学生時代ぶりに「トヨタ生産方式」を読みなおしました

私は大学で経営学部に在籍していたのですがお察しの通り全くもって勤勉な学生ではなかったので、大学で身に付けたものといえばどれくらいお酒を飲んだら人はダメになってしまうのかとか、どこまでふざけたら人をキレさせてしまうのか、みたいなものばかりでした。

ソフトウェアエンジニアになっていろんな課題解決に取り組んでいるうちにそんな失われた4年間(嘘です5年通いました)のことに思いをはせる機会が増えました。ソフトウェアエンジニアにとって経営(マネジメント)はとても身近な課題であり切っても切り離せない関係だと感じています。
そういう近況を踏まえ「経営学部のバイブルであるトヨタ生産方式を今読んだらどんな感想になるだろう」と考え、10年以上の時を経て再び手に取ることにしました。
なお大学の課題書籍だったはずなんですが処分した記憶もないのに家のどこにもなかったので改めて買い直しました。

この本を超絶ざっくり説明すると、フォード社など当時の欧米自動車工業に対抗すべく著者の大野氏が試行錯誤を繰り返してトヨタ独自の生産方式を生み出したことを振り返る、という内容です。
これ以降「Kanban」や「Kaizen」という単語が広く定着するほど経営学(主観だととりわけソフトウェア産業のマネジメント)に影響を与えた本でもあります。

学生のとき初めてこれを読んだ時の感想は「とはいえ俺は自動車産業のマネジメントをしたいわけじゃないからなあ〜」というものでした。
後工程の作業者が前工程に必要な資材を記入したカンバンを渡す、みたいな手法を使う機会などあるのか...?と思ったものです。

私が学生の時といえば、毎日ニコニコ動画のランキングを上から全て眺め、バーチャルな友人たちとネットゲームに励む程度にはインターネット超楽しい!最高!と思いながら暮らしていました。
生産方式と聞いて、当時の私はAmazonの倉庫のオートメーションのようなテクノロジー的なものを求めていたんだと思います。この本で紹介されている手法はあまり身近ではなく、テクノロジーでもなく、正直ピンときていませんでした。

改めて読んだ感想

手のひらを返したように終始「いやーこれは本質ですわー」と頷きながら読んでいました。
この本からは当時のトヨタの人々が適切に課題設定を行い、圧倒的な情熱で改善を続けたことがすごい熱量で伝わってきます。
適切な課題設定を行うことも課題に対して熱量を持って取り組むこともどちらもすごい大変ですよね。痛感する日々でございます。

大切なのはトヨタが産んだ手法ではなくて、手法に行き着くプロセスなんだと思います。
そういう熱量の結晶が手法となって具現化されるわけで、手法だけマネしてもあまり効果はないんだろうなと思いますし、実際にトヨタの手法を表面だけマネした会社は大変なことになっていたとこの本に書いてあります。
ソフトウェア開発でも似たようなことはあって、「アジャイルだとうまくいくらしい」といってアジャイルを導入して全然うまくいかない、みたいなことはよく発生していると聞きます。

とはいえ全くの無から何かを生み出すのはとても大変なので、トヨタ生産方式やアジャイル、その他もろもろ良いとされている手法を取り入れてみることは良いことだと思います。
大事なのはその結果チームの課題は解決されたのか、次に解決すべきは何なのか、そのために何ができるのか、というフィードバックのループを起こすことだと思っています。
このループによってそのチームなり組織の結晶として、何らかの手法が生まれるんだと思いますし、その結晶を守るのではなくまた新たな結晶に行き着くようにループを起こすことが大事なんだろうな、みたいなことをぼんやり考えがらこの本を読んでいました。

これからソフトウェアエンジニアとして課題解決を行っていくということは、こういう終わりなき旅が続くんだなと思うと全てが嫌になってそっとそっと逃げ出したくなりますが、高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいのでさあ次の扉をノックしようと思いました。


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