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夏祭りと花火に思う

夏である。今年は梅雨入りも梅雨明けも遅いが、屋久島は実際梅雨はとうに明けている様に思える。
猛暑日は無くても、陽射しは強く暑い日が続く。そして夏祭りの季節でもある。夏祭りは、集落ごとに行われるので、毎週の様に週末になるとどこかの集落でお祭りが開かれている。

先週末は、一湊のお祭りであった。
一湊は、港の町であり、鯖が有名だ。
港なので船のパレードを観に朝早く行ったのであるが、最初に子供達と一緒に由来の話を聞くことができた。
元々、集落の中には、沢山の鯖節の工場(こうば)があったのだそうだ。
ある日、こうばから火が出たのだが、男衆は漁に出ていて集落はみな燃えてしまった。そのことを忘れない様にと一湊港(みなと)祭りが始まった。
一方で、毎年4月1日にえびすさまに願をかけるお祭りがあり、その二つが一緒になり現在の一湊浜まつりとなったとのことだ。

祭りには、由来があるのだなと改めて思った。今までいろいろな祭りを観に行ったことがあるがあまりその由来を認識することは少なかった。この浜まつりが面白いのは、最初に餅撒きがするのであるが、誰かが投げた餅を頂くので無くて、配られた餅を豊漁と健康を願ってかけ声と共に海に餅を投げるのである。そして、その後に子供達を中心に鯛の稚魚の放流があり、漁船のパレードと続く。

夏祭りの花というとやはり花火であろう。
たまや〜というかけ声聞こえてきそうである。
しゅーと上がって、ドンと花が開く。
正に火の花であり、花火なのである。
一方で、英語ではファイヤーワークスで、花という意味は含まれていない。
ファイヤーワークスの由緒ある世界大会は、カナダでのモントリオールで毎年開催されており、今まで日本は参加したことがなかったのだが、今年初めて参加した。
海外の花火ではなくファイヤーワークスは、大量の花火を音楽に合わせて高く上げることなくバチバチと色や形を変えてみせるのであって、日本の様に一発、一発の美と打ち上がるまでの間を楽しむものではないのである。
この大会は一月近くにわたって異なったチームが花火を上げる。8チームが出る中で、日本チームは最初であった。
日本チームが参加したのは、日本で人口も減り更にお祭りも減っていく中で、海外に出ていく足掛かりにしたいという理由である。

さて、日本も最初は海外の流れにあわせてバチバチやるのであるが、やはり天高く一発一発を上げて様々な花を開かせた。
花火の上がる音、そして上がるまでの間、開く様々な花、見事な美であった。
カナダの年老いた花火師の言葉が印象に残る。「こんな美しい花火を観たことが無い。たった一発だけでも充分美しいだろう。」という様なことを言っていたと思う。

僕だったら、世界の流れに迎合せずに、日本の花火を貫くことで、より強く深く人々に印象を植えることができるだろうと思ったのである。
そして、日本の花火は、迎合しなければ、世界中を圧巻して受け入れてもらえる素晴らしい技術であり文化だなと改めて思ったのである。

数年前に年末に見たテレビ番組で、日本人が海外の現地のプロと対戦するという番組があった。
イタリアのアマルフィで、ファイヤーワークスの欧州チャンピオンと競うというのであり、欧州チャンピオンは余裕があり、日本人の花火師は不慣れな場所で心配そうであった。
最初に欧州チャンピオンが上げるファイヤーワークスのショウには、観衆から歓喜の声が上がり続ける。
そして、日本人のあげた花火では、一瞬の静かな沈黙の後に喝采があがった。
結果は、日本の圧勝であったが、花火師は奢ることなく学ぶことがとても多く今後に生かしたいと語っていた。
僕は、何故かとても嬉しく、ここに他所から学び日々精進し続ける匠の世界を感じることができたのである。

屋久島最大のお祭りは、住んである宮之浦のお祭りで他の集落からバスで乗り付けてくる。そして、祭りの締めは、花火である。
都市の大きな花火大会とは比べられないだろうが、とても近くで大輪を見てそして腹まで響く音を聞くことができる祭りを今年も楽しみにしている。

追伸、まだまだ日本には世界で通じる技術や匠の技が埋もれていると思う。つい先端技術や工業製品に目を向けがちであるが、匠の世界こそ世界で輝ける可能性が高いのではないか?そう考えると、未来は明るい。


屋久島ご神山祭の花火


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