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ブロックチェーンの神々

まず一つ、アンタにハッキリ言っておくと、この俺、赤坂悠斗の最終目標は神になることだった。

ただ、神と言っても天地を創造する超常的な存在でもなければ、運動や芸術の天才を表す修飾語でもない。信じるものの心の拠り所であり、いつも正しいことを言って、どんな時も見守っていてくれる。そういう奴のことだ。

分かりやすく言い換えるなら「世界中の人の親友」ってとこだろう。少し意味合いはズレるが、誰かに夢を聞かれた時は表向きそう答えてたし、アンタの理解も今はそれで構わない。

神へと至る道は、まあ、当然、険しかった。だから俺はガキの頃から計画を練ってた。資金の確保や人材の調達、困難への対処や不慮の事態のリスクまでな。所詮はガキの計画、大部分は現実に塗りつぶされたが、計画を立てた事実はいつも俺の背中を押してくれた。

それに実現したものもある。大学卒業と同時に起業したのがそれだ。神になるための資金稼ぎにな。当初の従業員は一人。それも幼なじみの阪倉朱美だけだった。気が強くて、俺に口出しばかりで、だからこそ側に置いておきたかった。だが、アイツはいつも……すまん、話が逸れた。会社が取り扱うのは、当時法的な整備が始まったばかりの仮想通貨だ。

仮想通貨。分かるか? アンタには曖昧なイメージしかないかもしれない。当時の俺にもなかった。ただそこに可能性が、希望も絶望も含めて広がってることだけは理解してた。俺たちは常に手探りで進み続けた。これから話すのは、その道の先で俺たちが選び、掴み、翻弄され、得たものについてだ。

だけどその前にもう一つだけ、アンタに教えておかなければいけないことがある。この話の終着点についてだ。

結論から言うと、赤坂悠斗は神になった。阪倉朱美も同じくだ。けれどもそれは、俺たちの望んだ形ではなかった。……意味が分からないって? 大丈夫。俺の話を最後まで聞けば、嫌でも分かるからさ。

【続く】

それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。