彗星書架 第3号 感想
今回のテーマは「サラリーマン」でした。
会議のち会議で二百十日かな
松本てふこ
だんだんと忙しくなってくる様子が伝わります。
台風が来ることも多い二百十日という季語に不穏な空気とこれから起こる波乱も感じるような・・・
白きもの皆汚れたる晩夏かな
みやさと
盛夏の、汚している時には気づかなかったものが、晩夏で浮かび上がってくるような、激しさと汚さを突き付けられたような句です。
八月の始末書先輩と連名
西川火尖
共犯にさせてしまった罪悪感と悪いことに巻き込んでしまった密かな喜び。その証として名前が刻まれた始末書。他の月では感じられない、はしゃいでしまった感を「八月」が出していると思います。
課長にも下の名前や夜会草
佐々木紺
オフィシャルな苗字に比べて、下の名前はプライベート感がありますね。課長という役職もオフィシャルです。
ふと下の名前を意識して、個人として課長を見た瞬間。その心の動きが印象的です。
本音吐く前のとりあえずのビール
星野いのり
飲み込んでるものを吐き出したくて、流し込むビール。いつも通りに見せながらも主人公の心の緊張を感じさせる冒頭の一句です。
シャツの汗その奥の汗知りたくて
楠本奇蹄
オフィシャルなシャツの汗の奥にまた別の汗が隠れているという、汗が二層ある様な捉え方がおもしろいです。汗という本来なら汚いもののその奥まで知りたい、その願望は官能的です。
残業のあとのやくそく星祭
相田えぬ
星という言葉があることで、「残業のあとのやくそく」が煌めいているように感じられます。
きっととても楽しみにしているのでしょう。
また、「あとのやくそく」と平仮名表記にすることで、残業から星祭までの距離感が出ますね。
年に一度しか二人が出会えない星祭という行事や「やくそく」とういう言葉からは、残業という現実と比べて儚さを感じます。
ビジネス用語に混じる密やかな情熱、私情が大きくなる瞬間、その心の動きが今回の連作の魅力でした。
楽しい作品をありがとうございます。
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