性格分類との違い

「気質」の考えと似たようなものに「性格分類」と呼ばれるものがあります。そして実際、「気質」を「性格分類」と同じように理解している人もいます。でも「気質」の考え方と「性格分類」は本質的に異なるものです。

どう異なるのかというと、色で例えると、「性格分類」は様々な色を色味や色相などで分類したようなものです。ですから、その分類の中には、原色としての赤・青・黄だけでなくそれらの混色によって生まれた緑やオレンジや紫なども含まれています。そして様々な色を「これは赤系」「これは緑系」「これは茶色系」などと分類します。

また、文化によっても色の分け方は違って来ます。「日本人の色」と、「中国人の色」と、「フランス人の色」は違うのです。
色を分類する人の「色に対する感受性」の違いが分類にも影響してしまうからです。

それに対して、「気質」の考え方では、その色そのものを分類するのではなく、その色の中に含まれる原色の割合を扱っています。そのため、その色がどんな色であろうと、そこに出てくるのは、赤・青・黄(光の場合は緑)のたった三色と明暗の四つの要素だけです。そしてそれは世界共通です。
ですから、同じ「色」を対象にしているのですが、色を単に分類する方法とは色に対する考え方も、扱い方も本質的に異なっているのです。

でも、私たちは現に存在しているものをそのまま分類するのは比較的得意ですが、それがどのような要素で構成されているのかを調べ、その構成要素によって分類するのはあまり得意ではありません。
実際、緑を見て、それが青と黄色の組み合わせで出来ていることに気付くのはなかなか難しいです。

動物を見かけで分類するのは簡単です。イヌとネコの違いはすぐに分かります。イヌとネコは形も、動き方も、鳴き声も全く違うからです。
でも、その動物を構成している要素を調べ、その要素の違いでその動物を分類しようとすると、イヌとネコの間にそれほど大きな違いがないことに気付きます。むしろ共通点の方が多いことに気付きます。人間とすら似ています。

性格分類という視点で人を見るとその違いがよく見えてくるのに対して、気質という視点で人を見ると違いよりも共通点の方が良く見えてくるのです。実際、人はみなちょっとしか違わないのです。子どもと老人も、健常者と言われる人と障害者と言われる人も、白人と言われる人と黒人と言われる人も、男性と女性もその大部分は同じなんです。
でも、そのちょっとの違いで人を分類するから、違いが大きく見えてしまうのです。

気質には、多血質(たけつしつ)、胆汁質(たんじゅうしつ)、憂鬱質(ゆううつしつ)、粘液質(ねんえきしつ)の四つがあると言われています。でも、これらは原色ですから、実際にはこの四つが混ざり合った状態になっています。そして、人は皆この四つの気質を全部持っています。そうでないと生命を維持できないからです。
それは日本中どこに行っても四季があるのと同じです。

そして、この割合は一日の中でも、ちょっとした出来事があっても、成長に伴っても、常に揺れ動いています。朝起きた時と、夜寝る前とでも異なっています。ご飯を食べる前と、後とでも異なっています。病気した時と元気な時も異なっています。それが体調や気分の違いとして表れているのです。
それは夏でも特に暑い日もあれば比較的涼しい日もあったり、冬でも特に寒い日もあれば比較的暖かい日もあるのと同じです。
自然界は血液型のように固定されたものではなく、常に揺れ動いているのです。

それでも平均として春の気温は暖かく、夏は暑く、秋は涼しく、冬は寒いですよね。その「平均として」というところがその人の気質になるのです。

ですから、「あの人は胆汁質だ」と言っても、その人がいつも胆汁質的な状態であるとは限りません。胆汁質の人でも嬉しいことがあれば多血質が強くなり、悲しいことがあれば憂鬱質が強くなり、疲れたりすれば粘液質が強くなるのです。
でも人はその変化は意識できても、「普段はどうなのか」ということがなかなか意識できないのです。
実際、皆さんは、自分自身の普段の話し方や、普段の歩き方を意識出来ないですよね。意識できるのは何らかの原因で普段の話し方や歩き方が出来なくなった時だけですよね。
でも、その人のその人らしさは、「その人が意識できるところ」ではなく、「意識できないところ」の中にこそあるのです。
日本人の日本人らしさは、日本人には意識できないことの中にこそあるのです。でもそれはいくら自分自身を見つめても分かりません。
それを知るためには、自分とは異なったタイプの人と関わり、話し合い、お互いに自分を表現し合ってその違いに気付く必要があるのです。
すると、自分の当たり前が、他の人には当たり前ではないことに気付くのです。

その段階になって始めて自分自身の気質にも気付くのです。
茅ヶ崎や様々な所で私がやっている気質の勉強会やワークショップは、「自分が知らない自分」と出会うためのものなんです。
気質を学ぶと「自分が知らない自分」と出会う事が出来るのです。

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