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もえつきて梅雨

ここ数日は色々重なり慌ただしい日々だった。
頑張りすぎると大抵体調を崩す。今月は本当に色々あって回復が追いつかない。気がつけば向こうの空には梅雨前線。これを超えたらもう夏休みだ。なのに私は今フリースを着込んで毛布にくるまっている。発熱。

月の頭に息子の遠足があったのだが、その前日に不順の月経がきてしまい大変だった。
たくさん運動する教育方針の園なので親たちも運動させられ、休憩時間がほとんど無かった。よく晴れて日差しが暑く、ナプキンも交換できず、休暇の時間もなく、昼に倒れてしまった。朝から作ったお弁当は子どもたちが食べてくれたが、そのおいしそうな顔を見ていない。ナプキンからは血が漏れてズボンに滲み、人しての尊厳まで浸食して汚し(しかも準備しておいた替えのナプキンポーチが見当たらず、帰宅したらキッチンに落ちてる。下の子がおやつ入れだと思った可能性)ボールを相手の陣地の人に投げ合うゲームでは、ガチで投げてる大人が危ないので遠くに投げようとすると手元がふらつき、よその子どもに当ててしまいギャン泣きさせてしまったり(謝ってパイの実をあげたら機嫌直ってよかったけど、そもそも危険なゲームを企画しないでくれ)息子が「みっちゃんとおやつ交換したい」と言うので連れて行ったら「禁止なのでうちは結構です」と断られてしょんぼりする息子を抱きかかえて戻ったり(そもそもおやつ交換はお控えくださいというアナウンスだったが、仲良い友達同士で交換していて、先生も特に何も言わなかった)(貧血で倒れた直後に17キロの子どもを抱いて歩くのはきつい)下の子が大暴れでリレーの邪魔をしようとするのを阻止したり(遠足でリレーをするな)
この日にめちゃくちゃ無理をしたダメージがずっと残っている。すべての女性におかれましては月経中は絶対に無理しないほうがいい。

前々から月経キツイなとは思ってたけど、この一件で婦人科の受診をつよく決心した。毎回毎回振り回されてられねぇよ身体にもメンタルにも園にも。元々生理前後はメンタルも沈むのだが、遠足から完全に沈みっぱなしになった。これは完全にホルモンの乱れだと思った。
婦人科を受診すると、担当の先生が出産でお世話になった産婦人科医だった。またよろしくお願いします、と伝えて、診察が終わったあとに「出産ではお世話になりました」と伝えるのを忘れてめちゃくちゃしんどくなる。こんな小さなことで死にたくなるわけです。元々自分は不安神経症(全般性不安障害)の診断がおりているのだが、自分の場合はホルモン的な部分も関係しているような気がする。というわけで診断名は月経困難症、気持ちを落ち着けるためにもホルモン剤であるピルをおすすめされてヤーズフレックスを処方される。落ち着けばいいけど、35歳超えると血栓のリスクが高くなるんだよね。ずっと飲み続けるわけにはいかないんだろうな。高いし…。

そう、あっと言う間に35歳が目前である。
嫌というわけじゃないのであまり気にせず年齢を言ってしまうのだが(むしろ30代半ばからの人が男女問わず好きなところがある)同級生たちと会話すると「おっさんになったな」とか「もうババァに片足入ってるよ!」という会話が増えて、大爆笑する私と、そうでない人とで温度差があったりする。だから無神経にならないように気をつけないといけないね。

無神経でいられる人。夫とは結婚して6年、それなりに過ごしてきたのであまり気を遣うこともなくなってきたが、それ以上に気を遣わない幼なじみがいる。
彼女たちと出会ったのは小学1年生くらいだったと思う。母の同級生に誘われ、夏休みに町民プールに通った。高校の同級生であるという母含めて女性7人は、ものすごくエネルギッシュで、朝から夕方までず〜〜〜っと大声で喋って大爆笑していた。
その中に、同い年の女の子が2人いた。お洒落で流行に詳しいリーダー気質のAちゃんと、面倒見がよく元気でボーイッシュなBちゃん。そしてモジモジしたオタクの私。
夏休みになると毎日のようにプールに連れられ、夕方まで一緒に泳いだ。競争!というより、潜水しながら好きな人の名前を叫んでみたり、シンクロの真似をしたり、プールサイドのカマドウマを捕まえようとしてジャンプがエグくて爆笑したり(今思うとゾッとする)。
お互いの家に遊びに行ったり、DAISOでお小遣いを持ち寄り、こっそりメイク道具を買ってみたりした。髪をピンクや緑に染めるクリームを買って3人でトイレで試し、どぎつい色でギットギトになった髪の毛に爆笑したり(めちゃくちゃ怒られた)、電車で街まで遊びに出かけたりした。
中学、高校とすすんで少しずつ会わなくなった。私は不登校になった。Aちゃんは部活でいじめに遭って、やっぱり休んでたみたいだった。Bちゃんはこの辺でいちばん頭がいい学校に行って、楽団に入った。
大人になって、なんとなくSNSでは繋がっていて、いちど3人で飲みに出かけた。それがめちゃくちゃ楽しかった。昼12時に集合して、夜10時まで酒を飲んだ。ずっと大爆笑だった。子どもの頃から変わらない性格とか、大人になって思い知った痛みとか、そういうものがいい具合に共鳴して、夜まで笑い転げていた。
当時私は工場で働いていて、同い年の女性グループからいじめのようなことをされていた。その中の1人と仲がこじれる前に会話した記憶とか、飲み会での会話がふと蘇り、ピースが重なって、あっ、こいつ高校のときにAちゃんいじめてた首謀者じゃん、と気がついた。お前しめ上げてやろうかという気持ちになった。いじめっ子気質はずっと他人を見下さないと自分を保てないんだろうね。
今ではAちゃんは首都圏の店舗で副店長を任せられるバリキャリウーマン、Bちゃんは時々仕事をしながら子どもを育てるママである。
その2人が強く力説する言葉、それは「人生には推しが必要」ということである。Aちゃんは某アイドル事務所のガチなファンで、彼を応援するために働き、キャリアを積み、推し活仲間と遊んで「いま超幸せ、彼氏と結婚したくない」と語る。BちゃんはAちゃんの影響でDVDを買ってハマり始めている。「旦那が嫌になったけど、これで救われてるから頑張れる」と語る。
2人に「もっさりは?推しとかいないの?」と聞かれてちょっと考え込んだ。
私「うーーん……ハリーポッターは再熱してる」
AB「ハリーポッター!?!?」
私「うん。ディズニー!サンリオ!みたいなのと同じで、世界観っていうか。ハリポタ!みたいな」
A「あー、ディズニーオタクとかいるよね」
私「うん………あとスネイプ先生とか好きで……」
AB「スネイプ!?誰!?」
2人はぜんぜんハリーポッターに触れなかったらしく、そこで会話が終わって笑った。
でも本当、推しって大事だよ、楽しく生きていこうよ!という会話をした。わざわざ辛かったことに目を向けるより好きなもの追いかけてたほうが人生楽しいよな。

というわけで早速、ハリーポッターの公式通販「マホウドコロ」で買い物をした。
夫に「買っちゃった」と伝えると渋い顔をする。「そのぶん稼がないといけない」と言われる。いいよ私のお小遣いだよ、と言っても、なんかそういうことじゃないらしい。私も外に出て働くよ、その方が絶対いいよ、という話をすれど、俺がなんとか稼ぐからきみは家にいて、と言う。コスメも好きなものも買ってあげるし、子どもたちにも習い事させてあげられるように俺が稼ぐから、と言う、たしかに私体力ないし、家事と育児と仕事ぜんぶ両立させられる自信ないけど、でも好きなことがしたい時にできないのも辛いんだよ。
「私もAちゃんみたいにアイドルにハマったらどうする?」と聞くと「そうはならないと思うけど」という感じ。その通りなんだよ〜やだやだ。芸能人、異性としては全く興味ないし夫の顔が世界でいちばん格好良いと思ってるからね。私は多分この人のことが一生好きなんだと思うし、夫もそれを分かってる。だからこその孤独とか虚しさがあるが、それは同じ立場の人じゃないと理解し合えないと思う。というわけで平行線。推し活するような収入ないし、めちゃめちゃ何かにハマることもないと思うのでハリーポッターの買い物で満足して終わりそう。推しってなんだろうな。ちょっと何かに貢ぐことがあったとしても、そのために人生捧げられることは無いから素直に羨ましいなと思う。

息子が5歳になった。え〜5歳…。こないだ拙い指の動きで「1さい」ってみんなにアピールしてた息子がだよ。よちよち歩いてたのに今は逆立ちとかしてる。なかなか喋れなかったのに今は寝る5秒前までペラペラ喋ってる。ひらがなも書けるようになった。
帝王切開した時の痛みとか、なかなかミルクを飲んでくれなかったこととか、母乳離れができなかったこととか、夜の授乳は世界から切り離された感覚になることとか。生まれてすぐからニコニコ笑ってたこととか。いろんなことが蘇る。世界から遮断されて孤独だったときに出会った人がいまSNSで繋がっている。あれから4〜5年経つ。あっという間だね。
幼稚園がイヤで泣きすぎて玄関で吐いてた息子がいまは「友達いっぱいいるんだよ!」と笑顔で登園する。先生たちにも可愛がってもらっている。園にも色々問題はあるけど、面接のときに副園長が「この子はなんとなく大丈夫な気がしますけどね」と言った言葉を、今ふと思い出す。
体操教室に通わせようと思ったけどあまりハマらず、ダンス教室のほうがいいかなと悩んだり、メロディオンが好きなのでピアノも習わせてあげたいし、サッカーも習わせたいし、お金がかかるね〜。働きたいんだけど「仕事も家事も育児も絶対やり遂げられる!」みたいな自信もないし。あと経験上、仕事関係は周りが止めてるときに「それでもやる!」と強行するとだいたい失敗する。向いてないとかブラック企業だったとか。夫厄年、私も前厄だしね…絶対宗教とか頼らないけど、こんな時だけそういうものがチラつく……。

実家が悪質商法に引っかかりかけた。NTTの回線を光にするとかなんとかで「ルーターを置かないといけない」みたいな話。ご丁寧に資料も郵送されていて、ぺらっとめくると工事の図がどうにも引っかかり、検索したら悪質な勧誘のようだった。NTTまじでなんなの?なんでこんなん野放しにしとくの?と思い親にはKDDIをすすめておいたけどKDDIはネット回線使うのかな?このへん田舎だからauひかり対象外区域なんだよ〜。夫に「よっぽどド田舎」と笑われたけどあんたの実家もすぐそこだからな。でもそっちは対象区域…なぜ……
というわけで早々に見つけて調べて防いだけど私が「疎い人を狙う商法、まじで嫌」と言ったら母が「疎い人ってなに!?!?」と気を悪くするし(事実じゃん…)調べるにも説明するために分かりやすくて確実なソース選ぶのに結構時間かけたんですけどね、まぁ私無職なのでフットワークはいいですよ、こないだもプリンター設定しに朝から呼び出されたわけで、そういう諸々を考えるとなかなか外でバリバリ働くのって難しいね…稼ぎたいんだけどね…

そんなことしてる間に庭のミニトマトは好き勝手に伸びて全然2本仕立てではなくなり、雨がふり、実がなり、赤いトマトを食べて子どもたちが「おいし〜」って笑う。私の推し活はこれでもいいような気がしてくる。6月の雨が喧騒や粗熱を冷まして地固めてくれるのを想像しながら、窓の外のミニトマトを眺める日々。

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