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【声劇台本】Silver Bond.(男1:不問2)

登場人物

・トーマス/不問
10歳くらいの少年。ストリートチルドレンで、盗みを働いて生きている。根は真面目だが、大人を信用していない。

・アラン・ロバーツ/男
貿易関係の仕事をしている貴族の若い男。素直ではつらつとした性格で、周りからはお人好しだと言われている。

・仲介人/不問
人身売買を秘密裏に行ってる組織の一員。男女の記載はないのでご自由に演じて下さい。

サブキャラクター(兼ね役推奨)
・青果店店主/不問

【時間】約35分
【あらすじ】
光と闇が交差する中世のイギリス。少年トーマスは毎日を生きる為に盗みを働くストリートチルドレンだ。今日もまた盗みを働き1人で生き様としていた。その時、トーマスの背後から声高らかに現れたのは若い貴族の男だった。


【本編】



トーマス「はぁ、はぁ…はぁ。ふぅ…ザーコ!あの店も楽勝だな!あの店主、俺が果物を盗む所すら見えてなかったんじゃね?………はぁ、生き辛い世界だぜ…」

アラン「こら!そこの少年!!」

トーマス「!?」

アラン「君、あそこの店から果物を盗んだだろう?私は見ていたよ」

トーマス「な…なんだよ、綺麗な身なりして…貴族様がこんな裏路地まで何の御用ですかー?」

アラン「私はアラン・ロバーツ。君が盗みをしていたのを見ていたので咎めにきた」

トーマス「…何が咎めにだよ、偽善者か?お優しい貴族様なら物を盗まないと生きて行けない子供に目を瞑ってくれよ」

アラン「駄目だ。確かにこの時代はアンダークラスの者には生き辛い世の中だろうけど…ダメなものはダメだ。偽善と呼ばれても良い。でも、私が見てる内は許さないよ少年」

トーマス「……チッ…フンッ!」

素早くアランの脚に蹴りを入れる

アラン「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!?すねぇぇ!!」

トーマス「はっ、ザーコザーコ!この偽善者貴族ー!!これ以上痛い目に会いたくなければ金目の物よこしなっ、いっでぇぇ!!?」

殴られるトーマス

アラン「全く…。痛かったぁ…蹴り強いな君…」

トーマス「殴んじゃねぇよ!この野郎!」

アラン「最初に手を出したのは君だ」

トーマス「くそ…、あーもう怒ったわ!!このクソ貴族め、痛い目見してやる…!」

懐から小さいナイフを取り出すトーマス

アラン「…小型ナイフ?何でそんなもの…」

トーマス「色々落ちてんだよ、裏路地ってのはさ」

アラン「なるほど…これは危ないな…」

トーマス「死にたくなきゃ金目の物置いていけぇ!!」

アラン「はぁ、困った子供だ…」

突っ込んでくるトーマスを軽くいなして、押さえつける

アラン「ふんっ!」

トーマス「うがぁ!?」

アラン「やれやれ、護身として格闘技を教わっといて良かった。偶にいるんだよね君みたいな子」

トーマス「嘘だろ…動きが見えなかった!?くそ、放しやがれ!」

アラン「このまま警官が来るまで押さえつけててもいいんだよ?」

トーマス「くそぉ…」

アラン「ふっ、少年……大人を舐めるのも良い加減にしなよ?痛い目を見るのは…どっちか教えてあげようじゃないか…たっぷりとなぁ…」

トーマス「ひ、ひっ……」


青果店前

店主「あ、この子この前近くの店で盗みをしてた子供じゃないですか!」

アラン「申し訳ありません、この店でも盗みをしたようで…こちらお返しします。後これ…少ないですが」

店主「そんな…こんなに?あはは…物は返ってきましたし、犯人を捕まえて下さって感謝しますロバーツ様」

アラン「いえ、これも私の仕事です。トーマス頭を下げなさい」

トーマス「……」

アラン「不服そうな顔をしない。次に行くよ」

トーマス「つ、次!?」

アラン「他に君が盗みをした店は何処だい?頭を下げさせるからね」

トーマス「な、なんでだよ!!」

アラン「頭を下げた後は私の家に来てもらうよ」

トーマス「何で!?」

アラン「私の仕事の内だからね」

トーマス「…はぁ?」


アラン宅

トーマス「はぁ…マジで全部の店に頭を下げさせるとは…」

アラン「全く、中々の問題児のようだねお前は」

トーマス「しかも、殆どの店に金を渡すとか…何考えてんだ?まぁまぁ立派な家だし、あんた何者なんだよ?」

アラン「私はアラン・ロバーツ。貿易関係で仕事をしてるんだよ」

トーマス「それはさっき聞いたよ。何で俺みたいな子供を家に連れてくんだ?……そういや、最近俺と同じ様な孤児が居なくなってるって……まさかあんたが…!?」

アラン「おや、その話知ってるのかい?…ふふ、どうだろうねぇ?」

トーマス「ひっ…」

アラン「……なーんて、半分正解かな?」

トーマス「半分…?」

アラン「君みたいな子供を拾ってるのは正解だ。でもね、それは悪い事に利用してるからじゃないんだ」

トーマス「どう言う事だよ…」

アラン「私は子供達を孤児院に移してるんだ」

トーマス「孤児院?」

アラン「うん、なるべく環境の良い所にね」

トーマス「…路地裏から子供が減っていたのはそう言うことか…ってか、何でそんな事してんだよ」

アラン「…私の性格なんだろうね。弱き者に手を差し伸べたくなる…偽善だの義賊だの言われて仕舞えばそれまでさ。出来る事はしたい…そんな性分なんだよ」

トーマス「……」

アラン「トーマス、君の受け入れ先をこれから決める。それまでうちで雑用なりしてくれないかな?」

トーマス「は!?」

アラン「君は私に拾われた身…。拒否権は無いに等しいよ」

トーマス「くそ貴族めぇ……」

アラン「ここでは、アラン様と呼びなさい。トーマス」


数日後、朝

トーマス「もーやだぁ!!」

アラン「うるさ…何?」

トーマス「あ、アラン!」

アラン「やぁ、おはよう。トーマス…朝は忙しいから静かに仕事をしろと言ってるだろ」

トーマス「でも…俺掃除とかしたことねぇし分かんねぇんだよ!」

アラン「分からないなら他の者にやり方を聞けば良いだろう?後、君はここにいる間はうちの使用人だ。呼び方には気を付けなさい」

トーマス「他って…使用人少ねぇじゃんこの家」

アラン「あー…ちゃんとした仕事はあるけど、慈善活動みたいな事をしてるから誇れるほどの財力とは言えないんだよなぁ」

トーマス「…でも、よく何人もの子供を保護出来るな」

アラン「まぁ…仲介してる感じに近いかな…」

トーマス「仲介?」

アラン「何か…子供を集めて仕事をさせてる人がいるらしくてね、ある程度大きくなるまで孤児院で暮らすように言ってるんだって」

トーマス「……それ、真っ当な仕事か…?」

アラン「え?あぁ、使用人とか肉体労働とからしいけどね。君は細い割に力強いから結構頑張れると思うな」

トーマス「……」

アラン「逆に、細かい仕事は苦手そうだよね。その辺も伝えておくよ♪」

トーマス「………」


数日後

アラン「トーマス、トーマス?」

トーマス「はい…何?アラン」

アラン「アラン…?」

トーマス「アラン…さまぁ…」

アラン「うん!…後は敬語だな」

トーマス「……で、何ですか?」

アラン「君の行く孤児院が見つかったよ。施設としては申し分ない所だよ。良かったね」

トーマス「良かった…ねぇ、自由気ままに過ごしてた頃の方がマシだったぜ」

アラン「ストリートチルドレンは問題視されてるから私としてはこの活動は悪く無いと思うけどな」

トーマス「本気で言ってる?お前がやってんのは自己満だろーが。そもそもアンダークラスに優しくねぇ世の中で幸せなんてある訳ねぇだろ」

アラン「……」

トーマス「なんだよ…その目」

アラン「そう…だね、それに対しては言い返す事が出来ないな…」

トーマス「……貴族のくせに同情してんじゃねぇよ」

アラン「でも、これからは少しマシになると思う。悪い事をしなくて良いんだから」

トーマス「悪い事……かよ」

アラン「あ、その…生きる為に必要とは言え犯罪はいけないからね!私はそういう意味で言っただけで…」

トーマス「いいよ。アランは善意の塊みてーな性格だもんな…。俺ら最下級層の気持ちなんてわかんねぇもんな」

アラン「トーマス、そういう訳じゃ…」

トーマス「まだ掃除終わってないので、失礼します…」

アラン「待ちなさい、まだ話は…」

トーマス「すいません、詳しい事は後で聞くので…」

アラン「トーマス…」

その場を去るトーマス

トーマス「子供に仕事をさせる為に孤児院に預ける…こんなご時世環境の良い孤児院も中々ないだろ……何か引っ掛かる、あいつ本当に信用していいのか…?」


翌日

トーマス「はぁ、今日も屋敷の掃除…その後買い出し頼まれてたし…後は…執事長に聞くか…。あれ、今日アラン見てねぇな」

ハッとするトーマス

トーマス「あっ…、昨日結構言っちまったしなぁ…いくらアランでもあんな言い方しちまって…悪い事したかも…でも、流石に話が怪しすぎるだろ…」



トーマス「…そういや噂話であったな、この辺で貴族に優しくされた孤児はいなくなるって…それがアランの行動ならあいつの慈善活動で孤児院に引き渡してるって事だよな………。だとしても胸騒ぎがする………はぁ、考えても駄目だ!今は仕事に集中しよ!」

応接室の前を通るトーマス

トーマス「ん?話し声…応接室から。誰か客でも来てんのか?」

アラン「ふざけるな!?」

トーマス「アランの声…」

扉を開け、中を覗き見るトーマス

トーマス「バレてないな…何を話してんだ?」

仲介人「アランさん、お声が大きいですよ」

アラン「しかし、君は…あぁ……くそっ!」

仲介人「そんなに怒らないでください。これもビジネスです」

アラン「ビジネスだと…?戯言は嫌いなんだが」

仲介人「ここ最近預けられる子供は流行病があるせいか価値が低いんです。まず健康診断を受けさせてから金額をお渡しします。その分の値段は引きますが、次の子供は中々良い価値がつくかと」

トーマス「えっ……」

アラン「トーマスの事か?」

仲介人「あれは良い臓器を持ってるはずです!その後は物好きな貴族の奴隷にでも…」

トーマス「……っ」

仲介人「まぁ、ざっと見積もるとですね…」

アラン「あのね、私は……」

ガタンと扉から物音

仲介人「おや、盗み聞きでしょうか…?」

アラン「……っ、トーマス」

走り出し、屋敷を出るトーマス

トーマス「はぁ、はぁ…はぁ……。くそ、やっぱり裏があったのかよ……」

裏路地に逃げ込むトーマス

トーマス「貴族の奴隷に…臓器、人身売買か……中々たちの悪ぃビジネスやってんじゃんあいつ……信じなければ良かった…やっぱ偉そうな奴なんてそんなもんだな!下級層のガキの利用価値なんて…そんなもん…」



トーマス「アランも…、あの優しさも全部俺を騙す為………ちょっとでも信用した俺がバカだった…」


2日後、夜
カラスの鳴き声

トーマス「はぁ……、逃げ出して2日位か…。盗みは目立つから残飯漁ってたけど、流石に腹減ったな…。アランは見てないし…、でも時間の問題だろうから街から少し離れようかな……」



トーマス「…何も考えずに逃げちまったけど、どうしよう…。………前の生活に戻っただけなのに…何でこんな悲しいんだ…?アランの事…何で信用なんてしちまったんだろう…」

遠くからアランの声

アラン「……マース、…トーマスー!トーマス!!」

トーマス「!?……アランの声?」

アラン「トーマス、トーマス何処にいるんだいー!?」

トーマス「……」

アラン「トーマスーー!!…くそ、ここにもいない…後は何処を…」

トーマス「何してんだよ、アラン」

アラン「トーマス!?そんな裏路地にいたのか!」

トーマス「貴族が夜に大声で走り回って何してやがる。品がねぇぞ」

アラン「あはは…否定が出来ないな…君を探すのに必死だったから…」

トーマス「なんで…俺を探してたんだ?」

アラン「…2日前から君がいなくなって心配してたんだ。家の者皆んな君を探してるんだよ。ほら、帰ろう?」

トーマス「………っ」

踵を返し歩き出すトーマス

アラン「おい、何処に行く!?待ちなさい!」



トーマス「付いてくるな!俺は前の生活に戻るだけだ。またこの狭い路地でドブネズミみてぇに生きるんだよ!」

アラン「何で!?君はもううちの使用人で…」

トーマス「その後奴隷として売りに出されるのにか!?」

アラン「…何でその事を」

トーマス「2日前…お前が話してるのを聞いた…俺より前に保護した奴等…皆んな売られてたんだろ?」

アラン「……」

トーマス「売られる位なら勝手に生きて勝手にくたばりたい…俺はクソな大人どもに弄ばれる為に生まれた訳じゃねぇ!!」

アラン「トーマス…」

トーマス「まぁ、お前がそんな悪い商売をしてたなんて信じられなかったぜ。人の事言えねぇ位か悪い事してんじゃねぇか。騙されたぜ」

アラン「違う…」

トーマス「何が違うんだよ?どうせ俺を探してたのは粋の良い商品がいなくなって焦ったからだろ?捕まるくらいなら危険を犯してでも逃げ切ってやる!」

アラン「違う!!」

トーマス「っ……」

アラン「違うんだ、聞いてくれトーマス!私は…私は嘘を吐かれてたんだ…あいつに…」

トーマス「…は?」

アラン「おかしいとは思ってた…子供を保護して孤児院に預けるだけで何であんな金額を出すのかって…もし真実が私にバレてしまってもあの額だ…黙っていると思ったんだろう…」

トーマス「お前、マジで何も知らなかったのか?」

アラン「うん…今までのお金は新しい子供を保護した時に使ってた…まさか、子供を売った金で新しい子供を保護してたなんて…何て間抜けなんだ私は…」

トーマス「………」

アラン「すまない、トーマス!もうあいつとの契約は切った。今までの金も要求されたら返したっていい。私は…取り返しのつかない事をしたんだ…償い切れない…」

トーマス「アラン…」

アラン「せめて君だけでも救いたい…何もなくなる私かもしれないが…君だけはちゃんと私の手で良い施設に連れて行ってあげるから…」

トーマス「…バカかよ」

アラン「…はは、だよね。今更信じてもらえないよね…。知らなかったとは言え犯罪に手を染めてたなんて…」

トーマス「ほんとバカだぜ、お前。…でも、なんかアランらしいわ」

アラン「え?」

トーマス「貴族のくせに俺にそんな泣きそうな顔で謝るなんて…お前くらいしかしねぇだろ。近所の連中がバカ貴族って言ってるの納得するわ」

アラン「え、そんな事言われてたの!?」

トーマス「それすらも知らねぇのかよ。…まぁ、信用した俺も俺だ…勝手にいなくなって悪かった」

アラン「トーマス…!あぁ、本当に良かった…」

トーマス「だ、抱きしめんじゃねぇ!」

アラン「ごめんな…本当にごめん…」

トーマス「……うん」



仲介人「これはこれは…なんとも仲睦まじい限りですねぇ、アラン様」

トーマス「!?」

アラン「貴様、何でここに!?」

仲介人「何故?そりゃ商品を受け取りに来たに決まってるでしょ?」

トーマス「アラン、あいつ…」

アラン「あいつは今まで子供達を孤児院に預ける為に橋渡しとなっていた仲介人だ。そもそもの話を持ちかけたのもあいつ…。最初から騙していたのか」

仲介人「そう捉えるのならそうですね、しかし貴方もいい思いが出来たでしょ?黙ってそのガキを渡してこのままビジネスを続けませんか?」

アラン「悪どい商法の為に子供を売る事がビジネスだと?私は子供が無碍に殺されるのだけは絶対に許せない!」

仲介人「……頭のおかしい人…。どーいう教育を受けたらそうなるのか…はぁ、もういいや。取引に応じないなら殺せば良いのです。安心して下さい、貴方が死んだらそのガキはこちらが保護します。一発で仕留めてあげますから動かないで…?」

トーマス「っ!?アラン、あいつ拳銃を取り出しだぞ!?」

アラン「本気で殺す気か…この子は渡さない!トーマス、君は逃げて…」

仲介人「逃がしません!!」

銃声

アラン「ぐあぁぁっ!!?」

トーマス「アラン!?」

仲介人「あっとぉ…焦って撃ち損じました…。ま、ゆっくり嬲り殺す方が好みなのでこれは僥倖♪」

トーマス「アラン!…あ、脇腹から血が…」

アラン「っ…、掠っただけだ…いいから早く逃げろ!」

トーマス「でもっ」

仲介人「あっはっはっ!鉛玉喰らってかすり傷ですって?随分と強がりますねぇ!」

アラン「狂人め…」

仲介人「うちはねぇ、人身売買等をメインで行ってる組織なんですよ。なので、取引に応じないなら殺さないと…正義気取りのバカ貴族様は口がお軽いでしょうしね」

トーマス「………」

アラン「トーマス!?」

仲介人「おや、どうしました?クソガキちゃん、大人しくこちらに来て頂けますか?」

トーマス「これ以上アランを傷付けるな…!」

仲介人「ほぉ…、君が大人しく付いて来てくれるのなら命の保証はしない事もありませんよ」

アラン「行くなトーマス!奴の口車に乗るな!今更こいつらが私を生かしておく筈がない!!」

仲介人「ふふっ、さぁ?どうでしょうね」

トーマス「俺は孤児だ。親に捨てられて、死なない為に盗みを働いて…悪い事ばかりしてきた。…なのにそこのバカ貴族様は本当の善人だ……こいつが生きてる方が世の中マシになりそうだろ」

仲介人「…死ねば変わらない気もしますが…」

アラン「駄目だ…トーマス!私はどうせ殺される!ならば君だけでも逃げて…生きてくれ!!」

トーマス「どういう決断するかは俺に決めさせてくれ……大丈夫だから」

アラン「大丈夫って…何が……」

トーマス「おい、あんた」

仲介人「はい?…大人しく付いて来て下さいますか?」

トーマス「あぁ…」

ナイフを取り出し、突っ込む

アラン「行き先は地獄だけどなぁ!!」

仲介人「ナイフ!?何故お前みたいなガキが…」

アラン「トーマス!!」

トーマス「ガキだと思って舐めんなぁ!おらぁ!」

仲介人「ぐあっ…!?」

仲介人にナイフを刺す、痛みで拳銃を落とす仲介人

トーマス「こちとら根っからの悪ガキなんでね!お前みてぇな悪い奴を殺しても問題ねぇだろ!」

仲介人「っ……ガキの分際でぇ!!」

トーマス「ひっ…!!?」

仲介人「素直に着いてきたら痛い目に合わせなかったものを…こんな小型ナイフで人を殺せる訳ないだろうが!手癖の悪い腕は折らせてもらう!」

トーマス「ひっ、やめ……」

アラン「トーマスを離せぇぇぇ!!」

仲介人を突き飛ばすアラン

仲介人「くっ、…このバカ貴族がぁ!」

落ちてる拳銃を拾い素早くリロード

アラン「バカで結構。これが私だ」

仲介人「しまっ、私の銃……」

アラン「さよなら」

銃声

仲介人「あっ………」

バタリと倒れる仲介人



トーマス「……死んだ?」

アラン「…あぁ」

トーマス「…お前、凄いな。格闘技だけじゃなく銃の腕もあるのか…」

アラン「私の叔父が狩猟とか好きでね…よく教えてもらった……ごめん、ちょっと座らせてくれ」

トーマス「あ、うん…」

表通りが賑やかになる

アラン「はぁ…流石に銃声二発…警官達が騒ぎ始めたか」

トーマス「おい、どーすんだ?警官呼んできた方がいいか?」

アラン「…いや、事件が公になったら私たちの身も危ない…こいつら組織で動いてると言ったからな、その事を知ってる私達は狙われる可能性がある。それに私はこいつ以外の相手は知らないし、私が犯罪の肩棒を担いでるのは変わりない」

トーマス「じゃあどうすんだよ!…血も出てるし、このまま死んじまったりしねぇよな!?」

アラン「トーマス…大丈夫。見た目より酷くない筈だから…。殆ど休息を取らずに君を探し回ってたせいで疲れてるだけだよ…」

トーマス「アラン…アラン…ごめんなさい…」

アラン「え…?」

トーマス「俺が逃げなきゃこんな事にならなかった…もっとお前を信じてれば…」

アラン「そんな事ない…あの時あいつが口を滑らせなかったら君も他の子供達と同じ運命になってた…君は何も悪くないんだ…」

トーマス「うっ…でも、でも……」

アラン「トーマス、泣くな。君は生きてる。私も生きてる…それで充分じゃないか…君は悪くない…君はとても優しい子だ…」

トーマス「アラン……」

アラン「ねぇトーマス…君さえ良ければ私と一緒に付いて来てくれないか?」

トーマス「え…?」

アラン「私ね…ずっと前からどっか遠く…静かな田舎にでも引っ越そうと思ってたんだ。街は汚い所が目立ってしまう…私には合わないんだよ」

トーマス「アラン…」

アラン「私が所有している物を幾つか売ってそれを元手にしようかなって…どうかな?」

トーマス「どうって…何がだよ」

アラン「君も一緒にどうかな…って…」

トーマス「…………」

アラン「ダメ、…かな。君を騙した私の言葉じゃ…信用できないかな?」

トーマス「………バーカ…。俺は孤児院よりお前の近くがいい…連れてってくれよアラン」

アラン「…トーマス。ありがとう、ありがとう…!」

表通りの喧騒が強くなっていく

①①
数日後

トーマス「おい、アランもたもたすんなよ!」

アラン「ごめんごめん…やっぱり名残惜しいなぁって」

トーマス「家を出るのがか?」

アラン「うーん…家での思い出もいっぱいあるからねぇ」

トーマス「じゃぁいいじゃん。思い出は忘れない限り残り続けるんだからさ。それより早く行こうぜ!」

アラン「……そうだね。これからも思い出がいっぱい出来るだろうし」

トーマス「ま、今まで良い暮らししてた貴族様に田舎の生活が耐えれるかな〜。俺は余裕だけど♪」

アラン「うぅ、それは頑張るよ…!あ、そうだトーマス…これ返しとくよ」

トーマス「ん?……え、俺のナイフじゃん。つかなんかちょっと綺麗になってる?」

アラン「あの時拾っといたんだ。これのお陰で助かったからね…すこし研いでおいたよ」

トーマス「あり…がと…」

アラン「でも、約束だ。それで人を傷つけてはいけない。いいね?」

トーマス「…うん、約束!」

アラン「じゃあ行こっか。もし追手がいても追いつけないくらい早く!」

トーマス「逃亡劇かよ!…でも、悪くないなアランとならさ!!」

楽しそうに駆け出す二人

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