母性があるから「バブい」のではなかった


(このnoteは映画「ホテルコパン」のネタバレを含みます)

ずるいくらい、強いひとがすき。

最近、自分がどのようなひとに恋に落ちやすいのか、明らかになってきました。

私は現在、架空の世界では『HiGH&LOWシリーズ』の轟洋介くん、
現実の世界ではダンス&ボーカルユニット『THE RAMPAGE』の川村壱馬くんのガチ恋をしています。

私の恋愛観において、架空の世界と現実の世界のガチ恋の同時並行は可能なのですが、これも最近明らかになってきたことで、
こうして自分のオタク人生を振り返ることで自身のオタク・コンセプションを明らかにすることはとても楽しいな~と思うようになりました。
最近やっと「病まずに恋する/推す」方法を開発できたのですが、これもしっかり自分のオタク・コンセプションと向き合い、「病まずに恋、もしくは推すためにはどうすればいいのか」と傾向・対策を練ったからだと推測します。

さて、なんとか私が「病まずに恋できている」轟洋介くんと川村壱馬くんには共通していることがあります。


それは、「強くてかっこいい」ということです。(小1か?)


もちろん、「強さ」を捉える視点はたくさんあると思います。腕っぷしが強い、生き方が強い、お顔が強い、歌声が強い、、、

今回書くのは、私のこの「強くてかっこいいひとが好き」と言う傾向は今に始まった事では無く、物心つく頃から変わらないのだという話です。

それでは私が今までガチ恋に陥ったキャラクターを年齢と共に振り返っていきますね。(興味ない方は16歳まで飛ばしてください。)

・10歳
『スクラップ・ティーチャー~教師再生~』高杉東一(演:山田涼介)

中学生でありながら大人に立ち向かい戦う力がある「強さ」

私が初めてガチ恋に陥ったのは、土曜ドラマでHay!Say!JUMPの山田涼介くんが演じていたキャラでした。この『スクラップ・ティーチャー』は、統廃合されると噂の中学校で士気をなくした教師たちを、突如現れたスーパー中学生3人組が更生させ、明るく生き生きとした教育を取り戻していく・・・という話です。高杉くんは突如転校してくる『謎のスーパー中学生』のリーダー格で、頭脳明晰、スポーツ万能、でもお歌がちょっと苦手な男の子。高杉くんは剣道などさまざまな分野で教師をブチのめした後に「ブザマだ」という辛辣な捨て台詞を残して去っていくのですが、私は小学生ながらに彼のこの冷めた目に罵られたいなどと思ってしまいました。私も「ブザマだ」って言われてえ~
高杉くんは日本の教育を真っ向から否定し、理想論を一切受け付けない完全リアリストなのですが、その頑固な考えによってスーパー中学生の残りのメンバーと衝突することもあります。マジで私は「強すぎて孤立する」というキャラがだいすき。高杉くんに落ちた結果山田涼介くんのガチ恋に転落し、Hay!Say!JUMPのカレンダーをお年玉で購入して、毎朝山田くんの顔に「いってきます♡」と挨拶してからランドセルを背負うという小学生時代を送りました。生まれて初めて落ちた沼がジャニーズと言う巨大沼でよかったです。供給量が素晴らしいので。
あと高杉くんの何がヤバいって名前の由来が高杉晋作の通称

・11歳 『ヴァンパイア騎士』錐生零

自身の中に眠る狂気そして運命に抗う強さ

私が二次元の男の子で初めてガチ恋になったひとが、花とゆめ系少女漫画誌『LaLa』で連載されていた『ヴァンパイア騎士』のヒーロー錐生零くん。彼は吸血鬼ハンターの血筋でありながら、幼い頃吸血鬼に噛まれたことで吸血鬼化してしまう、という不遇な運命の下にあります。
零くんはそんな自身の運命を呪いながらも強く生きていきます。吸血鬼に噛まれたことから吸血鬼になってしまったわけですから、彼は心の底から吸血鬼を憎んでおり、「俺に銃を寄越せ!吸血鬼は一匹残らずブッ殺してやる!」という殺意に満ち溢れているのですが、そんな彼の氷のような心を溶かすヒロインと接している時だけは安らいだ表情を見せます。
このヴァンパイア騎士、本当に絵が美麗で、吸血鬼化の衝動に苦しむ零くんの姿は動物的かつあだやか。こんなもん少女漫画誌に載せてええんか・・・?と心配になりました。何度彼に干からびるまで血を吸われたいと思ったことでしょう。たぶんこの作品に性癖歪まされた少女はたくさんいます。私は学校の休み時間の途中に零くんの顔を思い出して呼吸困難に陥ることもありました。ヤバい小学生ですね。ネタバレになるのですがラストで零くんはヒロインとくっつくものの、ヒロインが愛する対象は別にもいた為、ヒロインは零くん亡き後第二の人生をその方と歩みだします。この零くんが当て馬のようにされたラストには何年たっても納得がいっておりません。私が幸せにしたかった・・・。

・12歳 『隠の王』宵風

形は変われど変わらない「この世」に向ける感情の強さ

宵風はスクウェア・エニックス系少年漫画誌で連載されていた『隠の王』のキャラです。彼はこの世に生まれ落ちることを誰からも祝福されませんでした。彼がこの世への望身を捨てるには充分なほどの過酷な痛みが彼を襲い、いつしか宵風は「世界から自分が消えること」を願うようになります。宵風は「会得すると自身の生命を削ることとなる」と言われる禁術・気羅を会得し、血を吐き自身の鼓動を緩やかにしながらも世界から消えることを強く望んでいました。そんな彼の願いを叶えるのが主人公なのですが、この主人公と衝突し、時には共闘し、徐々にこの世で生きることへの希望を見出します。やがて宵風は「生きたい」と願うようになりますが、その願いには紛れもなく「危険なこの世で主人公をひとりにしてはならぬ」という強い思いが込められていたのでした。宵風がこの世に執着したただ一つの理由が、「主人公と生きたかった」ということ。泣いてしまいます。
宵風のなにが強いって、世界へ向ける思いが強すぎること。「ぼくを消してくれ」という強い願いのもと、まだ幼いのに「使ったら死ぬ」という禁術を会得してしまうし、ついに「主人公を守らなきゃ」というこの世への執着が生まれたかと思えば、四肢がちぎれても戦う。少年ながらそこまで強い感情を持てるところが本当に青く痛く、そして美しいのです。あと黒髪長身センター分けです。
余談ですがこの「隠の王」の舞台は広島県尾道市で、私はこの作品に出てくるノスタルジックな尾道の景色に魅了されたがゆえに広島で生きる道を選びました。私のルーツとなる作品ですね。

・15歳上半期 『東京喰種』 金木研

穏やかな己を捨ててでも自身の狂気を解放した強さ

私にグロ耐性があったせいでとんでもないひとを好きになってしまいました。ヒトとは異なる、ヒトを主食とする種族『喰種』がヒトを脅かす世界のお話です。主人公の金木研くんはヒトとしてごく普通の大学生活を送っていましたが、喰種に襲われたことをきっかけに医者に喰種の臓器を移植されてしまい、ヒトと喰種のハイブリッドとして生きる道を辿ります。金木くんはヒトとして心優しい青年でしたから、人を殴る蹴るといった領域ではめっぽう弱く、序盤~中盤の戦闘シーンではボコボコにされてばかりでした。この時点での金木くんに私の恋愛的関心は向きません。
しかし頭のおかしいマッドサイエンティスト的喰種に捕まり、金木くんは自身の身体を何度も切断されるというむごたらしいリンチを受けた結果、黒だった彼の髪は真っ白になり、彼の中にあった「気弱な青年」は鳴りを潜め、「僕を食おうとしたんだ。僕に食われても仕方ないよね?」と瞳孔をかっ開き戦い出します。しかもめちゃくちゃ強い。どうしよう書いててまた恋に落ちた。この戦闘シーンがアニメ1期の最終回なのですが、10回ぐらい見た気がする。
覚醒後の金木くんは自身の驚異的な再生能力に頼った滅茶苦茶な戦い方もし、時には自身の肉体すら傷つけて周囲を心配させてしまうのですが、私また強すぎて周りを顧みん系の男好きになっとるやんけ~!とここまで打ってニコニコしました。

・15歳下半期 『ハイキュー!!』影山飛雄

天才的なテクニックで他を圧倒する強さ

ジャンプで連載された王道バレー漫画「ハイキュ―!!」の主人公チームでセッターを務める影山飛雄くん。高校生になり主人公チームに入部する影山くんですが、実は中学時代はその天才的なコントロール力のあまりチームのことを顧みない非常に独善的なセッターで、チームから完全に孤立していました。主人公チームに入ってからは主人公の孫悟空パワーにより仲間と協力しバレーをする楽しさを知り、「天才」であった彼の能力はさらに研ぎ澄まされていきます。これ何回も言ってるしこれから先もずっと言い続けると思うんですけど、孤軍奮闘し、その状態から脱出することを望んですらいなかった人間が、仲間と出会うことにより人の暖かさを知ってさらに強くなる話めっちゃ好きなんですよ。影山くんのビジュアルは黒髪釣り目長身学ランと、私の好みをドンピシャで付いてきた男でした。私は今ハイローの轟洋介くんのガチ恋になっていますが、轟くんは非常にこの影山くんと似通うところがあって、何年たっても私は影山くんのようにメチャ強い長身の黒髪のひとが好きなんだなと思わざるを得ません。影山くん、罪深い男や~~

と、このように強くてかっこいいひとをほぼ1年ごとに入れ替え遊牧してきた私ですが、1人だけ「強くてかっこいい」ではないひとを好きになった事があります。

・16歳 『あんさんぶるスターズ!』羽風薫

薫くんもね、かっこいいんです、歌って踊る姿はカリスマそのものだし、私は「こんな高校生おったら彼のフェロモンに引き寄せられた女で動物園が出来とるわ」と思っていました。
でも彼、今まで好きになってきた男と決定的に違うんです。

バブい。

「バブい」の定義にはさまざまなものがありますが、今回は「年下の対象をかわいらしい、保護したいと思う母のような気持ち」と定義します。

私、本当に薫くんに出会うまで軟派なひとを好きになったことがないんです。
薫くんはすぐ女の子をナンパするし、私の事も「たんぽぽちゃん」って呼ぶんです。そんなの、強くてクールだった今まで好きになったひと達とは全然違うのに、でもなんだか彼に惹かれてしまう。一見ちゃらちゃらして見える彼が、時折ふっと陰のある表情を見せる事があるんです。

あっ、スゲー良い。

薫くんは最終的に、軟派まみれのゆる~ふわ~という世界で生きることより、アイドルとしてけじめをつけて生きる選択をします。そのために2月になると付き合いのあった女の子たちを「身辺整理」と称してばっさり絶つのですが、私のポジションはこの、身辺整理される女の子。いきなり「もう遊ぶのやめよっか」とか言われて怒りで薫くんの頬をはたく役どころです。そういえば2月が近づいてきてますね。薫くんをビンタするために、てのひらを鍛えておきます。

で、このビンタされた直後の頬を真っ赤に腫らした薫くんのスチルがあるのですが、それがガチバブしょぼんで超きゃわゆなのです・・・。薫くんが女の子に、しかも私にビンタされて、しょんぼりしている・・・保護しなきゃ・・・頬を冷やしてあげたい。
今までクールな男性に様々な意味でブチのめされることばかり考えていたのに、なぜか薫くんには世話を焼きたい、抱きしめてあげたい、きみには私がいないとだめ・・・そういう気持ちになるんです。よく考えてみれば自分でビンタしておきながら頬を冷やしてあげたいとか意味が分からないですね。

私が薫くんにハマり出した当時、ちょうど女オタクの間で「バブみ」という言葉がはやり出し、推しに対して母のような気持ちになるオタクが日本全体で増えていた(気がする)ので、自分が感じている「バブみ」も社会現象の一例なのかな、と考えていました。私にもついに母性が芽生えたかと。
「強さ」に惹かれていた今までの自分と全然違う趣味のひとに夢中になってしまったので、何故だ?という疑問だけは残りましたが、当時の私は「バブみ」の正体が何であるか、解明しようともしなかったのです。

しかしつい最近、バブみの正体が分かりました。

映画「ホテルコパン」を見たのです。

私の現在の推しは俳優の前田公輝くんなのですが、(私の中で「ガチ恋」と「推し」はまったくの別物です)公輝くんが出ているということで、この「ホテルコパン」を見ました。
「ホテルコパン」のストーリーは以下の通りです。

舞台は東京オリンピックのスキージャンプ会場となった長野。
オリンピックが終了すると当時の繁栄は遠のき、周辺の観光街はおろか、周辺のホテルにはお客さんが全く来なくなりました。
そんな客足の遠のく「ホテルコパン」にお客さんとしてやってくるグループのひとつが、公輝くん演じる班目孝介(孝ちゃん)と彼女の浜名美紀(ミキ)。孝ちゃんとミキは一見ラブラブのカップルに見えますが、大切なことは直接言わず必ずラインで話すなど、二人の間にはどこか奇妙な雰囲気が流れていたのでした。

二人はホテルの宿泊中に結婚を約束しました。ホテルのオーナーはこの二人の婚約を喜び、ホテルでお祝いパーティをしようと計画します。

このホテルのオーナーが、廃れていくホテルの現実を受け入れられずに、オリンピック開催時のスキー台をお客さんに勧めまくるのですが、その辺は見ていて胃が痛くなります。栄えていた過去にすがり、どうしても現実を受け入れられない、そんな人間の葛藤が生々しく描かれていて、オーナーが登場するシーンは総じて見たくないな…という気持ちにさせられました。それぐらいオーナー役の近藤芳正さんの演技が凄かった。

たぶん、オーナーが孝ちゃんとミキの結婚を祝いたがったのも、純粋にお祝いしたいという気持ちの裏に、「わいわいしたホテル館内の様子がまた見たい」という欲が隠れているんですよね。
それが感じ取れるからより胃が痛いんです。このオーナーの行動は全部ホテルを再び盛り上げたい、そこから来ているんだなって分かるから。
もうあのオリンピックの時代に戻れないだろうなと、オーナー自身が気付いているのにですよ。

さて、いざお祝いパーティが始まると、結婚を喜ぶミキとは対照的に孝ちゃんの表情は沈んだものでした。
そしてパーティの途中に孝ちゃんが意を決し、「やっぱり結婚は無理」と言います。
それまで優しいまなざしでミキを見つめていた彼からは想像もつかない、ミキを突き放す言葉が孝ちゃんのから発せられます。そしてお祝いパーティーは崩壊へ向かうのでした。

孝ちゃんとミキの間に流れる奇妙な雰囲気の正体が、このお祝いパーティ崩壊シーンで明らかになります。

孝ちゃんもミキも、家族にトラウマを抱え、そんなお互いの傷を舐めあう共依存関係にあったのです。

物語の中盤で、ミキが自虐のように語るんですよ。
「私は学歴も低いし、こんな私を好きでいてくれるの、孝ちゃんだけだよね。」
「孝ちゃんは、私が今まで出会った人の中で一番優しいひとなの」
ミキにそう言われたときの孝ちゃんのなんと嬉しそうなこと!

嬉しそうと言っても、手を突き上げてやった~!と喜ぶ系の嬉しさではないのですよ。
孝ちゃんのこころにぽっかり空いた、「女性から必要とされたい」という名の穴が、ミキに必要とされることで埋まっていくような嬉しさ。
この辺の微妙な表情の演技がうますぎて前田公輝くんは本当にすごい役者さんだなあと思いました。彼はどんな作品に出ても、まるでその世界の住人のようなナチュラルな演技をして私を作品の世界へ連れていってくれます。

孝ちゃんはミキに必要とされることで満たされ、ミキもまた孝ちゃんを必要とすることで満たされる関係にあったのでした。
しかし一時だけ必要とされても、ミキの感情の質量に孝ちゃんのこころは耐えられなかったのでしょう。ミキのことを重いと感じていても、彼女に必要とされなくなる恐怖に勝てず、今まで別れを切り出せなかったのでしょうね。

崩壊シーンで孝ちゃんが言っていました。

「お前みたいに可哀想な女を相手にしてると、一瞬気持ちよかった」

わかる。

私も、誰かに必要とされるの、すごく気持ちいいんだもの。
この孝ちゃんのセリフを聞いて、私は数年前に羽風薫くんに感じた「バブみ」の正体がわかったのでした。

私はきっと、薫くんに必要とされたかったのでしょう。
薫くんもまた、ミキと同様にトラウマを抱えているひとでした。
私を「たんぽぽちゃん」と呼んで遊びに誘う薫くんには、彼の軟派な雰囲気とは裏腹に、どこか私の手をつかんで離さないような危うさがあった。
いちど彼の事を受け入れてしまえば、ずっとずっと私のことを必要とし続けてくれる気がしたのです。
私はきっと、ひびの入った私の心に永遠にお水を注いでくれるひとが欲しかったんです。

そんな私と孝ちゃんはそっくりでした。
まるで私を見ている様で、崩壊シーンを見た後すごく気持ちが悪くなりました。
前田公輝くんの素晴らしい演技が見れると言う点では何度も見たい気持ちでいっぱいなのですが、もう二度と「ホテルコパン」は見たくないな。
それぐらいこころの奥底をひっかきまわされてしまった、私にとってのトラウマ映画になりました。

私は21歳になってから見た映画で、5年前架空の人物に対して得た奇妙な庇護欲「バブみ」の正体を解明したのでした。
「君には私がいないとだめ」の正体は、「私には君がいないとだめ」だったのです。

冒頭でも述べましたが、こうして作品を通して自分の観念と向き合うこと自体は本当に楽しいんです。それによって明らかになる感情が昏いものであっても、不明確な「感情」の正体が明らかになれば爽快な気持ちになります。ミステリー作品のラストで謎が解けるみたいなすっきりとした感覚です。

と、ホテルコパンを見たことにより自分の中に眠る嫌~~な欲に気付いて落ち込んでしまったのですが、「気付けたという事実を大切にしていこうじゃないか」とポジティブに捉えた私は、
「バブい男めっちゃかわいい!!!!」
と開き直ることにしました。

「強さ」のほかに「バブみ」によっても男性に魅力を感じるようになった私は、新たな愛の渦に巻き込まれていくことになるのでした。
今の私は強さとバブみが合わさった最強爆弾を見つけようものなら喜んで爆発に巻き込まれに行きます。強バブ男轟洋介最高イェ~~

轟洋介くんも前田公輝くんが演じているキャラなんですよね、怖い。
私はこの先も前田公輝くんの繊細な演技にこころをざわざわさせられてしまうのでしょう。
たとえ強くてかっこよくない役でも。

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