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『深淵の井戸』全テキストデータ

ローグライクハーフシナリオ『深淵の井戸』のテキストデータです。
Webブラウザ上で遊べるシナリオ本体は下記の記事で公開しています。


はじめに

本記事は上記記事で公開しているローグライクハーフシナリオ『深淵の井戸』の全テキストデータです。一部、アナログ環境でプレイする場合の注釈を追記しています。
本記事はシナリオ本体部分を有料記事とさせていただいています。プレイするだけで無くシナリオ全体を参照したい方は、本記事をご購入ください。

クレジット表記

深淵の井戸
プレイヤー(人数):1人
プレイ時間(分):15~30分
対象年齢(歳):10~99歳
ゲームマスター:不要
ジャンル:ファンタジー
レベル:初級
難易度:normal
形式:シナリオ(d66)
世界:オリジナル

「ローグライクハーフ」の公式基本ルールは下記URLで無料配布されています。

序文

背景

 大海に浮かぶファサーデラ大陸。古代ガーランド語で「巨人の背中」という意味を持つこの大陸の南西に、レイドルダイムという名の小国がある。
 大陸西部を支配するガーランド帝国の庇護のもとで、他国からの侵攻へのおびえもなく、人々は貧しくとも平和な生活を謳歌している。

 物語の舞台は、レイドルダイム東部の辺境に位置する小さな街だ。海岸から400リーグ離れ、大陸中央部に広がる「渇きの砂漠」が目前に迫る。この地域は雨がほとんどなく、ゴツゴツとした岩と低い灌木がまばらに点在する乾燥したステップが広がっている。
 人々は痩せた土地を耕し乾燥に強い大麦を育て、山羊を放牧して日々の糧を得ていた。

 「渇きの砂漠」は、ファサーデラ大陸中央部の巨大な砂漠地帯を指す。ここでは、人間だけでなく、あらゆる生命が拒絶される死の世界が広がっているとされている。
 砂漠を横断しようとした者たちの中で、生きて帰った者は一人もいないという。

プロローグ

 荒野を吹き渡る風が白い砂埃を巻き上げ、咄嗟に首に巻いたマントを引き上げて口元を覆った。風が静まり、砂埃が落ち着くと、腰の水袋から生暖かい水を口に含む。
 ジャリジャリという不快な砂の感触に顔をしかめながら、砂とともに飲み込み、乾いて悲鳴を上げる喉を潤した。視線を上げ、手で庇を作って目を凝らす。先に広がる白い街並みが、かすかに蜃気楼のように揺らめき始めていた。
 街に近づくにつれて、その光景が次第に姿を現し始めた。崩れたままの建物が多く、かろうじて立ち残っている建物も強い日差しと砂嵐によって容赦なく傷ついている。漆喰が剥げ落ち、日干しレンガが風雨にさらされている。人通りも少なく、ただ荒野を吹き渡る風の音だけが響いていた。
 街に到着すると、あなたは酒場に向かった。阿片と煙草の煙が充満する薄暗い店の椅子に腰を下ろし、運ばれてきたぬるいエールを一気に流し込んだ。周囲を見渡せば、あなたと同じ冒険者とおぼしき旅人が目立つ。どうやら噂は本当だったようだ。

 辺境のこの街に訪れた理由は、旅先で耳にしたある噂が発端だった。渇きの砂漠に近い辺境の街で、新たな地下遺跡が見つかったというものだ。
 2杯目のエールを飲み干し、砂埃の中を歩き詰めだった身体がようやく落ち着きを取り戻した。まずは、その地下遺跡の場所を聞き出さねばならない。
 席を立つと、空になったジョッキを持ってカウンターに向かい、白い髭を蓄えた酒場の主人に3杯目のエールを注文した。陶器のジョッキが差し出されると、銀貨のかわりにガーランド王国の紋章が彫られた金貨を1枚カウンターに置いた。
 酒場の主人が鋭い視線を投げかける。あなたは地下遺跡の場所を教えてほしいと主人に伝えた。

概要説明

■ゲームの概要
 「ローグライクハーフ」へようこそ。このゲームは1人(または2人)で遊べるTRPGのようであり、ゲームブックのようでもあり、ダンジョンハック系の電源ゲームをアナログゲーム化したようでもあり……。ゲームマスター(GM)はいてもいなくても遊べます。つまり、1人から3人までで遊ぶゲームです。
 プレイヤーとしてゲームに参加する場合、あなたは自分の分身である「主人公」を作成します。これは「冒険者」とも呼ばれる、万能ではないが十分に強いキャラクターです。プレイヤーが(つまり主人公が)1人の場合、7人前後の従者とともに冒険を開始します。プレイヤーが2人の場合、従者なしで冒険を行います。
 冒険は「地図」上にある部屋や廊下に踏み込むたびに、対応したできごとを確認していくことで成立します。ある地点に到達するとイベントが発生して、物語が進行します。またある地点にたどり着くと、物語がクライマックスに突入します。

■ゲームの特徴
 「ローグライクハーフ」のシナリオは、短い時間でTRPGを遊んだような満足感を与えてくれます。部屋を探索し、ワナをかいくぐり、敵を蹴散らして、最終的な目的へと臨みます。
 しかし、気をつけてください。冒険の一部はランダムで形成されているため、必ずしも成功するとは限りません。判断を誤り、運に見放されたとき、あなたの大切なキャラクターは冷たい墓石の下で、永い眠りにつくことになるでしょう。

■ゲームに必要な物
 筆記用具と六面体サイコロ1個があれば、すぐにもゲームをはじめられます。「冒険記録紙」をプリントアウトしておくと、手もとで情報を管理できて遊びやすいでしょう。

■ゲームの準備
 本作『深淵の井戸』をはじめる前に、あなたは主人公(と、必要なら従者)を準備してください。冒険を進めるためのルールを読むか、いつでも読めるように手もとに置いてからゲームを開始します。

 ■ゲームの進行
 『深淵の井戸』はダンジョンの探索を中心とした冒険で、1本道モードで進行します。ただし、冒険の展開によっては1本道モード以外の進行ルールに従ってゲームを進めることになるかもしれません。その時は進行についての説明が記載されますので、それに従ってください。
 1本道モードではあなたは次のイベントを決定するためにダイスを振る必要はありません。「次へ進む」ボタンをクリックすることで、ランダムに決定される次のイベントへ進みます。

アナログ環境でプレイする場合は、実際にダイスを振ってイベントを決定する必要があります。ゲームは序盤、中盤、終盤の3部に分かれており、それぞれイベント決定の方法が異なります。それぞれの記載に従ってください。

■冒険とゲームの勝利
 このゲームの勝利とは、シナリオにおける使命を達成することです。『深淵の井戸』では地下遺跡の奥底に眠る謎を突き止め、地上に生還することです。
 『深淵の井戸』は1回の冒険で完結するようにデザインされています。

■地下迷宮と隊列
 『深淵の井戸』における戦闘には、隊列という概念はありません。主人公と「戦う従者」は、敵を好きなように攻撃できます。
 敵側の攻撃は、主人公が2人の場合には均等に攻撃が分けられます。
 主人公が1人の場合には、攻撃の半分を主人公が受けてください。残りの半分は従者が受けます。
 いずれの場合でも、余った攻撃をどちらが受けるかは、プレイヤーが決めてください。

 例:インプ7体が主人公と「戦う従者」である兵士3人を攻撃した。インプの攻撃は合計で7回である。プレイヤーは攻撃のうち3回分を主人公が、残りの4回分を従者が受けることに決める。従者である兵士は【防御ロール】に失敗するたびに1人ずつ死亡する。

■ゲームの終了(冒険の成功と失敗)
 主人公が1人死亡したら、冒険は失敗で終了します。最終イベントを終えた場合にも、ゲームは終了します。そのときに条件を満たしていれば、冒険は成功に終わります。
 冒険が成功した場合、主人公はそれぞれ1経験点を獲得します。冒険に失敗した場合には、これを得ることができません。死亡していない主人公は、改めて冒険に出ることができます。

■制約事項
 『深淵の井戸』では戦闘において「逃走」を行うことはできません。
 ゲームの途中でブラウザを終了させた場合、ゲームの進行状態は保存されず最初からやり直しになります。
 ブラウザの「戻る」ボタンや、「再読み込み」ボタンはクリックしないでください。

アナログ環境でプレイする場合は、これら制約事項は発生しません。

冒険の始まり

 あなたは街外れにある井戸の掘削現場にやってきた。酒場の主人の言うとおり井戸の工事は中断され、井戸の底に降りる縄ばしごが吊るされている。
 井戸を掘った先で遺跡が見つかったそうだ。
 しかし、渇きの砂漠近くでは井戸を掘ることは教会が禁じていたはずだ。この街が井戸掘削禁止区域に入るのかはわからないが、教会の目にとまればただではすまないだろう。
 この街には中央教会直属の教会は無く、おそらく見つからないと踏んで無断での掘削であったに違いない。井戸は資材置き場のような簡素な建物で隠されており、酒場の主人に聞いていなければ見つけることは難しかっただろう。
 この乾燥地帯で水を得ることがいかに難しいかは容易に想像できる。雨は少なく、近隣に池や河川は無く、他の街から買う水は高い。
 貧しいこの街にとって、教会の目を盗み井戸を掘るまで追い詰められていたのだと思えば、無断での井戸掘削を責める気には到底なれない。

 あなたは井戸から地下遺跡に降りる前に市場で冒険の準備を整えることができる。
 ただ、辺境の街で冒険者の数もまだ少ないため、品物はかなり限られるだろう。
 傭兵を雇うことはできるが、傭兵の質は低く金額に見合う実力を期待することは難しい。

■市場
 ・ランタン 金貨3枚
 ・スリング 金貨5枚
   射撃用武器として扱えるが、攻撃ロールに-1の修正が加わる。
 ・ロープ  金貨4枚
   丈夫なロープ
 ・傷薬 金貨5枚
   生命点を3点回復することができる薬。
   戦闘中以外であればいつでも使用できる。
   在庫1点のみ。

■傭兵
 ・ランタン持ち(戦わない従者 技量点0、体力点1)金貨3枚
 ・荷物持ち(戦わない従者 技量点0、体力点1)金貨3枚 
 ・兵士(戦う従者 技量点0,体力点1)金貨5枚

 準備ができたら、井戸を降りて迷宮に挑もう。

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