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『ニーアレプリカント ver.1.22474487139...』レビュー「ヨコオタロウ節自体は一見の価値はあるが、古臭く、快適性を損ねる作りなのが惜しい」

結論

 個人的にはおすすめしない寄りの立場ですが、以下の要素が当てはまる人には良いと思います。しかし、ゲームとしては非常に快適性に欠ける為、プレイ感覚はXbox 360/PS3時代までタイムスリップするようなもの。

 つまり、古臭いゲームをこなす為にそれなりの忍耐力が求められます。ゲームプレイ部分の95%はおつかい、周回、素材収集で占めていますので、肝心のゲーム部分はほぼ死んでいます。はっきり言って、ヨコオタロウ節のストーリー以外には期待しない方が良いでしょう。

 (1)おつかいや周回の連続に耐えられる人
 (2)ファストトラベルは甘えだと信じてる人
 (3)鬱っぽくて狂ったストーリーが好き
 (4)ヨコオタロウ作品の熱心なファン
 (5)実績コンプを目指さない人

長所

(1)ヨコオ節の効いた狂ったストーリー

 問答無用で本作の最大の長所はヨコオタロウ氏による頭のおかしいストーリーでしょう。よくもまあこんなに性格の悪い展開を次々と連発できるねと思わず感心してしまいます。ストーリー終盤からエンディングにかけての強烈なエネルギーの放射は一見の価値はあるでしょう。特にD、Eエンドの強烈なエモさは他作品では中々味わえないものでした。

 ただ、筆者は事前に『ニーアオートマタ』をプレイしていたので、なんとなくパターンが読めてしまうというか、「このあとどうせ不幸が起こるんでしょ?」、「はいはい、どうせこの人死ぬんでしょ?」といった冷めた感情がそこそこ湧き上がってくるのには残念な気持ちがあります。あと、ネタバレを防ぐ為に詳細は省きますが、『ニーアオートマタ』とテーマは一緒のストーリーでしたので大きな驚きはありませんでした。

 本作のような鬱っぽい展開を連発するゲームは、若者には訴求力があるのは間違いでしょう。しかし、ある程度年齢が行ってしまっている層の場合、筆者と同様に冷め気味になってしまう人も多いだろうなと感じました。

(2)アクションゲームとしての土台は悪くない

 『ニーアオートマタ』はアクションゲーム開発に定評があるプラチナゲームズが開発元でしたが、本作の開発はToylogicに変わっています。しかし、基本的なゲーム性は驚くほど一緒です。シューティング要素を噛ましたアクションRPGという印象は不変かつ、クイックな操作性なので、動かしていて爽快感はそれなりに感じました。

 そして、一番良かったのは『ニーアオートマタ』でうんざりさせられた異常なまでのシューティングゲーム推しが払拭されていること。まあ本作も普段の戦闘やボス戦のギミックにシューティングゲーム臭がぷんぷんなのですが、『ニーアオートマタ』みたいに「最終的に一番印象に残ったのはシューティングなどのミニゲームだった」なんてことはないので、安心してください。

 『ニーアオートマタ』ではボス戦やダンジョンにギミックらしいものがほぼなかったのですが、本作はゼルダ辺りを彷彿させるようなボス戦やダンジョンのギミックが配置されており、多少は頭も使うようになりました。加えてもはや伝統芸能となった突然、2Dアクションゲームや斜め見降ろし視点のアクションゲームが始まるといった変化球は従来のファンであれば楽しめると思います。

(3)ちょっとだけユニークな育成要素

 育成要素は武器や魔法の入手と強化といった王道の要素に加えて、ワード、つまり言葉を集めて自身を強化するという世界観に合ったユニークなシステムは良かったと思います。具体的に言うと武器や魔法、ガードや回避といったアクションに入手したワードを付けて、ドロップ率アップや腕力、MP回復速度アップといった恩恵が得られるようになります。

 武器も青年期になれば扱う武器種が増えるのですが、槍はモーションが優秀でかっこいい。ちなみに、Eエンドクリアまでの最強武器はお店で買える「不死鳥の槍」なので、筆者は青年期以降はほぼ槍しか使っていません(苦笑)。Eエンドクリア後に最強武器が手に入りますが、本作はEエンドクリア後に強敵と戦う機会がないので、実質意味がないのは痛いです。

 ただ、『ニーアオートマタ』と同様、まったく使い道がない武器の方が多いのはRPGとしては悪調整。さらにワードの組み合わせによるシナジーも薄く、ビルド構築の楽しみは皆無な上に、中盤までに手に入るワードは効果が貧弱なので、ほとんど効果が実感し辛い。あと、強力なワードはドロップ率が低すぎるのは酷い話でした。

短所

(1)全体的におつかい感が強すぎる

 メインストーリーもサブクエも非常におつかい感が強い。なにせゲームが始まってすぐに羊肉や薬草もってこいですから。定期的にポポルさんに報告に行かなければいけないのもおつかい感がすごいし、「こんなしょうもない話をメインストーリーでやるの?」なんていうレベルのイベントをメインストーリーに組み込んでいるのも全くセンスを感じません。

 サブクエもしょうもないおつかいばかり。しかもこのゲーム、ファストトラベルがないので移動がすごく大変(船や通路から各ポイントへの移動はありますが、無いよりマシ程度のショートカットでしかない。そもそも武器強化が出来る店にファストトラベルできないのもありえない)。

 ローリング回避を連続で出していくと多少移動が速くなりますが、ご丁寧にも回避したら荷物が壊れて失敗なんていうゴミみたいなサブクエもしっかり用意されているのが笑えます。そもそもこの時代に地面に転がって移動しろなんて時代錯誤にも程があります。おまけにサブクエの報酬はほとんどがはした金で、やりがいを感じろというのも無理な話。

 本作の最大の長所は結局ヨコオタロウ節のストーリーですので、メインストーリーの進行を妨げるだけのサブクエは本当に蛇足としか思えません。

(2)古臭く、快適性を損ねる作り

 『ニーアオートマタ』はあまりにも簡単過ぎたので、それを反省したのか、本作では微妙にアクションゲームとしては難易度を上げてきています。例えば、回復アイテムは1種類10個までしか持てませんし(薬草10個、傷薬10個といった感じ)、敵の数や耐久性が上がっています。

 まあ前者の調整はありだと思いますが、後者には不満が残ります。こちらのレベルは上がりづらいのに、難易度イージーでも硬い雑魚敵が大量発生するので、相手をするのが非常にだるい(中盤からアーマー持ちの雑魚がでてきます)。しかも、倒しても見返りが薄く、モチベーションが上がりづらいです(本作は敵を倒してもお金はドロップしませんし、もらえる経験値も微々たる量)。

 どうも集団戦は自分の周りをグルグルと刃が回る魔法「黒の旋舞」の常時使用を前提としているみたいで、プレイ感覚は相変わらずシューティングゲームに近く、雑魚ですら大量の弾幕を張ってきます。『ニーアオートマタ』の時から思ってましたが、ヨコオタロウ氏はシューティングゲームがめちゃくちゃ好きみたいですね。

 また、武器の強化には素材が必要ですが、レアな素材の入手はセーブ&ロードを駆使し、収集スポットを根性でマラソンか、ドロップ率アップのワードを装備して雑魚狩りマラソンをする必要があります。

 ちなみに、レアな素材がドロップするのは非常に低確率。こちらは中途半端なハクスラ&収集要素なんて全く求めていないのに、開発はユーザー目線というものが全くないようです。

 とにかく本作は360/PS3時代から進歩していないアクションゲームという印象が最後まで拭えません。極めつけは最後のエンディングに到達するための条件が武器を全種類集めるというもの。この条件を見た瞬間に「今時のゲームとしては古臭いな-」という感想しか出てきませんでした。面倒な上につまらないレア素材の収集やサブクエのクリアを、ストーリーを楽しみたい人に押し付けるのは間違っているのではないでしょうか。

 とりあえず開発側には、エンディング分岐や実績もあるのに、ラストダンジョンではセーブポイントが一つもないこと、演出上、まったく意味のない白背景スタッフロールをスキップできない仕様から見るに、プレイヤー側に対して快適に楽しんでもらおうという気遣いは一切ない模様です。

(3)使いまわしのエコ設計

 まずアクションゲームとしては敵の種類が少ない。大体魔法で殴り、魔法で効かないなら物理で殴るだけ。ボスもギミックはそこそこありますが、やることはほとんど変わりません。

 また、狭い世界なので薄々気が付いてはいましたが、同じダンジョンに何回も行かされます。通うごとに違うエリアやギミック、ボスが解放されると思いきや、毎回安定の使いまわしです(違うエリアが解放されることもありますが、景色やギミックに変化はほぼありません。ボスも大体同じようなやつがでてきます)。とにかく世界の規模が小さすぎてがっかり。

 『ニーアオートマタ』もそうでしたが、人類や世界の命運がかかっているわりには地元の周りだけでお話が進むのはスケールが小さく感じます。例えるなら、不良が地元の周りだけで暴れて何故か全国制覇するようなものです。

(4)ストーリーは盛り上がるところが少ないし、無駄が多い周回プレイには飽き飽きさせられる

 ストーリーは基本的に平坦というか微妙に盛り上がらない部分が多く、少年期も盛大に盛り上がるのはほぼ終了手前くらい。狙ってやってるのかわかりませんが、ヨコオタロウ作品はエンディングでは強烈なインパクトを持って、プレイヤーの頬をメガトンパンチで殴ってきますが、それ以外では割と大人しい印象を受けます(流石に青年期の仮面の王周りのイベントは泣けましたが)。音楽で例えると壮大なイントロが長々と続き、AメロやBメロを飛ばして大サビで締めるようなイメージ。そもそも1週目自体が壮大なイントロというのが厳しい。

 設定資料集の小説を改めてゲーム化したという「人魚姫」編も、1週目はちょっとしたアーカイブを配置しただけで、それ以外はほぼ説明らしいものがないまま、ボスを倒して終わり。初見は完全に意味不明。それで2週目以降からちょっとイベントを挟んだりして経緯の説明が入りますが、これは別に1週目からやっても問題ないのでは?まあこれを言っちゃうと周回前提にシナリオを書いているヨコオタロウ作品の根幹を揺るがしてしまうのですが、こちらは特別面白くもないゲームの周回プレイなんてやりたくないんですよ・・・。

(5)少年期に戻れないなどの時限要素あり

 本作は少年期をクリアしてしまうと、そのセーブデータでは再度、少年期に戻ることはできません。少年期限定のサブクエや実績解除を後から消化できないので、実績、クエスト達成率、釣りの腕前を上げることを気にする人は気を付けてください。他にも時限要素がいくつかあるので、本当に古臭いゲームだと思います。

(6)やり込み要素はただ時間がかかるだけで面白くない

 実績コンプを目指すとなると恐ろしいほどの時間がかかります。筆者は諦めましたが、150時間以上はかかると見た方がいいでしょう。正直、本作はアクションゲームとしてはイマイチなわけですから、地獄みたいな実績設定にする必要性が感じられません。

★まとめ

 本作はXbox 360/PS3で発売されていたオリジナルからのバージョンアップという位置づけらしく、厳密に言うとリメイクではないらしいのですが、プレイしてみてその意味が本当に理解できました。とにかくゲーム部分に進歩がなく、古臭くて、快適性に欠けるのです。グラフィックはそこそこ綺麗ですが、中身は本当に昔のゲーム。

 確かにヨコオタロウ節のストーリーには安定という枠を超えたパンチ力はあります。しかし、そのパンチ力を発揮するのはほとんど各種エンディングに集約されている為、それまでのゲームプレイ部分にストレス要素が多く、プレイヤー側にかなりの精神的負担がかかります。

 『ニーアオートマタ』もアクションゲームとしてはぶっちゃけイマイチな作りでしたが、実績がお金で買えたり、ファストトラベルもあり、ストレス要素が本作より少なかったので、筆者は『ニーアオートマタ』に対してはおすすめ寄りの立場を取りました。

 しかし、本作に関しては、ゲームとして評価するならば、どちらかというとおすすめしない寄りの立場です。どうしてもヨコオタロウ節のストーリーを味わいたい熱心な人以外は手を出さない方がいいでしょう。

 それにしてもヨコオタロウ氏、ゲーム部分が最高に面白い作品というものを世に一つも送り出していない気がします(『ドラッグオンドラグーン3』なんてストーリーすら面白くなかったので、本当に救いがなかった)。ゲーム部分はいくら外注に頼んでいるとはいえ、流石にほとんど進歩が無いのは監督責任があるのでは?とか素人の身ながら生意気なことを思ったりしました。

 ストーリーはやりたい放題やってもらって構わないのですが、もう少しゲームとして楽しめるものをですね・・・。まあそれでもヨコオタロウ作品は嫌いになれないというか、また頭のおかしいストーリーのゲームを作ったら自分は買っちゃいそうですけどね(笑)。そういう体に染みわたる毒のような魅力は評価してますので、スマホゲー以外の次回作、期待しております。

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