見出し画像

「哺乳瓶で酒を飲む」をやることで無の境地に至った話

2019年の12月。私はひとり、自分へのクリスマスプレゼントに哺乳瓶をポチっていた。きっかけは身内からの一件のLINEだった。

最近VTuberが"哺乳瓶でストゼロを飲むのが良い"と話していたらしい

正直字面だけ見ると意味が分からなかった。しかしある程度合点がいった。

なるほど、バブみか……

気づけば興味本位でポチっていた。


ポチった哺乳瓶の紹介

ちなみにポチった哺乳瓶はこちら。好きな青色のデザインで、240mlタイプのものを選んだ。実はこの製品、レビューを見てみると「吸うと中身が出過ぎる」という趣旨で評判の悪い製品である。しかし私がこの哺乳瓶を選んだ一番の理由はそこにあった。

赤ん坊の頃の記憶がない私は、少なくとも記憶の限りでは「哺乳瓶ビギナー」である。そんな私に赤ちゃんにちょうどいいような哺乳瓶では、荷が重すぎるのではないかと判断したのだ。

この時私は初めて「評判の悪い口コミを決め手に商品をポチる」ということをした。



着弾、そしてはじめての実食

12月14日に注文し、約数日で着弾。手に取る。もう既に背徳感がすごい。

そしてここで重要になるのは、「初めて入れる酒は何にするのか」ということであった。私は卑屈なので、正直ストゼロではないものにしたかった。しかしストゼロとある程度共通点を持たせることで、「哺乳瓶での飲酒」という行為に敬意を持った"儀礼"としてのセレクトはしたかったのである。

画像1

選ばれたのは、檸檬堂(鬼レモン)でした。

当時めちゃくちゃはまっていたことに加え、ストゼロと同様にアルコール分は9%であるため、このセレクトに。さて実食である。


"無"になれるという最大の魅力

まず一口飲んでみる。笑いが出た。まだ恥ずかしさが残っているのだ。多分これではいけない。暗い部屋でそれなりにでかいモニタにYoutubeをかけながらひとり哺乳瓶に酒を入れ吸っているという事実を思い出してはいけない。

我に返ってはならない――。

そっと目を閉じる。また吸ってみる。ふと気づいた。無だ。気づけば無になっていた。

というのも、「自分に強い刺激をくれることを知っている飲料を 体内に入れようと必死で吸い続ける」という行為によって「吸う」ことに意識が集中し、無になれるのである。つまりこれは、「出づらい容器で飲むからこそ良い」のだ。

成る程――。

目を開ける。陽気な動画を写す画面が眩しい。少しだけ賢くなったような気がした。


もはやただの"コップ"として使い始める

その魅力に気づいて以降少しの間、自室での通常の水分補給にも哺乳瓶を使うようになっていた。気軽に無になれるアイテム、「お手軽無生成装置」だからである。一昨日はアクエリアス。昨日はマッチ。今日は緑茶。……かなりの中毒具合であったと思う。

しかしそのブームは一度あっさりと終わってしまう。インフルエンザにかかってしまい、体調不良で臥せっていた時だ。起き上がるのもままならない体。ドリンクホルダーにささっていたままの"それ"が、母親に見つかったのである。全身の血が逆流するようだった。

母は何も言わないし、表情も変えなかった。"それ"とは確実に目が合っていたとは思う。しかし今となってはもう本当に"それ"に気づいていたのかもわからない。聞くこともできない。

こうして無性に恥ずかしくなってしまった私は、母が部屋からいなくなった後、高熱の体を引きずってそっと哺乳瓶を手に取り、中身を飲みほした。その後家に一人でいるタイミングにシンクでよく洗い、押し入れの奥底へとしまったのである。


あとがき

今回はこのような結末になってしまったが、正直心根の奥底ではまだ哺乳瓶を「諦めきれていない」自分がいる。それだけ興味深い体験だった。今度は違う酒を入れてみたいし、何よりまたあの"無"になりたい。

正直ここまでくると中毒患者感が否めないが、よければ興味が湧いた各位も、是非試してみてほしい。哺乳瓶はいいぞ。

この度は目に留めていただきありがとうございます! フォローはお返ししておりますので、是非相互になりましょう! もしサポートもいただけることがありましたら、とっても幸せです。