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心、温まりますね #クリスマス金曜トワイライト

窓を開ける。
ガラガラと開かれた窓ガラスから
冷たい冬の空気が入り込む。

暖房でモワッとした空気が
ぬるりと漂っていた部屋の中に

ヒンヤリした薄水色のベールが
一瞬にして広がる。

冷たい空気が頬を撫でていく。

肺一杯に冬の空気を吸い込んで
ふーーっと吐き出す。

白い息が夜明けの空に溶けて行って
気持ちが良い。

頭が少しずつクリアになって
今日の予定を考え始める。

昨日から今朝方にかけて
先生に課されたデザインを何とか
描き上げた。

まだ草案段階だけど、自分としては
なかなかの出来だ。

描くのに集中していたせいで結局
ほとんど徹夜になってしまったけど
仕方がない。

今日も朝一のシフトなので
睡眠時間もそこそこに
愛車のカワサキバイクに
乗ってバイト先へと向かう。

深い紺碧の色合いの中を
黄色と橙色の光が踊り始めた空には、
まだチラチラと星空が舞っていて

太陽にバトンパスをするように
小さな三日月がその役目を
静かに終えようとしていた。

気の早い小鳥達が所々で戯れて
始発の電車が動き始めて

だけど人はまだ
そんなに見かけない。

こんな寝ぼけ眼な街並みを
私はこのバイクで駆け抜ける。

もう、朝だよ!!
起きてよ!!

そうやって言いまわっているように
感じられるほどの、この爆音が好きなのだ。

母親には750cc位のバイクに乗るように
言われたのだけれど、どうせ乗るなら
大きいのが乗りたくて、
私はこのバイクにした。

型番:カワサキNinja 1,000

元々、小さいころから特撮番組や時代劇が
好きだった私。

1番最初にドハマりしたのは
仮面ライダーだった。
バイクに跨り街の中を駆け巡り
悪を退治する姿に目を輝かせていた。

周りの女の子が魔法系のキラキラしたものに
夢中になっている間に私は仮面ライダーの
ベルトを腰に巻いて
変身のポーズを取っていた。

変身するという点では同じなのに
何故か私は除け者扱いだった。

その時に感じた悔しい気持ちが原因で
私は女の子みたいに髪の毛を伸ばすのが
嫌になり小さい頃からずっと
ショートカットだった。

そんな幼少期の頃を思い出すが、
バイクで走っていると
それらの思い出が前から後ろへと独りでに
物凄い勢いで流れ去っていく。

あの時に感じたモヤモヤした気持ちも
一緒に吹き飛ばしてくれているみたいで
私はこの時間がとても好きだ。

そうこうしている内に
バイト先に到着した。

バイクを止めてフルカバーのヘルメットを
下から上へとずり上げて脱ぐ。

自分の息で籠っていたヘルメットを脱いで
外の冷たい空気がひんやりと顔を撫でる。

そして短い髪の毛をサラサラと
梳かしてくれる。

少し瞼を閉じて
その感覚に浸っていると
どこからともなく視線を感じた。

コートの襟をビシッと立てた
男性だった。

ベージュのトレンチコートを
綺麗に着こなしている。

どこかで見たような。。

あ、そうだ。
このお店によく足を運んでくれる
常連さんだ。

確か、ベーグルが好きで
いつも暖めてから差し出してたっけ?

それで私は勝手にベーグルおじさんなんて
あだ名をつけていた訳だけど。

軽く会釈をしてくれるので
とっさに笑顔でお返事をした。

彼はそのまま、お店に向かっていく。

今日もベーグルかしら?

そんな事を考えながら
更衣室で服を着替える。

白いシャツと黒いエプロン。
私は、この時間も好き。

仮面ライダーみたいに格好良くは
ないかもしれないけど私服から制服に
変身して、日常から切り離された空間で
ちょっぴり非日常を感じながら

色々なお客様と触れ合いつつ
彼らの時間に寄り添えるから。

よし!今日も頑張ろう!

そう思って、更衣室のロッカーを
パタンと締めて鍵をかける。

お店の準備を事前にしていた店長に
挨拶を済ませて、早速オーダーを
取っていく。

先ほどのベーグルおじさんも
席に座って何だか写真を眺めている。

お店の中は暖かいから
ベージュのトレンチコートも脱いでいて

カシミヤ製の白いタートルネックと
G-SHOCKの腕時計が見えた。

あの腕時計はアウトドアなタイプの方が
つけるはずだから、もしかしたら
彼も結構あちこち出回っているのかも?

なんて少し観察をしながら
声をかけてみる。

『ベーグル、温めますか?』
『あ。。どうも。。』

ちょっとはにかんだように
返事をする人だな。

なんて思いながら、トースターで40秒
ベーグルを温める。

遠赤外線の赤い光が上と下から
挟みこむようにしてベーグルを
暖めていく。

その間にマグカップを温めて淹れたての
コーヒーをゆっくりと注いでいく。

丸くて白いお皿に焼き立ての
ベーグルをのせて暖かいコーヒーを添えた
トレイをそっと彼のテーブルに持っていく。

「ありがとう。」

そう言って、彼は嬉しそうに
食べ始めた。

「ごゆっくりどうぞ。」

一言添えて、私は別のオーダーを
取りに行った。

朝一から昼前までの5時間ほどの
バイトを終えて、私の非日常は
再び日常へと戻ってしまう。

一度帰宅して、
数時間の仮眠を取った後

朝方に完成させたデザインを片手に
夕方から始まるデザイン学校で発表した。

自分としては遠近法も上手く用いていたし
陰影もきちんと付けていた。

しかし、先生からは手厳しい意見が
飛んできた。

現実味にかける、と。
躍動感が感じられない、と。

何がいけないという言うのか。
色合いなのか、あるいは
立体的表現の拙さなのか。

十分に描けてるじゃないか!と
憤る気持ちと、
どうすれば良いのか分からない!と
焦る気持ちが
頭の中をグルグルと駆け回る。

シトシトと雨が窓にあたっている。
その景色を冷え切った窓越しに
眺めながら考え込んでる間に

気が付けば夜が明けていて
私は朦朧としながら、曇り空の中
行きつけの神社にバイクを飛ばした。

今日は大学もバイトもない。

日常も非日常もないのだ。

だからボーーっとしたくて
ここに来た。

田町八幡神社

この神社は木造拝殿だが、その後ろには
人がほとんど来ない森がある。

朝一のバイク通勤もそうだが、
私は人気のない所が好きだ。

バイク乗りはツーリングのイメージからか、
多くの人と行動しがちだと思われるが
私の場合は意外とそうでもなかったりする。

特にこの神社は小高い丘の上にあるから
そこから街並みを見下ろすことも出来る。

自分と言う存在を一旦手放して
環境や世界を客観視出来る。

そうして俯瞰している内に

生きていれば辛い事はあるし
同時に楽しい事もある。

それがキット生きている
という事なのだろう。

なんて思えてくる。

デザイン学校での出来事が頭から
イマイチ離れなくて、さっき
運試しにおみくじを引いた。

中吉だったけど願望の所には
「すこし時がかかるが叶う」と
明記されていた。

その言葉が嬉しくて右ポケットに
小さく折りたたんで入れた。

そうして空や町並みが一望できる
長椅子に座って自分の考えや、デザインの
修正点をメモ帳に書いて纏めていると
足音がどこからか聞こえてきた。

こんな人気のない所に参拝に来る人も
いるんだなぁ、なんて思っていたら

やんわりと私の顔を覗き込みながら
挨拶をしてくれたのは
ベーグルおじさんだった。

どうしてココに彼がいるのかしら?

少し戸惑っていたけれど、これも
何かの縁なのかも知れないと思って
笑顔を返した。

書いていたメモ帳は恥ずかしいから
ショルダーバッグの中にそっとしまった。

『あの。。ワタシのおみくじに、
待ち人は遅れて来たる。って
書いてあったんです。
あ。。おみくじ引きました?』

待ち人。。
もしかして私の事かしら?

ふふっ。新しいアプローチだわ。
少し嬉しい。

でも、デザインの事で
頭がいっぱいだったから
恋愛に関しては無頓着だったな。

私のおみくじ、何て書いてあったけ?
よく思い出せない。

「私のは中吉でした。待ち人はまだ
見ていなかったので、今見ますね。」

そう言って、ポケットにしまっていた
おみくじを広げて【待ち人】の欄を
読んでみた。

来たれど遅い

そう書かれていた。

何だか読みあげるのが
恥ずかしくなったから
私はそのおみくじを
そのままベーグルおじさんに
広げて見せた。

『ははっ。一緒じゃないですか!!』

彼が笑ってくれた。

『本当に!お揃いですね!!』

私もつられて笑った。

大人な男性にこんな表現をするのも
可笑しいかも知れないが、彼の笑顔は
可愛かった。

閉じた目の周りにうっすらと
笑い皺が見えて、ちょっと
照れ臭そうに右手の人差し指で
頬を掻いている仕草が愛らしく見えた。

冬の風の中に一時、春風のような
ぬくもりが感じられた気がした。

彼は、胸ポケットから名刺を取り出し

「こうして出会えたのも
何かのご縁でしょうから」

といって両手で
その名刺を丁寧に渡してくれた。

「すみません。私、まだ学生で名刺とか
持っていないんです。」

『大丈夫ですよ。お気になさらず。
それより、どんな勉強を
なさっているのですか?』

「デザインの夜間学校に
行っています。
昔から仮面ライダーや
時代劇が好きだったんです。

特にその家紋のデザインとかが
格好良くて自分のデザインを
創りたくて勉強してるんです。』

「家紋ですか、良いですね!!
仮面ライダーにも家紋って
ありましたっけ?

「はい!あります!!
あっ。家紋とはまた少し違うかも
なんですけど。

初代の仮面ライダーでも
ありますし、仮面ライダークウガでは
独特なデザインを基調とした字体が
言語として使われているんです。

最新の仮面ライダーでは
ライダーの種類が増えて
各ライダーで模様が違うんです。』

『そうなんですね。僕も映像関連の仕事を
していまして、ロケ地を主に
見て回ってますけど細かいデザインも
興味深いですね。』

こんな感じで30分ほど
話していた。

途中、私の電話にデザイン学校の
友達から電話がかかってしまって

残念ながら、楽しいお話の時間は
お開きになってしまったけど

こんなに長く、お店のお客さんと
お話したのは初めてだった。

誰かと話すときの私は
聞き手である事が多い。

現に、携帯にかけてきた友達も
彼氏の相談を聞いて欲しいとかで
かけて来ていた訳で。

それなのに、ベーグルおじさんには
不思議と私の方が沢山お話をしてしまって。

何だか素直に楽しかった。
またお話したいなぁ。

そんな事を考えながら
バイクをゆっくり飛ばしていた。

まっすぐな道路で、対向車線に車もなくて
私は何だか浮かれていたので、いつもより
減速してのんびり運転していたのだ。

すると突然、
目の前に子猫があらわれた。

咄嗟に避けようとしてハンドルを思いっきり
右側に捻って勢いよくブレーキをかけた。

その時、前日の雨で濡れた
マンホールに運悪く足を取られて、
バイクの後輪がスリップしたが
徐走で走っていたのが幸いして、
直ぐにバイクは止まった。

そして、奇跡的に大きな事故にはならず
子猫は何食わぬ顔をして歩いて行った。

良かったと安堵した瞬間、
右手首に激痛が走った。

バイクのハンドルも握れなくなる程の
激痛で私は仕方なく、バイクを押して
家まで帰宅した。

翌日、念のため病院に行くと
中等症の捻挫であると診断された。

軽傷であれば自宅療養で構わないが、
中等症なので病院で2週間ほど入院して
経過観察する必要があると言われた。

お母さんに連絡を入れたら血相を変えて
飛んできてくれた。

「大丈夫なの!??」

病室に入るなり第一声がこれである。

私の母親は心配性だ。

片親なのだから、仕方がない。

かつていた父親という存在を
私は知らない。

映像編集の仕事をしていたらしいが、
人付き合いの為に飲んでいた大量のお酒で
肝臓をやってしまい、呆気なくこの世を
去ったらしい。

らしい、と言うのは
母親から聞いた話だからである。

私は直接会ったことがない。

どうやら、私が生まれる前には
いなくなっていたようだ。

再婚することもなく、母親は母方の祖父母に
支えられつつ、私を育ててくれた。

母親が働きに行っている間、私は
特に祖父と遊んでいた。

時代劇が好きになったのも、
その影響だろう。

仮面ライダーが好きになった理由は
いまいち分かっていないが、
特撮の映像を担当していた
父親譲りだろうと母親には言われた。

母親が私の左手を握りながら心配そうに
こちらを見つめている。

「お母さん、大丈夫だから。
ちょっと捻挫しただけだから。」

そう言う私の瞳をジーっと見つめて
母親が言った。

「アンタ、バイクに乗りながら
何か考え事でもしてたんじゃないの?」

流石、母親である。
娘の事をよく知っている。

「うん。まぁね。」

私は視線を外しながら言った。

「学校上手く行ってないの?」

母親の質問に上手く答えられないので
黙っていた。

「しんどいなら辞めても良いのよ?」

母親が優しく声をかけて左手を
握ってくれる。

「ありがとう。でも私、やるって決めて
一生懸命に頑張ってるから、もう少し
踏ん張りたいの!!」

母親の手を握り返しながら
私は想いを伝えた。

「そうか。アンタはお父さんとよく似て
一度決めたらやり通すもんね。」

少し遠い目をしながら話す母親。

そんな母親の様子を見て軽く微笑む私に
母親も微笑み返してくれた。

「また明日も来るわね。」

そう言って母親は病室を出て行った。

窓からは沈んでいく夕日が見えた。

深い青色の空が朱色の光と混ざり合って
漆黒のベールに飲み込まれていく。

雷でも鳴りそうな雲行きで
不意に寂しさを覚えた私は

田町八幡神社で貰った名刺を
財布のポケットからそっと
取り出していた。

暗くなっていく部屋で文字は見えにくいが
その名刺からは温もりが感じられて

結局その晩は、その名刺を
左手で握りながら寝ていた。

翌朝、目を覚ますと
母親が笑いながら私の寝顔を見ていた。

「お母さん。早いね。」

モゾモゾと起きる私にお母さんは

「その人、どなた?」

と問いかけてきた。

その人、って、誰の事だろう?

そう思っていると、母親の視線が
私の左手に注がれていて

私は貰った名刺を握りながら眠っていた
という事実に恥ずかしさを覚えた。

「えっ。いや、誰って言われても。。
ベーグルおじさん??」

私の素っ頓狂な発言と声に母親は
ケラケラと笑い声をあげていた。

「何?好きな人でも出来たの??」

母親が満面の笑みで私の左肘を
こついてくる。

「いや、好きっていうか。。
そもそも恋愛した事ないし。
好きって、どういう事か分からない。」

私が照れ隠しにうつむき加減で話すと

「寂しくなった時に思い出す人の事は
少なくとも嫌いでは無いはずよ?

昨晩、雷が鳴っていてアンタが
怖がってんじゃないかって思って
今日は急いで来たんだけど。

その名刺を握りしめて
ぐっすり寝てたから安心したよ。」

「あ、雷。やっぱり鳴ってたんだ。
昨日は何だか早く寝ちゃってたけど
確かにぐっすり寝れたかも。」

私がそう返事をすると

「ま、深くは詮索しないけどね。
良い人と出会えてるなら私も嬉しいよ。」

と笑っていた。

「いや、だから。別に
そういうんじゃないよ!!」

私は恥ずかしくて母親の肩を小突いたが、
「はいはい」と言って軽く
あしらわれただけだった。

結局2週間の入院生活を終えて私は再び
デザイン学校に通うことになったが

バイトの方は、聞き手である右手にまだ
不安を感じていたので店長にお願いをして
もう2週間休むことになった。

「ベーグルおじさん、元気かな。」

独り言のように呟きながら
学校の敷地内を歩いていると、

「探したぞっ!」と言って
私の左腕を軽く叩いてくる声がした。

この前、彼氏の相談を聞いてあげた友達だ。

「バイクの事故、大丈夫だった?」

彼女は私の右手首を心配そうに見つめながら
話しかけてきた。

「うん。大分、よくなった。
心配してくれて、ありがとうね。」

私がそう言うと、

「そっか。良かった!!」と
安堵したような表情で笑っていた。

「実はね、彼氏がバイクのツーリングに
誘ってきてくれてて。。でも私
バイク初心者だし、一緒に行って貰えたら
嬉しいなと思って声をかけたの。」

少し上目遣いで私の表情を伺う彼女。

「あっ。でも事故ったばかりだし
バイク怖かったら断ってくれても
全然良いのだけど。。」

彼女は急いで付け足すように
言葉を続けた。

「うん。良いよ。私も1人で乗るのは
ちょっと怖いけど、他の人もいてくれるなら
何かあった時に助けて貰えるから、今回は
一緒に行くわ。」

私がウィンクをしながら彼女に言うと

「本当!やったぁ!何か、いつも
1人で乗ってるからツーリングとか
苦手かなって思ってたけど、助かった。」

と両手を広げて万歳しながら
彼女は喜んでいた。

「確かに大勢の人で
バイクに乗るのは苦手だけど
今回は特別。

なんかね、
会いたい人に会えそうな予感がするの。」

空を見上げながら、ぼそりと漏らした
言葉を友達は聞き逃さず

「え?会いたい人??
誰、それ?」

グイグイと私の肩を押し出すので

「知らなーい。風に聞いてー。」と
私は軽く笑いながら、
教室へと駆けて行った。

「気になるじゃなーい」と言いながら
追いかけてくる友達と逃げる私の足元を
木の葉が踊って行った。

その1週間後、友達とその彼氏、
あとは私達の話を聞いて集まった
合計7名の男女でツーリングに
向かうことになった。

本当は夜景を見ながらの
ナイトツーリングをする予定だったが
私の事を考えて朝方の交通が混んでいない
時間帯に変更してくれた。

初めて会うのに、優しい人たちだなぁ。
良い友達を持ったものだ。

そんな事を考えながらデニムと
黒い革のジャケットに着替えた。

少し手首が心配だったので
同じ色をした革の手袋も付けて
彼らとツーリングを楽しんだ。

1人で走っている時もなかなかの轟音だが、
こうして集まると各々の音が重なって、
よりインパクトがある。

1人1人が出す音が共鳴しあって
皆で何処かへ一緒に向かっていく。

この感覚は初めてだ。

「何かあれば、皆でフォローしますから、
今日はお互いに楽しんで行きましょうね!」

友達の彼氏が号令をかけてくれた時の
言葉だ。

私は今まで1人で行動することが多かった。

多分、自由を求めていたのだ。
しがらみに捕らわれたくなかったのだ。

でも、どうだろう。

今こうして、友達のおかげで沢山の人達に
囲んで貰って一緒にツーリングを
楽しんでいる。

凄く新鮮で、素直に喜んでいる
自分がいる。

この感覚は、あのベーグルおじさんと
話していた時と少し似ている。

もう私の事なんて忘れてしまったかも
知れないけど、
彼と過ごした時間も印象的で、

かれこれ1ヵ月も経っているのに
私は彼の名刺を財布の中に仕舞い続けて

もしかしたら、どこかで会えるのかも
なんて夢見がちな妄想を描いている。

母親の言っていた通り、
これは恋なのかもしれない。

まだ、決まったわけではないけど。

あっ。カーブ。
気を付けなきゃ。

また考え事してたわ。
とにかく今はツーリングを楽しもう!

そんな風に思想を巡らしながら
友達の彼氏が出した指示で
第三京浜の三沢サービスエリアに
寄ることになった。

「ご飯でも食べましょう。
ここ、カツカレーが
美味いらしいんですよ!!」

友達の彼氏が皆に話しかけている。

「そろそろお腹空いてたんだよね!」
友達が嬉しそうに私に笑いかける。

「そうね。」私も返事をする。

とは言え、まだそこまで空腹感が
なかったので結局、飲むゼリーを
私は食べていた。

そして、食べ終わった袋を
ゴミ箱に捨てて1人、
景色を楽しんでいた。

景色といっても眼下に広がるのは
広い街並みだが、それでも風が気持ちよくて
私は深呼吸をしていた。

そろそろ集合時間だったのでバイクが
置いてある場所に戻ろうとした時

パステルグリーンのハンカチが
風に運ばれて私の足元に
飛んできた。

誰のかしら?

なんて思いながら何気なく拾った。

綿で出来た柔らかな素材で
とても心地よくて

お渡ししようとして顔をあげると

そこにはベーグルおじさんが
立っていた。

一瞬、心臓が止まった。

薄いブラウンの虹彩が
黒縁メガネの奥から私を見つめていて

その瞳には喜びの感情が垣間見えて。

キット私の瞳にも同じ感情が
宿っていて。

その思いを何も言わずに
交換し合っていた。

『おみくじ。またこの前引いたんです。。
覚えてます?』

ふふっ。私と会いたくて
また、おみくじでも引いたのかしら?

可愛い人。

そう思いながら私はニコッと笑い

『ええ。もちろん。
で。。大吉でしたか?』

と言いながら拾ったハンカチを
彼に渡した。

彼は受け取りながら少し恥ずかし気に

「実は、小吉で。待ち人の欄には
来たり難しと書かれていたのです。

でも僕、思ったんです。難しい
だけであって、
来ない訳ではないんだって。

だから、どこかで合える事を信じて
ロケ地を転々としていました。

今日も、これからまた別の所に
行かないとなんですけどね。」

受け取ったハンカチを綺麗に四角に畳んで
彼は顎の下を吹いていた。

「ふふっ。ポジティブですね!
事実、こうしてお会い出来た訳ですし。
私も嬉しいです。

バイト先にはバイクの事故で手首を
痛めてしまって行けなくなったんです。
ま、少し入院しただけで
済んだんですけどね。」

ベーグルおじさんの事を考えてたら
事故ってしまった、
なんて恥ずかくて言えないので

私は舌先をチロっと出して首をすくめて、
おどけながら笑って見せた。

「いやぁ、本当に。お元気そうで
良かったです。」

笑い皺を見せながら安堵したような
笑みを彼が浮かべてくれて

ちゃんと私の事、覚えてくれてたんだ。
なんて感動している自分がいて。

そして先ほど自分の中で試案していた
考えが再び姿を現した。

これは恋かも知れない。

そう思った瞬間、心臓がトクンと脈を打って
私は自分の顔が赤くなった気がした。

『あー先輩!こんなとこにいたんだぁ。
もう出ますよ!』

知らない小柄な男性が走ってきて
彼に声をかけていた。

その声に反応して、彼の眼が
小刻みに揺れ動いた。

『あの。。また会えますか。。』

今度は私を真っすぐ見据えて
願うような声で言葉をかけてくれる。

『来週からいますよ。
今日はリハビリrideなんです。
ロケ頑張ってくださいね』

私は数秒前に感じた鼓動の速さを
誤魔化すように
なるべく自然な装いで返事をした。

そうして会釈をして私は
待ち合わせ場所に向かった。

少し振り向くと、
彼は何だか嬉しそうにハンカチを
握りながらバスの方へ向かっていた。

お仕事をする男性の横顔は格好良いなぁ。
けど、ハンカチを握りしめてる手から
何だか乙女みたいな
可愛らしさが感じられるわ。

私は自然と目を細めて笑っていた。

「もーーっ!何処行ってたのよ!!」

友達が私の肩に両手を載せてきた。

「うん。ちょっとね。」

私は平静を装って、そのまま
バイクに乗り、来たメンバーで
そのまま帰路に着いた。

それからは、そのメンバーで時々
顔を合わせてはコンサートや温泉、そして
居酒屋で時間を共有した。

不思議と、その先々で
ベーグルおじさんにもお会いしたが
お互い人に囲まれていた事もあって

あの神社で過ごしたような
穏やかな時間は過ごせなかった。

手首に感じていた痛みが完全に取れた
春先のタイミングで店長に相談して再び
あのバイト先で働くことになった。

だけど、ベーグルおじさんは
毎日沢山の資料を抱えていて
メガネで隠し切れない程のクマが
目の下にあらわれていた。

時々、コーヒーのお替りをしてくれるので
その時にマグカップを手渡ししたが、

その瞳には私の知らない世界が広がっていて
かける言葉が見つからなかった。

私は何か良い案は無いかと考えあぐねたが
1人では何も思い浮かばず

いつもの友達に相談することにした。

彼女には彼氏もいるし、もしかしたら
解決策が見出せるかもしれない。

そう考えたのだ。

「そっちから相談とか、珍しいね!」

彼女は電話越しに嬉々として
私の話を聞いてくれた。

ベーグルおじさんとの出会い、
今までの経緯、そして私の想い。

「やっと、白状してくれたか!!」

すっごいニマニマした顔で
話してるんだろうなぁ

なんて彼女の表情を思い浮かべる一方で、
私は自分の想いが確認できたことに
少し安堵してた。

そう。私は彼が好きなのだ。

年上の男性だし、
今まで恋を経験したことがないから
と必死に自分を抑え込んでいたけど。

会えなくて寂しいとか
もっと話したいのに
言葉が出てこないとか

そんな思いを抱いている時点で
これは立派な恋なのだ。

「ねぇ!!クッキー焼いてみたら?
それでラブレターを添えるの!!」

我ながらナイスアイデア♪なんて友達は
言うが、そんな事出来ない。

そもそも、私はバリスタ見習いであって
コーヒーに関して少しは詳しいが
焼き菓子を作ったことなどないのだ。

それにラブレターなんて、今時
誰が書くというのか。

しかし、友達は私と似てか
1度決めると最後までやり通すタイプだ。

正しく類友というやつである。

それから私は友達に誘われるがまま
料理教室に通い、焼き菓子の半年コースを
通して創り方を学んだ。

デザイン学校の勉強とバリスタの勉強に
加えての料理教室だったので正直
大変だった。

しかし学生割引を使いリーズナブルな
値段で通った料理教室では、コーヒーに合う
クッキーの創り方が学べた。

そんな生活を半年ほど続けていた
秋の暮れ。

私は通っていたデザイン専門学校の
卒業作品を創る段階に入った。

翌年の春には作品を提出してデザイン関連の
仕事をする事になるだろう。

だが、バリスタ見習いとして
働いているバイトを卒業後も続けたいと
私は考えていた。

何故なら、自分のデザインしたカフェで
バリスタとして働くことを
いつしか私は自分の夢にしていたからだ。

そこで、バイト先の店長に
相談をすることにした。

20年近くバリスタとして働き
若いころは本場イタリアを始め
多くの海外で研鑽を積んだ店長は

正しく自分の理想とする像であった。

だが、自分には海外に行けるほどの
財力が残念ながらないし、正直
そこまでのバイタリティーもあるか
疑わしい。

そういった本音も含めて、私は
店長に相談をした。

すると彼女は

「何も海外に行かなくても良いわよ。
貴方、バイク持ってるんでしょう?

だったら卒業作品を仕上げるにあたって
日本全国1周でもしてみたら?」

「え!?日本1周ですか?」

驚いて思わず、彼女の言葉をおうむ返しに
繰り返した私を見て彼女は
クスクスと笑った。

「そうよ。ちょっと聞くけど
あなたはデザインのアイデアを
どこから得るのかしら?」

店長である彼女の質問に私は
少し戸惑ってしまった。

デザインのアイデア。。
いつもどこから得ていただろうか?

そうして思い出す。

「バイクに乗ってる時とか
空を眺めてる時とかですかね。」

店長の様子を少し伺いながら
戸惑いつつも答えて見た。

「なるほど。
では、バイクに乗ってる時や
空を眺めている時に、
貴方は何を見ているのかしら?」

さらに哲学的な問いが飛んできて
私は言葉に詰まる。

困っている私の表情を見ながら
イタズラな笑みを浮かべる店長

そして彼女は言葉を続けた。

「デザインの根源は、自然なのよ。
ま、これは私の1意見だけどね。」

彼女の言葉を聞いて私も
そうだと共感した。そして

「確か新幹線の先端部分は
カワセミのくちばし構造をヒントに
デザインされたと聞いたことがあります!」

うんうんと、彼女は頷き
私の言葉を更に補足してくれた。

「そうね。知ってるじゃない。
カワセミのくちばし構造は水面の小魚を
陸や空からスムーズに捉えるために
細く尖っているわ。

この構造を新幹線に応用することで
空気抵抗が減少してトンネルに入る時の
騒音が軽減されたらしいわね。」

彼女の補足説明に感嘆の声を漏らしつつ

「そうだったんですね!
そこまで詳しい事は知りませんでした。」

と返事をした。

その対応を気に入ってくれたのか
彼女は足を組みなおして更に
話を続けてくれた。

「デザインだけではないわ。
今私たちの周りにある様々な物が
自然の機構を由来に成り立っているのよ。

分かり易い例を3つ
あげてあげるわ。

1つ目はハニカム構造。
これは、蜂の巣を構成している
正六角形を並べた形の事ね。
強度が高く、軽量で、かつ
衝撃吸収に優れている点から
航空機の素材に使われているの。

2つ目はこのシーズン、
インフルエンザのワクチン接種で
よく見かける注射の針よ。

蚊に刺されても痛くないのは
何故か調べたら、彼らが持つギザギザの
細い針は痛みを和らげることが判明したの。
それからは既存の注射針を
全て超極細に改良したのよ。

3つ目は最近流行りのドローンかしら。
あれはハチドリのホバリング能力から
ヒントを得て開発されているらしいわ。」

「店長、めちゃくちゃ博識ですね。」

私は脱帽した面持ちで彼女の話を
聞いていた。

だが、彼女は首を横に振りこう話した。

「私は別に自分の持っている知識を
ひけらかしたい訳ではないの。

そうではなくて、貴方に今の話で
気付いて欲しい事があるの。

それが何か分かるかしら?」

彼女はじっと私の瞳を覗いてきた。

ちゃんと考えなさい。と
目で伝えられている気がする。

店長の話を思い起こす。

海外に行く必要はない。
卒業制作に向けて日本を1周する。
デザインを含め様々な事柄が
自然と結びついている。

彼女の話を要約すると
この3点だろう。

この3点から彼女は私に何を伝えたいのか。

私は真剣に考えた。
考えている私の様子を彼女は
暖かく見守ってくれた。

そして結論を出した。

「日本1周の旅を通して自然から
デザインを含め様々なことを学んで来い
という事でしょうか?」

私は自分の結論が合っていて欲しいという
願いを両手に込めて胸の前で握りしめながら
彼女に述べた。

彼女は私の言葉を聞いて、軽く瞬きをし
その後、軽く笑ってくれた。

「ふふふ。あたり♬
そうして、戻ってきたら私のお店で
その経験を活かして精進してみなさいな。

そうすれば、私がこの店を
貴方に譲る時も近くなるでしょう。」

彼女はそう言って、私の肩に
優しく手を置いてくれた。

「勿論、他に行きたい所や、やりたい事が
あるなら、そちらに行けば良いわ。

貴方自身がどうしたいのか、色々と
考えておいで。

それと、あの、おじさまの事もね。

あっ。でも事故ってはダメよ?
安全運転が1番ですからね!」

彼女は私にウィングをしながら
肩を2度ポンポンと叩いた。

その後、家に帰った私は旅に
出かけるための準備に取り掛かった。

そうして迎えた、ある冬の朝。
私は、とある決意を2つしていた。

それは、
ベーグルおじさんにクッキーを
渡すことと、旅に出る旨を
彼に伝える事である。

料理教室で学んだ創り方で上質なバターを
ふんだんに使った手作りの
クッキーを焼いたのだ。

本当は星型とかハート型とか
クローバー型とか
可愛らしいものを作りたかった。

しかし、彼は年上の男性だし
もしかしたら職場で
食べてくれるかも知れない。

そこで、そんな可愛らしいものを
食べていたら周囲の人に
何か言われる可能性がある。

だから、クッキーの形はシンプルな
丸にしたし、袋も透明なものにした。

手紙も別途で添えると恥ずかしさが
増すのでシールタイプの手紙にした。

大人な男性に少しでも気に入って欲しくて
字体を丁寧に描こうとした。

どんなメッセージにしようか
散々悩んだ。

なんせシールタイプの手紙だから
そこまで長文は書けない。

”好きです。
明日から少しいなくなりますけど
戻ってきますから忘れないで下さい。”

いや、ストレートすぎる。
恥ずかしくて死ねるレベルだ。
辞めよう。

”お仕事頑張ってください。
また何処かで”

いやいや、そっけないなぁ。
何かお別れみたいで寂しいし
違う文言にしよう。

そんなこんなで4枚ほど使い切ってしまって
最後の1枚になってしまった。

「しばらくバイク旅に出ます。
つづきは、おみくじを引いてください」

うん!これが良い!!

これにしよう。これなら
また出会えそうな気がする!!

そんなこんなで、やっと完成させた
クッキーと手紙を片手に
バイト先へ向かった。

その日も彼は、
深く物事を思考しているような
瞳でコーヒーをお替りにきた。

どう言葉をかけようか少し躊躇したが
私は明日から彼にこの店で会えないのだ。

このチャンスを逃しては
もう本当に会えなくなるかもしれない。

だから勇気を振り絞って
声をかけてみた。

『ちょっと待っててくださいね。
これオマケです』

あくまで自然な流れで、
透明な袋に入れたクッキーを
サラッと渡してみた。

『うわ。嬉しいです。
このあとのミーティングで食べます。
もう疲れて死にそうだから。ありがとう』

『きっと効きますよ。特製ですから』

本当に特製なんだからねっ!と心の中で
叫びながら自分でも驚くほどの
満面の笑みを彼に向けていた。

無事に渡せた事、そして
嬉しそうに受け取ってくれた事が
とても嬉しかった。

でも恥ずかしいから、
高鳴る鼓動を隠すためにそそくさと
私は次のオーダーを取りに行った。

バイトを無事に終えてから、
田町八幡神社へと向かった。

私もダメ元でおみくじを引いてみよう。

そう思い、おみくじを引いてみた。

中吉だった。そして真っ先に
待ち人の欄を見る。

早く来ず。音信(おとずれ)あり

と明記されていた。

「直ぐには来ないけど、
連絡は来る。かぁ。。」

”どこかで会える事を信じて”

サービスエリアでの彼の言葉を
思い出す。

あのポジティブさ、
私も見習わなきゃ!!

そう思った私は見て貰えるか不安だったが
彼が見てくれることに賭けて
絵馬にメッセージを書いた。

『理由があってバイク旅をしてきます。
もし私のことを覚えていてくれたら、
来年の大晦日にココで会いたいです。
そして除夜の鐘を一緒に鳴らしましょう』

私だって分かってもらえるように
バイクのイラストでも添えておこうっ!

そう思いついて、マジックペンを
キュッキュッならせながら
イラストを描いた。

無事に描き終わって、絵馬を掛けて
旅に向かうべくバイクに跨る。

フルカバーのヘルメットを被ろうとした時
シロサギが空の上を飛んで行った。

「ベーグル、温めますか?」

私が彼に最初にかけた言葉だ。

「遠く離れていても温めます」

彼の想いをシロサギが
運んでくれた気がした。

旅の道中で寂しい夜もあったし
冬空は寒かったし、何が起こるのか
分からない不安はあったのだけど、

私の心にはずっと彼がいてくれて
温めてくれていた。

日本1周を一気に
敢行するのは大変だったので、
10月中旬から12月中旬と
1月中旬から2月中旬の2回に分けた。

そうして無事に1回目の旅を終えて
お礼参りに田町八幡神社へご挨拶に行った。

私の書いた絵馬が彼に見て貰えたのか
気になっていたのだが、
仮に見て貰っていても
どうすれば見て貰えたと分かるのか
悩んでいた。

それでも確認したかった。

神社にお参りして、祈るような気持ちで
おみくじをひいた。

大吉。と書かれていて、
待ち人の欄には、来ます。
と明確に明記されていた。

嬉しくなって、その場で
ピョンピョンと小躍りをしていたが
周りに人がいないか直ぐに確認して
平静を取り戻した。

そしてそのまま、自分の書いた絵馬を
見に行くと

信じるチカラをください。

と書かれていた。

彼の文字を見るのは初めてだ。

名刺を渡してもらった時は
印刷されていた字体だったから。

とめ·はねがきっちりされていて、
それでいて丸さのある字体だった。

嬉しくなって私は彼の文字ごと
その絵馬を抱きしめていた。

見上げた冬の空は澄んでいて、
何時でも、どこまでも繋がっていて

そして信じていれば
お互いに心を温めあえるのだと思えた。

メールも電話番号も知らない私達。

確かなものなど何もない時代の中で
日常と非日常を行き来していて、それでも
この温もりは確実に存在していて

それはとても愛おしい。

その愛おしさを彼に伝えたい。
そう思える年の瀬です。

〇〇〇

追記

[リライトのポイント]

1.彼女視点
りりかるさんやverdeさん
リライト作品を拝読して参考にしました。

2.エンディングは読み手に任せる
→自由度の高い作品でしたので
終わり方も読み手の解釈に任せる
という自由を残したいと考えました。

[なぜこの作品をリライトに選んだのか]

1番、自由を感じられたから。
場所に捕らわれずとも、
身体が傍になくても
想いは繋がる
という作品の印象が素敵でした。

[どこにフォーカスして
リライトしたのか]

1.キャラの名前を載せない
→何度も書きますが、
自由さを尊重したかったので
名前はあえて載せませんでした。

名無しのキャラが可哀そうと言われるかも
知れませんが、作品の読み手に感情移入して
欲しいのです。

例えば、玲子という名前をつけてしまうと
字体的にクールで知的な印象が
入るかもしれません。

一方、優花という名前をつけてしまうと
ホンワカしたおっとりな印象
読み手に与える可能性があります。

名前と言うのは1つの
アイデンティティであり
つまり個性なので、そ
れに伴う一般的な視点
勝手に入ってしまいます。

それは例えるなら、真っ白いキャンバスに
1本の線を引くようなものです。

空と海、或いは、空と陸、という境界線
もしくは地球と宇宙を隔てる境界線

そうした境界線をなるべく減らしたくて
あえて名前は付与しませんでした。

2.中性性を意識した

原作で男性が終始、
丁寧な口調で自分の言動や
行動を述べていました。

なので、私はあえて
フランクな語り口調で
終始、物語を進めました。

その一方で、男性と話す時は
丁寧な言葉遣いをすることで
恋愛初心者の女の子が
背伸びをしているような雰囲気を
出しました。

店長に関しても、
20年間のバリスタ経験という文言で
一瞬、男性かと思わせておいて
実は女性でした!という
トリッキーな文章を書きました。

男性や女性、という性を超えた
人と人の温もりを伝えたくて、
敢えてジェンダーレス
表現を試みました。

3.彼女の言動と心模様のギャップ

主人公の女の子は一見クールです。
ショートカットでバイク乗りで
単独行動がスキ。

ですが、年上の男性との触れ合いを通して
淡い恋心を抱き始めて、それはもしかしたら
父親への恋慕であり、初恋への期待であり
人としての尊敬する思いが
混ざり合っている感情なのかも。

そうして少しずつ心の中では躍動的になり
その躍動感が最終的に日本1周という
行動に反映されます。

1番最初に彼女が書いたデザインの草案で
躍動感がない!と先生に
言われていた訳ですが、キット
卒業作品では躍動感に満ちた作品が
出来上がるでしょう。

最後に

昨日、めちゃめちゃ弱気にゃ記事を
書いていたのですが、1日で46個もの💛を
頂いた上に、にゃんと!!

主催者である池松さんご本人から
コメントを頂きまして(*ノωノ)

楽しんだもの勝ち!
言って頂いたのですにゃ🐾

この企画に呼んで下さったりりかるさん
そして共に励んで下さったあるさんにも
お声かけを頂いて🌷

の大ファンとして有名にゃ
kojuroさんにも
にゃんだかんだでやりそうだよね♪
言って貰えて(#^^#)

はい!!見事にやり切りましたニャ
( *´艸`)

実は昨日の晩には、ほぼ完成していたので
2日15,000文字の作品を
書いた事ににゃります🌻

初めてでしたにゃ(*'▽')

「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、
成らぬは人の為さぬなりけり」ですにゃ🎵

( ´ー`)フゥー...見守って下さる貴方に
深く感謝ですにゃm(__)m

本日も最後までお読み頂き、
有難う御座います♪🐈

日常と非日常を放浪し、その節々で見つけた一場面や思いをお伝えします♪♪ そんな旅するkonekoを支えて貰えたなら幸せです🌈🐈 闇深ければ、光もまた強し!がモットーです〇