『松田聖子の誕生』を読んでいて居ても立っても居られなくなった私。

  「俺はいったい何をしてるんだろう…。」悔しさと少しの興奮も入り交じっている。今まさに、自分が恥ずかしい。同時に悔しい。でも信じたい。

  『松田聖子の誕生』(若松宗雄 著 新潮新書)を読んでいる。呼んでいる途中であるにも関わらず、衝動的に書き殴りたくなった。興奮を。全身がゾワゾワとし鳥肌が立っている。これほど私が興奮するのも久しぶりだ。しかも音楽そのものではなく、その文章にだ。

  アイドル「松田聖子』をプロデュースした若松宗雄氏による書籍。つい一ヶ月ほど前まで、アイドル歌手というものに触れることはほとんどなかった私。それがこの一ヶ月(いや、正確にはハマり始めて一週間で震えるほど感動していた。)で松田聖子というアーティストの虜になった。それにしても、なぜ松田聖子なのかを疑問に思う読者もいるだろう。クラシック畑の私がなぜ今ポップスにハマり、なぜ松田聖子なのか? もちろん松田聖子は知ってはいたが、恥ずかしながら一度もじっくり聴いたことがなかった。

  きっかけは知り合いの女性だった。「今度歌の発表会で、聖子ちゃんのStrawberry Timeを歌うことになったの!」聞けばプロの歌手ではなく、ただただ歌うことが大好きなその方が、発表会の最後に松田聖子のStrawberry Timeを歌うという。グループで歌って最後に一人で歌うというから、相当な気合の入れようだと思った。しかもその語り口が熱狂的なファンの「それ」であった。その時の私は全く話が理解できなかった。「知っている雰囲気」をナチュラルに醸し出しつつ内心、戸惑いを隠せなかった。

  自宅に戻った私の脳裏に、楽しそうに「好き」を語るその人の姿とタジタジした自分の様子が蘇った。何ともカオスな状況に思わず苦笑した。

  正直に言えば、まだこの時点では「次会った時に話についていけるように…』くらいの気持ちだった。ただ、「人が熱中してるものには何かがある」と直感的に感じてもいた。どうにも気になって調べてみるとAmazonの評価レビューが600件以上もあるアルバム『SEIKO STORY〜80's HITS COLLECTION〜』なるものを発見。40年前?600件のレビュー?私の中ではイメージが付かなかった。たしかに、有名な曲は耳にしたことはあるが、これほどまでとは思っていなかった。後日、併せて『SEIKO STORY〜 90s-00s HITS COLLECTION 〜』も買った。2022年6月16日、この日が松田聖子のファンとなった記念日になった。


  余談だが、私は未だに歌は特にCDを聴くようにしている。何故なら、形ある生身の人間から発せらる声を聴く時には、形あるものから出ている、目に見えるものから出ているという実感のようなものが欲しいのだ。宙に浮いて振動として届くのであれば、「いきますよ!」というような心の準備が必要なような気がしてならないのである。

  『アイドル』という括りだからとどこかフワフワした気持ちだったのかもしれない。
全世界のアイドルの皆様に深くお詫び申し上げます。
大変申し訳ございませんでした。

そのくらい私は無知だった。アイドルを、松田聖子を…。

  SEIKO STORY~80’s HITS COLLECTION~の
トラック1.
デビュー曲『裸足の季節』
最初のひと声を聴いた瞬間、『会いたい!』と思った。言葉にならなかった。とにかく泣いた。
「あぁ、俺はきっとこんな風に知的に、それでいて皆んなを一瞬で明るくするような歌手を目指してるんだな…。』自分のイメージしていた歌手像、パフォーマー像の遥か上を行く、歌手松田聖子。品の良さを感じさせる中音域をデビュー曲の最初のフレーズで歌い上げていた。
泣いた。出会えたことに。生きているうちに聴けてほんとうによかったと。

  歌の技術、言葉、可愛らしさ。声のノビ、丁寧な歌い方…。どれを取っても一級品。買った初日の昼の12時ごろから、時間を忘れて食事も忘れて、6時間ほどは聴いたのではないだろうか。

  それだけ80年代のポップスのサウンド『歌謡曲』というジャンルにピタリとマッチした彼女の声を堪能した。深く深く、味わった。その時にも思った。プロデューサー若松宗雄氏が、この度執筆した新書『松田聖子の誕生』を読んでいる、今と似た感覚を。

 「俺はいったい何をしてるんだろう…。」悔しさと少しの興奮も入り交じっている。今まさに、自分が恥ずかしい。同時に悔しい。でも信じたい。

 「もっと歌いたい、そして同じように勇気づけられたら…」私の人生の転機となった松田聖子との出会い。その松田聖子がどのようにして創られていったのか。その秘密を少しでも知りたいと本を手に取った。しかも新書として。82歳の若松宗雄氏が書く文章は実にみずみずしくダイレクトで素直。まだ第一章を読み終えたあたりだが、居ても立っても居られなくなり、筆を取った次第である。

明日も歌おう。と自らに誓って。

もとし

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