えることしか出来なかった。



「ほら、前を見て」



顔を上げる
視界に映るのは綺麗な橙色の夕焼け。



「…綺麗」



自然と言葉が溢れた。



「だろ?」



隣で彼は笑顔を見せる。

心臓は先程よりもドキドキしている。

この高鳴りの原因はわかっている。

さっきまでの高鳴りも、全部全部これのせい。
走ったからとか、恥ずかしいからとかそんなんじゃない。

もっと単純な話だった。

隣で嬉しそうに説明している彼。「ずっと図書室の中にいるから、外の景色をさくらに見せたかったんだ」なんて笑顔で。

それを見ている私の頬は、この空と同じ色をしているのだろう。






︎ ✧






あの日の出来事から私たちの関係に変化は無い

でも私の気持ちには変化が起きた



あなたが目に映ると思ってしまう
『あなたの彼女だったらなぁ…』なんて






自分からは行動する勇気なんて
私は持ち合わせていない




でも必ず伝えるんだ

また視線が合った時に
『ねぇ 私を外へ連れ出して』って


そんな気持ちにしてくれる
あなたのことが私は好き








だから今日もあなたを見つめる







気づいてほしいな…






初めて芽生えた私の、この恋心に。

































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