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②「みんな」は嫌い。「あなた」は愛しい、本。

きみは、「平和」が好きだ。「戦争」をして勝つことよりも、「平和」なまま、なんとなく負けているほうがましだと思う。

本文より

【ざっくりあらすじ】
 「友だち」って何だろう?
 いつでもそばにいること? 気が合うこと? たくさんいると、より楽しい?
 足が不自由で「みんな」が嫌いな女の子と、病気がちな女の子。人よりゆっくりゆっくり歩く2人の女の子を中心に繋がっていく「きみ」の物語です。
 周りの表情や空気感が気になって気になって。
 誰かより劣っていることが悔しくて妬ましくて。
 1人ぼっちになってしまうことが世界の終わりのように怖くて。
 そんないろんな悩みを抱えた「きみ」が主人公です。
 学生の時に抱えていたもやもやが優しく浄化されて空にのぼっていく、そんな気持ちになれる小説です。

【もりまゆ的推し語り】
 この小説に出逢ったのは小中学生の頃だったと思います。
 いつもクラス内の見えないヒエラルキーをうっすらと感じながら生きていた思春期真っ只中のあの頃。「ついいろんなグループに対して八方美人になっちゃって、結果ちょっと仲間はずれになってしまう」「なんとなくいい子を演じちゃって、周りの子にめんどくさい目で見られる」「『できる子』のそばにいると、口からこぼれる言葉が勝手に卑屈になってしまう」といったあるある(?)な悩みがこれでもかとぎゅぎゅっと詰まっております。

 大人になった今は、「ああ、昔はこんな繊細でいろんなことに揺れ動いて生きてきたんだなあ……」とアルバムのように読むことが多いですが、当時はバイブルのように何度も泣きながら読み返していました。
「自分の世界が学校以外にもあったら、もう少し楽だったのかな」と読んでて少し胸が痛くなる。でもあの頃の少しほろ苦かった思い出を優しく消化してあげられるような。そんな文体の作家さんです。
 クラスの端っこにいたような、あまり印象に残っていなかった「あの子」を思い出すきっかけにもなるかもしれません。

 「みんな」じゃなくて「あなた」に向き合うようになったのはこの本のおかげです。花いちもんめ、「あなた」が欲しい!

【読み終わった人に語りたい推しポイント】




 最終章を読み始める頃には、ほぼすでに涙で濡れているもりまゆです。
 ここまでたどり着いてくださり、ありがとうございます。

 もう本当、恵美ちゃんと由香ちゃんの関係が尊すぎて……。
 この2人をなんとなく遠巻きに見ながらも羨ましく思う「きみ」の気持ちが痛いほど伝わります。伝わりますよ……。

 この作者さんは、よく小説の中にさりげなく作者自身を登場させるところがたまらん好きです。まさか旦那様ポジションでいらっしゃるとは。

 さて、あなたはどの「きみ」が刺さりましたか。
 私は、昔からずっと堀田ちゃんです。今はそうでもないですが、学生時代は「みんな」により多く好かれたくて、どのグループにも顔を出せる存在であろうと八方美人に必死でした。(堀田ちゃんのようにハブられたこと、あったあった〜〜)

 だから、最初の引用文はとても共感が深いです。争いが始まるよりかは、負けてても平和の方が、安心します。

 「写真やカメラに興味を持ったきっかけってなんだったっけなあ〜」と、ちょうど考えていた時にこの本を読み返していたのですが、思わず途中で叫んでしまいました。私がカメラに興味を持ったきっかけは、まさにこの作中に出てくる「もこもこ雲」だったのです。
 少し大きくなった恵美ちゃんが、ポケットカメラを取り出し撮影する姿が、なんとも羨ましくて切なくて美しくて愛おしくて。私も、私にとっての「もこもこ雲」を探して歩きたくて! 中学時代にデジタルカメラを買い、高校生に写真部に入り、社会人になっても趣味はカメラ。一眼レフにはまったきっかけはスラスラ話せるのに、最初に今日を持ったきっかけをいつの間にかすっかり忘れておりました。

 畑にカメラに、「好き」の原体験って小説だったのだなあ、と思わされることが多い最近。昔からの推し本整理、楽しいですよ。おすすめいたします。


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