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週末、2人は秘密基地で
山の中にある少し開けた場所
遊具は老朽化が進み
遊んでいる子供はほとんどいない
その隣にはひっそりと佇む神社
そんな人気のない公園に一組の子供の姿
「嘘っ!今日も小吉だぁ…」
女の子は手に持ったおみくじを見てがっくりと項垂れる
「さすが、名前負けしてないね」
そんな様子を木陰から見ている男の子
「笑ってないで“ビー”も引きなよ」
女の子から【ビー】と呼ばれた男の子は笑いながらも首
『もう1日だけでいい』
〚1日〛
〚もう1日だけでいい〛
︎ ✧
「私の話ちゃんと聞いてる?」
前を歩く君は振り向きながら不機嫌な顔をこちらに向ける。日が長くなり帰り道もまだ明るい。
「あぁ…悪い聞いてなかった」
「普通、嘘でも聞いてたって言うもんだよ」
頬を膨らませるが怖さなんて微塵もなく。
逆に『かわいいな』なんて思ったりもして、つい君の頭に手を乗せてしまう。
「何、この手」
「なんとなく?」
『80 min. 』 下
「はぁ…」
ため息をつく。寒さのせいで煙を吐いているかのように空へと浮かぶ。
手に持った箱の中には、残った10本の煙草。いつもなら、この時間が楽しみなはずだった。
残りの本数が半分を切ったから
外が寒いから
彼が、私に、冷たくなったから?
いや、そんなわけない。
私は、1本取り出し口に咥えた。
ライターをつけると、私の瞳は温かいオレンジの光に吸い込まれた。
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『80 min.』 上
『玲ちゃん、いつの間に不良になっちゃったの?』
私の隣には、慣れた所作で煙草を吸う彼。
その存在を私はまだ信じられていない。
だって彼は先月、
交通事故で亡くなったのだから。
︎ ✧
『大園先輩はまだ残るんですか?』
「うん、もう少しだけ」
『そう…ですか。お先に失礼します』
「お疲れ様」
最後の後輩を見送るとフロアには私一人。
今日の分の仕事は終わっているけれど
「頑張らない
『「まて」が出来ない私たち』
「コテツ~」
わふっ
「ふふ…起こしてごめんね。ゆっくり寝てて」
私の声に反応し返事をくれたのは愛犬の『コテツ』。
人間の歳だとおじいちゃん。
美しかった毛並みも艶がなくなってきた。
体力も衰え、一日中寝て過ごすことが多くなり
一緒に散歩をすることも出来なくなってしまった。
「じゃあ学校行ってくるね~」
……わふっ
珍しく起き上がり私をお見送りしようと後をつけてくる。
「まてだよ」
『オレンジの片割れ』
とある教会。
白い衣装を身に纏った二人組が出番を待っていた。
『ねぇ』
『どうしたの?』
『いや…何でもない』
『もしかして緊張しているとか?』
『……するに決まってる』
『僕もだよ…心臓が飛び出そうだよ』
『何よ…本当に飛び出るかもね』
『怖いこと言わないでよ!』
『ふふ…』
真っ白なウエディングドレスを着た君は
今日はじめて柔らかい笑顔を見せた。
白のタキシードの僕は君の