8月5日（塩レモンソース）

私は今伊豆の1泊8万円のホテルに来ている。
はっきり言わせていただくと幸せである。

妊娠発覚してからというもの「え？ウチもしや地獄に迷い込んでる感じ？マジでここどこ？」ってくらいしんどい出来事が立て続けにあり、私の心のバランスは大きく崩れていた。

毎日むしゃくしゃしていたし、私は私を取り巻く世界を恐怖の目で見ていた。

怖い。なんでみんなそんな攻撃的なのだ…頑張るのも辛い思いするのも私なんだから私がいいって言ってる以上べつにいいじゃん…どいつもこいつも好き勝手言いやがってよ…と。

確かに迷惑をかけてしまうと思うが、迷惑かけずに生きていく人間なんていないだろうし、そもそも私は妊娠する前から人に迷惑をかけて生きている。
今に始まったことではない。

あと、「あなたのためを思って」という言葉を冒頭に付ければ何を言ってもいいと思ってる？と聞きたくなるようなアドバイスの形をした文句。

べびちゃん生まれるまで草原に佇むログハウスで1人でひっそりと生きていきたい…
毎日そんなことを考えていた。

なので金を使うというシンプルな発散方法がよく効いた。

部屋の窓から見えるのは海のみ。
自分の全てが包み込まれたようだった。

夕食もお部屋食で素敵だった。
会場で食べる形式だと、動いてるうちに着慣れない浴衣が崩れて半裸になりかけたりするが彼氏と2人だけの空間で何も気にせずいられた。
まだ動いている新鮮な魚、最高にプリプリであった。

プラスして優しい女将さん、温かいお風呂と、素敵ポイントは多々あった。

私は確信した。紛れもなくここは天国であり、今までいたところは確かに地獄であった…と。

そこでは全てが丸く円満に、美しくあった。
はずなのだ。
しかし私の心には一点のシミがついていた。

突然なんの話？って感じだが、旅館に来る前日私は銀だこにて塩レモンフレーバーのたこ焼きが食べたくなったのだ。

私のTwitterをフォローしている方はここで察すると思うがどうぞ最後までつきあってほしい。

どうしてもたこ焼きが食べたくなった私は、彼氏の弟と2人でショッピングモールに出向き、たこ焼きを注文した。
高校生と思しきバイトに15分待ちますと言われてちょっと迷ったが、どうしても塩レモンが食べかったのでおとなしく待った。

そういえば妊娠してからというもの（〇〇食べたい）と思ったらそのことしか考えられないのだがこれはなぜですか？
この前は1週間はま寿司の寿司ではないものが載っている寿司（伝われ）を無性に食べたくなり月曜から金曜まで毎日「食べたい！」と思い続けた。
ちなみに日曜にやっと食べに行ったヨ😁

はま寿司の次はたこ焼きのターンだったのである。

普通のたこ焼き8個入りとレモン味8個入りを頼み、15分待って、そしてうけとった。

熱々のたこ焼き、早く食べたいので急いで帰った。
そして気がついた。どこにもソースがない。
あとなんか6個しか入っていない。
弟の頼んだ普通のたこ焼きはしっかり全部揃っているのだが、私はいろいろと無い。
ただなぜかレモンだけは乗っているのでいちおう絞って食べてみたもののただの「たまにちょっと酸っぱいもののその他大部分が無味のたこ焼き」なだけである。
家には合いそうなソースはなく、かと言って取りに行こうにももう閉まる時間だった。
もちろんたこ焼きを捨てるなんてできない、その日1日食べたかったものである。
しょうがないのでレモンだけで食べたが無味のタコとちょっと前まで粉だったものとレモン少々の組み合わせは微妙を極めた。

虚無である。

しかも完食したとたんつわりが発生しトイレで吐いた。
タコが喉に詰まり鼻に鰹節が入る始末である。
そのあと鼻を何回もかんだが、かめどもかめども鼻水と鰹節が融合されたものがでてくる。
私は一体何をしているのだろうか。
いよいよわからなくなってくる。
15分も待って手に入れた結果がこれとは。

私は以前大手牛丼チェーン店のお客様コールセンターでバイトしていた時のことを思い出した。

牛丼の上にあれがのってないこれがのってないとひっきりなしに電話がかかってくるあの日々。

その頃は（小せえことで電話してくんなよ400円ぽっちだろうがよ）くらいに思っていたが、確かにこれは腹立たしい。
私はどうしても塩レモンがたべたかったのだ。
まあ、せめてフレーバーを間違えるくらいなら味があるので我慢可能だがもはや味が無い。

ほぼ無味のたこ焼き。

ただ、マクドナルドは10回に一回の確率でナゲットにソースがないが、それを電話で言うと新しいのを無料でくれる。
私がバイトしていた牛丼チェーンも載せ忘れがあると防犯カメラを確認して値引きクーポンまたは次回来店時に無料で出す。

私はこの経験をもとにたこ焼きが無料でもらえると確信した。
確固たる自信を持ち、旅行に行った日の昼、銀だこのサービスセンターに電話をしたのだ。

ことの顛末を伝えたところ、「店舗に注意させていただく」と言われて終わった。
私が無味のたこやきを食べる羽目になったことは注意で済まされるのか。
ましてやフレーバー付きのたこ焼きなんて他のたこ焼きより高いではないか。
たこ焼き代はいいのでせめて味代を返して欲しい。
それか100円引きのクーポンを送るのが筋ではないだろうか。
しかも8個入りではなく6個しか入っていなかったのだ。
たこ焼き2個分損している。
いろいろと思うところはあったが何一つとして言えず、「くだらないことで電話してすみません…はい…気をつけてください…」といって終話した。

クレームを言える人間、あれはもう才能なのだと思った。
私にクレームは無理だったのだ。
口から「たこ焼きが…」「味が…」「ソースがついてなくて…」「二個たりませんでした．」と言う文言を発するたびに非常に恥ずかしく、背中がじわりじわりと湿っていくのがわかった。

首のあたりが恥ずかしさで冷や冷やする。
電話口にいる20-30代の男性が私に丁寧に謝ってるのもジワジワとくる。

電話を切り、運転席にいる彼氏に無料券もらえなかった旨を伝えたところ同情してもらえたことがせめてもの救いであった。
これで「たこ焼き如きで電話してw」とかなんとか言われてたらちょっと泣いちゃってたかもしれない。

旅館でも私は昨日のたこ焼きを思っていた。
高級旅館にて伊勢海老やお刺身を食べているというのに心は600円ちょっとのたこ焼きに縛られているなんて馬鹿にも程がある。

はやく忘れたい。

親に絶縁宣言されたり彼氏の殺害予告されたりと慌ただしかった日々、本来ならばまずそのことをnoteに記すべきたと思うのだが私の心には塩レモンソースが入っていなかったことが深く深く刻まれている。

もう今年で23歳になるのにたこ焼き一つでこんなに悔しい思いができるの、もはや長所ではないだろうか。

たこ焼き無料券…欲しかったよお…😭

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2週間くらい前に書いたこのnote、今見返すとバカバカしさで死にそうになる。
つまり肉ちゃんはもうたこ焼きには縛られずに生きていて、塩レモンブームも去っている。
時の流れはありとあらゆる傷を癒して進むのですね…ときには忘れたくない痛みさえも忘却の彼方におしやってしまう…なんの話？

ちなみに今のブームはしゃぶしゃぶである。
ごまだれでいただくのもよし、ポン酢でいただくのもよし。レタスと一緒に食べるとなおよし。

という事を考えていると無性に食べたくなってしまうのでやめなければと思ったがもう手遅れである。
とにかくしゃぶしゃぶが食べたくなってしまった…

肉ちゃんは豚バラが1番好きです。