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日高逃げ馬三銃士 人々の心躍らせた勇士達



逃げ馬に熱狂したここ数年


競馬において好きな脚質は何か。
王道の先行?全体を見つつレースを運ぶ差し?
直線一気でごぼう抜きの追込。
ペースを読んでの捲りも良い。

だが、ロマンに溢れ、見るものをハラハラドキドキさせて魅了する脚質と言えば、何か。
「逃げ」である。

大逃げを打った逃げ馬がヘロヘロになりながらも先頭でゴール板を駆け抜ける
厳しいラップを刻みながら抜かそうにも抜かせないレースで勝つ
あるいは後続をブッチ切って逃げて上がり最速で圧勝

どの逃げもロマンある走りではなかろうか。
しかもそれが同時代にあったとしたら…。

私が2021年秋からの数年間は逃げ馬に魅了される日々だった。

理想と幻想重なる「逃げ」

誰が言ったか競馬の理想系は「逃げ」と言われる。
逃げ馬でこれまで一番理想系に近づいたと言えるのが「異次元の逃亡者」サイレンススズカだ。

「逃げて差す」と言われた彼の走りは、逃げという脚質の理想、完成形と謳われた。
彼が登場した90年代は、他にもアイネスフウジン、ミホノブルボン、ダイタクヘリオス、メジロパーマー、キョウエイマーチ、サニーブライアン、セイウンスカイと言ったG1逃げ馬やツインターボと言った個性派逃げ馬が競馬界を盛り上げていた。
逃げ馬が一番活躍していた年代と言えるかもしれない。

だが年代を下るごとに前方脚質有利なダートを除いてG1芝レースで逃げ勝つ馬は減っていった。
人気薄を利用して逃げきる馬はいても何度も成功できなかった。(イングランディーレ、ビートブラック、ダイタクヤマトなど)
海外入れても00年代は、エイシンヒカリ、タップダンスシチー、ショウナンカンプ、アストンマーチャン、ダイワスカーレット、カルストンライトオ。
10年代はメジャーエンブレム、キタサンブラック、モズスーパーフレア、レイパパレと時代が進むにつれ減っていった。
サンデーサイレンス産駒やディープインパクト産駒がキレ味を武器に逃げ以外の脚質で勝利を重ねる事が増えたり、競馬界の一大勢力となった社台グループは逃げきりで勝っても逃げに拘らずに脚質変更させることも多いのも一因であった。(例、大阪杯を勝ったレイパパレ)
逃げるということ自体も他馬の目標にされるのもあるだろう。

かつて逃げの理想系に近づいたが、今は幻想が大きく立ち塞がった。重賞を逃げ勝つ馬が現れてもG1でハナを取って逃げきれない。ポツポツ現れても複数のG1を逃げ切る馬は出てこない。そんな日々が長く長く続いた。


そこに彼らは現れた。




逃げ馬の時代が戻ってきた ~菊花賞馬タイトルホルダー~

2021年。

ディープインパクトが亡くなってから数年、産駒も残り数世代になったこの年の秋。
菊花賞は皐月賞馬エフフォーリアもダービー馬シャフリヤールも出走せず、アイドルホースとなっていた「純白の女王」白毛のソダシがいた秋華賞に比べて、混戦模様、主役不在の菊花賞と揶揄されていた。

一、二番人気は長距離でも活躍するディープインパクト産駒。特に二番人気のステラヴェローチェは皐月、ダービーで共に三着とかなり有力視されていたと覚えている。

NHKでレースを見ていた私は何となく見ていた。注目度も低い上に長距離。妥当な展開で始まり無難な展開で終わるだろう。そう思っていた。

ゲートが開いた瞬間に飛び出した馬がいた。
4番人気タイトルホルダー。先行した前走は閉じ込められ大敗。一気にハナ取って1000m60秒。3000mでは飛ばしすぎ。これではいつ沈んでもおかしくない。私は後方集団に目を向けていた。

2周目3コーナー。想定通り後続との差が1馬身も無くなった。このまま飲み込まれるのも時間の問題。

だが直線。信じられぬ光景が目前にあった。
迫ってきていた後続との差がみるみる離れていく。
後方勢の脚色でも広がっていく。
よもやの菊花賞逃げきり。しかも、5馬身差の圧勝だった。

あの当時はそこまでそれ以前の記録には注目していなかったが、タイトルホルダーの前に菊花賞を逃げ切ったのは鞍上の武史が生まれた年に、父典弘が乗ったセイウンスカイ。しかもラップ構成まで似通っているというのも面白い。
タイトルホルダーの父二冠馬ドゥラメンテが挑むことが出来なかった菊花賞を勝ったのも人馬の縁を感じずにはいられない。

粘る大逃げ ~パンサラッサ覚醒のドバイターフ~

圧勝したタイトルホルダーの次走は年末の有馬記念。ここにもう1頭、秋を沸かせた逃げ馬が初のG1取りに挑んだ。
名前はパンサラッサ。前々走のオクトーバーSで大逃げを披露し、前走のG3福島記念でも大逃げして連勝。単なる大逃げではない。フロックとは片付けられない走りだ。福島記念の大逃げは往年の大逃げ馬ツインターボを思い起こさせ、「令和のツインターボ」という愛称も現れた。

そんな彼らだったが、有馬記念はタイトルホルダーは大外に入ったせいもあってか5着。ハナを取ったパンサラッサも距離適正か13着に沈んだ。

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年明けパンサラッサは初戦中山記念を選択。相手にG1馬もいる中、いつも通りとばかりに1000m通過57秒を記録し快勝。次走は大阪杯と思われたが、選んだのはドバイターフ。海外遠征チャレンジだ。

グリーンチャンネルで見つめる中で始まったドバイターフ。外枠から飛ばしたパンサラッサ。しかし日本の時と違って後続がそこまで離れないまま直線まで進む。

残り300。パンサラッサも粘っているが、後ろのロードノースの脚勢が明らかにパンサラッサより強い。更に後方のヴァンドギャルドと共に先頭にみるみる近付いていく。
残り100。後ろに迫られながらもパンサラッサは粘り続ける。
50、30、10、ゴール!見た目3頭揃った所がゴール板だった。これはまさか!パンサラッサが勝ったのか!?それとも差されたか!?
ゴール板のカメラによる審議は9分と長い時間だったが、興奮していた私には何倍、何十倍にも長い時間だった。勝ったのはロードノースか?ヴァンドギャルドか?それとも………?

審議の末にレースの勝者がついに発表された。

1着 パンサラッサ、ロードノース(同着)

初のG1勝利を海外で飾った上に、日本競馬史上初の海外G1レース同着優勝である。
パンサラッサの熱い粘りの逃げに私は好きになってしまった。彼の意地が強く伝わる勝利だった。

逃げ馬頂上決戦 ~超ハイペースの宝塚記念~

タイトルホルダーといえば年明け、一時は怪我で春全休も考えられた中で強い回復力見せ、叩きの日経賞は心配されながらもクビ差で勝利。

春の大目標としていた天皇賞(春)では有馬2着のディープボンドらを7馬身差抑えての圧勝での逃げきり。しかも逃げて上がり最速である。
直線半ばにも関わらずアナウンサーも「タイトルホルダー圧勝!」と実況するほどだった。

そんな互いにG1馬となったタイトルホルダーとパンサラッサの再戦となったのは春のグランプリ宝塚記念。
彼らだけでなく、海外重賞を逃げきったステイフーリッシュ、京都記念を逃げきりツイッタラーとしても有名になりつつあったアフリカンゴールドと近走の重賞を逃げきった馬が4頭集まっただけでなく、逃げきった経験がある馬としてはギベオンやディープボンドと先手争い、ハナを誰が取るのか注目集まる一戦。
近年稀に見るハイレベルな逃げ馬の頂上決戦というべき舞台となった。

このレースは諸事情で競馬場や中継で見れないのが確定していた私はドゥラメンテの弔い合戦の意味も込めてタイトルホルダーを応援しながら結果を待った。

逃げ馬たちの中で逃げきりでしか勝利をしたことのないタイトルホルダーは非常に不利だ。ましてやパンサラッサという爆逃げの存在がいる以上、ハナを切っての逃げきりは望めない。春天からの距離短縮で宝塚連勝もここ十数年無くなっていた。

宝塚記念当日。レースが終わったであろう15:40。用事を済ませて急いでツイッターで宝塚記念で検索する。直後、私は小さくよし!と叫んで一秒弱宙に浮いた。

1着 タイトルホルダー 2:09:07

レースの映像には最速のスタートダッシュを決めたタイトルホルダーがハナに立つと遅れてきたパンサラッサと少し競り合いながら、番手でレースを進める姿が映っていた。
先頭のパンサラッサが1000m通過が57.6秒!!
前有利の宝塚記念とはいえ2200mとは思えぬタイムだ。その3馬身後にタイトルホルダー。他の後続と続く。

3コーナーでタイトルホルダーが前との差を一気に詰め、タイトルホルダーをマンマークしていたディープボンドがガシ追いされながら迫ろうとする中、4コーナー過ぎ、パンサラッサを追い抜いて先頭に立つ。
そのまま、あの超ハイペースの番手とは思えぬスピードで後方勢との差をほとんど縮めずにレコードタイムでゴール板を駆け抜けた。

春のグランプリとまさしく言えたタイトルホルダーのベストレースだった。

令和のサイレンススズカと呼ばれて ~金色の春風ジャックドール~

タイトルホルダーは凱旋門賞狙いで夏は休養後ぶっつけ本番で渡仏、凱旋門賞へ。
パンサラッサは天皇賞(秋)の前哨戦として札幌記念へ。
そしてここでイケメン逃げ馬、ジャックドールとの初対決となった。

四白流星の王子様

ジャックドールのファンの方オマタセシマシタ。3頭を順番に紹介する都合上最後になりました。

ジャックドールは四白流星を持ったグッドルッキングホースだ。そんな容姿もあってファンも多い。
そんな彼は2頭から少し経ってG1の舞台に登場した。

G2金鯱賞でレイパパレ、アカイイト達G1馬を破ってレコードで逃げきりで5連勝。
金鯱賞のレコード勝ちとその外見から彼は「令和のサイレンススズカ」と呼ばれるようになった。(後にもう1頭出てくるが)
次の大阪杯では前年の年度代表馬エフフォーリアと二強に推されるもハナに立とうと無理にアフリカンゴールドとハイペースで競り合った結果、スタミナ切れで5着。初のG1挑戦はほろ苦い結果で終わっていた。

G1まで年明け3連戦、一戦一戦に全力投球するタイプということもあって大阪杯後は休養に入り、秋の大目標天皇賞(秋)へ向けて前哨戦として札幌記念へ進んでいた。

前年覇者ソダシや後に香港ヴァーズを勝つウインマリリンもいる中で、札幌の地でもハナで飛ばすパンサラッサ。三四番手で追走するジャックドール。
どっちもG1級の逃げ馬。宝塚に続いての注目の対決。どっちを応援すればいいか迷うほどだった。

直線。後ろからジャックドールが迫り、先頭のパンサラッサとはあと半馬身もない。だがパンサラッサはここから粘る!ドバイターフで粘りきった力走を今回も見せる。
抜かせない。まだ抜かせない!ジャックドールが一度抜かしかけるが差し返す!ジャックドールも譲らない!ラスト100でジャックドールも差し返しクビ差で先頭ゴールイン!一躍天皇賞(秋)の主役に名乗り出た。

両者ともに白熱した大熱戦で22年の札幌記念は幕を閉じたのである。

変わる走り、変える走り

あの日の続きと一撃の天才 ~2022年天皇賞(秋)~

「天皇賞(秋)は一番人気が勝てない。」
テイエムオペラオーが崩すまで言われていたジンクスの1つである。
メジロマックイーン、ナリタブライアン、サクラローレルといった名馬がこのジンクスに敗れてきた。それはかのサイレンススズカもそうだった。
1998年11月1日、1枠1番1番人気になったサイレンススズカは1000m57.4で快速の走りを見せた後、府中の大欅を過ぎた辺りで故障発生。二度と彼の走りを見ることは出来なかった。

2022年天皇賞(秋)は事前人気では混戦だったと記憶している。
一番人気のイクイノックスはG1未勝利ながらも推され、古馬初挑戦だった当時はまだ1倍台の人気ではないし、皐月とダービー2着で2022年は「一番人気の呪い」もあったし脚部不安もあった。
二番人気のシャフリヤールは距離が短く次戦への叩きと見なされていた。
三番人気はジャックドール。2000m戦、得意の左回りとあってか天皇賞(秋)の逃げ切りは数十年とない中で上位人気に推された。
パンサラッサはというと七番人気。ただでさえ逃げが不利な府中2000mで大逃げは通用しないだろう。札幌記念の展開考えれば後続に捕まってしまうのがオチ。そんな風潮であった。

しかしそうならないのが競馬の面白さなのである。

スタート直後もたつきながらも内からいつも通りに飛び出していくパンサラッサ。
ジャックドールは札幌記念のように数馬身後ろで番手でレースをする。そう予想されていた。
だが実際のジャックドールはもっと後ろ。四、五番手でレースを進めたのだ。
では番手はというと前半超スローでの逃げきりを持ち味とするバビット。これでは番手でもパンサラッサにピッタリついていく展開にはならない。向こう正面パンサラッサはみるみるうちに後続との差を広げていき、道中は十数馬身もあったように思う。

1000mの通過タイムが発表される。
57.4
あのサイレンススズカが出した数字と同じだ。
そしてあの大欅を過ぎても減速しない。
圧倒的先頭!!直線入っても後続との差はタンマリある。
まるでサイレンススズカが走れなかったあの日。サイレンススズカが無事ならばこんな光景になったのではないか。そう思わずにはいられない。

慌てる後方勢を尻目に流石に1600mから勢いは落ちるもまだ粘るパンサラッサ!
ダノンベルーガ、イクイノックス、ジャックドールが後方から猛追する。

1800。
パンサラッサまだ先頭!まだ数馬身ある。
逃げきってくれ。いや!逃げ切れ!!
そう願わずにはいられなかった。
しかし天才が覚醒した。
ゴール前数十mでパンサラッサを捉えイクイノックスが差しきったのだ。

今でもこのレースを何回か見返せばパンサラッサが逃げ切るパターンもあるのではないか。
そう何度も考える。

サムネイルの勝者名は「イクイノックス」。
分かっているのに。理解していても、パンサラッサが粘りきる別世界が存在するんじゃないか。幾度も夢見る。
Twitterではパンサラッサの名がイクイノックスより上位のトレンドに入り、MVPのような存在となっていたが。
勝った世界線がやはり見たいもの。

しかもイクイノックスは、この後日高逃げ馬三銃士の天敵と言える存在になるのである。
このイクイノックスの秋天がなかったら。
パンサラッサは更なる勇名を轟かせ、
タイトルホルダーは年度代表馬となり、
ジャックドールは翌年の秋天で無理なレース運びをしなくても良かったのではないか。

私にとって色々な意味でこの秋天は大きな分岐点であった。好きなレースでもあるが、結果としてイクイノックスがこのレースに勝ってしまったと考えてしまうと。
三銃士を応援している身として複雑な気持ちである。

タイトルホルダーの挑戦と「変化」

タイトルホルダーは凱旋門賞に向けて渡仏した。挑む日本馬は他に、ステイフーリッシュ、2年連続挑戦のディープボンド、この年のダービー馬ドウデュースだった。
道悪適正があるだろうタイトルホルダー。
しかも先行勢優位と見られる凱旋門賞ならタイトルホルダーが頑張ってくれるのでは?例え先行に不利な展開になってもドウデュースら他の日本馬が好走してくれるのでは。と淡い期待を抱いた。

凱旋門賞当日。私は布団に横たわっていた。見たくなかったからではない。風邪で寝込んでいたからである。

結果を知った私は嘆息した。
タイトルホルダー11着。他の日本馬は更に後方での着順であった。
ただてさえ重馬場な上に、レース途中で降雨に見舞われた。何とかタイトルホルダーが直線入口まで先頭で粘ったが、欧州の馬場を苦にしない「ホーム」の馬達には敵わなかった。

翌年のレースでは良馬場であったように、この年も良馬場なら!一部では罰ゲーム扱いされる気持ちが分かる気がした。

こんな結果になった今でも凱旋門賞挑戦は無駄になったとは考えてはいないし、考えたくない。日本の重馬場と欧州の重馬場の違いを強く意識させられたし、後続の日本馬の教訓となるように祈りたい。

話戻って、帰国後有馬記念。ファン投票1位を獲得したタイトルホルダーの走りをもってすれば好走出来ると思っていたが、見返したくないレースになってしまった。
本来のレース運びを見せることなく9着惨敗。
凱旋門賞帰りで実は体調優れていなかったらしく、更に欧州馬場に半端に適応したことにより走法が変わってしまったのが、彼の持ち味が出せず負けた原因だった。
年度代表馬はG1を2勝で並んだものの、秋の活躍でイクイノックスとなってしまった。
タイトルホルダーファンの1人としては、今でも見返したくないレース2位だ。

逆襲の逃げ ~菊花賞馬対決の日経賞~

2023年。タイトルホルダー陣営は春の初戦を大阪杯か天皇賞(春)へのステップレースとして日経賞の二択と考え春天へ向け日経賞を選択。

ここにはタイトルホルダーと同じく弥生賞馬であり、ダービー3着、菊花賞馬アスクビクターモアも出場し、久しぶりの菊花賞馬対決として盛り上がっていた。
凱旋門賞、有馬記念の惨敗からアスクビクターモアに次ぐ2番人気。阪神専用機なんて揶揄されるのは悔しく、私はタイトルホルダーの復活を願っていた。

当日の馬場は重。タイトルホルダーの道悪適正が試される時だ。

スタート。アスクビクターモアが出遅れる中、まあまあのスタートをでハナを決めるタイトルホルダー。番手が割りと近いが関せず、いつも通りのマイペース逃げを続ける。
そして直線。重馬場にもたつく後続を尻目にスパート。後続との距離があっという間に離れていき圧勝!後続との差は8馬身差!タイトルホルダーのこの時のレーティングはG2では最高となる124を記録した。

この時は年明け最高のスタートを切ったと思ったよ。

誰も成し遂げたことのない偉業へ ~世界のパンサラッサ~

パンサラッサとジャックドールは秋天後、一緒に香港カップに遠征。だが慣れない土地、調教過程の違いもあったのか、パンサラッサは何とかハナ取れたものの10着。ジャックドールも先団でレース運べず中団からとなり7着と本領出せずに共に敗北。残念なレースだった。

パンサラッサ陣営が次戦に選んだのは芝レースではなくダートのサウジカップ。パンサラッサは一度日本でダートレースを走ったが、その時は惨敗だったので思わず耳を疑った。
ダートの大一番をダート実績の無い馬で挑もうとするのは無謀な挑戦に思えた。

最内枠を引き当てたパンサラッサだが、パンサラッサ自身は逃げ馬ながらスタートが特段上手くはない。包まれる可能性も大きかった。
パンサラッサ以外の日本馬5頭はダート実績を積んできた馬達であり、異彩を放っていた。
当日の実況ではパンサラッサ含めた日本馬6頭が「Japanese Six」と海外の実況では呼ばれていた。

サウジカップ本番。眠い眼を擦りながら、テレビで観戦する。応援する日本国内でも流石にダート挑戦をネガティブに見る声は多かった。

レーススタート。
過去最高とも呼べるスタートを切ったパンサラッサはそのまま内ラチ1頭分開けて先頭を走る。
番手にジオグリフが構え、直線で少しずつ差を詰めてくる!
残り200m。パンサラッサのリードは1馬身もない。ここで先頭譲るのか!?

いや。ダートであろうとパンサラッサはパンサラッサだった。
残り200切って逆に少しずつジオグリフを突き放す!!
外からカントリーグラマーが猛追する!
あと50!パンサラッサはまだ粘る。まだカントリーグラマーに一馬身半付けている!
もしや!これは!

1着 パンサラッサ 1000万米ドル獲得

今度は同着ではない。文句なしのG1制覇。
しかも日本初の海外芝•ダートG1両制覇という金字塔も打ち立てた。
あんなものを見せられてしまったのだから、目はギンギン。眠気なんかどっか行ってしまった。世界トップ10に入る賞金額のレースをかっさらって行きやがった。何て面白い馬なんだ。
夢を見せてくれる逃げ馬だ。
喜色満面でその日一日を過ごした。

悲願のG1初制覇 ~ジャックドールがG1馬になった日~

日高逃げ馬三銃士のタイトルホルダー、パンサラッサが見事な逃げきりを果たす中で、私はジャックドールも応援していた。

「令和のサイレンススズカ」という異名を持ちつつも、G1の厚い壁が彼の前にあった。

G1初挑戦の大阪杯は無理に競ってしまって自分のペースが刻めず5着。
札幌記念で勝って意気揚々と挑んだ天皇賞(秋)は自分の競馬が出来ず4着。
香港は慣れぬゲートボーイに戸惑ったかスタートが遅れて7着に終わった。

大阪杯は一線級のG1馬がドバイ遠征でおらず、先行優位になりやすいこともあり、千載一遇のチャンス。だがここを獲らなければ、G2番長、善戦マンと呼ばれたまま引退してしまうのではと強く危惧していた。

そして相手もドバイ遠征はあったものの、楽な相手ではなかった。
強烈な末脚を持つ二冠牝馬スターズオンアースを筆頭としたG1馬が複数頭、初のG1獲りを狙う重賞馬達が待ち構えていたからである。
鞍上は香港カップに引き続き武豊が騎乗し、その過程は、香港カップを経て覚醒したサイレンススズカを彷彿とさせた。

スタートは五分五分だが、競り合ってきたノースザワールドがいたが押していってハナを確保。ハナ取った後、少し緩めたように見えた。
隊列が縦長になりながらも1000mの通過タイムが58.9!去年ジャックドールが沈んだハイペースとあって少し心配もしたが、鞍上は正確にタイムを刻める武豊、後ろとの差はそこまで大きくなかったが引き付けているのだと思っていた。

ダノンザキッドが外から襲い掛かる最中、直線入って武豊のムチが動く!
後続に追い付かせないどころか少し差を開く!
残り200。後ろにいたスターズオンアースが馬群を割って爆発的末脚を見せる!
6番手から一完歩毎に差を詰める!
ルメールの息の合った手綱捌きで猛追。
残り50で更に加速!一気に前のダノンザキッドを追い抜き、残りは粘るジャックドールのみ。
ジャックドール粘ってくれと必死に願っていた。
ゴールに雪崩れ込む二頭。脚色はスターズオンアース優勢だが…。ハナ差でジャックドールが逃げきった!!
彼もついに念願のG1馬の仲間入りだ!

1着 ジャックドール 1:57:4
しかもレコードと武豊のG1、80勝目のおまけ付き。
彼の苦労を知っていただけに心揺り動かされた。もうG2番長や善戦マンとは言わせない。
こうしてついに三銃士それぞれ逃げきりでれっきとしたG1馬になったのだ。
また武豊の名騎乗も素晴らしかった。レース後の勝利騎手インタビューで1000mの通過タイムを知らない状況で話していたのだが、計画していた通過タイムとわずか0.1秒しか違っていなかったのである。その上でジャックドールがギリギリ潰れない上で後ろが楽出来ないような消耗戦に持ち込んだのだ。感嘆せざるを得ない。
またジャックドールのコンビが見たくなるレース運びだった。

山、そして谷 ~競馬の厳しさ~

強い馬だと認められる瞬間は何であろうか。
上げるなら人気オッズは1つの基準だろう。だが逃げ馬の名馬は一番人気にはなりにくい。
有名な例がキタサンブラックだろう。
4歳の京都大賞典でようやくの一番人気だった。

日経賞でタイトルホルダーは圧倒的パフォーマンスを披露し、そのかいあってか天皇賞(春)では初めての一番人気に推された。昨年秋は苦しい結果とはいえ、G1•3勝馬。ここ最近の強い菊花賞馬は春天連覇も多いためもあったと思う。
当時の私は世間と同様に史上初の阪神と京都での春天連覇を考えていた一方、何かもやもやした悪い予感も感じていた。そんなのはただの妄想だと払い除けていた思い出がある。
二番人気はルメールの乗るジャスティンパレス。阪神大賞典を勝ち、長距離×ルメール、京都長距離のディープ産駒もあっての支持だった。
また先行勢がやたら多かったのも印象に残った。
タイトルホルダーにとって恵みの雨になるはずだった雨が京都競馬場の改修で重馬場どころかほぼ良馬場に近い稍重に落ち着いてしまったのも良くなかったかもしれない。

レース本番。タイトルホルダーはあまり良いスタートではなかったが逃げ始める。だが思いもしなかった光景がそこにあった。アフリカンゴールドがハイペースに上げて無理にハナに立ったのである。
阪神大賞典でスロー逃げで何とかスタミナを維持して5着。そこをハイペースにしてはスタミナは持たない。能力を無視した暴走逃げと呼べる3200mの長距離とは思えぬ狂気の逃げである。だが後続はスタミナ豊富なタイトルホルダーや先行勢とあってレース前半で直ぐに沈み、タイトルホルダーがハナに立った。

しかしこの流れが前潰れペースを作り、タイトルホルダーの走りにも影響したのかもしれない。
二周目3コーナー手前。
家族でテレビを囲みながらレースを見ていた私は唖然とした。
タイトルホルダーが後退していく。
いや、和生騎手がレースをやめようと手綱を絞ったのだ。
故障発生。 競争中止。
競馬場に悲嘆の叫び声がこだまする。
私は気が動転した。何かの間違えではないか?
夢ではないのか?これが悪夢というなら今すぐ覚めてくれ!!
脳裏には2月の京都記念で競争中止し数日後引退したエフフォーリアがいた。
淀の宝塚で散ったライスシャワーもいた。

頼む!!頼むから死なないでくれ!
予後不良にならないでくれ!大きな怪我にならないでくれ。無事に戻ってくれ!!

結局、この春天では4頭が競争中止や故障発生。トーセンカンビーナがレース後に現役引退した。淀の魔物は改修後もいた。
あの時のレース映像はもう見たくないタイトルホルダーのレース1位。こうして書いているだけでも悲しくなってくる。

タイトルホルダーは右前肢跛行。検査後は筋肉痛と判明し、安全を鑑みて春全休となった。
胸を撫で下ろしたが、23年の宝塚のレースに出れたらとそんな考えが今でも頭をよぎる。


パンサラッサはサウジカップ後、連覇目指してドバイターフかダートの世界最高賞金レース、ドバイワールドカップの両睨みだったが後者を選択。
だが引いた枠は大外で大逃げで世界を制したパンサラッサがマークされないはずもなく、ハナも取れないまま徹底マークを受けてしまう。
流石のパンサラッサもこのマークでは逃げきれず、マークしていた馬達と一緒に下位に沈んだ。
逃げ馬の宿命と言ってはそれまでだが、彼の逃げきるレースをまた見たかった。
また彼の作り出したペースがウシュバテソーロによる日本馬の優勝にも繋がったと思えば無駄ではなかったろう。
その後に海外転戦、欧州遠征プランが発表され胸躍らせたが、急報が入る。
パンサラッサ繋靭帯炎発症。
もう6歳。この年までに大活躍したならもう引退なのか?残念な気持ちと共に復帰は間に合うのだろうかと思った。

ジャックドールは初のG1制覇を経験したことで余裕が出来たのか、初の2000m以外のレースとしてオーナーと調教師、武豊の思惑も一致し安田記念に挑むこととなった。
しかし元々逃げ切るのがかなり難しい府中の安田記念。スタートも最善とはいえず、早いラップで先行抜け出しを狙うも後続に飲み込まれ、善戦するも5着。

続く札幌記念では連覇を狙うも、重くなった馬場が合わなかったのか6着となった。

逃げの矜持、ここにあり ~2023年秋古馬~

光と影が交差した日高逃げ馬三銃士。

一方で昨年年度代表馬となったイクイノックスがドバイシーマクラシック、宝塚記念と連勝。
更なる飛躍を遂げていた。
そんな彼の秋の予定は天皇賞(秋)、ジャパンカップ。有馬記念も場合によっては行く想定だった。

春天以降休養に入ったタイトルホルダーは、生産者の岡田牧雄からオールカマー、ジャパンカップ。ジャパンカップの結果次第で有馬記念へ向かい、その後引退。種牡馬入り予定が発表された。
まずオールカマー。本調子とは言えないながらもまずまずのスタートでハナを切り残り50でローシャムパークに交わされるもガイアフォースらを抑え2着。復帰戦と考えれば悪くない滑り出しを見せた。

パンサラッサは怪我の具合も良くなり、最初はチャンピオンズカップへの挑戦が発表されたが、距離適正を飛び越えたジャパンカップへの挑戦へ変更となった。これにはかなり驚いたが、1円でも多く稼ぐ矢作師のポリシーを鑑みれば賞金額の高いジャパンカップへの挑戦も頷けた。

ジャックドールの天皇賞(秋)

ジャックドールは自身の適正距離といえる2000mに戻り大目標天皇賞(秋)への挑戦が決まった。鞍上はドウデュースに武豊が騎乗するとあってか、藤岡祐介に戻ることになった。
ただ藤岡祐介はG1だと騎乗が消極的になるのか去年の秋天の騎乗も相まって心配される声もあった。
レースは絶対王者となりつつあったイクイノックスがいるとあってか天皇賞(秋)とは思えぬ小頭数の11頭立て。
ジャックドールの能力なら自分以外の有力な逃げ馬不在の中で走ればイクイノックスには勝てずとも上位入線は出来たろう。
より多くの賞金を持ち帰るならそれが一番。
だが藤岡祐介はそれを選ばなかった。
ハナに立ったジャックドールの出した1000m通過タイムは57.7!いつものジャックドールなら59、60秒台。まるでパンサラッサと見紛うペースで飛ばしていく。彼の脚は持たないかもしれない。
だがイクイノックスを打ち倒すべく一縷の望みに賭けたのだ。
しかし予想外なことが起こった。
1つはすぐ番手で着いていったガイアフォースの存在。
もう1つはその2馬身後方で着いてくるイクイノックスである。もうパンサラッサの大逃げの再現はさせないと着いていったのだろう。

直線入口まで先頭は譲らなかったものの、パンサラッサとは逃げのタイプが違ったジャックドール。ここで力尽き最下位入線となった。

勝ったのはイクイノックス。
2000m世界歴代最速となる1:55:2を叩きだし、中距離では敵無しであると見せ付けた。
だがジャックドールがこのレコードタイムの立役者であったことは間違いない。

戦後、この藤岡祐介の騎乗には去年の秋天以上に賛否が別れた。
私は賛否両方の意見ともに理解できる。少なくても普段通りの走りなら最下位にならず賞金も持ち帰れた可能性も高い。この超前傾ハイラップがジャックドールの走りに合ってないのも確かだろう。
だがイクイノックスに勝つため、優勝する可能性に賭けるなら。この藤岡祐介がこの騎乗に賭けたのも分かる気がする。
いずれにせよ挑んだジャックドールはカッコ良い走りだった。

パンサラッサのジャパンカップ

天皇賞(秋)を大レコードで勝ったイクイノックス、悠々と牝馬三冠を達成したリバティアイランドの二強対決となったジャパンカップ。
タイトルホルダーとドバイワールドカップ以来の復帰となるパンサラッサも予定通り参戦した。

パンサラッサは復帰戦で走りはどうなんだ?
タイトルホルダーはそんなパンサラッサに去年の宝塚のように着いていくのか注目していた。

ゲートが開く。
ハナを切ったのはパンサラッサ!番手はタイトルホルダー。その後ろにイクイノックス、リバティアイランドという隊列になった。

パンサラッサにとって明らかに長い2400。
だがそんなのお構い無しとばかりに1000m57.6で飛ばしていく!タイトルホルダーが着いていかなかったため、差がどんどん広がり10馬身以上広がる大逃げの形に!まるで去年の秋天である。

だが直線入るころには減速し始め、エンジンに火が付いたイクイノックスにあっという間に抜け去られ、12着。
タイトルホルダーはイクイノックスらに交わされるも、ダービーより高い着順の掲示板内5着。
勝ち馬らに圧倒されてしまったが、
パンサラッサは最後のレースまで大逃げという自分のレーススタイルは崩さず戦ったのだった。

そしてこれを最後として引退発表。奇しくもイクイノックスもこのレースで引退となった。

タイトルホルダーの有馬記念

先のジャックドール、パンサラッサが己の挑戦、矜持を見せた秋古馬レース。
タイトルホルダーはジャパンカップの結果も踏まえ有馬記念参戦を発表。同時に有馬記念後に引退式挙行も発表された。

前走では、全盛期のようなスタートでなくなっていること、宝塚記念のような走りをしなかったことや5着はあまり評価されず、中山でも好走歴があるのにも関わらず6番人気となった。

2年前の有馬は大外16番、去年も外枠13番とあってあまり有利な枠順は引けていなかった。
枠順抽選会。抽選したのは和生騎手ではなく栗田師。引いたのは2枠4番。
逃げ馬のタイトルホルダーにとっては絶好の枠だ。

私は有馬記念は現地観戦した。
乾燥した冬空の元、数万人が押し寄せた中山競馬場。
私はタイトルホルダーの逃げきり勝利を祈ってゴール板前の最前列から10m離れた場所で人混みの中で両手を組んでいた。あの時は一分一秒がかなり長く感じた。
あと○分でタイトルホルダーの最後のレースが始まり終わってしまうのだ。もう彼の走りは見れなくなる。
どうか無事で。無事で上位に。無事な上で逃げきりで勝ってくれ。何度も何度も脳内で一心に祈る。

地下馬道から出走馬が出てきた。タイトルホルダーもそこにいた。返し馬あたりでチャカついていたのを覚えている。

返し馬が終わり体感で何十分も経ったころ、枠入りが始まった。心拍数が上がる。
もうすぐ始まる。もうすぐ終わってしまう。
スターターが壇上に上がる。
ファンファーレが鳴り響く。
続々とゲート入りする各馬。

そして。


レースが始まった。


タイトルホルダーは少し出遅れた。だが横山和生がガシガシ押していきハナを取る。
二番手は大外から過去一のスタートを見せたスターズオンアース。

タイトルホルダーはハナ取った後も大きく緩めず、番手のスターズオンアースがそこまで着いてこなかったこともあって、まるで大逃げのような形となった。
1頭だけ猛然と先頭を進むタイトルホルダー。
向正面では8馬身はついていただろう。
3コーナー。後続が一気に差を詰めてくる。
少しでも脚を貯めて菊花賞のように直線で差を広げてくれ!勝ってくれ!

直線。4コーナーまでに大分差を縮められたがまだ1馬身半差ほどある。
私は両の手を強く握りしめひたすら「勝ってくれ!勝ってくれ!」と尚更強く無心で考えていた。
残り200m!まだ先頭!残り150m!まだ先頭!
だが残り100m。坂の頂上付近で一気に差を詰められる。観客席からタイトルホルダーが逃げきれないと示すかのごとく女性の悲鳴が上がる。私も負けを感じた。

武豊のドウデュースが復活の優勝。大外からあわやの優勝に手が届きかけたルメールのスターズオンアースが2着。

そして3着。際どい判定となった。
写真判定となった。
3着は…タイトルホルダー!!
会場から拍手が起こった。4着の武史のジャスティンパレスとは僅かな差だが先着し、先輩天皇賞馬としての意地を見せ付けたのだ。


レース後、引退式は最前列に近い所で見れた。
ターフビジョンに映し出されるタイトルホルダーの輝かしい戦歴。地下馬道から出てきた彼は宝塚記念の馬着に身を包み二人引きで現れた。
引退式に参列したのは、山田オーナー、横山和生騎手、武史騎手、栗田調教師、生産牧場の岡田壮史氏たち。

和生が今回の有馬記念に対して悔しかったと言いつつも全力を出しきったと言った所は覚えている。

引退式の最後の締めは忘れることはないだろう。
山田オーナーがタイトルホルダーの産駒にもちろん和生や武史が乗ってくれるよね?と茶目っ気っぽく確認した後、こう締めた。
「いつまでもいつまでもこの馬の名を忘れないで下さい!その名はタイトルホルダー!」。

彼は有終の美を飾ることは出来なかった。
だけど彼の最後の走りは彼らしい全力投球の逃げを魅せてくれた。
彼の名前はタイトルホルダー。最後の最後までその名に恥じぬ走りで記憶にも記録にも残る馬になったのだ。忘れることなど出来まい。

三銃士三者三様、颯爽と

最後に彼らのその後に触れておこう。

タイトルホルダーとパンサラッサは年明けに競走馬登録を抹消。

パンサラッサは本来有馬記念の少し前に引退式の予定だったが感冒により年明けに延期。
引退式ではブルーノ・ユウキの「パンサラッサの歌」の観客席も一体となった合唱があった。 
タイトルホルダーとも違うパンサラッサらしい引退式だった。

タイトルホルダーは初年度350万円でレックススタッドに、パンサラッサは初年度300万円でアロースタッド兼オーストラリアへのシャトル種牡馬としてスタッドインしている。

タイトルホルダーはウインマリリンとの日経賞制覇カップルも予定されているそうだ。

ジャックドールは2024年7月現在も現役を続けている。
春は大阪杯連覇やドバイ遠征も狙ったものの右前浅屈腱炎で長期療養中。秋での復帰を目指している最中だ。

終わりに

いかがだったろうか。
三頭とも違う走り、違う個性ながら王道中長距離を引っ張るレースを魅せ、日本史上まれに見る逃げ馬の時代を現出させた。

大きな牧場ではない日高の中小牧場でありながらそれぞれファンに夢を見せてくれた。
ここまで逃げ馬に脳焼かれることは初めてだった。

タイトルホルダー、パンサラッサは引退してしまったが、私はジャックドールの復活が待ち遠しい。
大阪杯や天皇賞(秋)での走りを心待ちにしている。

また次世代の候補として、毎日杯をレコードで逃げ切ったメイショウタバルが逃げ馬として大成するのではと密かに期待している。

私は彼らの走りを忘れず伝えていきたい。
強い逃げ馬が大活躍する時代があったと。
日高逃げ馬三銃士という存在が日本競馬に燦然と輝く逃げ馬であったと覚えておいてほしい。
希望を見せる。夢を見せる。勇気を見せてくれた走りがここにはある。

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