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【声劇台本】我ら、ハッピー盗賊団!

登場人物(男:1、女:5)

・チセ/男
義賊の様な事をしているハッピー盗賊団のリーダー。頭の回転や口の回りが早く、時として冷静。偽善だと思われる事が嫌い。

・ミランダ/女
ハッピー盗賊団の魔力量の多い魔法使い。お淑やかでお上品。元一国のお姫様。

・アルト/女
ハッピー盗賊団の自称バーサーカー。剣術にかなり長けた負けず嫌いな無口な少女。

・エレイナ/女
フリージア王国の若き王女。無邪気で明るい性格だが、女王であった母を亡くし、国の未来のために迷っている。

・ユリエ/女
エレイナの友人でもあるフリージア王国の騎士団長。正義感が強く強気な性格。エレイナを誰よりも想っている。

・ドナ/女
フリージア王国の副大臣。初老の女性で冷酷な性格。国政に積極的でエレイナを影から操っている。

サブキャラクター(兼ね役可能)
・女1
・女2
・男1
・男2
・子供1/男
・子供2/女
・騎士1/男
・騎士2/男

【時間】約1時間
【あらすじ】
剣と魔法の世界。そこで、悪者から金品を巻き上げ、貧しい者たちに分け与えると言う事をする義賊集団、ハッピー盗賊団なる者達がいた!旅を続ける彼らの前に行き倒れた女騎士が目に入った。彼女を助けると、彼女はハッピー盗賊団を探していたと言う。彼女はハッピー盗賊団にお願いした「我が国の秘宝を盗んでくれ」と。




チセ「我らは泣く子も黙る最高最強の盗賊団!」

ミランダ「各地を旅して金品を強奪するの!」

アルト「悪い事だって?そんなの承知の上…だけど、それだけじゃない」

チセ「俺達のターゲットは悪い金持ちばっかなんだ…。そいつに搾取された人達に奪った物を返す!それが俺達…」

ミランダ「ハッピー」

アルト「盗賊団」

チセ「リーダー、チセ!」

ミランダ「魔法使いミランダ!」

アルト「バーサーカーアルト」

チセ「3人合わせてハッピー盗賊……あれ、ハッピー盗賊団って言うのこれ2回目になるな」

ミランダ「あら、チセ君今気づいたの?」

アルト「ダサい」

チセ「気付いてたなら言ってよ〜…。ミランダもアルトもそう言う所薄情じゃない?」

アルト「気付かないチセがバカ」

チセ「ストレートに言うじゃないかー?おー?やるかぁ?やるかぁ!?」

アルト「返り討ちにする」

ミランダ「もう、喧嘩しないの!今日はフリージア王国まで行くんでしょう?そろそろ休憩も終わりにして出発しましょう」

チセ「はーい」

アルト「ミランダ、魔法で物片付けて」

チセ「おい魔法を無駄遣いさせるなよ」

ミランダ「綺麗にな〜れ〜ルラララ〜♪」

アルト「ありがと、よし行こう」

チセ「魔法の使い所ちげーって絶対ー!」

三人、道を歩く。

ミランダ「そういえば、フリージア王国って入国の問題ないの?」

チセ「ちゃんと調べ済さ。小さい国だしそこまで厳しくないって聞いたよ」

アルト「………ん?あれ何?」

チセ「え?」

ミランダ「あら…道の先に何かあるわ」

チセ「野生動物の糞かなんかじゃないのー?」

ミランダ「それにしてはサイズがおかしいわよ。…あれ、人じゃない?」

アルト「本当だ、人が倒れてる」

チセ「……はーー!?おいおいおい!助けないと!」


倒れてる人に駆け寄る三人。

ミランダ「もしもし、大丈夫ですか?」

ユリエ「う…うぅん……」

アルト「女性だ…何か鎧着けてない?この人騎士かな」

チセ「だね…。おーい、大丈夫?喋れますかー?」

ユリエ「は……」

アルト「は?」

ユリエ「腹が……へ…った……」

チセ「……」

ミランダ「お腹空いたの?待ってね、さっきのお昼ご飯が余ってるからそれをあげるわ」

アルト「あー、それうちが後で食べようと思ってたおやつのりんごー!」

ミランダ「大丈夫、アルトちゃん。これはチセ君の分」

チセ「おい!」

ユリエ「か、かたじけない……!くぅ…三日ぶりの食い物だぁ…!」

チセ「…あんた見た所騎士か?何処の国の者だ?何で一人で行き倒れていたんだ…」

ユリエ「…馳走になった。感謝する。……私の名はユリエ。フリージア王国王女、エレイナ様側近の騎士だ」

チセ「フリージアって、これから俺達が向かう国じゃねぇか!」

ミランダ「しかも王女様の側近の騎士様!?そんなお方が何故行き倒れに…」

ユリエ「私は王女の為に持ち場を離れ、ろくに飲まず食わずである人物達を探していた。だが、見つからず諦めて国へ戻ろうとした矢先…限界が来て行き倒れてしまったのだ…」

アルト「誰を探してたの?」

ユリエ「悪から物を奪い、弱き物達に施しを与える義賊集団」

チセ「え?それ……」

ユリエ「ハッピー盗賊団」

アルト「うちらじゃん」

ユリエ「え…」

チセ「我らは泣く子も黙る最高最強の盗賊団!」

ミランダ「あ、ユリエさんお水飲まれますか?」

チセ「おいやれよぉ!ここはやる所だろうが!」

ユリエ「すまない…。しかし君らが盗賊団?想像と違って驚いている…」

アルト「てか思いの外名前が広がってるね」

チセ「人は殺してないが俺達の強奪方法って派手だしね、名前を隠してる訳でもないし。で、俺達に何か用?」

ユリエ「……場所を変えよう。城下町には私の住む家がある。そこの方が身を隠せるし話がしやすい」

ミランダ「どうする、チセ君?」

チセ「……王女側近の騎士なら入国も問題ないだろ。訳ありみたいだし着いて行こう」

ユリエ「助かるハッピー盗賊団!」

チセ「俺はチセ、彼女達はミランダとアルトだ。…でも俺達を嵌めようとなんて考えてたら…半殺しにしてでも逃げ出して報復を考えるからな?」

ユリエ「も、勿論そんな事はしない。何より我が王女の為だ…」

チセ「なら良いけど…」


王国内、ユリエの家。

ユリエ「ここが私の家です。一人暮らしなので広くはないですが、そこのソファにでも座って待ってて下さい。紅茶をお淹れします」

チセ「…本当にあっさりと入国出来たな」

ミランダ「入国の際もユリエさんの知り合いと言うだけでそのまま通してくれたものね」

アルト「逆に大丈夫?この国」

チセ「…ま、もう少し様子見だね」

ユリエ「どうぞ、紅茶です」

ミランダ「ありがとうございます。あら、とても良い香り」

ユリエ「この国特産の茶葉なんです。王女もこちらの紅茶が大層お好きで…」

チセ「え!?王女様が飲むような紅茶!?めっちゃ高いんじゃねぇのか!?」

ユリエ「いえいえ、そんな事は御座いません。こちらは一般の家庭にもあるような茶葉です。…でもエレイナ様は私がこっそりあげたこの紅茶がお気に入りなんです」

アルト「随分庶民派な王女様なんだね」

ユリエ「……エレイナ様はとてもお優しいお方なんです。ですが……」

チセ「…王女の為って言ってたね。一体どんな頼み事だ?俺達は盗賊団であって何でも解決してくれる便利屋じゃねーぞ?」

ユリエ「分かっています。ハッピー盗賊団様、折り入って頼みたい事があるのです」

チセ「…何?」

ユリエ「我が国の秘宝、真紅のコウセツランと言う宝石……それを盗んで欲しいのです!」

ミランダ「国の秘宝を…」

アルト「盗む?」

ユリエ「報酬は、その宝石と私が出せる物全てをお渡しします」

チセ「……」

ミランダ「一体どう言う事ですか?」

ユリエ「実は……」


玄関の扉が叩かれる。

アルト「ん?玄関叩かれてるよ、誰か来た?」

ユリエ「はい、誰でしょう?」

ドナ「ドナです、ユリエ。先程貴女が帰国したと門兵から報告がありました。話があるので扉を開けなさい」

ユリエ「…ドナ、副大臣……少々お待ち下さい。……御三方、申し訳ありませんがそちらの奥の部屋に身を潜めて頂けませんか?」

アルト「何で…?」

ユリエ「それは、後でご説明しますので…お願いです。早く…」

チセ「ミランダ、アルト…従おう」

ミランダ「え、えぇ…」

アルト「うん…」

ユリエ「申し訳ない……。…お待たせして申し訳ありません、ドナ様。すぐに開けます」

扉を開ける。

ドナ「私を待たせるとは何事でしょうか?」

ユリエ「すみません…、戻ったばかりなので、荷物がちょっと……。それより何故ドナ様がわざわざ私の家に?」

ドナ「王女の近衛兵…その貴女が数日の暇を出したと思ったら、理由も告げず国を離れてどういう考えなのか直接聞こうと思いまして」

ユリエ「それが私の家に来た理由ですか。私が王女のそばに居ないなら、貴女も不用意に離れるべきではないのでは?」

ドナ「……、中に入れて貰えませんか?もう少し話があるので」

ユリエ「…城に戻ってからではいけませんかね。部屋が片付いていませんし……」

ドナ「私を部屋に入れたくなさそうですね」

ユリエ「……はい、明日には城の警備に戻るので、時間がある時にドナ様の下へ向かわせて頂きます」

ドナ「……ふん、何を考えてるかは分かりませんが、お前が国の為に出来る事は命を張って王女様を守る事のみ…余計な事は考えない様に。それでは失礼します」

ドナ、去る。



ユリエ「………っち、あの狐ババアが…!」

チセ「あの女性は何者だ?」

ユリエ「チセ殿…。…ドナはこの国の副大臣で、国の政権を影で握ってる性悪女です」

アルト「嫌な奴?」

ユリエ「王女の母である女王様が病で亡くなりもうすぐ2年…。政策に積極的であった女王の代わりに指揮権を握ったのがあの女…、王女が若いと言って良いように使っているんです」

チセ「政策はどの様に変わったんだ?」

ユリエ「国の政策に関しては亡き女王派がドナ達と意見が割れています。しかし、前と比べて納税額が上がりました。他にも貧困層への厳罰が行われたりと……、このままではこの国は変わってしまいます。王女が女王としてこの国を統べる前に…国の実権が完全にあの女の手に渡ってしまう…。私は……女王様に頼まれたのに……国を、エレイナ様を……」

ミランダ「ユリエさん……」

チセ「はぁ…」

ミランダ「どうするの、チセ君」

アルト「うちらはリーダーの意志に従う」

ユリエ「お願いです、チセ殿!…フリージア国の城に眠る国の秘宝コウセツランが盗まれれば、実権を担っているドナは責任を問われ副大臣の地位を失う。近くの国であなた方の目撃情報があった事を聞き、私はずっと探していたのです!お願いします!お願いです!」

アルト「……チセ、ここまで言ってるんだし」

チセ「少し考えさせてくれ」

ユリエ「そんな…」

チセ「正直国の問題に俺達を使う事がおかしな話だ。俺達は財宝を好きで盗んで好きで貧困層へ流してる。それで偽善だの義賊だのを言って来るやつは何人もいる。…だから頼まれたらやるって?そんな訳ない。俺達が好き勝手にやってる事を他人に指図されたくない。だから動くか動かないかは俺達が勝手に決める……紅茶、ありがとう。行こうぜ、ミランダ、アルト」

ミランダ「あ、チセ君待って!」

アルト「チセ……ごめんユリエさん、あいつ頑固なんだ」

ユリエ「……いえ、話だけでも聞いて頂きありがとうございました…」

三人、外へ出る。


外。

アルト「ねぇ、本当に良いの?ユリエさん困ってたよ」

チセ「知るかよ」

アルト「ドナって女は悪そうなのに…助けないの?」

チセ「だからさ、俺らが今まで誰かに頼まれて動いた事あったかぁ!?俺らのターゲットはタチの悪い貴族や悪どい商売してる奴等だ。そいつら相手に俺達が盗みを働いて、貧しい人達に配ってるだけ。あくまで俺たちは自分勝手に動いてる。それに対して勝手に感謝されてるだけだ。…でも今回はたいした証拠もないのに盗みを働くなんて俺のポリシーに反するね。ハッピー盗賊団は偽善者でも義賊でもない。それはあくまで結果であって、俺達は盗賊だ」

アルト「そう……だけど」

ミランダ「アルトちゃん、きつい言い方かも知れないけどチセ君は迷っているのよ」

チセ「余計な事言うな。ミランダ」

ミランダ「ごめんなさい、でも…チセ君は私が出会った人達の中で一番優しい人だから…。私は貴方の事を信じるのよ」

チセ「……とにかく、国を回ってみよう。必要物資を揃えないといけないだろ」

ミランダ「そうね…ついでに国民の方々に王国の評判を聞きましょうかね」

チセ「…俺の言葉の裏を取るの止めてくんない?」

ミランダ「素直じゃないんだから、チセ君は」

アルト「本当変な奴」



女1「王女様?お優しい方よ〜、よく外出しては国民と交流をしてたわねぇ。亡き女王様にそっくり」

女2「あんまり王女様っぽくはないかな?そうそう、昔の事なんだけど、動きやすいドレスだからって子供達と泥んこで遊んでんだよ!あれは笑ったね〜」

男1「国民の事を考えた政策にしたいと言ってたよ。女王様が望んでた国作りをするって…女王様が亡くなった後のあのスピーチは痺れたね…」

子供1「エレイナ様?優しくて大好き!美味しいお菓子をくれて僕達と遊んでくれるんだ!でも、最近は……」

男2「最近はお忙しいのですかね?あまりお姿をお見かけしませんし、税金も上がって…やはり王女様はまだ若いですから…、国政は難しいのかもしれませんね…」


チセ「………ふむ」

ミランダ「やっぱり王女であるエレイナ様は心根の良い方らしいわね」

チセ「ま、国の政策に子供が手を出して上手くいく訳無いんだよな。いくら発言をしても周りの大人が上手い事やらないとダメだ」

ミランダ「では、どうしましょう?」

チセ「動くには弱すぎ…物資調達が済んだらこの国を出よう。ユリエさんの知り合いって事で入って来たんだ。下手な事して監視される羽目になったら面倒臭い」

アルト「だね…。でも、動かないのは何だかむず痒い…」

チセ「動かないんじゃなくて動く要素がないの。俺達は悪党だぞ」

アルト「うん…」

チセ「さっさと行くぞ、ミランダ、アルト」



エレイナ「貴方達!」

チセ「は!?」

エレイナ「やっと見つけましたわ!国民の方々に私の事を聞きまくってると言う怪しい三人組を!」

チセ「フードで顔見にくいあんたの方が怪しく見えるが……ってか私の事を聞きまくってるって……え!?…もしかしてあんた…」

エレイナ「フリージア王国王女、エレイナですわ!」

ミランダ「まぁ、貴女が?…お初にお目に掛かります、私、魔法使いのミランダと申しますわ」

エレイナ「え、あ、…ご丁寧にどうも…」

アルト「何で王女様が街にいるの?護衛は?」

エレイナ「しー!私は今お忍びで、一人で街に来ているんです!あまり大きな声は出さないで下さる!?」

チセ「あんたが一番声でけーよ」

エレイナ「あら失礼」

子供1「あ、王女様だー!こんにちはー、遊びに来たの?」

子供2「王女様ーこの間くれたお菓子美味しかった!ねぇねぇ遊びましょう?」

エレイナ「御免なさい、今はちょっと忙しくて…。また今度遊びましょうね」

子供1「王女様最近忙しそうだよね…。分かった、またね!」

子供2「遊ぶの約束だからねー、ばいばーい」

エレイナ「ばいばーい」

チセ「…は?」

エレイナ「失礼、子供達が元気なばかりに……それで、貴方達は何で私の事を聞き回ってたのかしら?」

アルト「マジでめっちゃ良い子っぽいね」

チセ「あー、何か調子狂うなぁ」

ミランダ「どうするの?」

チセ「どうするって言われても……あー、まぁいいや。あんたが王女なら、聞きたい事があるんだが…」

エレイナ「何ですか?」

チセ「…もしこの国に超悪い盗人集団が入り込んでたら…あんたどうする?」

エレイナ「なんですって!?」

ミランダ「チセ君?」

チセ「もし、あんたん所のお宝…例えば、真紅のコウセツラン……こいつが狙われてたら…一体どうする?」

アルト「チセ…?」

エレイナ「何故、コウセツランの事を?…いえ、私に取ってあんな宝石、価値がありません。それよりも国民に危害が及ぶ事を懸念します。コウセツランは国の宝…しかし、私にとっての宝はフリージア王国の国民ですから。守るべき優先順位は国民ですわ」

チセ「ふぅん…。その割に女王様が亡くなってから国の情勢は下がって来ているね」

エレイナ「…私はまだまだ勉強中の身、母が亡くなって国民がショックを受けてるのを感じました。母は誰もが尊敬する偉大なる女王でしたから…、私もそうありたい…でも、下手に口を出す事が出来ない状況なんです…」

チセ「そう。ま、若いのに充分達者だと思うよ?俺達が聞いた王女様の印象って、だいぶ子供っぽかったから…」

エレイナ「え?」

チセ「あんた程国民から愛されてる王族は貴重だと思う。俺は王族が憎くて国を捨てたからな」

ミランダ「チセ君…」

チセ「そんだけ大そうな信念をお持ちなら、この国に必要なのは宝石じゃなくてあんただな」

エレイナ「それって、どういう…」

チセ「国民の為って努力してた奴を知ってるからだ…」

アルト「!?」

エレイナ「え、その方は…どうなったの?」

チセ「……良いように使われた。俺は二度とあいつの泣き顔は見たくないって思ったんだ…」

エレイナ「……」

チセ「俺は女の子が笑ってる方が好きだからね、国民も辛そうな顔してる王女様より子供達とはしゃいで国の為にって頑張ってる王女様が好きだと思うぜ。……俺はあの子のそんな表情が見たかった…」

ミランダ「……」

エレイナ「…貴方達…名前は?」

チセ「名乗る程の者じゃない…俺達は怪しい三人組だからね。行くよ、二人とも」

ミランダ「えぇ」

アルト「あ、うん………王女様、ばいばい」

エレイナ「……ば、ばいばい……」



ミランダ「昔の事を話すなんて…らしくないわねチセ君」

アルト「何で…?」

チセ「うるさいよ。…ミランダ今夜動ける?」

ミランダ「あら、私だけ?どうすれば良いかしら?」

チセ「フリージア城に侵入してくれ」

ミランダ「分かったわ。ついでにコウセツランの在処も探っとくわね」

チセ「おい、そこまでは頼んでねぇぞ」

ミランダ「うーん…数日位、時間が欲しいわ」

アルト「本当二人って互いの事分かってるよね…」

ミランダ「そう?アルトちゃんとも長いじゃない」

アルト「そうだけど……、うちは二人に付いて行くだけだったから。…それは今も同じ」

ミランダ「そんな事はないわよ。アルトちゃんも大切な仲間…私はアルトちゃんが大好きよ」

チセ「気にする必要はない。アルトにはアルトにしか出来ない事があるから俺達といるんだろ?」

アルト「うちはミランダが心配だから着いてきただけ。へっぽこ剣術のあんた一人だと心配だし」

チセ「あぁん!?喧嘩か?やるかぁ?やってやんぞこのパッパラパー」

アルト「返り討ちにしてやる」

ミランダ「止めなさい!…もう、仲が良いんだから」

チセ「良くねーよ!」

アルト「ミランダの目節穴」

ミランダ「うふふ……本当、大好きだわ二人の事……」


城、夜。

ミランダ「すっかり暗くなったわね……さてと……魔法使いミランダ、潜入作戦決行です!」

魔法を使い潜入して行くミランダ。

ミランダ「ふぅ……、いくら魔法で姿を消してるとは言え随分あっさりと潜入出来ちゃったわね…。この国、あまり魔法使いはいないって聞いてたとは言え、警備が手薄ね…うちの国なら絶対ありえないわ…、いえ、あそこは少し厳戒態勢過ぎただけね…。さて、お城の様子とコウセツランの場所を探っちゃいましょ!」

とある一室の前で話し声が聞こえる。

ミランダ「ん?…この部屋から話し声が聞こえる…。魔法で覗き見しちゃえ……。あれって、王女様と…一緒にいるのは確かドナと言う国の副大臣でしたわね……一体何のお話を…」


エレイナ「ドナ、やはり私はお母様の頃からお母様の政権に手を貸していた方たちの意見を推奨したいのです。貴女の政策は国民への負担が大きい…。いきなりルールを変えては国民が困ってしまう…」

ドナ「エレイナ様、私は国の為に言ってるのです。女王が急逝(きゅうせい)してしまい約2年…国の情勢は下がり気味。現状維持も難しいとの判断で国民に無理を強いてる所はありますが、まだ我慢の時…時間が経てば国も安定致します。王女が女王になる頃には不自由は御座いません。全て私に任せて下さい。その際には現大臣を降ろし、私を正式に大臣の座に…」

エレイナ「またその話?…大臣はお母様と共に国を築き上げた功労者です。現役ですし、外す意味もありません」

ドナ「王女の一存で事は動くのです。今まで私がどれだけ貴女様に尽くして来たか…」

エレイナ「私は頼んでいません!私は…お母様の望みは国民の幸せ…!」

ドナ「国民の幸せも大事ですが、貴女自身の幸せはどうするんですか?」

エレイナ「私の…幸せ?」

ミランダ「……」

ドナ「では、失礼します」

エレイナ「私の幸せは……」

ミランダ「……幸せ…か……。あ、ドナさんが出て行っちゃた……。少し跡を付けましょう…」

廊下。

ドナ「そう…幸せ……。私の意見に反対しまくったあのバカ女が亡くなって…やっと娘の方を懐柔出来そうなのに…一体誰なの、エレイナに余計な事を吹き込んだのは…やはりユリエ…?」

ミランダ「……」

ドナ「私の幸せ…ふふ、何不自由なく生きる事よ…ついでにエレイナを使って女王に復讐出来るなんて最高…!あの女が生きてたら絶対に出来ない事よね…でも見てみたかったわ、あの女の絶望に染まる顔を…ふふ、ふふふ」

ミランダ「………クズが」

ドナ「え?……誰もいない…気のせいかしら……」

①①
城。

ユリエ「はぁ、あれから3日か…ハッピー盗賊団の方々はどうしたのだろう…。国を出たと言う話は聞いてないが、やはり無理なお願いをしてしまった事を謝りたい……」

騎士1「ユリエ隊長!侵入者です!」

ユリエ「何!?一体何者だ!?」

騎士1「それが、たった三人で城の塀を飛び越え真正面から乗り込んで来たのです!」

ユリエ「なんだと!?」

騎士1「それにそいつら自らをこう名乗ってるんです…」


チセ「我らは泣く子も黙る最高最強の盗賊団!」

ミランダ「各地を旅して金品を強奪するの!」

アルト「悪い事だって?そんなの承知の上…だけど、それだけじゃない」

チセ「俺達のターゲットは悪い金持ちばっかなんだ…。そいつに搾取された人達に奪った物を返す!それが俺達…」

ミランダ「ハッピー」

アルト「盗賊団」

チセ「リーダー、チセ!」

ミランダ「魔法使いミランダ!」

アルト「バーサーカーアルト」

チセ「3人合わせてハッピー盗賊……ってうおぅ!?何だよ今カッコいい口上シーンだろ!?誰だぁ矢撃ってきた空気読めない奴は!?」

ユリエ「な、ハッピー盗賊団!?」

チセ「おー、おー、お人好しのユリエ殿〜どもどもー。貴女のお陰で入国がスムーズでしたよ」

ユリエ「え?」

チセ「まさか俺達が盗賊団と知らずにフリージア王国に入れて…騎士ともあろうお方が情けない」

ユリエ「な、何を言ってるんですか…」

チセ「まだ分かんない?俺達はね、悪党なの。盗むもんあるからここに来たんだよ。あんたの親切心があろうが無かろうが真紅のコウセツランの話を知った時点で狙うに決まってんだよ!」

アルト「こいつ口から出まかせのくせに良くペラペラ言えるな」

ミランダ「アルトちゃん、しー!」

ユリエ「まさか、最初から…?」

チセ「やっと気付いたー?おバカさん」

ユリエ「貴様ぁ…!」

チセ「行くよ、ミランダ!」

ミランダ「はい!ルラララ〜」

ユリエ「チセとミランダが消えた!?そうだミランダは魔法使い…、早急にコウセツランの警備を強化!私は王女を守りに行く!」

アルト「ねぇ、うちはどうすんの?」

ユリエ「アルト…」

アルト「うちとやる?ユリエさん」

ユリエ「悪いが、私には私のやるべき事がある。お前たち、ハッピー盗賊団アルトを捕らえよ!」

アルト「まぁまぁ人数いんじゃん…うちの剣の錆にしてあげる。んはは、熱くなって来た!」

ユリエ「王女…どうかご無事で……!」

①②

エレイナ「…何だか外が騒がしい。何かあったのかしら」

ドナ「失礼致します。エレイナ様」

エレイナ「ドナ!…ねぇ、何かあったの?」

ドナ「何でもありません。エレイナ様はここにいて下さい」

エレイナ「でも、」

ドナ「王女様にもしもの事があればどうなさるんですか?」

エレイナ「……はい」

ドナ「それでいいのです……しかし、ユリエ達は何をしてるのかしら…役に立たないわね」

エレイナ「ユリエを悪く言うのは止めて!?騎士達だって頑張って戦ってるのよ」

ドナ「しかし王女を一人残しておくのは危険です。王女の大切さを何も理解していない」

エレイナ「……私は国に取ってお荷物ではないかしら?国に大切なのは国民に慕われるお母様の様な立派な女王様…。私は何も出来ない」

ドナ「そんな事はありません。エレイナ様は次期女王…貴女の発する言葉は何よりも価値がある…それは一言一言がコウセツランと同等。貴女の言葉と私の指揮権があれば幸せになるのです」

エレイナ「幸せ…本当に?」

ドナ「えぇ、本当……」

チセ「自分の幸せだろ?それは本当に王女様が望んでる幸せかい?」

ドナ「っ!?何者ですか!?」

エレイナ「あ、貴方、先日の…」

チセ「泣く子も黙る最高最強のハッピー盗賊団でーす」

ドナ「一体どうやって侵入した!?」

チセ「うちには優秀な魔法使いのお姫様がいんだよ。魔法の力が強すぎた事により幽閉されてた可哀想な人だった…なのに大人共は彼女の強大な力を利用して国を支配しようとした」

ドナ「何の話だ!?」

チセ「だから俺は無理やりお姫様を連れて国を出た。おまけ付きでな」

①③
宝物庫

騎士1「見つけた!貴様ここで何をしている!?」

ミランダ「何って…この真紅のコウセツランを頂きに来たのですわ。とっても大きなルビーですわね…この様なサイズは初めて見ました。日の目を見ずにこの輝きがくすむなんて何ともったいない事…」

騎士1「それを離せー!」

ミランダ「ご機嫌様〜ルラララ〜」

ミランダ、魔法で消える。

騎士1「き、消えた!?魔法使いか!くそ、探せ!探せぇ!」

城内。

アルト「はー、ここの騎士って弱いの?もう少し頑張らないと国も王女様も守れないよー?」

騎士2「何と言う強さ…たった一人で大人数を相手にしている…?」

アルト「もっと骨のある奴らと戦って、うちだって強くなりたいんだよ…。ミランダを守るのはチセだけじゃないから」

ミランダ「あら、随分熱烈な告白ね、アルトちゃん」

アルト「ミランダ!嘘、もう取って来たの?」

ミランダ「うん、ほら見てみてこれが真紅のコウセツラン」

アルト「わぁ…おっきなルビーだ…凄く綺麗…!」

騎士2「何故貴様が国の秘宝を!?と言うか、一体何処からあらわれた!?」

ミランダ「私は魔法使いなの。さ、アルトちゃん。私たちの仕事は終わったし、リーダーを迎えに行こっか」

アルト「うん。あ、ミランダ聞いて、うちこの人数を一人で相手したんだよ!しかも全員峰打ち、頑張ったよね?」

ミランダ「すごぉい!流石アルトちゃん、手加減出来てとっても偉いね!」

アルト「えへへ…」

ミランダ「じゃぁ、行きましょうか。空飛ぶ箒さ〜ん、出ておいで〜ルラララ〜」

騎士2「な!?今度は箒が現れた!?」

ミランダ「チセ君の指定してた場所までお願い。アルトちゃん、しっかり捕まっててね」

アルト「おっけい!」

ミランダ「それでは騎士様達、ご機嫌様〜」

アルト「バイバーイ」

騎士2「飛んだ!?…み、皆のものあの箒に乗った女共を追えー!」

①④

ドナ「貴方の過去がどうであれ、立場を利用してると言いたいの?私は王女の為に口を出しているの!部外者は黙っていなさい!誰か、この侵入者をつまみ出して!」

チセ「誰も来ないよ。この辺の警備は全員のしたし、他の奴等は俺の仲間が注意を引きつけている」

ドナ「何!?」

チセ「…ま、国のトップが急に居なくなったら国は揺らぐ…それは当然だ。でも王女は愛されている。それは国民を見れば一目瞭然だった。なぁ、あんたは王女の為にって言うけど、その王女は何の為にその地位についてるんだ」

ドナ「そんなの…この国の次期女王として…」

チセ「王女様あんたは何の為に女王になるんだ?」

エレイナ「……そんなの、国民の笑顔の為以外…何がありますか」

ドナ「……っ」

チセ「なぁ副大臣殿…王女エレイナ様は女王になる前に自国の民の心配をしている様だぞ。あんた…もう少し見習ったらどうだい?」

ドナ「っ…、あんたみたいな不審者が余計な口を出すんじゃない!私の国政に文句を言って…あの女を思い出す!不愉快だ!私がどんなことをしようが関係ないだろ、国も大事かもしれんがまず自分の心配をして何が悪い!?」

チセ「悪くはねぇよ…悪くはねぇけど……国民の事を第一に考えてる王女様の前で言うセリフではないのは確かだ」

エレイナ「……ドナ、まさか私に政策の提案をしつこく繰り返して来たのはその為…?私が亡きお母様と同じ国造りを目指しているから…。母を支持してる派閥が邪魔なのね!?」

ドナ「そ、そんな…滅相も御座いません…。私はこのままでは国民の反感を買う恐れがある。だからこそここで一度国民達を律する必要があると提案を…」

エレイナ「そんな案、お母様だったら絶対に認めてない!」

ドナ「くっ……」

チセ「世の中ここまで良い王族ばかりだったら……無理か」

ドナ「貴様ぁ、余計な事ばかり言いやがってぇ…!」

チセ「ま、あんたの悪巧みもここまでってことさ。今頃俺の仲間がコウセツランを奪っているんじゃないかな?ここの警備大丈夫?魔法を使える奴がいたら一発で侵入されるよ?ま、それを簡単に出来るミランダの力量があっての事かもしれないけどね」

エレイナ「コウセツランを奪った!?」

ドナ「そ、そんなはず!?出鱈目だ!我が国の秘宝を狙う等何て事を考えている!?エレイナ様、奴を捕え、即刻処刑と致しましょう!」

エレイナ「……」

ドナ「エレイナ様!」

エレイナ「国民への被害がないのであれば好きに持って行きなさい。それで済むなら安い物です」

ドナ「エレイナ!?」

チセ「ふ…最初から国民や兵士の命は狙っちゃいないよ。うちのバーサーカー女は峰打ちが出来るからな」

ドナ「エレイナ!お前、何を考えているの!?あれは国の秘宝、それが奪われたらこの国は終わるのよ!」

エレイナ「宝石一個で終わる国ならそれは国ではありません。王族がいて国民がいて、皆が笑顔でいられる国…それがフリージア王国が目指すべき国造りです!」

チセ「…俺も、こんな国で生まれたかったねぇ……」

ドナ「どいつもこいつも……、このくそガキがぁ!」

エレイナ「きゃぁ!?」

チセ「おい!王女に乱暴するんじゃねぇ!あんた仮にも副大臣だろ!?」

ドナ「もうこの際どうでもいいわ!国に必要なのは実益よ!国民が優先?綺麗事ばかり抜かしやがって、女王と同じ事ばっかりね?それであの女になりたいですって?あの女はもういない、私に実権を渡さず私の否定ばかりして来た…。私のやり方は間違っているって言ってね!何が間違いよ、国民から搾取して何が悪いって言うのよ!フリージアには他の国より収益が少ない。魔法の発展もない、そんな国が出来るのは国民からの搾取!私は常々この国は甘いと思っていたの!それは全てあの女のせいだ!あの女が女王となってから全てが狂ったのよ!」

エレイナ「…お母様のこと…嫌いだったの、ドナ?」

ドナ「あんたも嫌いよ!病気が進行してざまぁみろと思ったわ…でも、あの女の蒔いた種はしつこい雑草だった。亡き女王の支持派とあんたよエレイナ…!」

エレイナ「……私は、貴女を幸せには出来なかったのね」

ドナ「は?」

エレイナ「ごめんなさい……貴女も大切な国民の一人なのに!」

ドナ「っ……!?」

チセ「もう離せ。次期女王様に対する不敬だろ」

ドナ「くっ……、あんたみたいなこそ泥に何が分かる!?」

チセ「分からねーよ。だって俺は、悪者だからな。…でも、王女様が簡単に操れるって勘違いしてた位、愚かなのはあんたの方だ」

ドナ「っ……、くそっ…」

①⑤

ユリエ「エレイナ様!」

エレイナ「ユリエ!?どうしてここに?」

ユリエ「貴女が心配で駆けつけたのです!……ハッピー盗賊団、チセ…!」

チセ「…遅かったな。ま、時間切れだ。王女様、ここの窓開けさせて貰うね」

エレイナ「え?」

チセ「よいしょっと…おわー、風強えー……んじゃ、ユリエさん、そこの副大臣殿の処罰はあんたらに任せるぜ」

ユリエ「ドナ…、貴様何故ここに…」

ドナ「……」

チセ「それでは皆さまー…」

エレイナ「貴方、お名前は!?」

チセ「え、ちょ…今かっこよく去る所だったじゃん…はー……俺は泣く子も黙る最高で最強な盗賊、ハッピー盗賊団のチセ様だ!皆さま〜それではさらばだー!」

ユリエ「な、飛び降りた!?王女の部屋は城の上階にあるんだぞ!?」

エレイナ「チセ様!?」

チセ「んあっはっはっはー!ナイスキャッチ、ミランダ!」

ミランダ「もう、合図も無しに飛び降りてくるなんてびっくりしたわ!」

アルト「箒君が悲鳴上げてない?ギシギシ言ってる…」

チセ「年じゃねぇの?長い事使ってるからだろ?」

ミランダ「そんな事言ったら振るい落とされるわよ?」

チセ「ご、ごめんごめん〜!…はー、おっかね……で、お宝は?」

アルト「これ、おっきなルビー」

チセ「ほぇ〜、これは凄い!くくくっ、では皆のもの〜この国の秘宝真紅のコウセツランなる宝石は我らハッピー盗賊団が頂いた〜!!」

ミランダ「ご機嫌〜!」

アルト「ばいばーい!」


ユリエ「そんな、宝石が…奪われた…」

エレイナ「…構いません、宝石の一つや二つ…それより見て、ユリエあのコウセツランの輝き…」

ユリエ「空に飛んで行く奴等が掲げているが…太陽の光にいつまでも輝いている…ただでさえ美しい宝石が更に美しく見えます…」

エレイナ「もしかしてあれが…あの宝石の本当の美しさであり、あの宝石の幸せなのかもしれないわ」

ユリエ「……はい」

①⑥
数日後、街。

子供1「あ!王女様だ!久しぶりー、遊びに来たの?」

子供2「今日はドレスなんだ。いつも大きな布被ってたよね?」

エレイナ「まぁ、最近は外に出るのはお忍びだったので…。もう必要ありません」

ユリエ「だからと言ってドレスを泥だらけにするのは止めて下さいね、エレイナ様」

エレイナ「心配性ねユリエってば、もう子供じゃないんだからそんな事はしないわ!」

ユリエ「なら良いのですが…」

エレイナ「信用されてない〜…」

子供1「あ、王女様に渡す物があるんだった!」

エレイナ「え?なにかしら」

子供1「これ!」

エレイナ「これは…!?」

ユリエ「こ、コウセツラン!?何故君が持ってる?」

エレイナ「あの時、ハッピー盗賊団に盗まれた筈なのに…」

子供1「何かね。変なお兄ちゃんがこの宝石、王女様のだから返してあげてって」

子供2「あとこれ、そのお兄ちゃんが一緒に渡してくれって」

エレイナ「手紙…?」

ユリエ「『フリージア王国、エレイナ王女へ…ハッピー盗賊団より』……彼らからの手紙?」

エレイナ「ユリエ、読んでくれる?」

ユリエ「はい。……『フリージア王国王女エレイナ様、この度盗んだ真紅のコウセツランは我らの獲物足り得ないのでお返しします。子供達に渡した理由に付きましては、貴女が国民に必要とされているのであれば宝石とこの手紙は貴女の下へ渡っているでしょう』……」


チセ「我らは悪党ではありますが、無闇な盗みと殺生は致しません。義賊だのなんだの好きに言われますが、我らの好き勝手に生きてる人生にケチを付けられたくありません。貴女も好きに言えば良い。国民の為と言う貴女の言葉と心は他の誰でもない貴女だけの物…それはどんな宝石よりも美しい物です。貴女のこれからを応援しております」


エレイナ「チセ様…」

ユリエ「『追伸…ユリエ殿…貴女を利用した様な物言いは俺の口から出た出まかせです。貴女の忠誠心は素晴らしい物です。』……チセ殿…ん?…『そう言えば、此度の件の報酬として…』…あぁ、通りで無くなってると思った…」

エレイナ「え?何かあったの?ユリエ」

ユリエ「盗まれたのか報酬としてお渡ししたのか…分からなくなりましたね」

エレイナ「?」

ユリエ「王女様、お菓子をお持ちになってましたよね?お茶を淹れて皆で召し上がりましょう」

エレイナ「そうね!みんなー、今日はお菓子いっぱい持って来たの!」

子供1「わーい、お菓子ー?」

子供2「やったー!」

エレイナ「こらこら、いっぱいあるから押さないで!」

ユリエ「…ありがとうございます、ハッピー盗賊団…!」

①⑦

チセ「はーくっしょい!あー、誰だぁ俺らの噂してる奴ー!」

ミランダ「色んな所で恨み買ってそうよね」

アルト「……フリージア王国、もう見えなくなったね。大丈夫かな?」

チセ「さーね、ドナって奴は取り敢えず謹慎処分を受けったって話は聞いたぜ。王女様も甘っちょろいね〜、俺なら亡き女王様と次期女王様への侮辱罪って事で国外追放させるかもね」

ミランダ「それは流石にやりすぎよ。あの国でもそこまではやらないわ」

アルト「あの国って…うちらの国?」

チセ「……」

ミランダ「何だか鮮明に思い出しちゃったわね…。ねぇチセ君、私やっぱり貴方達と逃げ出して良かったわ。あそこにいたままじゃ知らなかった世界が広がってるんですもの」

チセ「…お前が笑ってられるんならそれで良いよ」

回想

チセ「ミランダ、逃げよう!お前の魔法があればこの牢屋みてーな部屋から抜け出せる!」

ミランダ「ダメよ、チセ君も危ない事はやめて?壁をよじ登って…見つかったら討ち殺されてしまう…!」

チセ「だから逃げるんだ!お前の魔法があれば俺と一緒にこの国から逃げ出せる!俺だけじゃない、アルトも一緒だ!」

ミランダ「アルトちゃんも!?…何で…」

チセ「俺一人じゃ心配なんだと…あいつも、お前と一緒に遊んだ仲だ。お前が憔悴(しょうすい)して行く様を見るのが嫌なんだ。…だから…」

ミランダ「でも、私はこの国の為に…私の魔力を…」

チセ「お前の魔法だ!お前が使いたい時に使え!…それが国の為ならそれで良い…でも、それはお前の本心か!?」

ミランダ「!」

チセ「わかったら…早く…しがみついてるの…限界っ…あっ!?」

ミランダ「空飛ぶ箒さん、チセ君を助けて!ルララー!」

チセ「おわっ…ナイスキャッチ…ミランダ」

ミランダ「まさか…貴方わざと……もう、姫を攫うなんて随分な盗賊さんね」

チセ「お前から出て来たんだろ?……でも、良いかもな盗賊…俺達、盗賊団にでもなろうか?」

ミランダ「何よそれ…もう、本当におバカなんだから!」

チセ「早く行こうぜ、アルトも待ってる!」

ミランダ「うん!」

現在。

アルト「ねぇ、お腹空いたからそろそろお昼休憩しよ?」

ミランダ「そうね、フリージア王国で買い出ししっかり出来たから、少し豪華なお昼にしましょうか」

アルト「やった」

チセ「あ、ミランダ〜これで紅茶作ってくんね?」

ミランダ「紅茶?……あ、チセ君この茶葉って…」

アルト「ユリエさんが淹れてくれた紅茶?」

チセ「言ってたろ?あの人の頼みを聞いたらコウセツランと自分が渡せる物を報酬として頂いて良いって…だから、こいつを頂いてたの♪」

ミランダ「もしかして私がお城に潜入してる間に盗んで来たの?本当抜け目ないんだから…」

アルト「ある意味流石だね」

チセ「あんなに動いて手ぶらとかありえねぇっての、だって俺達…悪党だからな!」


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