二時間余りの旅
「ハマユウが咲く頃なのにまだかな」
庭の端で木に遮られて見えなかったのだろう、遠慮がちに咲いていた。
毎朝見ているのに、つぼみさえわからなかった。
「気づかなくてごめんね」
ハマユウの自生している浜辺に、行ってみようと思い、出かけた。
ハマユウは、種が流れてどこかに流れ着くので、「どこか遠くへ」の花言葉もあるそうだ。
「月桃の花も咲いているだろう」
ところが、ゲツトウの花もハマユウもまったく咲いていなかった。
なんだかキツネに化かされたような心持ちだ。
ゲットウは帰り道、枯れかかった花をひとつ見つけたので、遅すぎたか、それにしては花が咲いた形跡がないのだ。
いえ、やっぱりクマタケランの間違いのようだ。
ゲットウの花は垂れ下がる。
海岸の道沿いに咲いているハマウドのでっかい姿もなかった。
今の時期に咲いているはずなのに変だ。
どんどん進んで行き、猿、鹿に遭遇する。
車ではないので怖くなり引き返した。
私の記憶違いなのか、それとも本当に化かされたのか奇妙な二時間あまりの旅だった。
それでもいろいろな海辺と森林の植物が撮れて、嬉しい。
三角岩の立神島。
釣りで、歩いて渡ったことがある。
登山より怖かった。
目指す花は撮れなかったが、目が緑色になりそうな初夏の山やまを堪能できた。
家から出て、非日常を味わえば、それは旅になる。
たとえ二時間の外出でも。
お付き合いくださってありがとうございました。
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