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【声劇台本】カノン

メイン登場人物(男:3、女:1)

・アインス・コムブルー/男
自称大怪盗。コムブルー家長男。自信家で大胆な行動を起こすが、本当は計画的で思慮深い。

・ツヴァイ・コムブルー/男
刑事。コムブルー家次男。真面目でクールでミステリアス。素直なのに天然な不思議ちゃんで、かなりのマイペース。

・ティガ(ドライ・コムブルー)、警官1/男
天才ハッカー。コムブルー家三男。ふわふわとした性格で上二人に揶揄われながら、可愛がられてる。警官1と兼ね役。

・ルイーザ・ハーン/女
アインスを追う女刑事。ツヴァイの恋人。正義感に溢れ、強気で真っ直ぐな性格。

サブキャラクター(兼ね役推奨)
・警部/男
ルイーザとツヴァイの上司でベテランのおじさん。
・デニス・ホフマン/男
警察関係者の息子でギャングに所属するドラ息子。
・ギャング1/男
・ギャング2/男
・ギャング3/男
・ギャング4/男
・警官2/男
・ニュース/不問
・警察1/不問
・警察2/不問

【時間】約1時間30分
【あらすじ】
自称大怪盗アインスは世間を騒がせる存在だ。悪党をターゲットにしてるアインスは遂に警察に捕まってしまう。今まで捕まえる事が困難だったアインスは何故あっさり捕まってしまったのか。


【本編】


パトカーのサイレン

アインス「…なぁ、パトカーのサイレン…もうちょい音量下げられねぇ?耳が痛いんだけど」

ツヴァイ「犯罪者が口答えをするな。大人しくしていろ」

アインス「今、大人しいけど?」

ツヴァイ「兄さっ…、…はぁぁ、アインス・コムブルー確保しました!」



ニュース「昨夜未明、ゲオルグ邸にてシュヴァルツ・ゲオルグ氏を殺害した疑いでアインス・コムブルーが逮捕されました。容疑者は世間を騒がす大泥棒と呼ばれており、盗んだ物を貧困地区に寄付するなどの行動を行ない、若者を中心に注目を浴びていますーーー」

警察署、取り調べ室

アインス「訂正させろぉ!大泥棒じゃなくて大怪盗とかにしてくれ!そっちの方がカッコいいから」

ツヴァイ「いやどっちにしろダサい。兄さん本当にセンスないよね」

アインス「ツヴァイく〜ん、そんな事言わないで?お兄ちゃん泣いちゃうよ〜?」

ルイーザ「ツヴァイ!いくら容疑者がお前の実兄だとしても今は取り調べ室だ!私情は挟むな!」

ツヴァイ「すいません、ルイーザさん」

ルイーザ「というか、何故容疑者がニュースの件を知っている?」

ツヴァイ「兄さんについての説明が面白かったから教えてあげました」

ルイーザ「下手に外の情報を流すなバカ!」

アインス「…つーか、私情云々言うなら、そもそもこいつに俺の取り調べをさせるなよ。警察どうなってんだ?」

ツヴァイ「俺が志願した」

アインス「なんでだよ」

ツヴァイ「捕まえたの俺だし、久々に話したかったから」

アインス「おい姉ちゃん、こいつ頭おかしいぞ」

ルイーザ「…はぁ、私にも分からないわ」

ツヴァイ「まぁとっとと白状しなよ兄さん」

アインス「白状って言われても、俺は盗みには入ったけど殺しはしてねぇ」

ルイーザ「嘘をつくな!現場にはお前の靴跡、凶器に使われたと思われるナイフにはお前の指紋も付いていたんだぞ」

アインス「…それ本当に俺か?」

ルイーザ「監視カメラには屋敷に侵入するお前の姿があった。それ以外の出入りは被害者のゲオルグ氏と警備の者数名だ」

アインス「不審者は俺だけか」

ツヴァイ「そうだね。だから白状しようか」

アインス「子供の頃、お前の分のおやつをちょろまかしました」

ツヴァイ「死刑」

ルイーザ「ツヴァイ!」

アインス「…俺は殺しはしてない。断言する。なぁツヴァイ…俺は人を殺す人間じゃねぇ」

ツヴァイ「知らない。俺と兄さんは確かに兄弟だ。だけど、血の繋がりがあっただけの事。あんたが罪を犯した時点であんたとの家族の縁は消えた。そしてあんたが人を殺したなら、その証拠を突きつけて罪を償わせる…俺は警察の人間だからね」

ルイーザ「ツヴァイ…」

アインス「……可愛くなくなっちまったな〜」

ツヴァイ「兄さんは心根は変わらないけど、方法が駄目になってしまったね。失望したよ」

アインス「……」

ツヴァイ「さぁ、罪は全て吐き出せ。勿論、被害者を殺した経緯からだ」

アインス「殺してねぇよ」


しばらくして

ルイーザ「今日はここまでだ。留置所へ移すぞ」

アインス「あー、疲れた…」

ツヴァイ「兄さんも口が固いんだから」

アインス「だから殺してねぇよ!」

ルイーザ「黙れ!本日の取調べは終了だ。喋るんじゃない」

アインス「あ〜あ〜、どいつもこいつも話を聞かねぇな〜」

ツヴァイ「兄さん、口の聞き方は気をつけた方が良いよ?ここは警察署なんだから、下手な事言うと公務執行妨害の扱いになるかも」

アインス「良い性格になったな、お前」

ツヴァイ「ありがとう、兄さん」

アインス「……嫌味の通じねぇ」

ツヴァイ「ありがとう」

アインス「おい姉ちゃんもう連れて行ってくれ!」

ルイーザ「あ、あぁ…」(哀れみの表情)

アインス「……あ、その前にトイレ行って良いか?」

ルイーザ「は?」

ツヴァイ「留置所の個室にも備え付けられてるよ」

アインス「やだ!くそせめぇほぼ剥き出しのトイレなんて使いたくねぇ!ここに来る前にトイレあったぞ、そこ使わせろ!」

ツヴァイ「ぶち殺すよ」

アインス「頼む〜、取り調べって時間かかるじゃん〜…俺って腹弱いから比較的質のいい所使いたいんだよ。取り調べが終わった時くらい使わせてくれてもいいだろ〜?」

ツヴァイ「取り調べの度に使おうとしてる?」

アインス「細かいことはいいから?な?な?」

ツヴァイ「殺しを認めるなら考えてもいいよ」

アインス「してねぇっつってんだろ!!」

ルイーザ「もういい!…うるさいなお前達は、使ってもいい…見張りは付けるがな」

ツヴァイ「あ、じゃあ俺もトイレ行きたいんで、付き添い行きます」

アインス「なんでやねん」

ルイーザ「…見張りまでトイレ行ったら意味がないだろ」

ツヴァイ「分かりました。もしこのタイミングで兄さんを逃したら、俺は即座に辞表を出し上司の皆さんの前で舌を噛みちぎって死にましょう」

ルイーザ「重い重い重い!そこまで求めてない!」

ツヴァイ「えー…」

アインス「怖っ、こいつ…」

ルイーザ「トイレ前に誰か付けておけ、いいな?」

ツヴァイ「はーい」

アインス「こいついつもこんなんなの?」

ルイーザ「…頭は良いのに発言が偶に突拍子も無い…むしろ聞きたい、こいつは昔からこうなのか?」

アインス「昔よりヤバくなってる」

ルイーザ「見た目は結構似てるのに、性格はだいぶ違うみたいだなお前達は…」

アインス「いや〜本当。お前その性格で良く警察になれたな」

ツヴァイ「ありがとう」

アインス「褒めてねぇ」


廊下

ルイーザ「では、私は先にデスクに戻っているから…あまり長話はするなよ?」

ツヴァイ「はい、勿論です。あ、お腹痛くなってきたのでもういいですか?」

ルイーザ「ぶん殴りてぇ…」

アインス「お姉ちゃんも大変なんだな」

ルイーザ「…容疑者に同情されるとは…」

アインス「俺は人殺しはしてねぇけどな」

ツヴァイ「ほら、行こう兄さん…お腹痛い」

アインス「なんでお前の方が腹弱くなってんだよ!引っ張んなバカ野郎が!」

ツヴァイ「あ、警察官に向かってバカって言ったね?公務執行妨害って言い触らすよ?」

ルイーザ「さっさと行ってこい!!」


トイレ内のそれぞれの個室

ツヴァイ「どう兄さん?俺の完璧な演技」

アインス「弟が警察になって疲労により壊れちまったのかと思ったわ」

ツヴァイ「なんて事を言うんだ。俺はいつか兄さんがこんな風に捕まってしまうんじゃないかと危惧して、警察になったと言うのに」

アインス「嘘つけ、子供の頃からの夢だったろ」

ツヴァイ「うん、でも結果オーライじゃない?」

アインス「…俺は殺しはしてない。神に誓う」

ツヴァイ「神なんていないよ。俺は兄さんを信じてる。貴方はそんな事しない。してたらとっくに捕まってるだろうさ」

アインス「だけど、現状捕まっちまった…これは誤算だ」

ツヴァイ「…嵌められた?」

アインス「恐らくな…」

ツヴァイ「既に証拠が幾つか揃ってるのもおかしいと思ってたし、正直証拠としては弱い…」

アインス「靴跡と凶器に指紋…監視カメラで弱い?」

ツヴァイ「兄さんがそんなお粗末な証拠は残さない。今まで兄さんを追ってたこの俺が、そんな事で納得しない。正直ルイーザさんもそこまで納得してないと思う」

アインス「…嬉しい事言ってくれんじゃん」

ツヴァイ「それにあの時、兄さんはすぐに逃げなかった…。俺を頼ってくれたんだろ?」

アインス「あぁ、俺一人で解決出来るか分からなかった…お前には悪いけど、俺を嵌めた奴は絶対に許さねぇ!だから手を貸せツヴァイ」

ツヴァイ「勿論だよ兄さん…じゃあそろそろ出ないと怪しまれちゃうね…はい、下の隙間から服を早く渡して」

アインス「あぁ、お前のも寄越せ」

ツヴァイ「トイレの個室にそれぞれ入って、出てきた時に入ってる人間が入れ替わってるなんて……これバレない?」

アインス「見張りの警官は中まで見てなかったし、カメラもないから恐らく大丈夫だろう、まぁバレてやばそうならお前の事雇ってやるから安心しろ」

ツヴァイ「そんなん死んだ方がマシだよ。はい兄さん、これ俺の服」

アインス「サンキュ…なんかガサガサ言ってんな?……おい袋にまとめて入れてんじゃねぇよ」

ツヴァイ「この服トイレの地面に付けたくないから。俺我慢してトイレの地面に少しついた兄さんの服着るんだよ?文句言うな」

アインス「一々腹の立つ事を言うな、お前…」

ツヴァイ「あ、ちゃんと袋回収してね?」

アインス「全く…よし、出るぞ」

ツヴァイ「うん」

それぞれ個室から出る二人

ツヴァイ「……やっぱ警察の人間様は良いトイレ使ってんね〜」

アインス「…それ俺の真似か?」

ツヴァイ「超そっくり」

アインス「腹立つ。…分け目ちょっと違うぞ」

ツヴァイ「触んないで?まずは手を洗ってよ。トイレの地面に手ついたでしょ?手付けてなくても地面に触れた袋触ったでしょ?袋裏返しにして回収した?」

アインス「潔癖かい」

ツヴァイ「潔癖じゃなくても嫌な人はいるでしょ。あ、後で胸ポケット確認してね?」

アインス「わかったよ…ったく」

ツヴァイ「…またあの姉ちゃんに怒られる前にいこーぜ?ツヴァイ」

アインス「勝手に行くな、兄さん」


拘置所内

アインス「じゃあ兄さん…あまり騒いじゃ駄目だよ」

ツヴァイ「俺をなんだと思ってやがる」

アインス「またね」

警察署デスク

ルイーザ「おかえりツヴァイ。何も無かっただろうな?」

アインス「はい、あの人は結構静かなタイプなので問題はないかと」

ルイーザ「しかし、あれだけ私達が奴を追って来たのに…急に殺人を犯すとはな」

アインス「…そうですね。でも、証拠も出てますし」

ルイーザ「そこなんだ…。奴は今までろくに証拠を残さなかった…今回はイレギュラーとは言えあんなお粗末な事をするか…?特に凶器の件…。奴は使う道具の始末を怠ったことの無い印象だからな」

アインス「兄さんの履いてた靴は特注って訳ではなさそうしたし、監視カメラは今までもよく映っています。だから兄さんの姿を世間が認識している節がある」

ルイーザ「姿を見せても捕まらなければ意味がないからな…そう考えると奴は一種のエンターティナーと記事にされてるのも頷ける」

アインス「別の件ですが、防犯カメラで遊んでる兄さんの姿が拡散されてましたね」

ルイーザ「あれはマジで殺意が沸いたわ…」

アインス「……顔、怖っ」(ボソっと)

ルイーザ「何か言ったか?」

アインス「何も言ってません」

ルイーザ「……?」

アインス「…どうしましたか?」

ルイーザ「いや…なんでもない」

アインス「……」

ルイーザ「まぁ、その…せっかく奴を捕まえた事だ…殺人の件はまだ取り調べに時間は掛かりそうだが、今夜一杯どうだ?」

アインス「…すいません、今日はちょっと…」

ルイーザ「…そうか。なんだかんだ奴はお前の兄だもんな…気が効かなくてすまない」

アインス「いえ、…でも…そうですね…少し一人になりたいです」

ルイーザ「…お前がそこまで感傷的になるなんてな…あの時奴に言った言葉に嘘はないのだろうが、あいつの事が好きだったんだな…」

アインス「…あれでも子供の頃はいっぱい遊んだ兄なんで」

ルイーザ「……今日はもう帰れ。後は私がやっておくよ」

アインス「しかし…」

ルイーザ「先輩命令だ!」

アインス「…ありがとうございます」

ルイーザ「うん、気を付けて」

アインス「失礼します、ルイーザさん」

ルイーザ「……」

警察署外

アインス「言葉選びに慎重になっちまうが…特段怪しまれる要素はなかっただろう…とにかく、ツヴァイが仕込んでくれてた胸ポケットのUSBメモリを情報屋の所に持って行くか…取り調べも後何回行われるか分からん…裁判が始まるまでに解決しねぇと!」


とある郊外のアパートの一室
鍵を開け中に入るツヴァイの姿をしたアインス

アインス「相変わらず埃っぽいな…」

ティガ「手を上げろ」

アインス「…拳銃?」

ティガ「頭ぶち抜かれたくなければ…その場で3回くるくる回ってワンって言うこと!」

アインス「……」

ティガ「ん?何でそんなズカズカ距離詰めてくん……いっだぁぁ!?」

アインス「それ本物だろ?いつの間にそんなん買った?」

ティガ「いきなり殴らないでよアインス君…それにこれは護身用。ほら、世の中物騒じゃん?こんな風に知り合いとは言え鍵を開けて中に入ってくる輩もいるんだから」

アインス「ティガ、情報は?」

ティガ「も〜、情報屋の扱い雑ー。ボイコットするよ?」

アインス「情報屋なんだから情報を売れ。時間が惜しいんだ」

ティガ「ツヴァイ君は大丈夫なの?」

アインス「多分な…あいつとの関係はバレてるから互いにボロを出さなければ問題はないだろう」

ティガ「じゃあ時間だけって事?このままじゃアインス君の代わりにツヴァイ君が裁判にかけられちゃうね」

アインス「あぁ…そこまで悠長にしてる暇はねぇ」

ティガ「ま、今回の殺人の件…今までやってきた窃盗の数々…有罪は確定だもんね」

アインス「だからこそ急ぐ必要がある。買える情報は根こそぎ買ってやる」

ティガ「んふふ〜、毎度あり♪じゃあ何からいる?アインス君を嵌めた奴等の情報?」

アインス「そこまで知ってんなら話が早い。何処のどいつだ?」

ティガ「アインス君を嵌めたのはここら辺を牛耳ってるギャングの一部だね。奴らは強盗殺人とかも起こしてる事があるからまず間違いないと思うよ」

アインス「そうか…」

ティガ「でも、気掛かりな点が幾つかあるんだ。まず、今回の被害者であるシュヴァルツ・ゲオルグと密接な関系があるの」

アインス「関係?」

ティガ「どうやらゲオルグは金でそのギャングを雇っていたみたいなんだ。僕の想定では金銭面でのトラブルに寄る殺人で、そこに運悪くアインス君が居合わせ立ったて所かな?」

アインス「……なるほど?」

ティガ「…まぁ、そこだけじゃないと思うんだよね。だってアインス君が捕まったタイミングだったり他に犯人になり得る証拠ばかり出てきた…これは不自然極まりないよ」

アインス「…お前もそう思うか」

ティガ「アインス君はわざと羽振りのいい人間から金品を窃盗してるもんね〜。義賊もいい所だよ?」

アインス「ただのエゴだ…喰えずに死んでいく子供を見るのが嫌なだけだ…」

ティガ「それがこの世の理(ことわり)だよ。クソな人間が蔓延らなんないと世の中回らないのも事実だし…アインス君が幾ら頑張って貧困地区にお金を落としても…それを徴収する人間もいる」

アインス「……」

ティガ「悪い人間ばかりじゃないのはアインス君を見てて思うけど…やり方が悪かったよね…ま、僕も人の事言えないけど♪」

アインス「ツヴァイにも同じ事言われたわ。で、他に有益な情報はあるか?」

ティガ「…もう少し時間が欲しいかも」

アインス「わかった。今日はここまでにしとくか」

ティガ「つか、アインス君わざわざ捕まってツヴァイ君と変わったんならそっちこそ何か情報ないの?使えないな〜」

アインス「あ、そういやこれ…ツヴァイから預かってたんだわ」

ティガ「は?…えぇ!?USB?こんな貴重そうなの忘れる普通〜?」

アインス「時間がなくて疲れてたんだよ…悪かったって…」

ティガ「も〜、ちょっと待ってね…」

PCを弄るティガ

アインス「時間かかりそうか?」

ティガ「そうだね、一回ツヴァイ君の家に帰っておいたら?いくら見た目や雰囲気を似せても直近の情報が分からないからボロが出るかもよ?」

アインス「…それはそうだな」

ティガ「場所は分かるよね?情報買う?」

アインス「いらん、場所は変わってねぇと思うからな」

ティガ「んじゃ、何か分かったら連絡するね」

アインス「おう、頼んだ」

その場を去るアインス


ツヴァイの家

アインス「ツヴァイの部屋も相変わらず綺麗に整ってるな…。まぁ偶にここに来ないと怪しいが…汚さないように気をつけねぇとな……ん?あいつこんな可愛いぬいぐるみ持ってたのか?…彼女でも出来たのか?そうなら教えろよな、交代する事に支障起きるだろ」

スマホが鳴る

アインス「ん?電話…ティガか……なんだ?ティガ」

ティガ「アインスく〜ん、ツヴァイ君と変われない?ツヴァイ君に貰った情報を使って深い所まで調べて見たんだけど、気になる所があってツヴァイ君に確認したいんだ。後ツヴァイ君に頼まれてた物についても伝えときたくて」

アインス「…あいつがお前に頼み物…?お前の仕事にあいつ関わらせて大丈夫なのか?」

ティガ「え?あの人悪徳警官なの知ってるでしょ?」

アインス「………」

ティガ「偶に情報とか買ってくれるよ」

アインス「あいつ俺と代わらなくてもいつか捕まるんじゃねぇか?」

ティガ「かもね〜」

アインス「しかし、分かったよ。お前から情報を得られないと俺も動き辛いからな…」

ティガ「んじゃ、よろしくね♪」

アインス「あぁ…またな」

電話を切る

アインス「…次の取り調べの日は……はぁ、早く解決しねぇと…」


後日、警察署
拘置所内

アインス「調子はどうだ?ツヴァイ」

ツヴァイ「ここベッドが固い…上に言っておこうかな?」

アインス「バカか」

ツヴァイ「で、どうしたの?順調?」

アインス「ここだからあまり長話は出来ない。手短に言うと交代だ」

ツヴァイ「ほぉ」

アインス「だから終わりに仕掛けてくれ」

ツヴァイ「分かった」

アインス「その後はティガの元へ向かってくれ。幾つか話があるそうだ」

ツヴァイ「あー、了解」

アインス「…お前警察のくせに情報屋を使うなよ」

ツヴァイ「それ絶対バラさないでね?怒られちゃうから」

アインス「怒られるで済めばいいがな」

ツヴァイ「でもティガの情報は良いから…そのおかげで解決したのもあるし…あ、これ企業秘密ね」

アインス「馬鹿か」

ルイーザ「おい、ツヴァイ!早くアインス・コムブルーを連れてこい!また容疑者と話しているのか!?」

アインス「っ…、すいませんルイーザさん。すぐに連れ出します。ほら、出て兄さん」

ルイーザ「ツヴァイ、兄弟扱いするのは控えろ。こいつは殺人容疑がかけられてるんだぞ」

アインス「すいません…」

ツヴァイ「ふふっ…」

ルイーザ「何をニヤニヤしてるんだお前は?」

ツヴァイ「あ、すいませ…あー、いやぁ?何かこういう弟の姿を見てると…ちょっと面白くて」

ルイーザ「面白いか?どいつもこいつも調子の狂う事ばかりだな…ほら、さっさと出ろ」

ツヴァイ「は〜い」

アインス「ルイーザさん…兄さんの裁判まで後どれくらいあるんですか?」

ルイーザ「今回は早そうだ…。被害者側が躍起になってると聞いたし、例の証拠を出されてる上に今までの被害状況を鑑みれば仕方もない気がするが…」

アインス「今回もだんまりを決め込まれたらどうします?」

ツヴァイ「それ、俺の前で言って良い話?」

ルイーザ「…私も個人的に捜査を強化してるが…どうも上手くいかなくてな」

ツヴァイ「何か引っ掛かるね〜」

ルイーザ「容疑者は黙っていろ」

アインス「取り調べ室に着いたよ、入って兄さん」

①⓪
取り調べ室
暫くして

ツヴァイ「疲れた〜、今日は何か分かりましたか〜?」

ルイーザ「相変わらずおちょくりやがって…」

アインス「何故だんまりを決め込む?」

ツヴァイ「だって殺してないからな。つか今日も綺麗なトイレ使わせてくれー!」

ルイーザ「……お前これ以上ふざけた事言うと刑務所に送り込むぞ」

ツヴァイ「お、おいおい…順序は守ろうぜ?」

アインス「良いじゃないですか?俺も行きたいんで」

ルイーザ「まずはお前からぶっ飛ばしてやる!」

アインス「いや〜、暴力反対…」

ツヴァイ「よし、ツヴァイ君連れションとしけこむか」

アインス「その言い方やだ…」

ルイーザ「……さっさと行ってこいバカどもが」

ツヴァイ「わーい」

ルイーザ「…なぁツヴァイ」

アインス「あ、はい?」

ルイーザ「……いや、なんでもない」

ツヴァイ「……」

アインス「…?行くよ兄さん」

ツヴァイ「あぁ…」

①①
トイレ内

アインス「あれ怪しまれてたかな?」

ツヴァイ「どうだろ?あの人結構鋭いからね。何度か兄さんのこと追い詰めてるけど、俺が工作して難を逃れてるからね」

アインス「お前警察の風上にもおけねぇな」

ツヴァイ「兄さんを守る為だよ。兄さんとの約束じゃない」

アインス「約束…?お前が勝手にやってるだけじゃないのか?」

ツヴァイ「そうだよ?」

アインス「ぶっ飛ばすぞお前…」

ツヴァイ「ほら、早く服ちょうだい。あ、袋入れてよ?」

アインス「うるせぇさっさと取れ!」

ツヴァイ「あー!袋入れて!」

アインス「うるせぇ!」

ツヴァイ「…もー。あ、兄さん仕事に関して下手な事してないよね?ティガから俺の仕事に関する事は聞いてたよね?」

アインス「あぁ、今のところ問題はない…でも、あの姉ちゃんが怖いなぁ…距離が近い分怪しまれる時がある…」

ツヴァイ「ルイーザさんは尊敬する先輩だからあまり俺の株落とさないでね?」

アインス「今までのやりとり見てて、だいぶお前の株無いと思うけど…」

ツヴァイ「なんて事言うんだ」

アインス「…着替え終わったか?」

ツヴァイ「うん、出よっか」

それぞれ個室から出る二人

アインス「じゃあ、頼むなツヴァイ」

ツヴァイ「うん、兄さんも弁護士と話をちゃんとするんだよ」

アインス「待て、その事詳しく」

ツヴァイ「ほら、行くよ兄さん」

アインス「待てバカ!おい!」

ツヴァイ「寝たら記憶無くしました、もう一回お願いしますって言っとこう?」

アインス「それでいける訳ねぇだろ!」

①②
拘置所内

アインス「ここベッド硬いんだよなぁ…」

ツヴァイ「そうらしいんで、ベッド変えません?ルイーザさん」

ルイーザ「なんでだよ。…はぁ、いいかコムブルー?」

ツヴァイ「はい?」

ルイーザ「お前じゃない」

ツヴァイ「あ、はい」

ルイーザ「アインス・コムブルー…お前変な事を考えてはいないよな?」

アインス「変な事とは?」

ルイーザ「例えば…脱獄」

アインス「…こんな状況で逃げれる訳ねぇだろ?ま、刑務所に移ったらどうしようかな〜」

ルイーザ「ふざけるなよ?お前が何か企んでるのは目に見えている」

アインス「へぇ?例えば…?」

ルイーザ「弁護士を使って必要以上に現場状況を聞いているらしいな?お前が犯人ならそこまで聞く必要もないだろう?」

アインス「…そりゃ俺は犯人じゃねぇからな。聞いて何が悪い?」

ルイーザ「…チッ、さっさとボロを出せば楽なものを」

アインス「ははっ、カマかけたのか?残念でした」

ルイーザ「本当の話だ。しかし、お前が裁判にかけられ有罪判決が下るのは目に見えている」

アインス「……」

ルイーザ「…覚悟していろ」

ルイーザ去る

ツヴァイ「ごめんね兄さん」

アインス「お前余計な事してんじゃねぇよ」

ツヴァイ「でも、弁護士も口籠ってる時があったんだよ。あれ雇われとは言え役に立たないよ」

アインス「…そうか」

ツヴァイ「名前覚えてるからティガに聞いてみるよ」

アインス「行動が早いな、お前は」

ツヴァイ「任せて、兄さんの役に立って褒められるの好きだから」

アインス「…お前ブラコンだったのか?」

ツヴァイ「いや?信念"だけは"尊敬してる」

アインス「だけは、って強調するな」

ツヴァイ「本当の事だもん」

アインス「マジで一言余計だよな…」

ツヴァイ「ま、次の交代まで辛抱しててよ」

アインス「頼んだ、ツヴァイ」

①③
警察署内デスク

ツヴァイ「すいません、ルイーザさん。今日はもう上がっても大丈夫ですか?」

ルイーザ「え?…あぁ、構わないぞ」

ツヴァイ「ありがとうございます。ちょっと用事が出来まして…」

ルイーザ「そうか、…お前は最近考え事をしている時間が増えた気がするからな…偶にはしっかり休めよ」

ツヴァイ「はい。お気遣いありがとうございます」

ルイーザ「ツヴァイ…その、次の休み…空いてるか?」

ツヴァイ「え、あぁ…空いてますよ」

ルイーザ「そう…」

ツヴァイ「…また連絡します。楽しみにしてるよルイーザ」

ルイーザ「……うん!」

ツヴァイ「それでは、お疲れ様です」

ルイーザ「うん、お疲れ様…」

①④
ティガの家

ツヴァイ「んふふ〜♪」

ティガ「随分ご機嫌だね、ツヴァイ君」

ツヴァイ「あぁ、ちょっとね」

ティガ「そういえば、頼まれてた例の物もうすぐ届きそうだよ。細かい日時が決まれば連絡する。まぁ、次の交代の辺りかな?」

ツヴァイ「そうか、ありがとう」

ティガ「でさー、ツヴァイ君からデータ貰ったじゃん?」

ツヴァイ「あぁ、どこまで調べられた?」

ティガ「多分、ツヴァイ君は勘づいてるんじゃない?これアインス君を嵌めた奴って警察関係者でしょ」

ツヴァイ「やはりその線か…」

ティガ「しかもそいつギャングの構成員だよ」

ツヴァイ「世も末だな…」

ティガ「警察に悪い貴族にギャング…最悪のトリプルコンボだね。逆に笑っちゃうよ」

ツヴァイ「なら、ストーリー構成はどうなる?」

ティガ「まず、殺されたゲオルグにギャングは雇われていた。金銭面でトラブルになり構成員に殺害される。そしてその構成員は警察関係…しかも上の立場の息子みたいだね」

ツヴァイ「なるほど…。その上兄さんを使っての偽装工作?随分整ってる筋書きだな」

ティガ「アインス君って犯行予告出すよね?」

ツヴァイ「怪盗っぽいからカッコいいって言ってた」

ティガ「何を言うか、泥棒風情が…」

ツヴァイ「で、それがどうしたんだ?」

ティガ「今まで犯行予告が出された人って警察に連絡したり警備を強化してたりしたけど、この人は何もしてないんだ」

ツヴァイ「ギャングと関係があるならそっちに頼むんじゃないか?下手にギャングと関係があるって警察に知られたくないだろ。…いや、そのギャングの構成員は警察の関係者か」

ティガ「いや、それは害者は知らないんじゃないかな。問題はそこじゃなくて、アインス君が利用されたのは偶然じゃないと思うんだ」

ツヴァイ「ほお?」

ティガ「情報を探っていく内にギャングはゲオルグへの要求を強めていたと思われる。それを提案して殺人を行ったのは警察関係者の息子である…PC画面見て、こいつデニス・ホフマン」

ツヴァイ「わー…知ってるわ…こいつがギャングの構成員で殺人犯?…お父さん泣くだろ」

ティガ「そのお父さんが息子の為に証拠を揃えてアインス君を犯人に仕立て上げたんだよ。ギャングと協力して…。後アインス君についてる弁護士…あれも親が用意した駒だ」

ツヴァイ「なるほどな…。話の筋は見えた。カオスだな」

ティガ「ツヴァイ君が上層部の情報を流してくれたおかげだよ。内部リークされるとは向こうさんも思ってなかっただろうね」

ツヴァイ「優秀な情報屋のお陰だな」

ティガ「ふふっ……つかさ取り調べってそんな緩いの?」

ツヴァイ「何がだ?」

ティガ「なんかアインス君が取り調べは黙ってればツヴァイ君が淡々と喋り続けるから模倣するの面倒って言ってたよ」

ツヴァイ「そういや兄さん頑張って喋り続けてたな。まぁうちの国は取り調べの録画や記録は義務付けられてないからな…まぁ義務じゃないだけで兄さんが拒否するように俺も誘導したけど」

ティガ「…ツヴァイ君ってなんでアインス君を守ってるの?もう狂人じゃん」

ツヴァイ「…俺の手助けがあって捕まるなら兄さんはその程度だって事だよ。でも、兄さんのおかげで悪徳貴族を制裁出来てるから一概に兄さんを否定するものでもないんだよ」

ティガ「それを悪徳警官がやるんだから本当に世も末だね」

ツヴァイ「善と悪が上手いように絡み合って回ってるのがこの世の中なんだよ」

ティガ「それはそうだけど…」

ツヴァイ「後、昔母さんに言われたんだ」

ティガ「え?」

ツヴァイ「兄弟が困ってたら助ける。そしたら兄弟も自分が困ってる時に助けてくれるって…な」

ティガ「…ふぅん、助け合いね。そんな信念があったなんて知らなかったな〜」

ツヴァイ「ふっ…そう言うわけだ。もう少し付き合ってくれないか?ティガ」

ティガ「乗り掛かった船だもん。もちろんだよ!」

①⑤
拘置所内

ツヴァイ「て事で兄さん裁判まで時間が無くなってきたよ」

アインス「…後何回、交代のチャンスがある?」

ツヴァイ「今日を含めて…最大で3回かな?」

アインス「またあの姉ちゃんか?」

ツヴァイ「別の人も来ると思う…時間は把握してるし頑張ってトイレに誘導して?」

アインス「無茶言うな!」

ツヴァイ「兄さんの口車は凄いからいけるんじゃない?」

アインス「お前俺をスーパーヒーローかなんかだと思ってる?」

ツヴァイ「根は良いのに腹の立つコソ泥だと思ってる」

アインス「この立場じゃなければ今すぐお前をぶっ飛ばしていた…」

ツヴァイ「いいから出て…。今日はルイーザさんはいるけど別の人が取り調べするから…」

アインス「はぁ…面倒くせぇな」

ツヴァイ「もう少しの辛抱だよ。ティガの方も少しづつ情報が集まってるんだから」

アインス「あぁ…殺人だけは絶対しねぇ。幾ら悪徳貴族とは言え俺のポリシーに反する」

ツヴァイ「犯罪者のポリシーなんて知ったこっちゃないけどね」

ルイーザ「おい!ツヴァイ、早くしないか!」

ツヴァイ「あ、ルイーザさん」

ルイーザ「お前が毎度毎度、長ったらしく喋るから別の人が取り調べをしてくれるんだぞ!?幾ら仲の良かった兄弟とは言え、結果を出さねば意味がないんだぞ!」

ツヴァイ「すみませーん」

ルイーザ「反省してるのか!?」

アインス「おいおいあんたらが喧嘩してんなよ…」

ルイーザ「ぐっ…、容疑者に言われるとは…」

ツヴァイ「まぁまぁ、ルイーザさん…最近ゆっくり休めてないから苛々してるんじゃないですか?」

ルイーザ「誰のせいだ…」

ツヴァイ「次の休みはゆっくり休んで……あ」

ルイーザ「おい、今プライベートな話をするんじゃない。ほら行くぞアインス・コムブルー」

アインス「は〜い」

ツヴァイ「兄さんごめん…」

アインス「え?」

ツヴァイ「いや、なんでもない…」

アインス「…?」

ルイーザ「何を立ち止まってる。早くしろ」

アインス「あ、あぁ……」

ツヴァイ「……しまったぁ」

①⑥
取り調べ終了

アインス「疲れた……」

警部「ちっ…口を割らん奴だな…おいハーン、こいつは今までもこの調子か?」

ルイーザ「はい、すみません」

警部「ふん、白状しないと言うのは本当らしいな。おいそこのお前、こいつを牢に戻せ」

警官1「あ、はい!」

ルイーザ「もういいんですか警部?」

警部「これ以上やっても時間の無駄だ。自白で取れないなら証拠を集めて突きつければ良い。何より決定的な証拠は揃っているからな」

アインス「……」

警部「さっさと連れて行け」

警官1「分かりました!ほら、行くぞ」

アインス「は〜い」

取り調べ室を出るアインスと警官

ルイーザ「証拠は…あれは本当に奴のなんですか?」

警部「何故お前がそこを疑う?」

ルイーザ「いえ…今まで奴を追ってきた身…、あの証拠があからさま過ぎて気になるんです」

警部「…それは頷けるが、人間誰しも下手を打つ…それだけだろう」

ルイーザ「…だといいのですが、何かを企んでそうで…」

警部「そこまで疑うのはお前位だ。俺は事件が解決すれば良いだけだ。お前もあまり根を詰め過ぎるなよ」

ルイーザ「はい…」

廊下

アインス「ねぇ警官さん、俺トイレ行きたい」

警官1「え?拘置所内の個室にもついてるだろ?」

アインス「綺麗な所がいいってのが当然じゃん?ねぇそこのトイレ行っていい?」

警官1「えー…もう、仕方ないなぁ…」

アインス「そこで少し待っててよ?ね?」

警官1「早くしてくれよ?」

アインス「あざーす♪」

①⑦
トイレ内

ツヴァイ「うまく来れたじゃない。はい、兄さん。服」

アインス「おぅ」

ツヴァイ「ティガから組織のアジトとか集まりやすい場所のメモを胸ポケットに入れてるから」

アインス「わかった。時間が惜しいからさっさと行くな」

ツヴァイ「後、俺…明日予定入れてるから代わりにお願いね」

アインス「……は?」

ツヴァイ「ルイーザさんとデートだから。時間と場所もメモしてある」

アインス「待て待て待て…何?デート!?このタイミングで?何でお前行かないんだよ!?」

ツヴァイ「いや、作戦的に無理でしょ?ほら、早くしないと」

アインス「バカ、待て!ルイーザ?あの姉ちゃん?お前あの人と恋人なの?」

ツヴァイ「うん、デートの時はルイーザって呼んでね?プライベートだから」

アインス「何でこのクソ忙しい時にそんな予定入れてんだよ!つか、恋人がいるってなんで言わなかった!?」

ツヴァイ「うっかりりうっかり」

アインス「うっかりで済むか!」

ツヴァイ「兄さん逮捕の件でルイーザも疲れてるから労う為にもね…マジでその時気を抜いてた」

アインス「……はぁ」

ツヴァイ「いい雰囲気になってもキスとかしたら裏切るからね。兄さんが俺と交代して事件を追ってる事バラすから」

アインス「それお前も共犯じゃねぇか」

ツヴァイ「冗談だよ。でも報復はするから」

アインス「弟の恋人に手はださねぇよ…頑張って誤魔化すわ…」

ツヴァイ「お願いね」

アインス「んじゃ、俺は先に出るな」

ツヴァイ「うん、気を付けて」

アインス「この交代で決めてやるよ」

廊下

警官1「あ、コムブルーさん」

アインス「お疲れ様。トイレの前で何してるの?」

警官1「容疑者のアインス・コムブルーがここのトイレを要望しまして」

アインス「そう、兄さ…アインスは毎回トイレに行きたがるからね…付き合わされるのは大変だよね」

警官1「いえ…」

アインス「じゃあね」

①⑧
ツヴァイの自宅

アインス「…さてと、胸ポケットに入ってたメモは…なるほどな。ギャングが警察と殺されたゲオルグと繋がりがあったのか…。しかも俺の情報が漏れてたのか。まぁ予告状出してんだからゲオルグがギャングに相談持ち掛けるのは当然か…」



アインス「流石ティガの情報だ。ゲオルグを殺めたのは警察関係者のデニス・ホフマン…父親も犯人がこいつだと分かってて証拠を捏造したのか。随分舐めた筋書きだな。だからと言ってこの情報は警察に渡す事は出来ねぇ、ツヴァイが上層部のデータを引っ張って来てティガが深層部まで潜り込んだ物だ…やはり、数日後にあるとされるこの組織の集会を狙うしかねぇか……」



アインス「それより問題は明日のデートだろ!?なんでこのタイミングでそんなんがあるんだよ!…はぁ、あいつのデートコーデとか知らねぇし、あんな強気な女相手ってどうすりゃいいんだよ。面倒くせぇ…」

拘置所内

ルイーザ「……アインス・コムブルー、お前は何を企んでる?ツヴァイは何か知ってるのか?……良い、喋らなくて…ただの独り言だ…。お前が殺人を犯したなんてそもそも信じていない。でも、変な事をしていたら…ツヴァイを利用していたら、何があろうと許さない……」

黙って俯いているツヴァイ

ルイーザ「…やはり、似ているな。お前達兄弟は…だが、私を謀(たばか)ったら承知しない」



ルイーザ「このバカ……」

拘置所から去るルイーザ

①⑨
翌日

アインス「はぁ…あいつの持ってる服でそれっぽい格好をしてみたが…何か窮屈だなぁ…女の子と遊んだ事はよくあるけど、こういうしっかりとしたデートなんていつ振りか分かんねぇし…そろそろ来る頃か?」

ルイーザ「お待たせ」

アインス「あ、……お疲れ様です。そんなに待ってないよルイーザ」

ルイーザ「そう…」

アインス「………今日はレストランでディナーでもと思って…早速行こうか?」

ルイーザ「……」

アインス「あの……」

ルイーザ「動かないでくれる?」

アインス「え?…ちょっと!?何でワイシャツのボタンを外してんの!?ここ外だぞ!!」

ルイーザ「ほら…やっぱり…」

アインス「え…」

ルイーザ「やっぱりあんたは…あんた達は私を騙してたのね」

アインス「は…?」

ルイーザ「鎖骨にホクロがない…あんたアインスでしょ?」

アインス「なっ!?……何を言ってるんだルイーザ…俺はツヴァイだよ」

ルイーザ「私を舐めないで。あんたはツヴァイじゃない。見た目とか似てるから口調や仕草を誤魔化せばバレないとでも思った?だいぶお粗末ね。私とツヴァイは恋人…だからこそ分かる部分もある。他の人は騙せても私には、その程度の変装じゃ欺けないわよ」

アインス「……はぁ、負けたよ。そーだ、俺はアインスだ…よく見破ったなお姉ちゃん」

ルイーザ「バカにしないで。1回目の取り調べ後に交代したでしょ?あの時から違和感はあった。でも次の取り調べ後はいつものツヴァイだった。そして今回…また変わったって事は牢の中にいるのはツヴァイね…何でそんな事をしたの!?」

アインス「…俺が犯人じゃねぇって信じてるのは俺だけじゃない…ツヴァイもそうだ。だから協力してくれている」

ルイーザ「…私だってあんたが殺人をするなんて信じてない…でも、弟をそんな危険な事に使う!?警察なのよあの子は…もしバレたら職を失う所の騒ぎじゃないわ!私たち警察も世間からなんて思われるか分かった物じゃないし、何よりあの子が迫害を受けるかもしれないでしょ!」

アインス「かもな」

ルイーザ「かもなって…あんたを助ける為に手伝うにしても規模が大き過ぎるのよ!今すぐ入れ替わりなさい。犯人は私が責任持って追うから…」

アインス「……」

ルイーザ「あの子を解放してあげて…」

アインス「…愛されてんだなツヴァイは」

ルイーザ「…お願い」

アインス「…でも、俺を助けると決めたのはあいつの意志なんだ。あんたが黙ってくれるなら俺の無実を晴らして、あいつをこの件から解放出来る。もう少し待ってくれないか?」

ルイーザ「何で犯罪者の言う事を聞かないといけないのよ!ツヴァイはツヴァイなのよ!あんたなんかに手を貸す理由が分からない!私を騙してまで犯罪者の兄弟を取るなんて最低よ!」

アインス「あいつはそういう奴なんだ!!」

ルイーザ「っ……」

アインス「あんたも俺が殺人をしてねぇと思ってくれてるのを聞いた。だからこそ、尚更ツヴァイは俺を助けようとしてくれてる…。今まで俺を追っていたからこそ、こんな結末は納得出来ねぇんじゃねぇか?」

ルイーザ「…でも、だからってあんな方法を取らなくても…」

アインス「殺人に関わってるのが警察関係者の線が濃厚なんだ…あんたらも下手に動けないと思う」

ルイーザ「え!?」

アインス「俺のお抱えの情報屋に聞いた。あいつは天才ハッカーだからそれについて詳しくは言えないが、あの証拠は殆どが捏造だ」

ルイーザ「…怪しいとは思ってたけど…」

アインス「だから、俺自身が動かねぇと事件は解決しねぇ。もしあんたが余計な事を言ったら俺の計画もツヴァイの協力も水の泡だ…だから頼む。黙っててくれ」

ルイーザ「………」

アインス「………」

ルイーザ「……帰るわ」

アインス「あ、おい!」

ルイーザ「私はあんたを信用してない。今のツヴァイも信用出来ない…」

アインス「……」

ルイーザ「だけど、お願い…これ以上ツヴァイに関わらないで。今回は目を瞑るから」

アインス「…ありがとう」

その場を去るルイーザ

アインス「……この件が終わったらあいつには俺を手助けするのは止めるように言うか……聞くか分からねぇけど…あいつ自身守るべきものを把握させる必要があるな…俺たち兄弟だけじゃなく………」

②⓪
数日後、取り調べ室

警官2「失礼します。容疑者、アインス・コムブルーを連れてきました」

ルイーザ「…ありがとう」

警官2「ほら、中に入れ」

黙ったまま中に入り、椅子に座る

ルイーザ「ご苦労、君は席を外せ」

警官2「大丈夫ですか?いつもはツヴァイさんか警部がご一緒でしたが…流石にお一人は危ないのでは」

ルイーザ「命令だ」

警官2「あ、はい…。失礼します」

部屋を出る警官2

ルイーザ「…なぁそろそろお前の口から聞きたい。お前は何故あんな事をした?私はアインスが人を殺したなんて思ってはないけど…弟を利用するのは違うと思うんだ…まして、恋人の私まで騙して…」



ルイーザ「……お前を愛してるというだけでは、私は兄弟には勝てないか?なぁ、ツヴァイ…」

②①
郊外の雑居ビル

アインス「この汚ねぇビルに俺を陥れた奴がいんのか…警察関係者だとかギャングだとか…この大怪盗アインス様に濡れ衣を着せるとは良い度胸だな。殺されたあのおっさんも浮かばれねぇだろ。ま、汚ねぇ精神した奴の同情なんてこれっぽっちもねぇけどな!お前らに費やした時間が勿体なかった…今日で全部清算してやるぜ!」

足音

アインス「おぅ、遅かったな。そういや、ティガに何か頼んでたらしいじゃん?取りに行けたのか?……そうか、何頼んだのか知らねぇけど早速行こうぜ、ツヴァイ!」

取り調べ室

ドライ(ティガ)「ツヴァイ……え、あっ…!ルイーザって貴女か!!わ〜、そういやそうだわ!牢屋なんて久し振りだし、ネットから離れてたからボーッとしてた!」

ルイーザ「え、…お前…」

ドライ(ティガ)「あ、ごめんなさい!僕、ドライ・コムブルー。アインス君とツヴァイ君の弟です」

ルイーザ「はぁ!?」

ドライ(ティガ)「あ、カメラとかないからってあまり大きな声出さない方がいいですよ?…ってかルイーザさんがツヴァイ君の彼女なんでしょ?うわ〜美人さん!羨ましいなぁ」

ルイーザ「ま、待て待て…お前、ツヴァイじゃないよな…?」

ドライ(ティガ)「僕はドライ。アインス君が長男でツヴァイ君が次男。そして三男の末っ子が僕♪僕兄ちゃん達みたいに上手い変装が出来ないから…極力喋らないようにしてたんだ」

ルイーザ「え、そんな…いつの間に…じゃあツヴァイは!?」

②②
雑居ビル前

ツヴァイ「あぁ、兄さん。舐めた連中は纏めてとっちめてやらないとね」

アインス「ルートは分かってるな?」

ツヴァイ「侵入ルートから逃走ルートまでバッチリだよ。何かあれ思い出すね…子供の頃、ティガ…ドライの部屋にあの子が大切にしてたぬいぐるみを隠して罠を仕掛けて窓から逃げ出すって計画」

アインス「母さんにこっぴどく叱られた奴な?でも罠まで仕掛けたのはお前だぞ?」

ツヴァイ「扉に仕掛けちゃったから窓から出るしかなかったし、他の罠も兄さんノリノリで仕掛けてたじゃない」

アインス「もういいだろ、その話は…乗り込むぜ?」

ツヴァイ「そういや兄さん今回予告状出したの?」

アインス「出す訳ねぇだろ?俺を舐めた連中は、俺が突然現れて驚かすんだよ!…いいか、くれぐれも殺すなよ?」

ツヴァイ「優しいなぁ、兄さんは」

アインス「殺しはしない。それが俺のポリシーだ」

ツヴァイ「そもそも犯罪者のくせに。犯罪者のポリシーなんて知ったこっちゃないよ」

アインス「それ、前も聞いた。ほら行くぞ!」

ツヴァイ「うん!」

②③
取り調べ室

ドライ(ティガ)「今頃二人は、アインス君を嵌めたギャングのアジトを襲撃してる頃じゃない?」

ルイーザ「二人でか!?」

ドライ(ティガ)「うん、僕の兄ちゃん達って超強いんだ♪」

ルイーザ「…なんて事だ」

ドライ(ティガ)「でも、アインス君に聞いたんだけど、ルイーザさん二人が交代してるの気付いたんでしょ?凄いよ!僕ね、いっつもあの二人にいじめられてたんだよ。二人が交代して僕を騙したり、二人で僕の部屋に罠を仕掛けたり、僕のぬいぐるみ隠したり…とんでもない兄だ…」

ルイーザ「…それでも、お前も兄を手助けするのか?」

ドライ(ティガ)「う〜ん。やってみたかったんだよね」

ルイーザ「やってみたかった?」

ドライ(ティガ)「うん!兄ちゃん達は僕に出来ない事を何でもしちゃう。だから僕は二人に出来ない事をしてる。でも、実行するのはいつもあの二人だ。僕もいつか、あの二人と同じ事がしてみたい…って、思ってたんだ…」

ルイーザ「……」

ドライ(ティガ)「でも、やっぱ向いてないね。適材適所♪僕は情報を集める方が得意だから、そっちが良いや。僕の仕事も楽じゃないし」

ルイーザ「…君は、いつの間に入れ替わったんだ?」

ドライ(ティガ)「前回の取り調べの時。僕は警官として紛れ込んでたんだ。そしてアインス君を牢へ戻す時にトイレで交代。その時点でトイレ内ではツヴァイ君が待機してたから順番に交代してたんだ」

ルイーザ「…警官になりすましたお前がアインスを演じるツヴァイに…そしてアインスはツヴァイに化け、ツヴァイはお前が扮する警官になってその場を去った…と?」

ドライ(ティガ)「せいかーい!ルイーザさん理解力あるね!」

ルイーザ「……お前達はとんでもない事をしでかすな」

ドライ(ティガ)「まぁ、なんだかんだ仲良し兄弟だからね♡」

②④
雑居ビル内
扉を蹴破るアインス

アインス「はーーい!ようこそ地獄へー♪」

ツヴァイ「声でか、…堂々と扉を蹴破らないでよ。俺の顔が割れたらどうなるの?」

アインス「お前はマスクしてるから大丈夫だろ?」

ギャング達が集まってくる

ギャング1「あぁ!?誰だ手前ぇ!」

ギャング2「おい、あいつ大泥棒のアインスじゃねぇか!?捕まったはずだろ!」

アインス「誰が大泥棒だ!大怪盗と言え!」

ギャング1「捕まった筈の泥棒野郎がなんの様だ?お仲間まで連れて何しに来やがった?」

アインス「デニス・ホフマンを出せ。しばき回してやる」

ツヴァイ「大人しく降伏すれば痛い目を見なくて済むぞ」

ギャング2「はぁ!?それで大人しくなるかよバカが!死んどけぇ!」

ギャング1「手前らぁ、あいつらをぶっ殺すぞぉ!!」

突進してくるギャング達

ツヴァイ「話を聞かない奴らだな……脇が甘いぞ。ふんっ!」

ギャング1「ぐぇ!?」

アインス「必殺パンチだ!おらぁ!」

ギャング2「ぎゃあぁ!?」

次々とやられていくギャング

ツヴァイ「やるねぇ兄さん」

アインス「お前も今の職に就いてから更に強くなったな」

ツヴァイ「そりゃ体が資本だからね」

②⑤

デニス「おい、なんだ?騒がしいぞ!」

奥の扉からデニスを含め数人現れる

ツヴァイ「デニス・ホフマン…」

アインス「あの真ん中の奴だな…まだ、奥に何人かいやがったのか」

デニス「あ?俺の事を知ってんの?…ん?お前見たことある顔だな」

アインス「大怪盗アインス様だ。手前に泥を被らされた可哀想な男さ」

デニス「アインス…あー、あいつか。お前俺の代わりに死刑になんじゃねぇの?なんでここにいる?」

ツヴァイ「裁判の前に死刑はない。お前本当に警察関係者か?」

デニス「何?そこまで知られてんの?そりゃパパはえら〜い立場らしいよ?でも、可愛い俺の為になんでもしてくれんだ♪そのおかげで俺はこの組織の中でも優遇されてんの」

ツヴァイ「こいつやったら更に上の連中に狙われそうだね」

アインス「その時はその時だ。ま、殺しはしねぇし報復が怖くてこんな事するかよ」

デニス「殺しはしない?ぷっ、ぬるいこと言うね〜。じゃあこっちは殺しちゃおっかな〜!あいつらをやれ!殺せた奴はお小遣いあげるぞ〜!」

一斉に襲いかかってくるギャング達

ギャング3「死ねぇ!!」

ツヴァイ「こっちは殺しはしない。…腹ががら空き…はぁ!」

ギャング3「うぐっ…!?」

デニス「なっ…」

ギャング4「じゃあ手前だぁ!」

アインス「金属バット?…スイングが大振り過ぎだろ。ほら隙だらけ♪…くたばっとけぇ!」

ギャング4「ぐはっ…!」

またしても倒れていくギャング達

デニス「化け物かよ…たった二人でこの人数を…」

ツヴァイ「さてと…」

アインス「後はお前だけだ」

②⑥

デニス「ち、近付くな!」

拳銃を取り出すデニス

ツヴァイ「拳銃…!」

アインス「腰が引けてるぞ?それじゃあ撃てねぇ」

デニス「うるさい!俺は射撃が得意なんだよ。お前らなんて蜂の巣にしてやる。一歩でも動いてみろ、撃ち殺してやるからな」

アインス「…面倒くせぇな」

ツヴァイ「動かなきゃいいんだな?」

アインス「え?」

銃声音

デニス「え…う、撃った…?」

ツヴァイ「撃ったよ。俺がね」

アインス「!!?何してやがんだツヴァイ!」

倒れるデニス

アインス「っ!?おい、殺してねぇだろうな!?」

ツヴァイ「よく見て来なよ兄さん」

アインス「はぁ?………息、してる?」

ツヴァイ「麻酔銃。これをドライづてに頼んでたんだ」

アインス「お前、それくらい言っとけよ…」

ツヴァイ「詳しく聞かれなかったし。というか聞いて!これ取りに行く日、ルイーザとのデートの日だったんだよ?俺がドライに変装して取りに行った日に兄さんがルイーザと…」

アインス「だったら尚更言えよ!俺だって好きでお前の代わりにデート行った訳じゃねぇのに!」

ツヴァイ「でも、兄さんってドライに化けるの下手くそじゃん。変装の名人が聞いて呆れるよ」

アインス「お前とは昔から交代し合ってたから似せれるよ…でも、あいつの思考や仕草は理解出来ねぇ…」

ツヴァイ「天才故って奴だよね。俺は真似するだけなら出来るからさ」

アインス「はいはい…ま、これで無事俺の無実が証明されるだろう。後は任せたぜ?警察様よ」

ツヴァイ「勿論、悪には正しき制裁を下すよ」

②⑦
後日

ニュース「臨時ニュースです。先日殺害されたシュヴァルツ・ゲオルグ氏ですが、真犯人が逮捕されました。犯人であるデニス・ホフマンは自供をしており、殺害を認めているそうです。警察は動機を探る他、捜査を進めておりますーーー」

警察署内、デスク

ツヴァイ「犯人の名前、堂々と出してますね」

ルイーザ「まぁ、言い逃れが出来ないんだろう。デニスの親も捕まったし、良い身分だったのに間抜けな事だ」

ツヴァイ「そうですね」

ルイーザ「……所でお前いつの間に戻ったんだ?」

ツヴァイ「え?」

ルイーザ「今のお前は本物のツヴァイだろ?今度はいつの間に戻ったんだ?あの日から取り調べはしてないだろ?」

ツヴァイ「……時間ギリギリで兄さんが警官に扮してドライと入れ替わりました」

ルイーザ「お前達があの組織を潰した時か?」

ツヴァイ「はい、もう超人的なスピードで…」

ルイーザ「バカか?」

ツヴァイ「意外と間に合うもんですよ。ま、ドライも時間を稼いでくれてましたし、粛清自体そんな時間もかからなかったんで」

ルイーザ「どうりで長々と話をする筈だ…。お前と似てるな、そう言う所」

ツヴァイ「俺とドライがですか?えー、嬉しいなぁ♪」

ルイーザ「はぁ…」

ツヴァイ「というか、何で俺らが入れ替わってるって気付いたんですか?」

ルイーザ「…そりゃ分かるさ、どれだけお前の事を見てたと思う?」

ツヴァイ「……めっちゃドキッってしました」

ルイーザ「後は、鎖骨のホクロ。そこが決定打だな。アインスにはホクロが無かった」

ツヴァイ「…は?俺以外の男の鎖骨を見たんですか!?」

ルイーザ「確認だ!」

ツヴァイ「兄さん殺す」

ルイーザ「落ち着け。…それ以前に違和感はあったけどな…。黙ってれば似てるぞ、三兄弟」

ツヴァイ「……すいません、巻き込んでしまって」

ルイーザ「…お前が家族を取っただけだ。そのおかげで冤罪が晴れたし、事件が解決した。この事は墓まで持っていくさ」

ツヴァイ「…ルイーザ」

ルイーザ「でも、デートをすっぽかした事は許さないからな…楽しみにしてたのに、このバカ」

ツヴァイ「…ごめんなさい」

ルイーザ「もういいよ。お前が変な奴だってのは知ってる。でも好きだから、私も大概だ」

ツヴァイ「…兄さんやドライは家族だから大事なんです。二人を守る為に警察になった訳じゃない。ここは俺の昔からの夢だったんです」

ルイーザ「…うん」

ツヴァイ「結果的に二人をサポートしてるし協力して貰っている時はあります。警察としては失格なのも自覚してます。でも、それで助かる命があるなら…多少泥が付いた手でも誰かを守れるなら……それが俺の本心なんです」

ルイーザ「…バカ」

ツヴァイ「はい、バカです。それでも貴女が好きです」

ルイーザ「うん…、私も…」

ツヴァイ「だからルイーザ………」

ルイーザ「な、なに…?」

ツヴァイ「………えっと、」

ルイーザ「…なに?」

ツヴァイ「………次のデートはいつにしましょう?」

ルイーザ「は?」

ツヴァイ「だからデート…」

ルイーザ「この流れでデートの日取り?バカなの?」

ツヴァイ「いや、言うべき場所は考えたいじゃないですか…後、薬指のサイズ聞いとかないと…後、好きな宝石は?やっぱダイヤが定番かな?あの、大きさってさ…」

ルイーザ「な、も、……ば、バカーー!!」

②⑧

アインス「ほぉほぉほぉ、そうかそうか…ツヴァイ君はあのお姉ちゃんと結婚をね〜」

ドライ(ティガ)「わ〜!おめでたいね!!」

アインス「いや〜見たかったな、お前の晴れ舞台…」

ドライ(ティガ)「僕は顔バレしてないし、見に行けるかな?」

アインス「いや〜めでたいめでたい」

ドライ(ティガ)「アインス君の殺人の容疑も晴れたし、真犯人もそのお父さんも捕まったし一件落着だね!」

ツヴァイ「うん、みんなお疲れ様」

ドライ(ティガ)「お疲れ様〜」

アインス「おつかれ〜……じゃねぇわ!!何で俺はまだ捕まってんだ!?つーか堂々と面会に来るんじゃねぇドライ!」

ドライ(ティガ)「えー、せっかく会いに来たのに酷くない?」

ツヴァイ「兄さん、幾ら人払いをしてるとは言え、あまり大きな声を出さないで?」

アインス「ツヴァイ〜?何で俺まだこっちにいんの?」

ツヴァイ「殺人の容疑は晴れたけど、強盗窃盗その他諸々…お勤めがんばってね」

ドライ(ティガ)「がんばれ〜」

アインス「兄弟が冷たい!そりゃそうどけどさぁ!」

ツヴァイ「人は殺してなくても罪はあるから」

アインス「あんなに協力してくれた優しいツヴァイ君は何処へ行ったのか…」

ツヴァイ「そりゃ兄さんが殺人はしてないのを証明する為だよ。でもそれとこれは別。俺は兄さんを怪盗として今まで追ってたんだから。後、兄さんが困ってそうだったし」

アインス「俺の顔に泥が付いた〜」

ツヴァイ「泥棒になった時点で付いてんだよ」

アインス「俺は泥棒じゃねぇ、大怪盗様だ!若者に人気あるってニュースでも言われてたろ?」

ツヴァイ「はいはい、大怪盗様(笑)だろうと捕まった時点でその程度なの」

アインス「ね〜、お兄ちゃん困ってるんだけど?」

ツヴァイ「今のお兄ちゃんはそこまで困ってないだろ?さっさと刑務所に行っとけよ」

アインス「ドライく〜ん!俺困ってるんだけどー!この頭の良いバカを説得してくれ〜」

ドライ(ティガ)「あははっ、いくら兄弟が困ってても助ける時と助けれない時があるよ?ね、ツヴァイ君。幾ら母さんの教えとは言えこれは助けられないよね?」

ツヴァイ「ん?」

アインス「は?何の話だ?」

ドライ(ティガ)「え?ツヴァイ君が前、兄弟が困ってれば助ける。そしたら、自分が困った時に兄弟が助けてくれるって…母さんに言われたって聞いたんだよ。僕それ知らなくてさ〜、僕が生まれる前に聞いたの?」

アインス「…ツヴァイ、それ母さんが言ったのか?俺知らねぇんだけど」

ドライ(ティガ)「え?」

ツヴァイ「……あ、それ言ったの隣のおばちゃんだ!」

ドライ(ティガ)「………アインス君、この頭の良いバカはどうしようもないよ。ルイーザさんに同情すら覚える…」

ツヴァイ「いや〜、うっかりうっかり」

アインス「もう怖いこいつ!」

ツヴァイ「て事で、時間だ。帰るぞドライ」

アインス「はぁ!?」

ドライ(ティガ)「あ、うん…」

ツヴァイ「じゃあ兄さん。お勤めがんばってね」

ドライ(ティガ)「ば、ばいば〜い…」

アインス「待てこら、薄情者!お兄ちゃんを蔑ろにするなんて弟の風上にも置けないぞ!」

ツヴァイ「そもそも犯罪を犯してそれを美徳と思ってる兄は困る」

ドライ(ティガ)「僕も人の事言えないけど、そこまで喚き散らすのは、ダサいよ?」

アインス「うっ…!?」

ツヴァイ「行くぞ、ドライ」

ドライ(ティガ)「は〜い」

出ていく二人

アインス「………………絶対脱獄してやるぅぅ!!」

②⑨

ニュース「臨時ニュースです。昨夜未明、強盗犯アインス・コムブルーが移送された刑務所から逃走しました。警察は急ぎ逃走した犯人を追っております。彼は世間を騒がす大泥棒として若者から注目を集めており…、ここで脱獄したアインス・コムブルーを映した監視カメラの映像を入手しました!こちらです」

アインス「俺は大怪盗だーー!!」

警察1「いたぞ!待てー!」

警察2「逃げるな!追えー!」

アインス「待てと言われて待つバカがいるかバーーカ!!」

警察所内、デスク

ルイーザ「…あいつはバカなのか?」

ツヴァイ「三兄弟とも頭の良いバカです」

ルイーザ「そうか…。結局追いかけっこは終わらないらしいな」

ツヴァイ「ですね、行きますか?」

ルイーザ「当然だ」

立ち上がり歩き出す二人

アインス「絶対あのバカ弟の結婚式に乱入してやるー!!」

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