安価&コンパクトに作る自作塗装ブース考察1: 必要な部材を考える
3Dプリンタを使ってると出てくるニーズのひとつが「プリント品を塗装してみたい」だと思います。そういう人はもともとプラモデル制作に精通してて、すでに塗装用の機材を色々お持ちかと思いますが、塗装環境を持たない(私みたいな)人向けに考察した内容をまとめます。まずは塗装ブースから。主眼は「コンパクトでしっかりした換気ができる塗装ブースを自作するには?」です。
TL;DR 1.安く自作するならこの部材を買おう
PC用ケースファン(最重要)
候補1: X-Fan RDH1238B 38G
ハンディ掃除機並みの騒音だがコスパを考えるとこれ1択。既製品で割とコンパクトなレッドサイクロンは前モデルのRDH1238B 38NMBを使ってるみたいなので実績十分。3ピンタイプなのでファン速度制御(PWM制御)したければ外付けでやる必要があります。
スペック:最大風量 262m^3/h 最大静圧 143Pa 騒音52dBA 消費電流1.3A
候補2: Noctura NF-A14 industrialPPC-3000 PWM
静音/省電力がいいなら安心のNoctura。ただし、お値段アップ。
スペック:最大風量 269m^3/h 最大静圧 103Pa 騒音41.3dBA 消費電流0.55A
いずれも高速・強力に回るファンで、誤って指を突っ込むと大怪我します。ファンガードも買うか、せっかく持ってる3Dプリンタで作ってしまいましょう。
ファン用のACアダプタ
PC用ファンは基本的に12Vで動作するので、12Vのものを。2A以上のものを秋月などで調達しましょう。Nocturaのファンなら12V/1Aでも大丈夫。
筐体
100均で30x20x20cmほどのプラボックス。もしくはダンボールで。
フィルター類
お好みで100均のレンジフィルターだったり、ネコの爪とぎ。
排気ダクト
可能なら15cm径のもの。10cm径のものでもなんとかなりますが、排気能力が落ちます。ホームセンターで1000円程度。
設置場所と排気先の距離に応じて必要な長さを買いましょう。
総額はだいたい5000円
工作好きな方は流用できるACアダプタを持ってるでしょう。その場合、細々したものを足しても最安3500~4000円で作れます。ACアダプタを買うなら4500~5000円、さらに高級なNocturaのファンを選択しても6000円程度です。100均材料以外、Amazonで買えるので、ガムテープなどを駆使して組み付けましょう。
TL;DR 2. 600円足せばファン速度も可変できる
上記おすすめファンは性能に余裕を見てるので、実際はもう少し速度を落として使っても大丈夫なはずです。はんだ付けが苦じゃない方は、秋月電子でファン用にPWMコントローラキットを購入。キットそのままだと半固定抵抗で使いづらいので別に100kΩのボリューム(可変抵抗)を買って取り付けると吉。+600円くらいでファン速度の調整ができ、騒音を抑えられるようになります。
Nocturaのファンを選んだお金持ちの方は一般的なPC向けファンコンが使えると思うのでそちらもご検討を。(ここまで全部盛りにすると市販の最安品と近くなってきますが…)
ここから考察:3Dプリント品への塗装のメリット
私は漠然と塗装してみたいなぁと言うのがきっかけでしたが、塗装によるメリットはなんでしょう?もちろんフィギュアのように多色がそもそも必要なモデルを作れる点はあります。その他にもフィラメントの色による印刷の変化を考慮しなくて良くなる点が挙げられます。
フィラメントは素材となる樹脂に顔料を混ぜて色を付けています。混ぜものをしているので、当然混ぜる顔料やその量によって強度や印刷のしやすさに変化が出るはずです。Thomas Sanladerer氏はフィラメント色でどのように強度が変化するかを実験しており、茶色では特に低い強度になることを確認しています。
印刷に使うフィラメント色は強度や印刷しやすさで選択し、塗装で好きな色に変更することはメリットがあります。
塗装ブースは安全にエアブラシを使うために必須
プラモデル等の塗装でメジャーなのはエアブラシや筆による塗装です。特にエアブラシは均一に塗装をしやすいことから多用されています。しかし、エアブラシでの塗装環境には「塗装ブース」という換気設備が必須です。なぜ?
エアブラシ塗装には様々な塗料が使用できますが、メジャーなのはラッカー系の塗料です。ラッカー系塗料は水で希釈することができないので、希釈にシンナーが利用されます。これが臭いし、健康に悪いのです。なので塗装ブースが必要なんですね。
市販の塗装ブースを買うと高い
じゃあ塗装ブースを買いましょう、となるわけですが、これが結構高い。タミヤ製のものを見ると、換気能力が低いものでも2万円弱します。Amazonで中国謎メーカ製のものをみても1万円程度からです。エアブラシセットを揃えるだけでも高いのにそんなに出費できない!
自作例はデカイものが多く、小さい例は排気できるか疑問のあるものも
世間では高い市販塗装ブースを買うくらいなら自作しちゃう!という人もたくさんいます。多いのが住宅設備用の換気扇(シロッコファン)を用いて作るタイプ。ただ、シロッコファンってデカイんです。当然塗装ブースも大型化し、1辺40~50cmくらいの巨大な箱が出来上がります。私の家には置く場所がありません。
デカイものはいらない!という自作派の人はPC用のケースファンを使った例も見られます。ただ、ケースファンって送風能力がピンキリです。ケースファンは特に静圧が弱いものがほとんどで、塗装ブースに適したものはごくわずかです。安易に「余ったケースファンで作ってみよう」とすると全然吸わず失敗します(経験談)
小型塗装ブース向けのPCケースファンを選定する
前置きが長くなりましたが、要は風量・静圧が高いPCケースファンがあればコンパクトに塗装ブースが作れるはずです。では具体的にどの程度の性能があれば良いでしょう?
調べてみると次のサイトが非常に具体的に必要な風量・静圧を示してくれています。作りたい塗装ブースのサイズなどの条件を入れると必要な風量・静圧を概算してくれます。
自作塗装ブース作成遍歴 - 排気装置の選定基準 2
http://kumakuma.g1.xrea.com/paintbooth/page004.html
今回は小型なもの、ということで幅30x高さ20x奥行20cm程度のもので試算してみました。この条件だと「静圧13.99Pa時に風量87m^3/h」くらいが必要です。
なるほど、じゃあ風量、静圧がそれ以上って書いてあるファン買えばいいのね!となるかと思うとそう簡単じゃないのがややこしいところ。ややこしいポイントはいくつかあります。
風量や静圧の表記単位がCFM、H2Ommとか色々あるので単位の換算が必要
ファンのスペックは最大風量や最大静圧が記載されてるケースが殆どで、ある圧力損失があったときにどのくらい風量があるか分からない
これらのポイントを含め、もう少し詳しいファン選定方法はまた書きたいと思います。この条件にマッチするもの、ということで選定したのが以下のファンです。
--- 能力的の余裕があるファン(最大性能の50%程度で条件達成) ---
X-Fan RDH1238B 38G
noctua NF-A14 industrialPPC-3000 PWM
--- やや不安があるが使えるファン(最大性能の75~80%程度で条件達成) ---
Owltech F12-PWM
Owltech F12-N/38
入手性を考えるとOwltech F12-PWMも候補に入れても良いですが、検討時点ではX-Fan RDH1238B 38Gと価格があまり変わらなかったのでこちらのほうがおすすめです。
ややパワーに不安があっても静音にしたい、PC用のファンコントローラをすでに持ってて流用したい等の場合に、4ピンファン(PWM制御ピンのあるファン)のOwltech F12-PWMは良い選択肢になるでしょう。
おわりに
というわけで、筐体サイズとそれに応じたファンさえ適切に選べれば、ちゃんと排気する塗装ブースが作れるはず。実際に作ってみたら記事更新します。
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