ところで私の好きなぎなた読みを紹介しますね

「弁慶がなぎなたを持って」と書いたら「弁慶がな、ぎなたを持って」と読めてたのしいね、というのがぎなた読みだ。インターネットでは古くから多くのぎなた読みが発見され、愛でられている。

この記事では私の好きなぎなた読みの好きな部分を紹介していきますね。基本的に有名所ばかりですが。なので「紹介」というよりは「品評」です。

なぜ急にこんなことをするかといえば、ぎなた読み界隈につい最近、彗星のように新たなぎなた読みが登場したのでテンションがあがってしまったからだ。

1.「樹齢1000年超すご神木」

これは本当にすごい。超すごだ。「樹齢1000年超すご神木」。樹齢1000年の、超すごな、神木。神がかっている。

もちろん正しくは「樹齢1000年(を)超す、ご神木」という意味なわけで「超す/ご神木」で切れるところを「超すご/神木」と切って読んでしまっているのだから確かにぎなた読みだ。

このぎなた読みの何がいいってまずリズムがいい。七五調に近い。「板垣死すとも自由は死せず」みたいな。というかリズムが七七なので下の句に使える。

人はいさ
 心も知らず
  ふるさとは
樹齢1000年
 超すご神木

田子の浦に
 うち出て見れば
  白妙の
樹齢1000年
 超すご神木

あと意味的に通っている所がいい。ご神木の樹齢が1000年も超えていたらそれはもう「超すご」だ。

「奉納されていた剣がご神木の下敷きになったが無事」という超すご性を補強するニュースまである。

ここまでいくとそこまでせんでもいいのにという気すらするが、事実らしいので仕方がない。

あとこれは多くのぎなた読みに共通することだが、マジメな記事でやってるところがいい。

マジメな記事タイトルの中に「超すご」とかいうくだけた言い方が急に出てくるとそりゃあ面白いに決まってる。他のニュースでも使ってほしい。「6月の売上下落幅 超すご」みたいな。

いややっぱりそうすると「超すご神木」の価値が下がるので使わないでほしい。

マジメさを利用したぎなた読みの面白さというのは代表例に九州新報の「アルゼンチンコ臭い」というのがあるけど、

こちらはマジメな新聞アカウントと見せかけてネタアカウントなのと誤変換要素を含んでいるので今回は選外とした。

「アルゼンチンコ臭い」で思ったが、「樹齢1000年超すご神木」の方は捨てるところがない、というのもすごい。チンコ臭いの方は「アルゼン」だけ意味的に浮いているが、「超すご」の方は文全体を余すところなく使っている。超すご。

2.「中国船さんご密漁」

これも本当にいい。正しくは「中国船(が)、さんご(を)密漁」だ。

そうか。今気づいたけどぎなた読みが新聞記事の見出しに多いのは、見出しだと意味のブレが生じない範囲で「てにをは」が省略されるからか。なるほどね。

このニュースのソースを探したが、ていうかそのものズバリの見出しを掲げた新聞があった気がするが、思い違いなのか見つけられなかった。

(追記)フォロワーの方から教えてもらったけどまさにそのものズバリの記事があった。

@OtterSouさんありがとうございました!(追記終)

めっちゃ中国船を敬ってる。さん付けをするだけにとどまらず、「ご密漁」。ぎなた読みをした結果発生した二単語が両方とも敬語化されている、というのがポイントが高い。

「密漁」とかいう犯罪行為に「ご」をつけて敬ってるというギャップの大きさが面白い。ご密漁! ご密漁! ご密漁にございます!

よほどやんごとなき人でもない限り、密漁したときに「ご密漁」などと言われないだろうが、やんごとなき人は密漁などしないというジレンマにより「ご密漁」は現実世界では絶対に発生しえない言葉となっている。

現実世界では発生しえないが、統語上そういうものの存在を考えることはできる、というのはとても数学的で好きだ。「ご逃亡」。「お殺しになる」。「召し上がり逃げ」。まあ使う機会は一生ないだろう。

3.大量のスク水揚げ

「スク水/揚げ」に見えて実は「スク/水揚げ」というこちらのぎなた読み。

現代のぎなた読みと言えばだいたいこれが挙がるが、上の2つと比べるとこちらはかなり弱い。

想像される光景はいい。「スク水/揚げ」に見えるが実際は「スク水/水揚げ」のような光景が思い浮かぶ。これは夢がある光景だ。

あるいはもっとストレートには「スク水/揚げ」だろうか。そうなるともうこれは特殊性癖なのかなんなのかよくわからなくてこれはこれでよい。

ただ、やはりいかんせん「スク」というのがそんなに一般的ではないというのが気になる。たしかに沖縄料理屋でスクガラスはよく見るが、あんまり普段見ない言葉なせいで正解を知ったときの「確かにどっちにも読めるな!」という感動がブレる。

最後に似たノリのスレでも貼っておきましょうね。

4.この先生きのこる

殿堂入りです。最初の「超すご」でほとんど語り尽くしてしまってここまでくると情熱が薄れてきたのでこのへんで終わりにしときます。

あとはもう「アフガン航空相撲殺される」とか「残酷なのは戦争」とか「暴力二男」とか「早速水もちこみ解禁」とか「ツヤ肌になれるカバー力」とか「私の家来ちゃいますか?」とか「米原発」とか「エースがちんこ対決」いろいろあるのでよければみなさんも語ってください。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。頂いたサポートはより数学側に本腰を入れた人生にするために使われます。