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「よんもじ」Vol.1感想

2022年3月13日ツイート分の転記です。

ネクタイを貸され遅春の会議室
西川火尖

「借りて」じゃなくて「貸され」に相手のおせっかいや愛情を感じます。
きっと、ちょっとそそっかしい感じの社員なのかな。
「社長もくるんだからネクタイ締めとけ」と渡されたんでしょうか。会議には出ない、違う部署(毎日きちんとネクタイしている営業部とか)の同期だったり?でしょうか。
ちょっとイメージしてみたんですけど、ネクタイという身体に近い物を貸してくれて、しかも目の前で解いて渡してくれるって、なんかちょっと艶っぽいシーンな感じもしますね。
いずれにせよ、そんな同僚のいる会社っていいですね。
会議に向かうまでの何気ない日常の光景が浮かんできます。
会議のピリッとする感じと人の温かさが、「遅春」という季語に会っていると思います。

春の水遅々と進まぬ三輪車
藤田亜未

大人にしてみれば、こうすれば出来るのに!ってもどかしく思うことでも、子どもにしてみれば初めての体験。まず三輪車にまたがるってことが新鮮なんでしょうね。
「ちち」というリズムも三輪車の進みの遅さを上手く表している気がします。成長って、止まっているように見えたり、時には戻っているように見えることも。
でも確実に力を溜めて成長しているんですよね。
子どものゆっくりとした三輪車をもどかしくも待ってあげるところに愛情を感じます。
それは春の訪れを伝え、キラキラとして、温かさを持つ「春の水」の効果もあるのかもしれません。

うららかに生きてるだけじゃだめですか
池田奈加

ストレートで、とても胸に響く疑問ですね。
うららかに生きてるだけでいいのに、生きているうちに人は様々な欲望を持ったり、しがらみに囚われたりしますね。
「うららか」という季語に「生きてる」という言葉を付けて生き方を表したのが新鮮でおもしろいです。
色々なことが起こる毎日の中、春の日の下で一息ついた時にふと浮かんだ疑問、それは生き方の真理の様でドキッとします。
平仮名の中「生」という字だけが漢字の表記なのも、ゆるいようで、鋭い疑問を投げかけたこの句の良さを際立てていると思います。

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