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どこかの空③

Mが退院して話を聞くと「先生が卵巣ごと摘出した方が再発率は低いけどまだ若いから出産の可能性を残したいってことで腫瘍だけの摘出にしたって」「そっか」「これからは通いで抗がん剤治療だよ」

この抗がん剤治療の副作用がかなりキツいようでMの気持ちの浮き沈みが激しくなった。
「もう治療受けたくない」なんて弱音を洩らすことが増えた。

一定期間の抗がん剤治療を終えたがこれで終わりではなくまた期間を置いて抗がん剤の効果をしばらく見てから抗がん剤治療と何度か繰り返される辛い治療だ。

ある時「久しぶりに高い買い物したよ」「おぉどんな買い物したの?」「ん〜ウィッグを2個買って今日届いた。抗がん剤で抜けちゃって」「そっか。どんな感じの買ったの?」「今までしたことない髪型のにした。人の髪の毛だからクオリティ高い笑」「Mを見たことないからわからんなぁ笑」「金髪とか買ってみようかな笑」「意外と似合うかも笑」

俺とMはお互いの顔を知らない。写真すら見せ合ってないから確実に知ってるのは声だけ。

そんな感じでMは頑張りなんとか何度かの抗がん剤治療を終え平穏な日々が戻ってきた。

「病気になってお母さんと仲良くなったよ。前まではぶつかって全然上手くいかなかった」「お父さんとは仲良いって言ってたけど。そうだったのか意外笑」「だから就職してすぐ実家出たんだもん笑」病気のこともあり実家に戻ったM「最近じゃ一緒にお洒落なカフェとか行ってる笑」

Mは自分でも言ってたが笑いのツボが浅い。だから俺のくだらない話でも大笑いしてくれるのだが病気が見つかったり抗がん剤治療だったりで大変だったけどこの頃はよく笑うようになっていた。

手術から2年が経ち検査をして再発してなければ半年に一度の検査くらいで普通の生活に戻れる。

期待と不安の検査結果は…

「再発してた」

「また抗がん剤治療だって…」「そっか」「もう抗がん剤治療はしない。あんな辛い思い二度としたくない」

俺だけじゃなく両親も説得してるだろうけどMの決心は固い。

そして二度目の宣告。

「これからどうなるかわからないからキラ君とはもう連絡取らない」

これにはとことん抵抗したが頑固は相変わらずで受け入れるしかなかった。

そして連絡は途絶え

抗がん剤治療を受けたのか今も元気にしてるのか何一つわからない。

そんなことを時折思い出してしまう。

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