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島日記 咳をしてもひとり

昨夜半、目が覚めた。
外が明るいので、あれもう満月かと庭に出たら、しとしと雨が降っていた。
錯覚だったのだろうか。

寝ていて咳が出てとまらない時がある。
尾崎放哉(ほうさい)の、「咳をしても一人」という句を思い出す。

この句は静寂の中で咳の音、悲痛、孤独を読んだ句として扱われている。
私はユーモアも感じるのだが、独りよがりだろうか。

放哉は結核を患っていたので、苦しかっただろう。
しかし私は咳こんでむせるだけ、はた目で思うより平気なのだ。
周りに誰もいないと、遠慮せずに、咳をだせる。

「大丈夫?」と言われずにすむ。
一人でよかったと思う。
悲痛というより自由を感じる。

「月夜風ある一人咳して」
「なんと丸い月がでたよ窓」
「こんなよい月を一人で見て寝る」尾崎放哉

同じ自由律の俳句をよむ種田山頭火は、12月3日が生誕140年になるそうだ。
山頭火の
「からす鳴いてわたしも一人」
は、放哉の死を旅先で知りよんだという。
「放哉居士の作に和して」と前書きにある。

私はこれも孤独を感じない。
空を見上げ、なんて自由なんだ、カラスさんこんにちは、今日もいい日和だねというふうに思えるのだが。

病気であればまた違うかもしれないが、一人は決して悲しむことではない。
孤独と結びつけるのは間違っている。
誰に文句を言われるでなし、自分の基準で生きていける。
これほど冥利につきることはない。

こんな所に極楽鳥が 島は時々季節を見失う
大きくなりすぎるのでバケツに植えたら
こんなになったカポック
どんぐりの木あったっけと思えばセンダンの実
リンゴツバキの殻
リンゴツバキ
ビーツのひなたぼっこ
賄い弁当

雨が上がり、濡れた道路に差す強い光が眩しい。
それでも冬の陽は心身を温かさで包んでくれる。
海もきらきら。
うなだれていたポインセチアの赤が照らされ胸を張っている。
私も見習って背筋を伸ばそう。


今日も読んでくださってありがとうございます。


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