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①温かな具沢山スープ本

「そうなんや。水がええし気候がきっぱりしとるで、丹後米って味が濃厚なんやで。この辺の人らは新米おかずにして、古い米食うくらいや」
 これだけ米に味があれば、それもできそうだ。おかずは必要なかった。白菜も味噌汁も食べたけど、米が美味しくてそれどころではなかった。

本文より

【ざっくりあらすじ】
 社会生活が息苦しく、生きるのをやめてしまおうと決心した主人公。重たい灰色みたいな気持ちを抱え、あてもなく彷徨いたどり着いた山奥の民宿で自殺を決行するが、失敗に終わってしまう。
 民宿を中心に農村で流れる静かな時間。「何もしない」をする日々を過ごすうちに少しずつ体に体温が、心と栄養が流れていく。
 自分が何が好きでどんな人間なのか思い出した時、時が進み出す。

【もりまゆ的、推し語り】
この作家さんは、(この作品に限らず)ご飯の描写がたまらなく美味しそうなんです…!!!!!この本を読んでから、「新米をおかずに古米を食べること」がずっと夢です(米)

具沢山の栄養たっぷりのスープを飲み干したような、ほかほかした気持ちになれる読後感が味わえる本です。

小学生の頃に、青い鳥文庫から背伸びして父に買ってもらった新潮文庫。
大好きな本ベスト3に、10年以上ずっと入り続けてる本です。

畑を中心に、「動く」「食べる」「眠る」(「読む」「話す」)のリズムを整えながら過ごす、人生の休憩場所みたいなところを作ることが私の昔からの夢ですが、改めて読み返すとその原点はこの本だったんだろうなと思わされます。

偏見ですが、「リトル・フォレスト」好きな人は、この本好きな人多いと思います。

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