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「モリタクロウ"+"」について

2024.8.24(sat)@戸塚LOPO
『otona de show』
開場 16:30 / 開演 : 17:00
入場料 : 2000円(1drink別途order)
出演 : モリタクロウ "+" / NewCASIO / ザ・ノーノーボーイズ

掲載したライブ情報に、

- モリタクロウ "+" -
モリタクロウ(vo, gt)/ 甲斐正樹(ba)/ 則武諒(dr)
今までにない新しい挑戦です。ぜひ、お見逃しなく。

と記載しておきながら、「一体何が新しい挑戦なのか」という部分を何もお伝えしていなかったので、この場に書いてみようと思います。
やや、長ったらしくなります。
それなりに恥ずかしいヤツのような文章ですが、どうかご容赦を…。






歌を歌いたい、と、他の人が思う音楽を営む動機とはなんとなく違う気がして、ずっと後ろめたい気持ちがある。

確かに歌うことは好きだし、その楽しさも充分知っているつもりなのだけれど、それだけじゃ足りないなあと思うことが多々、隣の音楽好きにはおいそれと音楽が好きですと表現するには、やはり何かが足りないと感じていた。

そしてそれはコンプレックスになっていく。







僕が音楽を通して感じたいことは、「音楽」を最初に始めた時から一貫して「アンサンブルの愉しさ」なのだと思う。

忘れもしない、1997年の秋、親が車で送ってくれた地域の交流会感「ふれあい交流館」に初めて足を運び、2階にある文化ホールの重い扉を開けた時に広がった照明の明るさ、不思議な形をした白い壁、自分より背丈の高い少年少女が歌う歌が響き渡り––––––

一緒に来てくれた同級生のK君はあの時どう感じていたのかはわからないけれど、僕はといえば、ワクワクが止まらないまま合唱団に入団することは、あたかも「当然」のものとして人生が進むことを期待していた。


休み休み続けた合唱団人生も、気づけば12年ほどが経過するまでになった。
終わりの時も、明示的な「終わり」ではなく、ただただ自然と、社会の波に溶け込むように抜けていった。いや、正直いまだに「脱退表明」をした記憶がない。まあ、それはいいのだ。それはまた、別の話なのだ。

DTMでフェードの三角を敷くように、2008年ごろから緩やかに音楽人生に変化が起きた。
僕は、それまでほとんど聴いたことのなかったJAZZを体感する部活動に入部した。


その頃には、自らのくだらないプライドを雑草のように野放しにしたせいで、世の中を完全に斜に構えて目配せていた「可愛くない」準成人に成り果ててしまっていた。
あの頃の先輩方や同期たちには、今なお申し訳が立たない思いでいっぱいである。正直、本当にどうかしていた。

ビッグバンドジャズを行なう倶楽部活動だったにも関わらず、なかなか耳に馴染まなかった音源を聴くのはほどほどに、しかし先輩に貸していただいた「録音」CDを片っ端から漁り、気がつけばジョンコルトレーン"Giant Steps"とビルエヴァンス"Saturday at the Village Vanguard"の2枚がお気に入りになった。それらよりも僅かに録音が古かったカウントベイシーの音源は、当時はまだ楽しみながら聴けるような耳に育っていなかった。

懐古を行いながらこの文章を書いているのだけれど、一応ギリギリジャズ研の人だったのだなと少しだけホッとしている…。

問題は集団行動の方で、コミュニケーションをとることが非常に下手だったり、人の話を最後まで聞けないので変なところでめちゃめちゃ怒られたり、相当な問題児だった自覚がある。タチの悪いことに、自分に原因があることを認識していなかった。間抜けである。

そんな自分が更生を志すきっかけになったのが、当時プロで活躍されていたOBの先輩の演奏だった。
摂津本山のスターバックスに、注文が滞るほど立ち見の現役学生たちが押しかけ、食い入るようにして見ていた異様な光景。
後にも先にも、あの日だけだったと思う。

a.sax 山本昌広
bass 萬康隆
drums 樋口広大

いまだに僕は本当に何もできないのだけれど、あの鮮烈なライブを見てからというもの、僕は密かに「自由なアンサンブル」を夢見るようになってしまった。
言葉にするのも気恥ずかしいくらい、いまだに僕は何もできない。

けれども、少しでもいい音楽をつくりたい、と思ったきっかけになったのは、間違いなくこのライブだったと思う。

本人の許可なく紹介するのも少しどうかと思ったけれど、Youtubeに上がっている動画であれば…という気持ちで。

まさしく、この動画のsax / bass / drumsのメンバーでのライブだった。
余談だが、このNoctilcaというバンドも本当に美しく、いつか生で拝見したい思いが募る。Apple Musicにも御座いますので、何卒。


山本昌広さんは大学のOBで、当時プロプレイヤーとして活躍されていた。
今では第一線を退かれているものの、関西では時々ライブ活動をされている様子。とても見に行きたいが、日常のリソースと睨めっこして毎回負けている。

ただ、当時は極貧学生だった自分なりに、予定さえ合えばなるべく足を運用にしていた。

今では神戸にあるbig appleの過去のライブ情報を確認することができないから、正確なメンバーを思い出すことができないものの、しかしあの日、間違いなく

piano 浜村昌子
a.sax / s.sax 山本昌広
drums 則武諒

の3人方がアンサンブルを行っていたのは間違いなかった。
それが確か、則武さんとの出会いだったと思う。
2011年か、2012年だか、その頃だったはずだ。

見たことのない鳴り物パーカッションをドラムスタンドに吊って、それまで聴いたことのない、なんと表現すれば良いかわからないが、非常に立体的で構築的なプレイをされていた則武さんは、演奏中は非常にポーカーフェイスというか、しかし決して固い表情ではなく、おおらかな雰囲気で。

その全てが鮮烈で、それが浜村さんと昌さんの世界観を大きく大きく拡張して。自然現象の一部のようなイメージ、と表現したいが適切かどうかはわからない。
具体的なフィルとか、フレーズとか、そういう話ではない。(そういう話かも知れないのだけれど、要素の扱われ方があまりにも他の方と違った印象)

誰っぽい、という表現ができない。
こればかりは、本当に、一度ぜひ体感しにいらしてほしい。

15分40秒ごろから演奏が始まります。
前述の浜村さんにゆかりのある方々の演奏。
お時間許す限り、どうかご堪能いただきたく。


在学中だったか、それとも卒業してしばらく入り浸っていた頃か忘れてしまったのだけれど、一時帰国中の甲斐さんとは部室入り口のややひらけたスペースで初めてお会いした記憶がある。

当時、かわいくない「準成人」から社交性レベルが0.5だけ上がった自分の、違和感たっぷりな会話を辛抱強く聞いてくださった甲斐さんには、上京の時も上京してからも、たくさんたくさんお世話になった。

初めてのご共演は2022年。お会いしてから10年以上。
ワンマンライブでサポートで入ってくださった。
ものすごく緊張したけれど、充実感が勝った。

甲斐さんのプレイもまた、他では聴くことができない構築的な演奏で、有機的なシナプスの結合が生み出したものは、とりわけmartin margelaの洋服のような、トラッド同士が現代的に回帰するような、しかしそれが非常に自然で…

…と言葉にするとなると、僕の表現力では全く訳がわからなくなってしまうので、これまた体感しにお越しいただかないとわからない。
一番直接的な表現を誤解を恐れず申し上げると、「あったかい」のです。
「あたたかい」ではなく「あったかい」。

上述で何度も登場した浜村さんと甲斐さん、素晴らしいシンガーのSiriさんが送るジャズスタンダードナンバー「I got it bad」。
多分100回くらいは僕が再生を行っている。


これまで登場した方々は、僕にとっては雲の上のような存在で、ずっと彼らの演奏に憧れながら、またイチ客としてその音楽を愉しんでいたわけだけれど、まさかこのような形で一緒に演奏ができるなどと、10年前は本当に夢にも思わなかった。

俺、曲書いて、その上甲斐さんと則武さんに加わってもらおうとしているのか…。


本当にちゃらんぽらんでひどい僕だけれども、僕なりには、それなりに精一杯今日まで生きてきたという、本当にただそれだけしかないのだけれど、どうか心地よいエネルギーとして大きくなることを期待して、8/24は精一杯臨む次第でございます。

"First Take"は特別なものなので、これを機に、もしよろしければぜひ戸塚に遊びにいらしてください。


一人で何者かにならないと、誰かに認められないとと、身の程も知らず、到底辿り着けない無様な道を孤独に歩むことが美徳だなどと、なんともおめでたい、くだらない、しかし、それくらいかっこつけたいと、そんなプライドがきっといつも邪魔をしていた。けれども、それで良かったのかも知れない。

歌が好きだ、それは何か秤に乗せてしまえるものではない。
私に生まれた。大切な感情だ。

手を差し伸べてくれる人に感謝をしながら、昨日も今日も翌る日も、誠実に生きていく以外に、やはり幸せを感じる手段はないのだと思う。

その点、そうやって生きるチャンスがある僕は、非常に恵まれているのだ。

2024.8.19
モリタクロウ


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