見出し画像

ベン•ワット North Marine Drive

まだまだ暑いですね。そこで今回は、涼をとりたい時、私がよく聴くアルバムの紹介です。

1984年のスタイルカウンシルのお洒落なアルバム「カフェ•ブリュ」をご存知でしょうか。ここで一曲だけ歌っている女性がいまして、トレイシーソーンです。スタイルカウンシルのポールウェラーは当時彼女をとても気に入り、自身のレーベルに引き込もうとしましたが失敗し、ゲスト参加に留まりました↓

そのトレイシーソーンと同じハル大学の学生だったのが、ベンワットです。偶然二人は同じレーベルと契約していて、後にレーベルが戦略的に二人を組ませたユニットが、Everything but the girl です。このユニット名は「女の子以外は何でも売っている」という意味で、ハル大学の近くにあった家具や雑貨を扱う店の名前だそうです。彼らは世界的に成功し、後に二人は結婚します。


ベン•ワット「North Marine Drive」1983年

「North Marin Drive」は、彼らがユニットを組む一年前に発表した、ベンワットのソロアルバムです。寂寥感のあるヴォーカルと寒々としたギターが特徴です。アコースティックギター一本に近い構成ですが、父親がジャズミュージシャンというだけあってその影響を感じます。

80年代初頭、英国でネオアコースティックという流行がありまして、その辺りは私は疎いのですが、今回調べていたら、本作はその流行の先駆け的な作品で、その分野ではけっこうな名盤のようです。

ノースマリンドライブは、英国で実際に存在する海沿いの道の名称で、トレイシーとベンの二人が通ったハル大学から近いところにあります。当時20歳の大学生のベンが生ギター一本でこれほどの寂寥感の世界を作り出していることが、当時同じ大学生だった私はとても感銘を受けました。

このサウンドは英国東部の北海のイメージから創作されているのでしょうけど、私は英国へ行ったことがないので、私のノースマリンドライブは佐渡島です。笑

80年代はまだインターネットも無い時代ですから、夏は若者は海に行くものということになっておりまして、ある夏、男四人で佐渡島へ遊びに行きました。
四人の中のひとりに、音楽的リーダーがおりまして、べつにバンドをやってるわけではないのですが、一番音楽に詳しくお喋りなのでドライブ時のBGMも担当します。
彼の呼び名は六角。メガネのフレームが六角形だから。このアルバムは当時彼のお気に入りで、その影響で私も好きになりました。

佐渡島は鉄道がないので車で島を走りまわっていました。カーステレオからはベンワットやトレイシーソーンの声。選曲は趣味の合う六角に任せて、私は後部席で田舎道に揺れています。アコースティックなサウンドが風のようです。それに六角はよく喋る。さっきから海の景色はいいないいなと言っていますが、泳ぎに行こうと言うと「オレはいい」みたいなことを言います。

私は千葉県育ちで海が好きです。実は千葉県は海水浴場の数が全国で二番目に多い県です。波の静かな内房と波が高い外房があり九十九里浜もあるので海水浴場が多いのです。ちなみに一位は新潟県だそうです。佐渡島は新潟県佐渡市ですね。

ある記事によると「水の綺麗な海水浴場全国ランキングベスト10」に千葉県の海水浴場が二つ入っていて、波左間海岸と守谷海岸。ほんとに水が綺麗です。千葉県をよく知る人はこういう所に行きます。御宿や勝浦じゃありません。千葉県は南に行けば行くほど海は綺麗なんです。

日本海を見るのは、その佐渡島旅行が初めてだったのですが、それまで日本海というと波が高くて寒々しいイメージでした。六角も、同じイメージで本作のカセットテープを持ってきたのでしょう。北へ行けばベンワットの寂寥感の世界が日本でも見られるかもしれない、なんて思っていたと思います。

実際はよく覚えていないのですが、佐渡島も千葉も海辺はたいして変わらなくて、英国のイメージとはほど遠かったと思います。
それより覚えていることが、着替えて海で遊んでいる時、中洲で繋がっている小さな島まで冒険がてら四人で行ってみたのですが、帰ろうとする頃気がづいたら、潮が満ちて中洲が無くなっていて、道もなくなり岩場から海に入った時、波が荒くて身体の自由がきかなくて泳ぎが得意な私でもけっこう必死でした。??六角は?彼は泳げないんだ!泳げないとははっきりは言わずに遠回しにぶつぶつ言ってたのだ!

あの時、奴は泳げないのにどうやって陸に戻ってきたのだろう?あの波ではパニックになって溺れる…どうやって奴は生きて生還したのか、思い出せない。笑

今、お互い生きてるので、
いいんですけど。

佐渡島の海沿いで聴き続けたベンワットのノースマリンドライブ。

私も六角も、英国の海の寂寥感の世界に、少しは近づけたのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?