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ローグライクハーフシナリオ『月の雫』


ローグライクハーフシナリオ『月の雫』 作者:もるも

ローグライクハーフ基本ルール入手先

本シナリオは下記を想定して作成しています。
・プレイヤー(人数):1
・プレイ時間(分):15~30分
・対象年齢(歳):10~99歳
・ゲームマスター:不要

・ジャンル:ファンタジー
・レベル:初級
・難易度:Easy
・形式:シナリオ(d33)
・世界:アランツァ

『月の雫』はテキスト形式とWebブラウザ上で遊ぶ形式の二種類の形式で公開しています。
Webブラウザ上で遊ぶ場合は、下記のリンクからゲームを実行してください。テキスト形式のシナリオを参照する場合は、このまま読み進めてください。



序文

背景

 アランツァ南部に位置する商業都市ナゴール。
 薄桜川の西岸に築かれ、交通と流通の要衝として古くから栄えた大都市だ。
 水運技術では大陸一を誇るナゴールの港には大小様々な貨物船や旅客船が行き来し、中にははるか大陸の反対側に位置する貿易都市ビフトフへ向かう船もある。
 ナゴールの西には温暖な平原地帯が広がっている。肥沃な大地は農業や牧畜に適し、この地方で生産される穀物や畜産物はナゴールの豊かさを支える屋台骨の一つになっている。
 その穏やかな平原の中を、大陸の西海岸に位置する聖フランチェスコへ向かう街道が伸びている。
 ナゴールから西へ延びた街道はブランシェン山の麓で北に折れ、闇の森を迂回するようにして聖フランチェスコにたどり着く。
 ナゴールとほぼ同じだけの歴史を持つこの街道は常に多くの旅人や貨物を積んだ馬車が行き交い、旅人や商人を相手とする宿場町が街道沿いには数多く栄えている。
 一見活気ある地方のように見えるが、かつてこの国が北に隣接する軍事国家ドラッツェンとの間で繰り広げた7年にも及ぶ戦争の傷跡は、終戦後10年以上経った今でも崩れたままの建物や焼けた村の跡など街道のあちこちに散見される。
 しかしこの地方の人々の強かで前向きな性格はそのような戦災に屈することも無く、戦争終結するやいなや復興を開始し瞬く間にかつての賑わいを取り戻した。

 この物語の舞台となるのは、ナゴール地方にある小さな農村である。
 街道から外れた場所にあるこの農村は、訪れる旅人も少なく牛や羊を飼い畑を耕す昔ながらの生活を続けている。

プロローグ

 「おう、昨日はよく眠れたかい?」
 酒場の主人があなたに声をかけた。
 あなたは、よく眠れたと礼を言い、テーブルに着く。
 小さな農村にただ一軒の酒場。日が昇ったばかりのこの時間にはあなた以外の客はいない。
 
 あなたは冒険者だ。ナゴールから聖フランチェスカに向かう途中だったが、先日急な雨に降られ、夕闇が迫る頃にこの農村にたどり着いたのだ。
 酒場に駆け込んだあなたは濡れた身体を乾かし酒場で食事を取ったものの、この農村には旅人向けの宿屋は無いという。
 雨の中での野宿は避けたい。あなたは馬小屋か物置でかまわないから屋根の下で寝させてほしいと酒場の主人に頼んだところ、倉庫として使っている空き部屋を使わせてもらえることになったのだ。
 
 朝食をテーブルに運んできた主人に、あなたは昨夜何かあったのかと尋ねた。
 昨夜横になった頃、建物の外であわただしく人が走り回る音が聞こえたのだ。
 魔物や野盗の襲撃かと思い武器を手に取った者の、そのような雰囲気でもなくやがて物音もしなくなったため、あなたはそのまま眠りについたのだ。

 あなたの問いかけに、主人は村長の孫が高熱を出したのだと答えた。
 村の薬師が手を尽くしているが、どんな薬も効果がなく高熱が続いているらしい。
 
 「食事中に失礼する。」
 声をかけられ、そちらを振り向くと初老の男があなたのテーブルの横に立っている。
 先日村に着いた際に目にした、この村の村長だ。
 「あなたは冒険者とお見受けします。一つ頼みを聞いてもらえないだろうか?」
 
 村長は自分の孫が数日前より原因不明の熱病に罹り、高熱に苦しんでいると告げた。
 村の薬師が様々な薬草を試したが効果が無く、昨夜から更に熱が上がり衰弱しているそうだ。
 村には医者はおらず、衰弱がひどいためナゴールまで連れて行くことは難しく、医者を呼ぶには時間がかかりすぎる。
 しかし、村にはいかなる病も治すことができる『満月草』という薬草が言い伝えられている。
 『満月草』は満月の夜にのみ花を開き、その花弁は万病に効果がある薬の原料となるのだという。
 村の北にある森の中に生えているとの言い伝えだが、村の薬師も実物を見たことはないのだという。
 村長の家に伝わる古い書物に描かれた花の絵が唯一の手がかりだ。
 村長はあなたに『満月草』を探してほしいと言い、頭を下げた。
 満月の夜はまさに今夜だ。

 あなたは無論、村長の依頼に応じた。
 村長は何度も礼を言い、北の森までの道をあなたに説明した。
 村からは4刻ほどの距離だ。
 今から出発すれば昼過ぎには到着するだろう。
 
 村の薬師も薬草を採りに森へ入ることがあるのだというが、村人は森に入ることはほとんど無いのだという。
 薬師が言うには、森の中にはかえる人の集落があるらしい。
 かえる人は特に攻撃的な種族では無いため、こちらから敵意を見せない限り襲われることは無いだろう。
 村長の家の書物には花の絵が描かれているだけで、蕾の絵は描かれていない。
 夜に花が開いた状態で無ければ、『満月草』を見分けることはできないだろう。
 夜の森は見通しがきかず、危険が多い。昼間のうちに森へ入り、あらかじめ様子を確認しておいた方がいいだろうとあなたに告げた。

 あなたは急いで食事を済ませると、支度を整え出発した。

概要説明

 ■ゲームの概要
 「ローグライクハーフ」シナリオ「月の雫」へようこそ。このゲームはプレイヤー1人で遊ぶことを想定しています。
 あなたは自分の分身である「主人公」を作成します。これは「冒険者」とも呼ばれる、万能ではないが十分に強いキャラクターです。
 『月の雫』ではレベル10~13のキャラクターでのプレイを想定しています。
 ゲーム進行の詳細については後述します。

 ■ゲームの特徴
 「ローグライクハーフ」のシナリオは、短い時間でTRPGを遊んだような満足感を与えてくれます。部屋を探索し、ワナをかいくぐり、敵を蹴散らして、最終的な目的へと臨みます。
 しかし、気をつけてください。冒険の一部はランダムで形成されているため、必ずしも成功するとは限りません。判断を誤り、運に見放されたとき、あなたの大切なキャラクターは冷たい墓石の下で、永い眠りにつくことになるでしょう。

 ■ゲームに必要な物
 筆記用具と六面体サイコロ1個があれば、すぐにもゲームをはじめられます。「冒険記録紙」をプリントアウトしておくと、手もとで情報を管理できて遊びやすいでしょう。

 ■ゲームの準備
 本作『月の雫』を始める前に、あなたは主人公を準備してください。冒険を進めるためのルールを読むか、いつでも読めるように手もとに置いてからゲームを開始します。
 本ゲームはレベル10~13のキャラクターでのプレイを想定しています。
 基本ルールブック記載の装備の購入および従者の雇用を行ってください。
 冒険の舞台はナゴール周辺のため、ナゴールを舞台にしたサプリメントに追加の装備や従者のデータがあれば、利用してかまいません。

 ■ゲームの進行
 『月の雫』は1本道モードで進行します。
 一本道モードでは、あなたは分岐を気にすることなく、d33によってマップを決定していきます。このモードでは、あなたは一定の条件を満たした後に、中間イベントや最終イベントにたどり着きます。
 同じタイルが出た場合には、重複が出なくなるまで番号をひとつずつ増やします。たとえば、あなたが12番と13番のタイルをめくった後で12番を再び出したときには、21番のタイルをめくります。33番の次のタイルは11番としてください。
 ただし、後述する「手がかり」を使用することで特定のイベントに進むことができます。
 「手がかり」の使用や最終イベントへ進む条件はゲーム内の記述に従ってください。

 ■冒険とゲームの勝利
 このゲームの勝利とは、シナリオにおける使命を達成することです。『月の雫』では『満月草』の花弁を手に入れることです。
 『月の雫』は昼と夜の2回の冒険で完結するようにデザインされています。

 ■隊列
 『月の雫』における戦闘には、隊列という概念はありません。主人公と「戦う従者」は、敵を好きなように攻撃できます。
 敵側の攻撃は、主人公が1人の場合には、攻撃の半分を主人公が受けてください。残りの半分は従者が受けます。
 いずれの場合でも、余った攻撃をどちらが受けるかは、プレイヤーが決めてください。

 例:インプ7体が主人公と「戦う従者」である兵士3人を攻撃した。インプの攻撃は合計で7回である。プレイヤーは攻撃のうち3回分を主人公が、残りの4回分を従者が受けることに決める。従者である兵士は【防御ロール】に失敗するたびに1人ずつ死亡する。

 ■ゲームの終了(冒険の成功と失敗)
 主人公が1人死亡したら、冒険は失敗で終了します。最終イベントを終えた場合にも、ゲームは終了します。そのときに条件を満たしていれば、冒険は成功に終わります。

昼間の冒険

冒険の始まり

 村を出てなだらかな平原を歩き、森に着いた頃には太陽は中天にさしかかっていた。
 初夏の日射しは強く、全身汗だくになったあなたはとりあえず木陰に腰を下ろし、水袋の水で喉を潤した。
 
 森は広葉樹が中心で、比較的下生えも少なく歩きやすそうだ。
 風に揺れる木々の音と小鳥の鳴き声だけが聞こえる静かな森だ。
 一見した限り、大きな危険はなさそうに見える。
 気をつけなくてはならないのは、ナゴール周辺に生息するという巨大な鉄サソリだろう。
 森の中にある池にはかえる人が住み着いていると村長が言っていたのを思い出した。
 しかし、かえる人は平和的な種族であり、こちらから敵意を見せない限り危害を加えられることは無いだろう。
 
 一息ついたあなたは立ち上がり、森に入っていく。
 昼間のうちに『満月草』が生えていそうな場所を探しておくのがいいだろう。
 
 昼間は明るいためランタンが無くても判定ロールのペナルティは受けない。
 昼間の冒険では、できごと(マップタイル)を5つ実行したら、【昼間 最終イベント】へ進んでください。

【昼間 11】花で溢れた広場

 あなたが訪れたのは、森の中に開けた広場だ。
 広場からは木の枝に遮られること無く陽の光が差し込み、色とりどりの花々が咲いている。
 
 この中に満月草はあるだろうか?
 そんな想いで広場に咲いている花々を眺めていたあなたは、広場の中に動く物を見つけた。
 それはどうやらかえる人の子供達のようだ。
 4人ほどのかえる人の子供が花畑の中で遊んでいる。
 彼らはあなたの姿を見ると遊びの手を止め、不安そうな顔で遠巻きにこちらを伺っている。

 あなたは両手を挙げて敵意が無いことを示す。
 やがて子供達は安心したのか緊張を解き子供同士の遊びに戻っていった。

 あなたは再び広場の花々に視線を戻す。
 今はまだ昼間なので見つけることはできないが、ここは夜になれば月の光も差し込むはずだ。
 あなたはこの場所を覚えておくことにした。

 【広場の手がかり】を入手した。
 夜になった後に、手がかりを元にこの場所を訪れることができる。

【昼間 12】赤い果実

 森の中を歩いていたあなたは、木の枝に赤く熟れた果実がいくつもぶら下がっているのが目に入った。
 陽の光を浴びた果実はみずみずしい光沢を放っており、心なしか甘い香りが漂ってくる。
 木の枝は太く丈夫に見えるので、よじ登ればいくつか採ることも可能だろう。

 木を上るなら目標値4の【器用ロール】を行うこと。
 何もせずに先に進んでも良い。

 ◇【器用ロール】成功
  もう少しで果実に手が届こうというところで、あなたの耳に唸る羽音が飛び込んできた。
  そしてそれは、徐々に大きくなっていく。
  見上げると、ちょうどあなたの頭上に大きな蜂の巣があるではないか!
  下からは木の枝の陰になり見つけることができなかった。
  蜂たちが一斉にあなたに襲いかかる!
  もはや果実どころではない。
  あなたは這々の体で木を下りると、一目散に逃げ出した。
  蜂に刺され、生命点を1点減らすこと。
  
 ◇【器用ロール】失敗
  あなたは足を滑らせてバランスを崩してしまう。
  危うく落ちそうになるのをなんとかこらえるが、これ以上登ることは諦めた方が良さそうだ。
  あなたは慎重に木から下りると、木の枝に連なる赤い果実を恨めしそうに見上げながら先に進むことにした。

【昼間 13】マイコニド

 朽ちた倒木に派手な色の傘を広げた大きなキノコが生えている。
 そのうちのいくつかがゆっくりと動き出し、短い足でのたのたとあなたに向かってきた。
 動くキノコ、マイコニドだ!

 『マイコニド(Myconid)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:植物
 レベル:3
 出現数:1D6 + 1
 宝物:1D3
  1 :なし
  2 :金貨1枚
  3 :金貨1D6枚
 反応表:1d6
  1-3 :中立(攻撃しなければ戦闘回避できる)
  4-6 :敵対的(半数が死亡した場合、逃亡する)

 マイコニドがばらまく胞子には麻痺性の毒が含まれている。
 あなたと従者は戦闘開始時に目標値3の【幸運ロール】を行い、失敗した場合この戦闘中は身体が痺れて【攻撃ロール】【防御ロール】ともに-1のペナルティを受ける。
 このクリーチャーは火に弱いため、【炎球】など火属性の攻撃は判定ロールに+1の修正が加わる。

【昼間 21】湿地帯の謎の小屋

 森のかなり奥にある湿地帯となっている場所にやってきた。
 ぬかるみに足を取られると、ずぶずぶと膝付近まで泥に沈んでいく。
 この湿地帯を横断するのは避けた方が良さそうだ。
 
 引き返そうとしたあなたは、視界の端に捕らえた物に違和感を感じて立ち止まった。
 目をこらしてみると、湿地帯の中の灌木に隠れるように木で作られた柱と屋根のような物が見える。
 粗末な小屋のようにも見えなくも無い。
 湿地帯の周りを歩いて別の角度から見てみたが人影は見当たらない、中は無人のようだ。
 使われていないのか、住人が出かけているのかは定かでは無い。
 
 小屋は湿地帯の中央付近にあるため、小屋まで行こうとすれば膝まで泥に浸かって進む必要がある。
 気になるが、今は満月草を見つけることが目的だ。
 あなたは、この場所を覚えておくことにして、先に進んだ。

 【謎の小屋の手がかり】を入手した。
 夜になった後に、手がかりを元にこの場所を訪れることができる。

【昼間 22】薬草取り

 森の中の小道の脇に一人の男が座り込んで水袋から水を飲みながら休息している。
 男の脇には木を編んだ籠が置かれ、中には薬草と思われる草や木の枝が山になっている。
 どうやら薬草取りのようだ。
 あなたを見ると一瞬警戒するが、あなたが両手をあげて敵意が無いことを示すと、安堵した表情を浮かべた。

 聞けば彼も近くの村に住む薬師で、薬草を採りに森に来ているのだという。
 彼に満月草について尋ねてみると、自分も言い伝えで聞いたことがあるだけで実物を見たことはないと答えた。
 しかし、先祖はかえる人から満月草について教えてもらったと伝えられており、かえる人なら何か知っているかもしれないと告げた。

 あなたは礼を言うと、先に進むことにする。

【昼間 23】かえる人の見回り

 「そこの人間、止まれ!」
 森の中を歩いていたあなたは、突然の誰何の声に立ち止まった。
 声のした方を振り返ると、見回りだろうか二人組のかえる人が立っている。
 手には三つ叉の槍を携え、警戒の色が濃い。

 「お前、薬草取りではなさそうだ。森で何をしている?」
 口調は厳しいが、襲いかかってくるような様子は見られない。
 あなたは、村の子供が熱病に罹ったこと、治療のために満月草を探していることを告げ、かえる人に心当たりは無いかと尋ねた。
 あなたの言葉を聞き、互いに何かを話し合っている。
 警戒する様子がなくなったわけでは無いが、態度や口調からは刺々しさは無くなっていた。
 「満月草という草は聞いたことが無いな。悪いが力にはなれそうに無い。お前の邪魔をするつもりは無いが、あまり森の奥までは行くな。森の中で鉄サソリを見たという噂もある。」
 かえる人は、あなたにそう告げると去って行った。

【昼間 31】かえる人の集落

 森の中の大きな池の畔にやってきた。
 誰かに見られている気配を感じたあなたは池の中に目をこらす。そこには水面から目だけを出してこちらを伺うかえる人が何人か確認できる。
 池の周囲には葦で作られたかえる人達の住居が点在している。
 この池はかえる人達の集落のようだ。
 
 あなたは両手を挙げて敵意が無いことを示す。
 かえる人達は互いに何か話し合っていたが、やがてかえる人の一人があなたの目の前までやってきた。

 「人間が我々の村に何の用だ?」
 あなたは満月草を探しているのだと言い、何か知っていれば教えてほしいと頼んだ。
 かえる人はあなたの言葉に一瞬逡巡するような表情を見せるが、すぐに表情を戻すと口を開いた。
 「満月草という薬草は聞いたことが無い。悪いが力になれそうに無い。」
 かえる人は警戒した口調でそう告げた。

 どうやら協力してもらうことは難しそうだ。
 あなたは礼を言って先に進むことにするが、この場所は覚えておくことにした。
 
 【かえる人の集落の手がかり】を入手した。
 夜になった後に、手がかりを元にこの場所を訪れることができる。

【昼間 32】巨大ワーム

 森の中を歩いていたあなたは、何か柔らかい物を踏んだ感触に驚いて足を止めた。
 それは草むらに横たわっていた巨大な芋虫の身体だったのだ!
 午睡を邪魔されたのか、怒り狂った巨大芋虫はあなたに襲いかかってきた。

  『巨大ワーム(Giant worm)』
  分類:強いクリーチャー
  種別:虫類
  レベル:3
  生命点:8
  攻撃回数:2
  宝物:1D3
   1 :なし
   2 :金貨1枚
   3 :金貨1D6枚
 反応表:1d6
  1-3 :敵対的 生命点が半分以下になったら逃亡する
  4-6 :死ぬまで戦う

 倒したら先に進むこと。

【昼間 33】老いたかえる人

 森の中の小道を歩いていたあなたは、道の脇の木陰で老いた一人のかえる人が倒木に腰掛けてパイプを吸っているのを見つけた。
 かえる人は目だけを動かしてあなたを一瞥したまま、旨そうに煙をくゆらせてパイプを吸っている。
 
 あなたは敵意が無いことを示しながら近づくと、満月草を探していることを伝え、何か心当たりがあれば教えてほしいと告げた。
 かえる人はパイプを加えたまま目玉だけを動かしてあなたを見ると、しわがれた声で話し始めた。
 「満月草とな。その名の通りの花であれば、夜の森を煌々と照らすような花なのだろうな。わしのような老いぼれには眩しすぎるわい。」
 それだけ言うとふうっと細い煙を口から吐き出し、再び目を瞑りパイプを燻らせた。
 しばらくそこに立っていたが、あなたのことは気にもとめず黙ったままパイプを愉しんでいる。
 これ以上の話は聞けなさそうだ。
 あなたは礼を言うと先に進むことにする。

【昼間 最終イベント】

 陽が落ち始めると森の中は急に暗くなってきた。
 月が昇るまではまだ時間がある。
 あなたはひとまず森の外に出て休息を取ることにした。
 森の外に向けて歩き始めたあなたは、茂みをかき分けるガサガサという音に足を止めた。
 次の瞬間、草むらの中から巨大なサソリがあなたに襲いかかってきた!
 まるで金属のような赤と銀色の光沢を帯びた外殻を備えた鉄サソリだ!

 目標値4の【器用ロール】を行うこと。
 失敗した場合不意を打たれ、鉄サソリが先に攻撃を行う。
 成功した場合は通常通りあなたからの攻撃となるが、すでに接敵しており0ラウンド目に飛び道具での攻撃を行うことはできない。

 『鉄サソリ(Iron Scorpion)』
  分類:強いクリーチャー
  種別:虫類
  レベル:4
  生命点:5
  攻撃回数:3
  宝物:1D3
   1-3 :武器のもと
    金属の素材で、街へ行けば接近戦用の武器もしくは金属製の防具と交換することができる
 反応表:1d6
  1-6 :敵対的 生命点が半分以下になったら逃亡する
 
 『鉄サソリ』の3回目の攻撃は、毒のある尾によるものである。
 この3回目の攻撃に対する【防御ロール】に失敗してしまったキャラクターは、通常の1点に加えて、毒で【麻痺】を受けてしまう(この効果は累積しない)。
 この毒で【麻痺】したキャラクターは【判定ロール】すべてにー1の修正を受けてしまう。

 『鉄サソリ』の外殻は金属製の武具の材料になる貴重な素材だ。
 街へ持って行けば武具と交換してもらえるだろう。
 ただ、それはこの冒険を終えた後の話だ。
 
 倒したら【冒険の幕間】に進むこと。

【冒険の幕間】

 あなたは森の外れまで戻ると、腰を下ろして休息を取ることにした。
 
 食料があれば食事をしてもいい。
 食事をした場合、生命点に加えて副能力点を1点回復させることができる。
 (食料を複数消費しても回復する副能力点は1点のみだ)

 陽が落ちて暗闇に閉ざされた森は、昼までとは印象が一変する。
 見通しがきかず、夜間に活動する危険な生き物もいるだろう。
 昼間以上に注意して進む必要がある。

 やがて東の空から蒼い月光を纏った満月が登り始めた。
 言い伝えの通りであれば満月の光を浴びた満月草は花を開くだろう。
 夜が明けて月が沈むまでに満月草を見つけなくてはならない。

 あなたは身支度を調えると立ち上がり、夜の森へと出発した。

 夜間の森ではランタンなどの明かりが無ければ【判定ロール】に-2のペナルティを受ける。

 昼間に手がかりを入手していれば、それを元に昼間に訪れた場所に向かうこともできる。
 【広場の手がかり】を所持していれば、D33を振らずに『【夜 11】花で溢れた広場』へ進むことができる。
 【謎の小屋の手がかり】を所持していれば、D33を振らずに『【夜 21】湿地帯の謎の小屋』へ進むことができる。
 【かえる人の集落の手がかり】を所持していれば、D33を振らずに『【夜 31】かえる人の住む池』へ進むことができる。

 夜の冒険では探索により3つの『夜の手がかり』を集める。『夜の手がかり』を3つ集めたら、【夜 最終イベント】へ進むこと。

夜の冒険

【夜 11】花で溢れた広場

 あなたが訪れたのは、森の中に開けた広場だ。
 広場からは木の枝に遮られること無く月の光が差し込んでいる。
 昼間には色とりどりの花が咲いていたが、今はつぼませている花が多い。
 開いている花々を丹念に調べるが、満月草の特徴に合致する花は見当たらない。
 残念ながら、ここには満月草はなさそうだ。

 あきらめて他の場所へ進もうとしたあなたは、広場の一角の草花が何者かに踏み荒らされているのを見つけた。
 地面には大きな足跡がいくつも残されているが、明らかに人間の物では無い。
 ここで何があったのだろう?
 草花の踏み荒らされ方を見ると、何か争った跡のようにも見える。
 周囲を注意して伺うが、気配や物音は無い。すでに立ち去った後なのだろう。

 何にせよ、ここに長居は無用だ。
 あなたは先に進むことにする。

【夜 12】絡み草

 森の中の道を慎重に進む。
 満月のため月明かりは明るいが、木々の密度が濃いところは月光が遮られ、見通しがきかない。
 あなたは足に何かが絡みつくのを感じ、足を止めた。
 見れば蔦状の植物があなたの足に絡みついている。
 それは信じられない力であなたの足を締め付け、茂みに引きずり込もうとしている。
 
 目標値5の【筋力ロール】を行うこと。
 成功すれば蔦を振りほどいて逃れることができる。
 失敗した場合、吸血植物に血を吸われ生命点を1点失う。
 成功するまで再度【筋力ロール】を行うこと。
 【筋力ロール】に失敗するたびに生命点を1点失う。

 蔦から逃れることができたあなたは、足早にその場を立ち去った。

【夜 13】ダイアウルフ

 森の中、あなたは周囲から発せられる殺気を感じて足を止めた。
 耳を澄ませば夜風に揺れる茂みの葉音にまざり、獣のうなり声が聞こえる。
 闇の中に赤い目がいくつも光っている。
 ダイアウルフの群れに囲まれたようだ!

 『ダイアウルフ(Dire Wolf)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:動物
 レベル:4
 出現数:1D6 + 4
 宝物:なし
 反応表:敵対的(半数が死亡した場合、逃亡する)

 倒したら、先に進むこと。

【夜 21】湿地帯の謎の小屋

 森の奥にある湿地帯にやってきた。
 ぬかるみに足を取られると、ずぶずぶと膝付近まで泥に沈んでいく。
 この湿地帯を横断するのは避けた方が良さそうだ。

 湿地帯の中央には灌木に隠れるようにして簡素な小屋のような物が建っており、その周囲には何人かのトカゲ人の姿が見える。
 どうやらここはトカゲ人達の住居のようだ。
 トカゲ人は気性が荒く、攻撃的な種族だ。
 見つかればただではすまないだろう。
 あなたは物陰に隠れながらランタンの光が漏れないように慎重に様子をうかがった。
 幸いこちらに気づかれた様子は無い。

 見る限り複数のトカゲ人が見える。
 どれくらいの数がここに住んでいるのかは分からない。
 ここから小屋のあるところまで行くにはぬかるんだ湿地帯を横断する必要がある。
 遮蔽物の無い湿地帯を見つからずに小屋まで行くことは不可能だろう。
 
 気になるがあなただけで近づくのは危険だ。
 一旦この場を離れ、先に進むことにする。
 
 【夜の手がかり】を一つ入手した。
 これまでに【夜の手がかり】を3つ入手していれば、事態の打開に向けて行動を起こすときだ。【夜 最終イベント】へ進むこと。
 まだ3つの手がかりを入手していなければ、探索を進める必要がある。

【夜 22】ジャイアントスネーク

 森の中を歩いていたあなたは、何か柔らかい物を踏んだ感触に驚いて足を止めた。
 それは草むらに横たわっていた巨大な蛇の身体だったのだ!
 怒り狂った大蛇はあなたに襲いかかってきた。

  『ジャイアントスネーク(Giant snake)』
  分類:強いクリーチャー
  種別:動物
  レベル:4
  生命点:8
  攻撃回数:2
  宝物:1D3
   1 :なし
   2 :金貨1枚
   3 :金貨1D6枚
 反応表:1d6
  1-4 :敵対的 生命点が半分以下になったら逃亡する
  5-6 :死ぬまで戦う

 ジャイアントスネークの攻撃に対する【防御ロール】でファンブルした場合、ジャイアントスネークに絡みつかれる。
 絡みつかれたキャラクターは攻撃を行うことができない。
 自分の行動時に目標値4の【筋力ロール】を行い、成功すれば振りほどくことができる。
 絡みつかれた状態のキャラクターに対するジャイアントスネークの攻撃は自動的に成功する。

 倒したら先に進むこと。

【夜 23】かえる人の死体

 森の中、不意に漂ってきた血のにおいにあなたは足を止めた。
 慎重に周囲を伺うと、茂みの中に二人のかえる人が倒れているのが目に入った。
 慌てて駆け寄り、様子をうかがうが、二人とも絶命している。
 体中に引き裂かれたような傷跡がいくつもあり、死後数時間は経過しているようだ。
 何者かに襲われたことは明白だ。
 周囲のしげみも踏み荒らされ、争った形跡が見て取れる。
 何に襲われたのかは不明だ。
 周囲には動く物は無く、おそらくすでに立ち去った後なのだろう。

 埋葬してやりたいが、今は時間が無い。
 あなたは短く祈りを捧げ、歩き始めた。

【夜 31】かえる人の住む池

 森の中の大きな池の畔にやってきた。
 池の周囲には何人ものかえる人がいるが、緊張感が漂っている。
 池に近づくあなたに槍を構えたかえる人が静止の声をかける。

 「止まれ、人間が我々の村に何の用だ?」
 あなたは満月草という薬草を探しており、危害を加えるつもりは無いと伝えた。
 
 かえる人達は武器を下ろしたものの警戒を解く様子は無い。
 「満月草という名の薬草は知らない。早々に立ち去れ。」

 かえる人達からはピリピリとした緊張感が伝わってくる。
 あなたは、何かあったのかとかえる人に尋ねた。
 かえる人達は互いに顔を見合わせて何か相談していたが、一人があなたの方を向いて話し始めた。
 「遊びに行った村の子供が帰ってこない。探しに行った村の仲間も帰ってこないのだ。」
 それだけ話すと、周囲の見回りに戻っていった。
 他のかえる人たちもあなたに興味を示す者はいない。それどころでは無いのだろう。

 協力を頼める雰囲気ではなさそうだ。あなたは先に進むことにする。

 【夜の手がかり】を一つ入手した。
 夜の森で何かが起きている。
 あなたは全容をつかめているだろうか?
 【夜の手がかり】を3つ入手していれば、事態の打開に向けて行動を起こすときだ。【夜 最終イベント】へ進むこと。
 まだ3つの手がかりを入手していなければ、探索を進める必要がある。

【夜 32】ジャイアントバット

 あなたの頭上から大きな羽音が響き、何かの陰が月光を遮った。
 巨大なコウモリの群れがが鋭い爪を光らせながらあなたに襲いかかってきた!

 『ジャイアントバット(Giant Bat)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:動物
 レベル:4
 出現数:1D3 + 3
 宝物:なし
 反応表:敵対的(半数が死亡した場合、逃亡する)

 空を飛ぶジャイアントバットには近接攻撃を当てるのは難しい。
 【攻撃ロール】に-1の修正が加わる。
 ただし、0ラウンド目の遠距離攻撃には上記修正は加わらない。

 倒したら先に進むこと。

【夜 33】トカゲ人の集団

 夜の森の中を歩くあなたは、がさがさと茂みをかき分ける音に立ち止まり、物陰に隠れると慎重に周囲を見渡す。
 少し離れたところを大柄な人型の生き物の集団が歩いている。
 長い尾を持ち、直立したトカゲのようなシルエットはトカゲ人のようだ。
 粗野で好戦的な種族として知られている。
 見つかればただではすまないだろう。
 集団で歩いているトカゲ人は、幸いこちらに気づかれた様子は無い。

 あなたは慎重に様子をうかがう。
 暗い上に距離があるためよく見えないが、トカゲ人達は子供だろうか小柄な人影を担いでいるように見える。
 
 あなたがどうするべきか考えあぐねているうちにトカゲ人達は森の奥へと姿を消した。
 あなたはトカゲ人達の気配が完全に消えてから立ち上がる。
 トカゲ人が子供を掠っているのであれば助けねばならない。
 しかし、あなただけで救出するのは難しいだろう。
 トカゲ人の住処を突き止めた上で、共に戦ってくれる仲間が必要だ。

 どうすべきか考えながら、あなたは先に進むことにする。
 
 【夜の手がかり】を一つ入手した。
 あなたは事態の全容をつかめているだろうか?
 【夜の手がかり】を3つ入手していれば、事態の打開に向けて行動を起こすときだ。【夜 最終イベント】へ進むこと。
 まだ3つの手がかりを入手していなければ、探索を進める必要がある。

【夜 最終イベント】

 あなたはかえる人達の村へ赴き、トカゲ人の集団が子供のような小柄な人影を担いでいたこと、トカゲ人の住居が森の奥の湿地帯にあることを伝えた。
 かえる人の子供達がトカゲ人に掠われた可能性が高い。
 あなたの話を聞いたかえる人は急いで仲間を集め、話し合いを始めた。
 傍らで様子を見ていたあなたにもピリピリとした緊迫感が伝わってくる。
 
 やがてかえる人のリーダーらしき一人があなたの前にやってきた。
 「貴重な情報の提供感謝する。これからトカゲ人の住処を急襲して子供達を助け出す。しかし、トカゲ人は好戦的な種族だ。我々だけで戦うのは難しい。」
 そこまで言い、かえる人のリーダーはあなたに頭を下げた。
 「どうか、力を貸してほしい。頼む。」
 周囲を見渡すと他のかえる人達もあなたに頭を下げている。

 あなたには満月草を探すという使命がある。
 しかし、かえる人の子供達を見捨てることはできない。
 あなたは頭を上げるように言い、かえる人達に協力することを伝えた。
 「ありがとう。感謝する。あなたは薬草を探していると聞いた。子供達を助け出した後、あなたの捜し物にも協力しよう。」

 かえる人の立てた作戦はこうだ。
 あなたと複数のかえる人が湿地帯の正面からトカゲ人の住居を急襲する。
 トカゲ人達が交戦している隙に別のかえる人が湿地に身を隠しながらねぐらの裏に忍び込み、子供達を救出する。
 あなたは囮となり、トカゲ人達を引きつけるのが役目だ。

 時間が無い。かえる人達はあなたの案内の元森の奥の湿地帯を目指した。
 【決戦】へ進む。

【決戦】

 湿地帯にたどり着いたあなたは数人のかえる人達と共に湿地を横断して正面からトカゲ人の住居に向かった。
 トカゲ人達の注意を引きつけなくてはならない。
 突然の襲撃を受け、トカゲ人たちが慌ただしく戦闘準備を整えている。
 湿地に足を取られるあなたと違い、かえる人達は素早い動きでトカゲ人の住居までたどり着き、すでに交戦が始まっている。
 
 大柄なトカゲ人に対して、小柄なかえる人は1対1では分が悪い。
 そのため、トカゲ人一人に対して複数のかえる人で相手をしたり、大ガエルに騎乗して戦うなどで戦力差を補っている。
 そして何よりかえる人達は士気が高い。
 かえる人のリーダーも大ガエルに跨がって最前線で戦い、他のかえる人達も大柄なトカゲ人に一歩も引かず善戦している。

 やがて、あなたへも数人のトカゲ人の集団が迫ってきた。
 
 『トカゲ人(Lizard Man)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:悪の種族
 レベル:4
 出現数:1D3 + 3
 宝物:なし
 反応表:死ぬまで戦う

 ぬかるみに足を取られるため、あなたと従者は【攻撃ロール】【防御ロール】に-1の修正が加わる。
 なお、2戦闘ラウンド目に1D3人、4戦闘ラウンド目に更に1D3人のトカゲ人が加勢する。

 トカゲ人をすべて倒したら【月の雫】に進むこと。

【月の雫】

 あなたの活躍により劣勢となったトカゲ人は、かえる人の子供を人質とすべく住居に戻ろうとする。
 しかし、すでにかえる人の別働隊が子供を救出しており、挟み撃ちにされることになった。
 挟撃されたトカゲ人は次々にかえる人達に倒され、わずかな生き残りが這々の体で逃げ出していった。
 戦いに勝利したかえる人達は槍を掲げて勝利の雄叫びを上げ、夜の森にかえる人達の歓声がこだました。

 かえる人の子供達を連れて池に戻ったころには、満月は西の空に傾いていた。
 あなたの前にかえる人のリーダーがやってきて、あらためて頭を下げて礼を言った。
 「協力に感謝する。あなたがいなければ子供達を助けることができなかった。ありがとう。」
 かえる人達の問題は解決したが、あなたの問題はまだ解決していない。
 満月草を探さなくてはならない。
 月はすでに西の空に傾いている。時間が無い。
 あなたは、満月草について何か知らないか改めて尋ねた。
 「満月草という名前は知らないが、満月の夜に咲く花なら知っている。」
 そういうとかえる人のリーダーはあなたを池の縁に誘った。

 「これだ」
 彼が水かきのある手でゆび指した先には、池の底に咲く青い花が揺らめいている。
 水中花。
 水中に咲く花はいくつかあるが、地上に咲くような色鮮やかな花を咲かせる水中花は非常に珍しい。
 「我々は月の雫と呼んでいる。万病に効く霊薬の材料になる。」
 彼は池に潜ると青い花弁を数枚摘み取って戻ってきた。
 「これは我々かえる人に伝わる秘密の薬草だ。他の種族に渡すことは無いのだが、あなたは特別だ。持って行くといい。」
 そういうと、あなたに青い花弁を手渡した。
 それは月の雫という名にふさわしい、青く可憐な花弁だった。
 あなたは礼を言うと、受け取った花弁を慎重に小瓶にいれた。

 小瓶を背負い袋に入れたあなたは、かえる人のリーダーに村に戻ると伝えた。
 歩き始めたあなたを見送ったリーダーは、池の底で揺らめく青い花を見ながら呟いた。
 「人間達はこの可憐な花を満月草などという名で呼んでいるのか。」
 リーダーは首を振りながらため息をつく。
 「全く、人間にはつくづく風情が無い。」
 そう言うと、池の水面に浮かぶ蒼い月に向かって身を躍らせた。
 白み始めた空の下、朝霧が立ちこめ始めた森の中に水音が響いた。

【冒険の終幕】へ進む。

【冒険の終幕】

 かえる人から満月草の花弁を受け取ったあなたは、急いで村に引き返した。
 村に到着したあなたは、待ち構えていた薬師に花弁を入れた小瓶を渡す。
 すぐに薬師が薬を煎じ子供に飲ませた。

 「ありがとう。助かった。なんとお礼を言えばいいか。」
 村の酒場で身体を休めていたあなたに村長がやってきて頭を下げた。
 聞けば薬の効果で熱は下がり、症状は落ち着き始めているのだという。
 薬師の見立てでは、2,3日休めば歩けるくらいには回復するだろうと言うことだ。
 
 「村での宿泊と食事の代金はすべてこちらで持とう。せめてもの礼だ。それと今晩は主人に頼んでご馳走を用意させる。ゆっくり休んでいってくれ。」
 そう言うと、村長は酒場の厨房で忙しそうに働く主人に目配せした。
 「おう、羊を1匹潰した!酒もたっぷりある!村長のおごりだからな。楽しみにしていてくれ!」
 肉切り包丁を掲げながら大声を響かせた。

 冒険をして、酒を飲んで肉を食らう。
 あなたは別れ際のかえる人の言葉を思い出した。確かに風情は無いのかもしれない。
 だが、それでいいじゃないか。
 次の冒険に備え、今日は村長の厚意に甘えて愉しむことにしよう。

 
 経験点を1点獲得する。


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