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ヘーゼルナッツラテを愛する人への配慮が無意味だった話

カフェベースのヘーゼルナッツラテが大好きなのである。

苦味が苦手で、カフェでもコーヒーはまず頼まないのに、ヘーゼルナッツラテだけは、別なのだ。ラベルの暖かそうなデザインにまずやられた。そして、ひと口飲んで来世を誓った。それくらい好き。

これまで飲んだことのない味なのに、違和感がないのは、私がナッツ好きだからなのか? 木の実特有の滋養に富んだコクのある味がする。

冷蔵庫に常備し、朝起きて飲み、昼ごはんの後に飲み、おやつタイムにのみ、寝る前にも飲んでいる。

あっという間に無くなる。できれば、大量に買い置きしたい。

しかし、この子は期間限定商品なのである。「冬限定」と、でかでかと書いてある。私の他にも、この子を待ってる人がいるのかもしれない。独り占めはできない。

「冬っていつまで? 春分の日を過ぎたら、もうダメ? ねえ、あなたはいつまで居てくれるの?」

ムーミン谷を旅立つスナフキンに、まとわりつくムーミンのような粘着した気持ちで、スーパーに行くたびにヘーゼルナッツラテを探す。

「あ。棚に8本しかない」

と気づいたのは先週のことだった。

次に来る時には、もう会えないかもしれないな、と思いながら、1本カゴに入れる
家では、ゆっくり大切に飲む。ああ、冬が終わったなと思う。

しかし、次にスーパーに行った2日後、棚にはまだ、7本もいた!

「どういうこと? 補充されたの? まだ冬だと思ってていいの?」

私は混乱した。まさか、私が買ってから、そのあと、誰もこの子に手を出してないってこと?! 
いやいや、そんなはずはない。
こんなに美味しいのに!

売れない地下アイドルを「会いに行ける」がゆえに自ら好んで推しておきながら、人気が出ないのを「周りの見る目がない」せいにしている人のような気持ちになる。

「なんで誰も買わねーんだよ?!」と。

いや、ヘーゼルナッツラテちゃんは、地下アイドルじゃないけど。立派に地上波で歌ってセンター張ってるけど。

ファンの皆さんのタイミングが、たまたま合わなかっただけなのかもしれない、と思い直し、また1本だけカゴに入れて、家で大事に飲んだ。

その2日後、棚には、6本いた。
そして、今日は5本。

私はキレた。

「もういい、お前らにはわけてやるもんか! 後から良さに気づいても知らないからな!」

誰に怒っているのかよくわからないが、棚に残った5本を全部カゴに入れてどすどす歩いてレジに向かった。

ヘーゼルナッツラテを愛する気持ちが、空回りして悲しかった。
ヘーゼルナッツラテを愛する人たちへの配慮が、無駄になったようで悲しかった。

通っているジムで、先生にその気持ちを切々と訴えたところ、こう言われた。

「みんな、ドンキで箱買いしてるから、1本ずつなんてめんどくさいことしないんだよ。その方が安いし。私も好きだもん」

そ、そうだったの?
ここの人たちは、ヘーゼルナッツラテちゃんを嫌ってる訳じゃなかったの?

なんてこった。
わたしだけが、あの子にオプションの指名料まで払っていたようなものだったのだ。

まあいい。
次の冬にも帰ってきてくれるなら、指名料くらい安いものだ。

それにしても、アイスでも美味しいのに、どうして冬限定なんだろう。
SUNTORYさま、どうぞ、通年で飲めるようにしてください。

そして、岩井さんと沙莉ちゃんのCMも、新作よろしくお願いします。

**連続投稿54日目**


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