キャラクターを活かした殺陣の作り方

先日現場で、とあるモーションデザイナーさんから「殺陣をどうやって作れば良いか分からず、悩んでいる。」

と、相談をしていただきました。

なるほど、確かに難しいですね。ルールなんて特に無いとは思いますが、せっかく作るのなら魅力的なシーンにしたいですものね。

え〜、本題に入る前に一つ保険を張らせてくださいww

殺陣は殺陣の方々の矜持があり、ファンタジーまで幅を広げてしまうと誤解を招いてしまう可能性もあるので、ここでは「バトルシーン」という風に表記させていただきます。
日本刀だけではなく、鞭も銃も、果ては魔法も出て参りますのでww

さて、自分の考えでは、バトルシーンではキャラクターの魅力を伝えたり、起たせたりするものでなくてはならないと考えています。

尊敬する先輩が言ってました。
「アクションシーンは、その気になれば全てをパンチ一発で終わらせてしまうことが出来る。 でもそれでは面白くないから、いかに膨らませて大盛りにしてあげるのが我々の仕事」

いやもうおっしゃる通りです。
聞いたとき、とても納得しました。
わざわざバトルシーンに予算と時間をかけるのであれば、バトルシーンがあることでキャラクターの価値が上がったり、魅力的になるよう演出・振り付け・お芝居をしないともったいないですね。


かっこいい振り付けや剣のやり取り、アクロバットなど派手で目を引くアクションが沢山入っていれば良いのかと言われると一概にそうとは言えないと思っております。

その為のアプローチ方法は色々とあると思いますが、、自分のお気に入りの方法を一つご紹介させていただきます。
シーン、カット、流れの中で、立たせるキャラクターを一人に絞ってしまうという方法です。

バトルシーンでは「芯」と「からみ」という言葉があります
「芯」は主役、「からみ」は芯を立てる役のことです。
バトルシーンは、この2つの共同作業で成り立っております。

これは1対1でもです。
ずっと二人ともカッコよく魅せようとすると、ドツボにハマりますww


作品の全体像やシーンの前後をしっかりと把握して、そのバトルシーンでメインとなるキャラクターに何をさせると引き立つか。まずそれを考えます。

芯の魅せたい振り付けが決まったら、もう一方のからみはその動きを引き立てる為のからみとなります。
芯のターンが終わったら、今度はからみをやってるた側が芯となり、そのキャラクターが映える振り付けを考えます。最初に芯をやってた方はからみになります。

基本はこれの繰り返しで、攻防を魅せられます。
そのキャラにどんなポーズをさせたり、技を繰り出させたいか。
それは激しいか流れるようにか、熱血がクールか、重い一撃なのか連打か、必死なのか余裕なのか、躍動感か渋みか??
ファクターは数多くありますが、キャラクターに合わせて適切な表現を採用し、魅力的に振り付けます。

基本的に、我々の目は複数のものを同時に追いかける事は難しくないでしょうか?
全体を見ているつもりでも、いつの間にが誰が一人を追いかけてませんか?
そのカットで、見て欲しいキャラクターにしっかりフォーカスされるように誘導出来れば良いと思います。
もちろん、後で繰り返し見て下さるコアな方に向け、もう一方の動きに楽しみを仕掛けておくのも大事なサービスですww

(モーションアクター仲間達と、NieRで遊んだときの写真ですww
写真だとこうやってそれぞれ細部まで見てもらえますが、動画ではそうはいかないので狙いを絞ります)

私は、メインキャラクターに対して敵が攻撃してくるというのは、製作者側からの愛のある意地悪だと思っています。
その困難を、キャラクターはどう切り抜けて目的を達成するのか。
そして目的を達成したキャラは、それまでよりも一段とオーラや説得力や価値を纏った存在になっている。

バトルシーンは、こんな風にキャラクターや作品に対して力を発揮できるものでありたいと、個人的には考えています。 もちろんそればかりではありませんけどね。


自分がお客の場合でも、ただただカッコいい動きを延々キンキンカンカンと見せられても、後で何も印象には残ってません。 
「あのとき、あのキャラクターはこんなことをしてた!」
と、後で話題にのぼるシーンをつくりたいものです。(これがまあ難しいのですが^^;)


関係ないですが、こういったバトルシーンでなくても何かを引き立てるのが得意な人って素敵ですね。
憧れます。
映画だったら主役を、CMだったら商品を、組織だったらキーパーソンを。

キャスティングするアクターさんも、お世話になるスタッフさんも、感謝を伝えてその方の価値をしっかり伝えられる。そんな存在を、私も目指したいです。

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