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シン・乃木恋 #1

ここは"乃木坂藝術大学"。
都内有数の名門だ。
そんな学内のとある授賞式、見慣れない男が登壇していた。

「学内自主制作映画コンテスト最優秀賞を授与します」

学長が賞状を男に渡す。
男はそれを受け取るが周りの反応はあまり良くなかった。
何故ならこの男は、、
この大学の者ではないからである。



俺の名前は"△△○○"。
本日特例でこの乃木坂藝術大学映像科に入学した。
何故特例なのかというと、、
複雑だが説明するしかないだろう。

俺はこの学校に友人がいる。
彼が自主制作映画コンテストに監督として出場しようとしたのだが思ったように作品が作れないと言っていた。
そこで俺がゴーストライターとして監督脚本を務め友人の代わりに映画を作ったんだ。
それが最優秀賞を受賞。
しかし友人は罪悪感が募ったらしくゴーストライターに頼んだ事を告白。
俺が作ったとバレた。

本来なら友人はそこで退学だが学校は俺の映画をどうも気に入ったらしく俺を入学させる代わりに退学を免除してくれたらしい。
俺も元々映画制作したかったからウィンウィンだ。
ただコネと金がなかった、しかしここではそれが何とかなる。
この機会、存分に活かさせてもらおう。
そしてアカデミー賞を総なめするのだ。

学内を歩いている俺は例の友人の所へ。
大きな噴水の前で待ち合わせをしていた。


「よう優斗」

見慣れた顔を見つけたので声を掛ける。
すると彼はイヤホンを外しこちらをみた。
彼の名は"貝澤 優斗(かいざわゆうと)"。


「マジで入学してんじゃんw」


「開口一番でそれか」


「でもありがとな、お陰で退学も免れたわ」


「俺もコネもらえたから良かったよ」


「本当コネ好きだなお前」


「何よりも大事なのはコネだろ? いくら能力あっても知られなきゃ意味ないし」

いつものようなやり取りを行う。
するとそこで強い風が吹いた。


「なんだこれ?」

風で飛ばされたのか一枚のチラシが2人の間に飛んで来る。
それを拾って見るとどうやら芸能科のアイドルが結成されたのでお披露目ライブをすると書いてあった。


「乃木坂46ねぇ、確かに話題になってたな」

優斗は興味を示す。


「かわいい女の子がタダで見れるなら行ってみね?」

徹郎を誘ってみるが、、


「俺はいいや、アイドルは興味ない」

キッパリと断った。


「何でだよ、可愛い子いたら同じ学校だし自主制作映画とか出てくれるかもだろ?」


「それが嫌なんだよ。俺が描きたいのは普通の人の現実だ、あぁいう美人でキラキラ輝いてる人は違う」

自分の撮りたい映画のコンセプトと合わない事を示して断る。


「行くなら1人で行ってこいよ」

そう言って去っていく○○。
優斗に挨拶は済ませたので学内を見て回るつもりだ。

優斗と別れた○○はキャンパス内を歩き回りながら風景を一眼レフに収めていった。
これからたくさん映画を撮るのだ、使えそうな風景を先に撮っておく。
それにここはマンモス大学、かなり景色は豊富だ。


「ん……?」

すると大きな野外ステージがある事に気がつく。
周りの柱や壁には先程見かけたチラシが貼ってあった。


「ここでやんのか」

乃木坂46……だったか?
彼女らのお披露目ライブはここでやるらしい。
まぁ興味はないのだがステージ自体は立派なので一応カメラに収めておこう。
そう思い写真を撮っていくとステージ寄りの壁の方に既にボロボロになったチラシが貼ってあるのに気付いた。
恐らくかなり前に貼ったのだろう。


「このボロボロ感、いいな」

何度も言うがチラシの内容に興味はない。
しかし寂れて剥がれかけているチラシというものに惹かれた。
ここから様々な情景が浮かぶから。
映画監督を目指す者としての血が騒ぎどんどんチラシを撮っていると、、


「チラシいります?」

可愛らしい声が聞こえた。
その声が自分に向けられている事に気付く。


「え?」

振り返るとあまりに美しい女の子がいた。
それこそ先程言った"輝いている"人だ。

「そんなに写真撮ってるから欲しいのかなと思って」

彼女はそう囁くと手に持ったチラシを渡して来る。


「あー、実は興味が……」

興味が無いと言おうとしたがチラシに目を通して気付く。
今目の前にいる女の子とチラシのセンターにいる女の子は同一人物だ。
まさか乃木坂46のメンバー?
なら悪い事は言えない。


「興味がありまして……」

上手く誤魔化しチラシを受け取る。
すると彼女は喜んだ表情を浮かべた。


「本当ですか⁈ やったー!」

そして自らを名乗った。


「私、井上和って言います! ライブ是非来てください!!」

そう言って井上和という美少女は去っていった。
他にもチラシを配らなければならないのだろう。


「ごめんだけど行かない……」

去り行く背中に小さく独り言のように告げた。
そのまま写真撮影を続行しようとしたがそこでスマホのアラームが鳴る。
ピピピピ……
そうだ、この後用事があったのだ。
特例入学なので色々先生から話を聞き方針を聞くのである。

先生から話を聞いた。
その内容に驚愕している。


「え、今何て言いました……?」


「君には芸能科と関わってもらおうかと」

この先生は乃木坂46のプロデュースを担当している者だ、嫌な予感がする。


「乃木坂46のマネージャーになって彼女らの日常を撮影したり練習の手伝いをしてほしいんだ」

予想以上に嫌な仕事を任された。


「でもそしたら映画撮影とか脚本執筆の時間が……」

不安を少し話してみるが、、


「そこは大丈夫、思うほど拘束はしないし彼女らもプロと関わって行くから君にもコネが出来るよ」

コネ。
その言葉に少し揺れる。


「んん、、どうだろうか……」


「君は既に実力はついてるからね、勉強の分をプロとの仕事に当てれれば君の為にもなるでしょ」


「確かになぁ……」

少しずつ揺れていく。
そして悩みに悩んだ後、、


「お試しみたいな感じでやってみるのはアリですか……?」

苦肉の策を出す。


「全然いいよ、じゃあ早速挨拶に行こうか」

すると先生は立ち上がる。


「え、誰にですか……?」

頭を抱えたまま問うと、、


「メンバーだよ」

突然レッスン室に連れて行かれる。
メンバーも話は聞いているのだろうか?
いきなりこんな男がレッスン室に連れて来られてマネージャーとか名乗ったらどうなる?
年頃の女の子たちだ、気味悪がるに違いない。


「ほら入って」

先生が扉を開ける。
薄暗い廊下からレッスン室の明るい電気が目に差し込み少し眩しい。
そして俺は一歩踏み込んだ。


「あ……」

部屋に入るとレッスン着を身に付けた女の子たちが一斉にこちらを見た。


「みんな整列してー」

「「「はい!」」」

先生の掛け声と共に一斉に返事をして整列をした美少女たち。
凄い、本当にみんな美少女だ。

「はい、それじゃあ皆んなに紹介したい人がいます」

そう言いながら彼女たちの前に俺を連れて行く。
そして挨拶するように諭した。


「えっと、マネージャー任されました△△○○です……」

正直まだ実感がないので何て言えば良いか分からなかった。
しかし彼女らはいきなりこんなむさ苦しい男がマネージャーになって良いのだろうか?
俺の方はコネを手に入れられるから良いが向こうは溜まったもんじゃなさそうだ。

「よろしくお願いします……」

反応を伺いながら挨拶をすると、、

「「よろしくお願いします!!」」

何とまぁ元気な返事が来た。


「あ、はい……」

次はこの美少女たちが挨拶をする番だ。


「私たち乃木坂46です!」

恐らくまとめ役の井上和が挨拶をしてそれに続いて全員が挨拶を行う。
その誠実さや一体感に既に圧倒されてしまった。


「じゃあ早速明日からよろしくね。給与もちゃんと出すからさ」


「はい、お願いします」

映画制作のコネと給与という魅力に誘われて俺は嫌々アイドルのマネージャーをする事となったのだった。



つづく

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