シーリングスタンプを自作してみた話

この記事は、「声優オタクが推しに送るファンレターで使用するためのシーリングスタンプ(封蝋)をヘッドのデザインから自作した」というだけのものです。

やり方だけ知りたい人は、このnoteより詳しく説明してくれてるサイトが他にあるのでそちらをお勧めします。
また、シャニマス(アイドルマスターシャイニーカラーズ)というアイドル育成ゲームに関連したワードが多く使われているため、興味のない方は読み飛ばしてください。


■前段

シャニマスで夏葉に惹かれ、そのまま涼本あきほさん(以下あきちゃん)のファンになった。
チョクメの返信や番組宛のおたよりは出していたけれど、ファンレターを書いてみようかと思い始めた頃にコロナ禍になってしまい、プレボも無くなってしまったこともあり、イベントでファンレターを出すようなことは出来なくなっていた。
お作法があまり良く分かっていなかったため、事務所に送ることには尻込みしてしまい出来ていなかったが、シャニマス4th LIVEでのパフォーマンスと、締めの挨拶で聞いた言葉が胸に刺さり、そこでようやく手段が郵送であろうと、気持ちを届けるためにファンレターを送ろうと思い至った。

それから事務所に送る際のルールや、手紙の書き方みたいなものを色々調べた後、書きたいことを書き、書かなくてよいことを削りと試行錯誤した。
下書きが出来たのは4thから3ヶ月後である2022年の7月くらいだった。 

イラストは描けないし文才があるわけでもないが、文以外にも何か自分の応援の気持ちを形にして届けられるものはないかと考えた。
そこで思いついたのがシーリングスタンプを作ってみようということだった。
※その時期にとある自動手記人形のアニメにガチハマりしていたのも理由の1つである

作成できるセットを買えば、後はスプーンに好きな色のワックス(蝋)を4粒ほど入れ、熱して溶けたものを台の上に垂らし、上から柄の入った真鍮製のヘッドで押さえる。
これで冷えて固まれば、柄で彫り込まれた部分の蝋が浮き、模様のついたスタンプになるという簡単なものだ。
余談ではあるが、少し慣れてくると柄の部分だけ色を分けて作ったり、スプーンに入れる粒の色の種類を複数にすることでマーブルカラーのスタンプも作ることが可能である。気になっている人はぜひ触れてみてほしい。

話を戻すが、それを用いることでシーリングスタンプを作ることができたので、翌8月に初めて事務所宛にファンレターを送り、そこから月1でイベントの感想などをファンレターに書いて送るという推し活を始めた。

過去に作ったものはこんな感じ

初めて作ったもの。メンバーカラーのグリーンと
コンテンツのモチーフに使われている羽根をイメージした。
お誕生月に作ったもの。柔らかい色合いにしたかったのでマーブルにした。
パープルベースで作ってみたが、ピンクの方を採用した。
今年の5月に作ったもの。2人で放送している冠番組があり、タイトルにバラが入っている。
また、その写真集がこの月に発売されたこともあり、2輪のバラをモチーフに作成した。
先月(7月)に作ったもの。海の日のある月だからと選んだ封筒に合わせるために
無柄ではあるが、空の青と海の青、そして白い雲をイメージして作ってみた。


■スタンプのヘッドを自作するに至った経緯

先々月(2023年6月)に行われた、あきちゃんもメンバーに加わったマリン・エンタテインメント発のガールズユニット『ALiCE Eyez』の1回目のファンミーティング。
次回のファンミのチケットを買うと、メンバーから名刺のお渡しをしてもらえる名刺お渡し会に参加できた。
そこでメンバーと会話もできるので何を話すか考えていたのだが、お目当てであるあきちゃんには、恐れ多くも名前を覚えていただいていたし、シーリングスタンプを自作していることも伝わっていたので、
「(ファンレター用の)スタンプを作ってるんですけど、リクエストは何かありますか?」と聞いてみた。
「色は赤が良い!」と答えてくださったので、ベースとなる色は赤で作れるものを考えることにした。

完成が遅すぎてもあれなので、自分の中で7月〜8月を目処に作成しようと考えた。
この時期にファンレターを書く際は、「我儘なまま(シャニマスソロライブ)」の感想を伝えたいと思っていたので、
披露されるであろう楽曲『Damascus Cocktail』に掛けられるものはないかという観点で探し始めた。

探している中で、歌詞に「It's like a Bloody Mary(ブラッディマリーのように)」というフレーズがあったことを思い出す。
お酒には弱いこともあり、付き合いでしか飲むことはなく知識は殆どない。そのため、まずはそのカクテルについて調べることからスタートした。

ブラッディマリーとはトマトジュースとウォッカをベースにしたカクテルということで、リクエストの赤色というテーマと、Damascus Cocktailという曲のイメージにも見事に合致したので決定した。

ちなみに何故「ブラッディマリーのように」という歌詞なのか。
これは自分の解釈ではあるが、花言葉等のようにカクテルにもカクテル言葉というのがあるらしい。
ブラッディマリーのカクテル言葉は「私の心は燃えている/断固として勝つ」などがあるようで、作品の中でもトップアイドルを目指して日々研鑽を積んでいる有栖川夏葉というキャラの精神性を詞の中で表した言葉だと思っている。

イメージが決まれば後はスタンプのヘッドでカクテルグラスのデザインのものを探すだけ。
と思ったものの、そんなデザインのものは全く見当たらない。
シーリングスタンプのお店はいくつかあったが、吉祥寺のお店、池袋のお店、オンラインショップなどを見に行くが全て空振りだった。

手紙は7〜8月中には送りたいので時間的にも猶予はあまりない。
探しても既製品が無いなら作るしかないのでは?
というDIY精神が沸き立ち、製作を決意した。


■作成手順

ざっくりと書くと
①デザインを作ってヘッドに合うサイズで印刷する
②印刷したデザインをヘッドに転写する
③転写した柄で凹凸が出来るように加工する

という流れである。
詳しい内容は後述するが、まずは元となるデザインについて記載していく。


■デザインについて

自作に際して、1番の難関はスタンプヘッドのデザイン。
自分はイラストなど描いたことがなく、自己評価を甘くしてもセンスがあるとは思えない。
それでも、「色々な挑戦を行い、それを続けている人」を応援しているなら気持ちだけでもその人を倣いたい。
ということで使ったことはないがAdobeのイラストレーターをインストールし、それを使ってデザインすることにした。

完成したデザインはこちら。

プロから見るとツッコミどころは多々あるだろうけど、素人目には良い感じにできた気がする。

以下ではそれぞれのデザインについて解説する。

①グラス

ブラッディマリーはロングドリンクというカテゴリらしく、コリンズグラスを用いて飲むのが一般的なようである(Wikipedia調べ)。
つまり公式のグッズに描かれている、横から見たら逆三角形のようなカクテルグラスではあまり飲まれないらしい。
緑色にしてそちらに寄せようとも最初は考えたが、今回は赤をベースにするので、別の道を選ぶことにした。
グッズのイメージにあるカクテルグラスで緑を選ぶならば、シャムロックやキングス・バレイなどのカクテルがイメージとしては近そうである(これも調べた)。

そのため、前述したコリンズグラスに準ずる形で作ってみたものの、自分のセンスだと「グラスというよりはコップ、カクテルというよりはジュース」というデザインにしかならず、失敗。
そこでもう少しネット上で調べていたところ、ゴブレットグラスなどでも良いと書かれているページを発見した。
これなら少しはカクテルっぽく見えそうだなということで採用。
楕円ツールやパスファインダーなどを駆使してなんとかそれっぽい形には出来た。

モチーフは2つか3つくらいに留めないと2.5cmの円の中に収めるのは大変なので、あと1つ2つを考えることに。

②翼のついたマドラー

最初は羽だけ作ろうとしたけど、とっ散らかりすぎると思ったので軌道修正した。
グラスに付随する形のマドラーなら組み合わせとして捉えることも出来るので、情報量としても邪魔にならないかなと思った。
持ち手の方に翼の装飾をすることでコンテンツへのイメージや前述したライブのDay2に2人で披露した曲(シャイノグラフィ)へのイメージも込めてみた。
薄っすらとではあるけど、スプーン部分と合わせて音符のようなシルエットになったのも結果オーライだった。

③枝葉

『Damascus Cocktail』で好きなフレーズは
「花は枝葉が咲かせることを見せてあげるわ」である。
「花」は「枝葉」が咲かせる。つまり花(という人の目を引く部分だったり成果のようなもの)を咲かせるには、元となる枝や葉(根本・基礎)が大事である
と解釈したこの詞は、普段から努力し続ける夏葉を表す上で相応しい部分であるため、モチーフとして使いたかった。

しかしながらここが一番難しかった。
枝を作るのが上手くいかずに5、6パターンくらい作り直した。
直線ツールだけだとすぐ折れそうな枝になるし、曲線にしても枝というよりは蔓になったり。
参考にしていたサイトでは下絵トレースについても教えてくれていたのでやってみたが、①で作成したグラスとのタッチの違いに違和感しか残らなかったので没にした。
結果、長方形ツールで図形を作成した後に先に向かって細くなるように加工したものを複数作り、パスファインダーで結合させた。
そんなこんなで難航したが、無事に今の形にできた。

葉の枚数も最初は8枚程度しか考えていなかったけれど、枝を今の形にしたときにせっかくならと枝は8つ、それぞれの枝ごとに葉の枚数を3、5、5、3、3、4、2、3と計28枚にした。

1つめの枝の葉は、3枚が同じ方向で並ぶように。配置してみると枝に留まる小鳥のようにも見えたので決定した。

2つめの枝の葉は、最初は歯車のようにしようとしたが、3つめと似通ってしまったので修正。円よりも線を意識して配置した。
葉の先端から内側に線を伸ばすとそれぞれが重なるようにしてみたところ、結果としてBW03のジャケットの向きを回転させたような並びにもなったのでこの配置になった。

3つめの枝の葉は輪になるように配置。花が咲いたようにも見えるのでこれ以外に解は無いなというイメージ通りの並びになった。

4つめの枝の葉も花が咲くようにはしたかったが、隣に比べると難しかった。2つの葉を前面に置きつつ、残りの1枚を後ろに添えることで、双葉とそれを見守る一葉という並びを意識してみた。

5つめの枝の葉は4つめの枝と似ているが、葉の楕円の部分は3枚とも重ならないように(3枚が同じ高さにいるように)配置。
ただし、葉の先端は互いに接するように意識した。

6つめの枝の葉は2枚1セットを×2で配置。結果論だけど角度が船のオールっぽく見えなくもないので自分の中で納得がいってしまった。
ということでこの配置で決定した。

7つめの枝の葉は枝の生え方に対してずらすことで、双葉のような形にはしないようにした。とあるイラストで互いに向き合い手のひらを合わせているシーンがあるのだが、それを意識して配置した。

8つめの枝の葉はまだ関係を把握できる情報が少なく、それ故に規則性を持たせずに配置した。

簡単に言うと各枝をコンテンツのユニットと、葉の枚数をそのユニットのメンバー数に見立てて作成・配置したというわけである。

デザインについては以上となる。
以降は残りの加工部分や仕上げについて記載する。

■ヘッドの加工

デザインが出来たら、残りはヘッドの加工。
真鍮製のものを最初は掘るのかと思っていたけれど、どうやらエッチングという腐食作用を利用して金属を加工する方法があるとのこと。
関連のサイトや作り方を解説してくれている動画を見て作成することにした。
ヘッドは柄の無いタイプのものを購入し、それにエッチング液を使って加工した。

詳しい手順については以下の通りである。

①デザインを作る(前項で記載済み)
②掘りたい面(スタンプ作成時に浮き上がる面)を白、他を黒にして印刷する(セブンイレブンのプリンターで良いらしいという情報を見てそれに倣った)

少し大きめに作って周りを覆っても良かったが、
中心が合わずにずれが生じることの回避を優先した。


③印刷した紙を真鍮に合わせてカットし、印刷面と真鍮を重ねてマスキングテープとビニールテープで固定する(ビニテは真鍮の溶かさない部分を保護するため)
④印刷した紙を水で濡らしてひたひたにする

水で濡らした状態。アイロンを当てると透けずに白くなるのでそれで判断した。


⑤アイロンを紙の部分に押し当てて乾かす(転写させる)
⑥④〜⑤を2、3回繰り返す
⑦最後に再度濡らして、紙の部分を指の腹などで擦り落とす
(爪などを使うと転写したインク部分が落ちるので注意)

白いのは紙の繊維が残っているところであるが、
黒い面は掘らない部分なので良いかと思ってスルーした。


⑧エッチング液に加工したい面を浸けて数時間待つ
(ドボンすると上部も腐食するので、たこ糸+竹串で吊りました)
※液を入れる容器はガラス製のものを使用すること
(金属製は同じく腐食するので)

外側の容器を40℃くらいにすると進みが良いらしいので適度にお湯を入れて待機した。


⑨終わったら重曹水などに真鍮を浸して溶液が付いている部分を中和させる
⑩残ってるインクがあれば除光液などで落とし、表面をヤスリで磨く
⑪完成

※エッチング液や使用して金属が溶けた溶液はそのまま下水道に流すと水道管の腐食だけでなく、環境汚染に繋がるので絶対に捨てないこと。
人体にとっても危険な場合があるので、成分含めて確認の上、取り扱いにも十分ご注意ください。
使用後の処理方法などは、調べれば正しい情報のものが見つかるので、万が一これを見てやってみようと思った方がいても、そこは念頭に入れていただくようお願いします。

そうして出来上がったのがこちらである。

ヤスリ掛けしすぎると溝が浅くなってしまうかもしれなくて少し甘かったかもしれない。


目視できる範囲ではイメージ通りに加工が出来ているように見えた。


■スタンプの作成と仕上げ

ヘッドは完成したので、ここからはスタンプを作成して仕上げまでを記載する。

前段でも書いた流れで蝋を溶かし、ヘッドで押すことで腐食させて溝になった部分が浮き上がる。
冷えて固まった後に、浮き上がった線の部分をゴールドやシルバーのペンで塗ることで模様を強調できるのである。
今回はシルバーで塗ることにしたが、浸ける時間が少し短かったのか、溝が浅くなってしまった。
また、モチーフごとの枠線がやや細く、結果として線を塗るハードルが猛烈に高くなってしまったので不器用者には大変だった。
次回以降また作るときは線は太めにすることを決意した。

そして、ペン入れが終わったら完成……と言いたいところだが、最後にもう1つだけ入れたいモチーフがあった。

『Damascus Cocktail』の歌詞にある「カクテル」部分については作成した。
サビの歌詞は1番のカクテルに対して、2番はジュエルが用いられている。
「Soul of an emerald」というようにエメラルドが登場しているし、夏葉のメンバーカラーであるグリーンのジュエルもモチーフとして使いたかった。
なので、それっぽいパーツを池袋の雑貨屋で購入した。
作成したスタンプに対して千枚通しなどの先端を熱し、刺すことで周辺が熱で溶けるので、程よいサイズに穴を開けた。
開けた穴に購入した宝石風のパーツを嵌め、裏側からまた溶かした蝋を流し冷やして固める。
これでようやく完成させることができた。

塗りのスキルがほしい。


(完成と言いつつも封筒に留めた際にジュエル部分が外れてしまいボンドで付けることになってしまったので、上手いやり方を模索することにしたいと思います。あきちゃんへ、お手元に届いた時にまた外れてしまっても気にしないでください。すいません。。)


■あとがき

今回、初めてヘッドから自作してみたが、感想としては自作の難しさを改めて強く感じた。
けれど、それと同時に楽しさも感じることが出来たので良かった。
自分の手で何かを作り出すことが得意ではなかったが、贈る相手のことを考えながら作る時間が楽しく感じられたので、それがモチベーションになってやり遂げることができた。

結局のところ、推し活は自己満足だと思っているし、対象に迷惑をかけない、自分の考えを押しつけないという前提の上で、どれだけ自分が楽しむかだと思う。
幸いなことに、あきちゃんは「ファンだからといって全部を追わなきゃいけないわけではない。人によって好きになってくれた入口は違うし、その好きになってくれたところを応援してくれればいいんだよ(意訳)」ということを当たり前のように伝えてくださる方なので、自分もリソースを振れる範囲で推し活ができている。

これからも多少は無理もするけれど、リスペクトは欠かさずも楽しみつつ応援していきたいと思う。

拙い文章ではありましたが、お読みくださりありがとうございました。

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