ギアファンde日常。「グスタフと露天風呂」
グスタフと露天風呂
しんしんと山に積もる雪。
それを見ながら、わしは静かに湯に全身を沈めている。
鍛治の仕事は体力を使う仕事だ。
炎の中でじっくりと焼かれた鉄を、繊細な力加減で打つ。
少しでも火加減、力加減を間違えれば、作品の質はがらりと変わってしまう。
そうした、力と集中のバランスを取り続ける仕事を続けていると、さすがのドワーフであっても身体に疲労が溜まる。
その疲れを癒すため、モンス王国には火山のマグマで湧き水を沸かした温泉があちこちに存在する。
今日は、週に一度、温泉に浸かる日である。
山の湧き水で身体を丁寧に清める。
そのあと、浴室から1歩外に出る。
目の前には岩がいくつも積まれ、その間からこんこんと湯が湧き出ている。
そっと足を湯の中に沈める。
熱が、じわりと足に侵食する。
そのあと、ゆっくりと身体を沈めていく。
一瞬だけひりつくような感覚に全身が包まれるが、しばらくすればそれは全身をじんわりと包み込む、あたたかさに変わる。
あたたかさに全身を委ね、ふっと身体の力を抜く。
ほぅ、と長いため息が零れる。
視線を茅葺の柵の向こうに向ける。
父なる山には、雪がしんしんと振り積もっている。
山の黒と、雪の白の対比が、かつて父上に見せていただいた異国の水墨画のような趣を思わせる。
もう一度、ため息をひとつ。