エビふりゃ~!!
晴れた日曜日の昼下がりのこと。
ランニングで気持ちよく汗をかいた私は、
そのあと昼飲みをしようと、スーパーへビールと
つまみの惣菜を買いに行った。
ビールのつまみといえば、当然ながら揚げ物である。
とんかつ、コロッケ、から揚げが所狭しとならぶ
惣菜売り場で、私が選んだのはエビフライ。
一週間ほど前、やはり今日とおなじように
ビールと惣菜を買って持ち帰ったことがあった。
家族の昼食の足しにと惣菜を
何品か買い、食卓に並べた。
その時、エビフライを見た家族は
みんなで声をそろえて
「エビフライ~!!」
と歓声をあげた。
大人も子どももエビフライは
大好きなのである。
そんな家族の喜ぶ姿を、私は思い出していた。
今日もエビフライを選んだのは、
そんな理由からだったのかもしれない。
家に帰ると今日も家族は揃っていて、
昼ごはんをどうするか相談していたようだった。
私はこの間と同じように買ってきた惣菜を
食卓に並べようとしたのだが、その時ふと
思い立ってあることを試してみることにした。
私の言葉ひとつで家族の反応が変わるかどうか、
実験してみたくなったのである。
家族全員が腹を減らして見守る中、
私は息を吸い込んでゆっくりと
もったいぶったような言い方で、
「名古屋めいぶつー!」
と言いながら、
惣菜を食卓に置いた。
彼らの反応は、私の予想どおりだった。
いや、あまりにも見事にキマッたその反応は、
私の予想を超えていた。
食卓に置かれた惣菜を見るや
彼らは声をそろえて、
「エビふりゃ~!!」
と歓声を上げたのだった。
思った通りの結果を得て満足した私は、
悪だくみに成功したときのような笑みを浮かべながら、
なんとも素敵な家族に恵まれたものだと思った。
窓から入ってきた夏の風が、
ゆっくりとカーテンを揺らして、
私たちのいる食卓を通り抜けていった。
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