オノマトペ

歌人、工藤吉生の「ぬらっ」を目にするたびに心臓がぎゅっとなる。

彼の「ぬらっ」にはすべてがある。いいことも悪いことも、うまく行ったこともうまく行かなかったことも。好かれていたことも嫌われていたことも、光り輝いていることも闇に吸い込まれるようであることも。

生きてはしゃぎ回っている子犬と、死んで動かなくなった老犬。きらめく宝石とくしゃくしゃのアルミホイル。ぴちぴちはねる魚とマグロの解体ショー。いじめを受けている俺と少しだけ優しくしてくれる女の子。誰よりも特別な自分と誰よりもクソな自分。

自分が生きる世界のすべてとそれ以外のすべて。

ぬらっ。
と工藤吉生は現れる。音もなく、ただ「ぬらっ」と。

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