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メンタルの健康貯金が定期的に解約されがちな人への100円玉貯金のススメ。

私は「ひん死」になりやすい。
「ひん死」とは、文字通り死にそうな状態だ。

私は発達障がいからの二次障がい(注1)で、鬱やパニック等の爆弾をメンタルに抱えているうえに、体もそんなに強くない。
ゲームで例えるなら、レベルアップ効率が悪い上にレベルの上限値が低く、ほぼ常にMAP移動だけでHPMPが削られていく毒状態、という操作性の悪さの、酔狂な玄人向けのキャラなのだが、あいにくプレイヤーはゲームもリアルも苦手な私…。
それはもう、めちゃくちゃ「ひん死」になりまくる。

私の「ひん死」は、肉体よりも先に精神、メンタルから来ることが多くて、普段からコツコツと貯めているメンタルの健康貯金が、定期的に解約されてしまいがちだ。
一度解約されたメンタル貯金はベッドに横になっているだけでじゃんじゃん崩され消費されていくので、HPMPが回復してきた頃にはたいてい0になっている。ガッカリである。
だけど、こんな「(メンタル健康貯金が)貯まらない女」体質の自分を数十年やってきたおかげで、私は最近この貯金が定期的に解約される問題に、ある極意を得た、ような気がする。
ただし私の極意は「メンタル健康貯金を崩さず貯めて増やす方法」ではなくて、「メンタル健康貯金が定期的に解約されることを前提にした貯め方」である。

これまでに何回か深刻な鬱状態になって気が付いたことがある。それは、人は弱っている時に自分を労わることが出来ず、人からの労りも受け取れなくなってしまう、ということだ。出来ない、受け取れない、というのは言い過ぎかもしれないけれど、ほぼそれに近い、出来にくい、受け取りにくい状態になる。
休暇や休息、好きだったはずのものや周囲の人からの労りや励まし等々。いつもだったらメンタル健康貯金になるはずのものがどんどん投げかけられても、まるで穴のあいたバケツになったみたいにどんどん取りこぼされてしまうので、自分のなかにストックできない。
どうやら「ひん死」になると、人はHPMPが1になるだけでなく、回復効率がめちゃくちゃ悪いというステータス異常にもかかってしまうらしい。

このステータス異常に効く魔法はない。症状を和らげる薬はあっても、一度「ひん死」になってしまったら、基本的にはその状態異常が時間経過で効力を失うまで「やり過ごす」というのが主なミッションになる。

しかし弱っている間は、横になっているだけでもメンタルの貯金は切り崩され、ダークサイドにガンガン引き落としされていくせいで、この「やり過ごす」というのが辛くて仕方ない。いつまでやり過ごせばいいかわからないから、(貯金がつきてしまうのでは…)と不安にもなる。
休みをとったり、好きなものを食べたり、友達に話を聞いてもらうとかで自分を労り、メンタル健康貯金にまわそうとしても、前述のとおり弱っている時の人は穴のあいたバケツなので、元気な時には10受け取れるものを、1しか受け取れなかったりする。例えば

▶モスクワカヌは8時間睡眠をとった!
元気な時:HPMP全回復!
弱っている時:HPMP10回復。そもそも眠れない。

▶モスクワカヌはカレーライスを食べた!
元気な時:HP500回復!MP100回復!
弱っている時:効果は今一つのようだ…。

▶モスクワカヌは友達から優しい言葉をかけてもらった
・元気な時:HPMP1000回復!スキル自己肯定感がアップ!
・弱っている時:HPMP1回復。気を遣わせてすみませんという気持ちで自己肯定感ダウン!

…といった具合である。
ゲームの中でなら、HP1でも回復魔法やアイテムを使って瞬時に全回復することが出来る。だけど現実では、HP1になったらまず「体力を回復するための体力」「メンタルを守ろうというメンタル」が戻ってくるまでに、けっこう時間がかかってしまうのだ。

弱った時は自分に優しくとよく言われるけれど、自分を大事にするのにも、ある程度のメンタル健康貯金が必要で、解約されて「ひん死」になるとそんな余裕もなくなって、ただただ穴のあいたバケツのような自分は燃えるゴミか燃えないゴミか、はたまた資源ゴミなのか、うちの地域の分別どうだったかな、みたいな思考に落ち込んでいってしまう。

多分、真面目で頑張り屋の人ほどそうだ。(私は真面目さや頑張りが怪しいので、ちょっと助かっている)

だから、自分には普段から優しくしといたほうがいい。弱った時じゃなくて、元気な時にこそ自分にとことん優しくしたほうがいい。だって弱ってからでは、その優しさは自分の心と体に響かないからだ。

私が発見した極意とは、元気な時こそ自分に優しく無理をさせず、なるべく気分良く心地よく過ごせるように気をつかうということだ。

こう書くと、実に当たり前のことのように思えるけれど、実際、多くの人は熱がでてから薬を飲んだり医者に行くみたいに、心や体がかなり弱ってから自分を労りだしてしまう。そして元気な時は、なんなら自分の体や心を無視するレベルで頑張ってしまい、時間や余裕ができたらメンタル健康貯金をしよう、と思いがちだ。
だけどそれじゃ遅いし、回復の効率が悪くなってしまう。

メンタル健康貯金が定期的に崩されてしまうことの1番の問題は「ひん死」になることじゃなくて、その状態から死んでしまうリスクがあがることだ。
だから「ひん死」のまま、1ヶ月でも2か月でも生き続けられるくらい、普段からメンタル健康貯金を貯めておいたほうがいい。

別に1週間休みをとるとか、贅沢なものを食べたり買ったりするとか、友達と遊びまわったりとかじゃなくてよくて(それも悪くないけど、いつもは多分できないし)、コンビニで気になってたお菓子を買ってみるとか、ちょっとだけいつもよりいい調味料や食材を買ってみるとか、自分の勘を信じてみるとか、1日1回窓を開けて換気をするとか、ゆっくりお風呂に入ってダラダラするとか…人によって違うけれど、気分の良くなることを、普段の日常に細かく散りばめていく。100円玉貯金のように、ささやかにコツコツとでいいのだと思う。

ついつい忘れがちだけど、自分に優しくするというのは、自分の体の状態や心の声を尊重することだから、それはやっぱり毎日やったほうがいい。
もし、自分を好きじゃなくて優しくしたい気持ちにならなくても、雑に無理に扱ったりしないだけでいいと思うのだ。

現実の貯金もあるにこしたことはないが、メンタル健康貯金も同じくらい大切だ。

今は世の中全体が大規模な時代と季節の変わり目で、しんどい人が多いと思う。いつメンタル健康貯金が解約されるかわからないから、未来のことを考えて不安になったり、過去のことを思って悔やんだり色々あるけれど、考えたり動いたりするパワーがあるなら「今」と「自分」に使ってあげたい。

好きなもの、好きな時間、気分のよいことを日々今の自分にストックして、それはまたきっと解約されてしまうのだけど、時々「ひん死」になりつつ生き延びるために、100円玉のようなささやかな喜びや楽しみの日々を貯金していきたい。

【脚注】

(注1)
発達障害のある人は、うつなどの精神疾患の合併や、引きこもりなどの社会との不適応を引き起こしやすい傾向があるといわれており、それらは二次障害と呼ばれます。


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