映像美への追及 / 内製と連携を重視するクリエイター集団「ufotable(ユーフォーテーブル)」とは⑧《関連店舗編》

アニメスタジオ・ufotable(ユーフォーテーブル)について解説・考察する記事第8弾。今回は「関連店舗」についてです。カフェ・ダイニング・映画館経営までを手掛けるに至った経緯を解説します(若干、筆者の愚痴も混ざってますので注意です)。

※2023年8月更新

前回の記事はこちら↓↓↓



アニメスタジオ運営の飲食店

ufotableはアニメスタジオとしては珍しく、自社経営のコラボレーションカフェを2006年から経営しています。当初は「ファンとの交流の場所を作る」「スタッフの健康管理」を目的としており、東京の旧社屋にある1号店では、忘年会や新人歓迎会なども行っていました(現在はスタッフの増加や本社の移転に伴いカフェでは行っていないそうで、代わりに本社に東京カフェのスタッフがケータリングをしてくれるそうです。徳島スタジオはスタッフが徳島スタジオ2Fのカフェにご飯を食べに行くことが多いとか)。

また、コラボレーションカフェでファンとの交流を行うことは、普段、ファンの生の声を感じにくいスタッフにとっては活力となっており、2012年の『Fate/Zero』の制作に大きく影響したほか、2017年~2019年にかけて制作された『衛宮さんちの今日のごはん』の企画発足にもつながっています。

ファンとの交流の場として、全国に店舗を拡大していった結果、2023年現在は全国5都市及び韓国・中国にてカフェを経営、そのほかにお酒を提供するコラボレーションDININGや映画館など、計15店舗を展開。キッチンカーによる全国展開もしています。

ufotable Cafe & マチ★アソビ Cafe

まず、コラボレーションカフェは大きく分けて2種類あり『ufotable Cafe』 と『マチ★アソビ CAFE』に分けられています。

ufotable Cafe
ufotable Cafe
は、東京・徳島・名古屋・大阪・北九州・韓国・中国で計9店舗を経営しています。

設立当初は様々な企業とのコラボレーションを積極的に行っていましたが、現在は「ufotableが制作するアニメーション作品を題材としたコラボレーションカフェ」をメインとしています。カフェではコラボメニューのほか、オリジナルグッズの販売や生原画&設定表の展示なども行われています。各店舗の調理人は某ホテルで働いていた調理人やフランスで修業した経験のある調理人(徳島店)など本格的に経験を積んできた人も在籍しており、「調理人が育たないと新たに店舗を増やさない」という決まりもあるそうです。そのため、手掛ける料理の評判は良く、コラボレーションカフェの中でもかなり本格的な方だと感じます(私も何度か通っていますが、料理がとても美味しいです!!)。

また、ufotable制作作品のリアルタイム上映会、スタッフトークショー、各作品のキャラクター誕生日イベントなど、様々なイベントが定期的に行われているのも特徴です

そんなカフェですが、人気作を手掛け、お客さんが増えていくにつれて様々な問題も発生し、そのたびに炎上していました。そのため、私は「このままでは、いつか潰れるのでは?」と正直思っていましたが、2019年頃から徐々に改善されています。

2021年4月時点では混雑が予想される東京、名古屋、大阪店は「事前抽選予約制」を導入。比較的空いている徳島、北九州店は「入店フリー」となっています。事前予約にはソーシャルチケットサービス『LivePocket-Ticket』が導入されています。ほかにも、カフェで販売する商品のネット受注販売も導入し、ネット通販の決済にクレジットカードを導入するなど様々な改善が行われました。また、2019年を境にコミケ限定グッズなど、ufotableの取り扱う全商品が事前・事後のネット販売を始めてます。そして、2022年には各店舗にてキャッシュレス決済対応がはじまりました

このあたりの改善は、時期的にも某事件をきっかけに国税局OBの税理士を顧問に迎えて全ての経理を委託し、働き方改革への対応のために社会保険労務士を顧問にしたことで改善したのかなと個人的には推察してます...。元々、近藤社長は限定商品や現地のみの商品限定販売などプレミア感を出すことに価値を見出していた方で、限定商法やクレジット非対応には積極的な面すらありました。また、経営面全般を社長主導でやっていたこともあり、今回の件で近藤社長が多くの職務を税理士など外部のプロに委託し、アニメ制作以外における社内での影響力が落ち着いたため大幅に改善された気がします(社長がこれまでやってきたこととは反対のことが起きてるので)。

カフェ経営はアニメーションスタジオの新たな収入源としても機能しているようで、特にグッズ展開に関してはアニメ作品の著作権獲得に力を入れ、実際に権利を取得してきたufotableに大きな収益をもたらしたようです。他企業が販売している元請作品の商品も、ufotableが製作委員会に入っているため収益が入ってきます。ですが、やはり直営店で販売するオリジナルグッズや劇場等で委託販売する自社制作商品が一番収益が大きいそうです(実際、2012年から2022年現在まで、グッズ販売とカフェの売上のみで大幅な黒字経営を実現出来ています。ちなみに、2007年以降から同社は「空の境界」のBD・DVDやグッズ売上が好調だった影響か、同時期に徳島スタジオやカフェ店舗の開設・オープン、映画館設営、イベント運営を初めているので、この頃から黒字経営だったと思われます)。

勿論、お客様を呼べるだけの元請作品を手掛けること、料理等が美味しいことが前提条件ですが、その点も踏まえて、現在までコラボレーションカフェの経営を継続できており、さらに店舗も徐々に増やして料理のクオリティを維持していることは、本当に凄いなと感じます

原画の展示やトークショーなどufotableの仕事に触れることのできる空間であるufotable Cafe、同社のファンであれば是非行くことをお勧めします。


マチ★アソビ Cafe
マチ★アソビ Cafeは、ufotable以外の企業やアニメスタジオ作品とのコラボレーションをメインとするカフェです。内容的にはufotable Cafeと同じですが、こちらは『外部企業・スタジオ作品専門のコラボレーションカフェ』といったところです。そのため、時折、ufotable作品も取り扱いますが、基本は複数の外部企業作品とコラボレーションを行っており、グッズ販売もしています。

名前の由来は2019年までufotableが運営に関わっていた徳島のアニメイベント『マチ★アソビ』から。運営から撤退し、参加企業になった現在も経営を担当しています。

店舗は各都市ごとにufotable Cafeと共に出店しており、中でも大阪・名古屋・北九州・韓国はufotable Cafeとのダブルネームカフェとして出店しています

コラボレーション先としては、スタジオ同士で仲が良いアニメスタジオ・SILVER LINK.や『フタコイオルタナティブ』での共同制作以降、縁の深いアニメスタジオ・feel.の作品とは、製作委員会の枠組みに関係なくほぼすべての作品でコラボレーションをすることが多いです。また、あおきえい監督との縁からTROYCAの作品、ufotable制作作品への参加の多さからWHITE FOXの作品とのコラボレーションも多い印象です

経営店舗

東京都
・ufotable Cafe TOKYO
・マチ★アソビ カフェ TOKYO
徳島県
・ufotable Cafe TOKUSHIMA 
・マチ★アソビCAFE 眉山(BIZAN)
大阪府
・ufotable Cafe&マチ★アソビ CAFE OSAKA
愛知県
・ufotable Cafe&マチ★アソビ CAFE NAGOYA 
福岡県
・ufotable Cafe&マチ★アソビ CAFE 北九州
韓国
・ufotable Cafe&マチ★アソビ CAFE KOREA(運営:ufotable韓国法人)
中国
・ufotable Cafe 上海店 (運営:株式会社ウルトライゾン)
・ufotable Cafe 成都店(運営:株式会社ウルトライゾン)
・ufotable Cafe 広州店(運営:株式会社ウルトライゾン)


ufotable DINING

東京都新宿区に2011年にオープンしたのがufotable DININGです。内容的にはufotable Cafeとほぼ同様ですが、お酒の提供をメインにしているのが大きな違いです。ufotableの名物スタッフ、市川修三氏がかつて活躍していた場でもあります。声優の中田譲治さんがたまに顔を出すことでもファンの間で知られていますね。

ダイニングでは抽選でufotableスタッフの描き下ろし色紙が手に入る点が特に魅力的でスタッフの知名度向上にもつながっています(最近は、ufotable公式Twitterで色紙を描いたスタッフ&原画担当場面を紹介しています)。

2020年9月8日には『劇場版Fate/stay night [Heaven's Feel]』と『鬼滅の刃』のコラボレーションダイニングを同時開催した影響から、新宿区の別の場所に『ufotable DINING-HANARE-』を期間限定で臨時オープン。その後は同社2店舗目のダイニングとして経営を継続させています。

2023年8月10日には国内3店舗目となる『ufotable DINING -HIROMA-』を新宿区にオープン。過去の2店舗と比較しても最大級の面積と座席数になる。


ufotable CINEMA

徳島市・ufotable徳島スタジオのすぐそば、東新町商店街に2012年にオープン。アニメ映画を中心に上映していますが、それ以外の実写作品や洋画も上映しています。アニメ制作会社が映画館の運営を行うのは日本初とのこと

当時の徳島市は全国で唯一映画館の存在しない県庁所在地となっていました。そのため、2017年4月にイオンシネマ徳島がオープンするまでは、徳島市内唯一の常設映画館となっていました

シアターは2つあり、【シアター1】は定員100名(座席数71席、立見席29)、【シアター2】は定員35名 (座席数29席、立見席6)。この2つの劇場で1日に約5作品ほどを交互に上映しています。ほかにもフードカウンター&カフェスペース、グッズコーナーなども併設されています。

設立にはアニメイトが関わっており、地下1階はアニメイト徳島店がオープンしています(ちなみに、かつてアニメイト徳島店は書籍商品の特典にて「徳島店を除く」と省かれることが多かったですが、『ufotable CINEMA』の建設・移転をきっかけに「徳島店を除く」がなくなりました)。

設立のきっかけは「徳島をアニメ文化発信の拠点にしたい」という近藤社長の願いから。また、「マチ★アソビの拠点となる施設を作りたい」という願いもあり、現在でもイベントの拠点として『ufotable CINEMA』が大きな役割を果たしています。CINEMAにはアニメ業界内の著名スタッフ・声優陣のサインも多く飾られており、それだけでも一見の価値があります。

ufotableが運営しているだけあって、上映している作品はufotable制作作品が多く、BD&DVDが発売して全国の上映が終了した後もufotable制作作品を上映することが多いです。とくに、ufotableオリジナル作品でありufotableが単独出資・宣伝も務める『桜の温度』はパッケージ化が現在もされておらずufotable CINEMAのみの上映となっており、公開された2011年以降、2022年の現在に至るまで、ufotable CINEMAで休まず上映され続けています。


ufotable Cafe TO GO

2022年10月より運用が発表・開始されたキッチンカー。ufotableは以前よりイベントでキッチンカーを使用した出張カフェも行っていましたが、今回、正式にキッチンカーによる全国運用が開始。カフェ運営がされていない地域にも出張で訪れており、活動の幅が広がっています。


海外展開とその先へ / ウルトライゾンとの共同経営

前述の通り、ufotableは2018年以降、海外でもコラボカフェを展開しており、2018年4月より韓国にて『ufotable&マチ★アソビCAFE KOREA』、2020年10月より中国・上海市にて『ufotable Cafe 上海店』を経営しています。2021年11月末からは『ufotable Cafe 成都店』がオープンしました(なお、海外展開はカフェ運営のみでアニメ制作は行っていません)。

韓国店に関してはufotableで韓国法人の設立しており、漫画班でシナリオを担当しているチョンソダム氏が代表取締役社長を務めています。

一方、中国の『ufotable Cafe』に関しては、ufotableでは運営しておらず、北京市を拠点にアニメーション&ゲーム作品の企画・製作・プロモーション・投資を行う企業『株式会社ウルトライゾン』がufotableより委託を受けて運営をしています。同社はufotableとパートナー企業として共同でIP業務も請け負っているようです。

ウルトライゾンは、アメリカ・ハリウッドの企業や中国映画会社で勤務経験のあるメンバーによって2016年に中国・北京で設立され、東京・千代田区にも拠点を構えます。企業としてはアニメ・ゲーム作品のプロモーションや投資に関わっています。


ここからは私の予想ですが、もしかしたらufotableとウルトライゾンは共同で何かしらのアニメーション作品を制作しているのではないかと思っています。ウルトライゾンはアニメ・ゲーム作品に関連するプロモーションや投資に関わっていますが、そんな彼らとの共同事業がカフェの経営だけで終わるとは思えないです。彼らと手を組んだことでどのような展開があるのか…...今後が楽しみです。

【2023年2月時点】
中国の公式報道にて、ウルトライゾンがufotable制作予定のアニメ『原神』の製作委員会に参加するようです。今後の展開も期待したいところですね。





今回はufotableの「関連店舗」について紹介しました。そして、今回でufotableに関する紹介記事は全て終了になります。第1回から全記事完成まで時間がかかってしまいました。ufotableは今後も様々な企画が動いていると思います。これからも彼らが制作する迫力ある映像美の作品を楽しみにしつつ、各クリエイター陣を応援していきたいと思います。

最後に、今後も何かの機会にufotableに関する記事や別のアニメスタジオの記事を投稿するかもしれません。その際には是非ともよろしくお願いいたします。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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参考資料・出典↓↓↓



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