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モーションの初動について④ 無拍子の初動

初動の最後です。

先日書かせてもらった様に、スタンスの方向によって動きやすい方向が限定されてしまいます。
動きにくい方向に最速で動き出すためには、自ら強制的に支点を設置しに行かなければなりません。

ではそれを一瞬で行うためにはどうすば良いでしょうか?
色んな分野で色んな表現方法をされてるとは思いますが、例えば古武術では「抜き」、フィールドスポーツでは「スプリットステップ」と呼ばれている技術を使います。


私の表現方法だと「無重力になる」となります!


まず、立ってる状態から両足を均等に垂直離陸させます。
重力によって重心が落ちていくスピードよりも早く足を曲げて、一瞬宙に浮いてる状態を作ります。
このとき自分でジャンプをしていけません。
ジャンプしようとすると膝曲げて伸ばすという余計な2工程が発生します。これでは動きを読まれてしまいます。
テーブルクロスが引かれたかの如く、急にストンと落ちるように行います。


さあ垂直離陸が成功し、無事に重力から解放されたあなたは自由ですww
その一瞬は、体は色んな意味でやりたい放題なので、その隙に進行方向とは逆の位置に足(支点)を置きます。

そうすると重心である腰は進行方向に倒れていきますので、遅延なく足を送っていきます。
もちろん、支点の位置が遠ければ遠いほど(傾斜が大きいほど)素早い動きだしが可能になります。

これだけです。体にとてつもなく負荷はかかりますが、ちょっとコツを掴むと誰でも出来ると思います。大したことではありません。

でも大変なのはここからなのです。
急に高スピードで動き出す体を完璧にコントロールするというのは、実はとっても難しいのです、、、

ここから攻撃動作を行うにしろアクロバットを行うにしろ、タイミングや歩幅、角度がズレただけでスムーズな動きにはつながりません。つまりは使えるデータになりません。

例えばですが、器械体操や走り幅跳びなんかは、しっかりと助走をとってその間に徐々にエネルギーを大きくさせていき、同時にリズムも作り上げて、最後の最大パフォーマンスにつなげます。


しかしモーションアクター、特に戦いのシチュエーションでは相手はそんな時間待ってはくれません、対策されてしまいます。
なので、武術家のような隙のない状態から、一瞬である程度の大技に繋げる必要があるのでコントロールがめちゃうちゃむずかしいのです。(だって求められるんですもん、仮想現実の世界では^^;)

このコントロール方法を、自分では勝手に「ゼログラ法(ゼログラビティ運用方法)」と呼んでます。
別に現場で説明したことはありませんが、ほぼ全ての撮影現場で使ってます。

それが出来ると待機ポーズ(それぞれのキャラクター固有の立ちポーズ)から一瞬でダイナミックなアクション・アクロバットを演じることが出来ます。

急発進なので、動きながら調整などといういう、生ぬるいことは言ってられません。
動き始めた瞬間に決まってしまいます。
いや、なんだったら「ヨーイ、スタート」が始まる前です。
動くまでもなく演技は最後まで完成しているような状態でないと成功しません。

予定外の何かが起きない限り、ほぼミスはあり得ないです。


これを可能にする為、モーションアクター達は日夜トレーニングに励んでおります。


この仕事は、何度でも同じことが出来る「再現性」が重要だと言われていますが、それを可能にする裏付けが少しお分かりいただけますでしょうか?^^


格闘技やスポーツの中にはフットワークを大事にするものも沢山ありますね。
私も許される状況であれ色んなフットワークを使用します。
その間にリズムを整え、目的に適した状態を作り、筋肉のバネにも助けてもらって動きやすい状態を作れますので大好きです。

ただ個人的には過去にも書かせてもらいましたが、結局は自然体で立っていることが一番有効だと思っています。なんの作戦も読まれず、リラックスして立っていられる。
その上で、上記のように素早く動く術を持っていれば良いわけですから。

(実際のモーションキャプチャー撮影では、動き出しで足がバタつくのを好まないディレクターの方が多いので、調整はします。)

こうするとさまざまな待機ポーズからファンタジーな技に繋げられます。
実際に、ポケットに手を入れて突っ立ってる様な状態から一瞬で前方宙返りなど、まずありえない(というか必要ないww)ようなことも可能です。機会があったらお見せしたいですが。

このような無拍子のアクロバットや無拍子の技は沢山あります。
モーションキャプチャー撮影用に開発しました!!v

(緊急回避ww)

逆に仮面ライダーウィザードにはこの理論は使えないのです。
理由はまたいつか。

無個性、無色、無重力、無拍子など、無がつく言葉にはここから何にでも染まれるという、白帯のように可能性に満ちてる感じがして好きです。

どこまでいっても永遠に白帯でありたいと思っております。

(あ、無職だけはけっこうです…ww)

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