見出し画像

何故、我々はベットやレイズをするのか: No-Limit Hold'em For Advanced Players

最初に

こんにちは、meuです!

普段はSWEとして働いています。
ポーカーは2023年1月にGGの2nl R&Cから始めまして、現在は10nl-25nlで遊んでいます。目下25nlでの勝ち越しが目標です。

3月中旬~4月末の成績, 25nl挑戦し始めてから下降気味

ぴーじぇさんにオススメ頂いた"No-Limit Hold 'em For Advanced Players: Emphasis on Tough Games"を読破しました。
中でも重要だと感じた概念・考え方について、まとめていこうと思います。自分の忘備録も兼ねています。

用語の定義

s: スペード, c: クラブ, h:ハート, d:ダイヤ
EQ: エクイティ

何故、我々はベットやレイズをするのか

早速標題についてですが、何故我々はベットやレイズといった行為を行うのでしょうか?

一度ここで考えてみてください!




自分なりの答えは出ましたか?

本書を通じて語られている理由は大きく2つあります:

1. 自分が勝った時のポットを大きくするため
2. 相手のEQを否定して実現させないため

理由1.は最も基本的な理由だと思います。
相手より強い役ができた時に、より相手からチップを奪いたいのです。

しかし理由2.についてはどうでしょうか?
これは、相手がEQを実現させる前にポットを取りたいのです。

これが一体どういうことか、具体的なシチュエーションで考えてみましょう。

相手のEQを否定する

例として次のシチュエーションを考えます:
6-max cash, ante: none, rake: NL500, ES 200BB
UTG(Hero) vs BB(Villain) 

UTG: 2.5BB open
BB: call

flop: 7d5c2c
BB: check
UTG: ?

この時、次のハンドのいずれかを持っているとします。
どれも混合戦略にはなりますが、最も高頻度にベットしたい順番で並べてみてください。

  1. AsAh

  2. As7s

  3. 9s9c


GTO Wizardでこのシチュエーションを調べてみます。

AA
99
A7s

調べた結果、

  1. As7s

  2. 9s9c

  3. AsAh

となりました。

この意外な結果に、あなたは驚いたかもしれません。
理由について考えてみましょう。

具体的なハンド例

As7s

何故As7sが最も高頻度でベットをするのでしょうか?
純粋に役だけで見ると一番弱いはずですよね。

本書で紹介されていた例ではないので、以下は自分の見解になります:

  • As7sというハンドはトップペアトップキッカーですが、7-highボードです。

  • 現状は大きいEQを持っていますが、turn/riverで8以上のカードが出て、相手にEQを実現されてしまう可能性があります。つまり、非常にvulnerableなEQです。

    • vulnerableは「脆い」(=相手に捲られやすい) という意味です

  • よって、相手にEQを実現されたくないのでベットしたいのです。

その後UTGが 33% pot size のベットをしたと仮定し、この時のBBのアクションを見てみます。

BBのアクション

BBはrangeの35.9%でフォールドしています。

フォールドしているハンドの中には「ワンオーバー かつ c無し」一部の「ツーオーバー」が目立ちます。降りてるAXs, AXoもいます。

つまり、flopで 0.33PSB を打つことによって、turnでオーバーカードが出た時にoutdrawされる(=相手に有利なカードを引かれて逆転される) 可能性が大幅に減ります。
これがまさに理由2.「相手のEQを否定する」の一例になります。

9s9c, AsAh

基本的に、理由1. と 理由2. の両方を満たすハンドをベット rangeに優先的に加えていきます。
そのためAA, KK, QQのベット頻度よりも、JJ, TT, 99のベット頻度のほうが高いです。

より高いEV (同様により高いEQ) を持つAAはチェック頻度が高く、特にAcを持っていなければ7割はチェック rangeに入っています。

ここでも同様に、相手のEQを否定したいという動機の強いハンドが、よりベット頻度が高くなっていることが分かると思います。

常にEQを否定すべきか?

結論から言うと、常に否定すれば良い訳ではありません。
銀の弾丸ではないようです。

しかし自分がvulnerableなEQの高いハンドをチェックコールで回してしまうと、例えflop時点で勝っていたとしても、turn/riverでoutdrawされてフォールドすることになるかもしれません。
何故チェックコールするのでしょうか?

本書で紹介されたシチュエーションを見てみましょう。

6-max cash, ante: none, rake: NL500(不明なので仮), ES 100BB
UTG(Hero) vs BB(Villain) 

UTG: TsTc 2.0BB open
BB: 3 bet
UTG: call

flop: QsJhTd
BB: 40% pot size bet
UTG: ?

UTGは 50% pot size raise か call どちらを選ぶでしょうか?

このシチュエーションではレイズもコールもありそうな状況ですが、本書の著者はレイズよりもコールを推しています。

一般にwet boardでmade handがある場合、多くのプレイヤーは相手にturnカードを見せるとoutdrawされて負けてしまうことに過集中してしまう。

高度なソフトウェア(pioやPokerSnowie)を使って分析してみても、wet board (例. 8s6s4c) でのセットのslow playは、相手がoverbettingするプレイヤーだとしても、大抵raiseより良いということはない。
つまり、コールしてoutdrawされるリスクを冒すより、強くてvulnerableなハンドをレイズする習慣が強まる。

相手に安いオッズでturnカードを見せてしまうと、後続ストリートでの相手のアクションを失ってこれ以上チップを奪えなかったり、はたまたoutdrawされることを一般プレイヤーは指摘するが、それと同じ様に、こちらに不都合なturnカードが出ることによって我々が既に負けている時にスタックすることから救ってくれることもある。

特に、このハンドはflopで既に多くのハンドにbehindになっている良い例。

この例から学ぶべき最も重要な教訓は、「うんざりするようなturn/riverカードによって、後続ストリートで相手からの追加アクションを失ったり、自分がoutdrawされる可能性がある一方で、自分が既にbehindになっているときにスタックせずに救われることもある」ということ。

Part Twelve - Hand Examples No.9

turn/riverで最悪なカードが出て渋々フォールドすることはよくあると思いますが、むしろ落ちてくれて幸運である場合があるということですね。

BBが3Betしているので、ナッツストレートになるAKは相手のレンジにあります。また、トップセットのQQや低頻度でJJ, 98s等も相手のレンジにあります。これらのハンドに対してはTTのセットはbehindになっています。

BB 3B CC range

アウツがあるとしても、既にbehindになっている場合、スタックしてしまうと悲惨な結果になってしまいます。セットオーバーセットなら1アウツです。

GTO Wizardでも似たスポットを調べてみます、40% pot sizeはあまり使わなかったので、20%で調べてみました。

flop QsJhTd, BB 20% pot size bet
  • 混合戦略ではありますが、全体的に頻度としてはレイズよりコールが多いです。

    • 混合戦略なので、レイズもコールもEVは差がなさそうです。

  • レイズは強いハンド(AK, QQ, JJ, TT)と、valueのブロッカーを抑えたAA, AXs, KXs、range下限に当たる99などが含まれます。

  • 88辺りから頻度でフォールドしています。

参考までに、breakdownとrangesを貼っておきます。

TT breakdown
TT ranges

以上まとめます。

結論

我々がベット・レイズする理由は、
1. 自分が勝った時のポットを大きくするため
2. 相手のEQを否定して実現させないため
これら両方を満たすハンドは高頻度にベット・レイズしたい。

ただし、例外も存在する。例えばwet boardなど、ボードテクスチャ次第では高頻度でベット・レイズしないことが良い場合がある。
最悪なturn/riverカードが出ることで相手からバリューを取り逃したり、相手に逆転される可能性はありますが、逆に最悪なturn/riverカードが出たおかげで、自分がスタックされなくて良かったと考えることができる。

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、本書を通じて最も大事に語られている概念について紹介しました。

まだ翻訳しながら一読しただけで、まとめきれていない部分が多いのですが、その他の考え方・概念も紹介していければと思います。

続編も執筆しようと考えていますので、もし内容が良かったという方はサポート頂けると嬉しいです!

この行以下は何も書いてないです。

ここから先は

0字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?