見出し画像

ギアファンde日常。『アートゥロと夜』

日常にギアファンキャラを降ろす遊び。

アートゥロと夜

ふと、意識が浮上するのを感じる。
皮膚にじんわりと肌寒さを感じる。

目を開けなくても、身体に染み付いた体感で分かる。
かなり早く目が覚めてしまった。
しかも、これは二度寝をするには意識が覚醒しすぎている。

諦めて、ベッドからのそりと上半身を起こす。
そして、隣で眠っているマグノリアを起こさないよう、そっと布団を抜け出す。
ベッドが少しでもきしむ音を立てないよう、細心の注意を払って。

いつからこうなのかは、もう覚えていない。
ただ、これが子供の頃からの性質で、今でもたまにこういうことが起きるのは分かっている。

モスグリーンのジャケットを羽織り、裏口から外に出る。
刺すような寒さが、布に覆われていない部分にじんと染みる。

ピンで刺したような星が、真っ黒い空に点々と瞬いている。
今日は、月は出ていない。

煙草に火を点ける。
暗闇に赤い光がじわりと灯る。
そのまま煙草に口をつけて、息を吸う。ゆっくりと吐く。
ふう、と、煙混じりの吐息が、冴えた空に溶ける。
冷えきった肺につかの間、熱が宿る。

夜明けには、まだ遠い。


あなたのお気持ちが、ギア・ファンタジア執筆の原動力になります!