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望月慎の経済学・経済論 第一巻

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(「経済学・経済論」の2017年6月~2017年9月の記事をまとめたものです) 財政破綻論批判、自由貿易批判、アベノミクス批判から通貨論(金融システム論)、ケインジアンモデル概説… もっと読む
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#労働

イノベーションは私たちの生活を必ずしも豊かにしないかもしれない、という話

イノベーション、ないし技術革新という言葉は基本的に肯定的な意味で使われていると思います。 実際、私たちの生活が昔に比べて豊かなのは、間違いなくイノベーションのおかげです。 しかし、「イノベーションが私たちの生活を豊かにできる」という事実は、必ずしも「イノベーションが私たちの生活を”必ず”豊かにする」ということを意味しません。 昔、産業革命下のイギリスでは、手工業者が織物機械を破壊して回るというラッダイト運動が猛威を振るいました。それは明らかに産業革命というイノベーション

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自由貿易の栄光と黄昏

自由貿易それ自体を非難することは、経済論議上、事実上のタブーとなっています。 実際、日本で名の知れた経済学者の中で、公然と自由貿易を批判した人はほとんど居ませんし、世界レベルでも少数派です。 数少ない批判者も、その多くは「自由貿易が全くダメというわけではないけれども……」といった及び腰の批判に終始する人々が大多数です。 一方で、いわゆる経済学者以外では、自由貿易それ自体への批判は珍しくありません。尤も、反自由貿易を唱えた瞬間に『素人』レッテルを貼られて議論の場からの退場

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JGP(一定賃金雇用の無制限供給)は経済を救えるか

現在、日本経済は1990年代から続く20年来の不況(長期停滞)に悩まされています。 世界経済も、リーマンショック(世界同時金融危機)の余波を未だ脱し切れてはいません。 また、仮に今後こうした不況から脱することが出来たとしても、脱するまでに多くの人々が経済的被害を受けたことは払拭できません。 なぜ不況は起きるのでしょうか。 ミンスキーの金融不安定性仮説にもあるように、金融資本主義経済は、「バブルとその崩壊」というサイクルを不可避的に持ちます。あるバブルの崩壊を別のバブル

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ケインズ経済学モデル概説…IS-LM、マンデルフレミングモデル、AS-AD

「ケインズは死んだ」と喧伝されるようになって、既に長い年月が経過しています。(ロバート・ルーカスが『ケインズ経済学の死』というスピーチをしたのは、1970年代のことだそうですので、死が宣告されてから実に40年もの年月が経過していることになります) ケインズの死として表現される事象には色々なものがありますが、大まかに言えば 「『名目総需要が経済において問題になる』という考えが、新しい理論において否定された」 「したがって、金融財政政策が経済に対して有効であるという考えも否

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雇用増加の下でも賃金が停滞する理由

安倍政権への政権交代が起きる前後(2012年末頃)から、雇用量については大幅な改善が見られています。 (アベノミクスで雇用が増えたと言えるのか?より引用) (労働力調査(基本集計)平成28年(2016年)平均(速報)結果の要約より引用) ただし、その一方で、賃金(実質賃金)は下落・停滞傾向です。 (島倉原氏のTwitterより引用) 尤も、実質賃金の場合は、新規雇用者が増える場合、(一般的に、新規雇用は既存雇用に比べて賃金が低いので)全体の(平均)実質賃金に低下圧力

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