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ものがたり

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2020年7月の記事一覧

夢 物 語

わたしは父と屋上のベランダにいた。 すると 烏が 一羽 飛んできて 父の頭のてっぺんをつついた。 軽く ちょんちょん と。 それから わたしの頭に飛びうつり ちょんちょん と。 わたしは とても 怖かった。 父は 相変わらずのその性格で 烏を 煽った。 わたしは とても 怖くなった。 ”烏が 怒ったら 頭に 穴が開いてしまう” 父は わたしに向かって 笑った。 わたしは 父に向かって 睨んだ。 そのあいだも 烏は 森に かえることなく わたしと 父の

そのあとの おはなし

女の子は すっかり 女性 となりました。 偉い かしこい 社長さんのもとから飛びだし 彼女を育ててくれたひとたちのもとから飛びだし 彼女は この数年のあいだ ひとり 旅に出かけました。 一等車に乗り 一等の宿に身をやすめ そんな贅沢な生活からは すっかりと縁とおくなりました。 陶器の貯金ばこ にコツコツと貯めこんでおいた コインも 2年まえには ずっしり と それは彼女をしばし安心させてくれるだけの 重みが あったものの あっという間に すっかり 乾いた 寂しい 音