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[暮らしの中の仕事服] 二階の食堂デリカフェ荘司美幸さん編

[暮らしの中の仕事服]

“私らしく働く、暮らしの時間“を描くショートドキュメンタリー

世界中を混乱の渦に陥れたパンデミックは人々の「命」そのものや「生活」へも大きな影響を及ぼしました。今回の事で私達は方向転換を余儀なくされましたが、誰もが暮らしや仕事、生きる事について考える機会となったのではないでしょうか。利益や物質的価値ではなく一人一人に与えられた“限られた時間”の中で、自分自身が心地よいと感じる体験、感動や喜びが本当の豊かさなのかもしれない。固定概念に縛られる事なく、自分の気持ちに正直に「私らしい」働き方を実現している女性にはこれからの時代を生きる上で必要なヒントが沢山込められています。「暮らしの中にある働く時間」が一人一人の大切で豊かな時間になるように、新しい時代に生きる人の仕事服をMOREPLUSは作っていきたいと考えています。


[暮らしの中の仕事服]
二階の食堂デリカフェ荘司美幸さん編


下町人情あふれる曳舟たから通りに昨年2020年12月1日 OPENされた「二階の食堂デリカフェ」の店主、荘司美幸さん。
以前は鐘ヶ淵にあった「二階の食堂kanegafuchi」を2020年12月に曳舟へ移転されました。
古い長屋をリノベーションされてた店舗。外観は木張で丸いお茶碗のアイコンが可愛らしく優しい表情のファサードはすっかりこの町に馴染んでいて、いつ行ってもお客様で賑やかな様子を見るとすっかり町の顔になっているのがわかります。
荘司さんには4人のお子さんがいらっしゃいます。お二人は自立する年齢になって手が離れていますが、まだ2人のお子さんを育てながら、昼間は「二階の食堂デリカフェ」に立ち、夜はご両親から引き継いだ「はりや」という酒場の女将さんとしてお店に立たれています。その他にも子育てしやすい環境作りを目的としたNPOを運営を行い、墨田を拠点に地域活動をされていらっしゃいます。
多忙な方なはずなのですが、いつお会いしても穏やかな笑顔で迎えてくださって
私たちをホッとさせてくださる包容力たっぷりの女性です。
荘司さんの暮らしの中にある「食」で広がるお仕事が、さらに味わい深い時間となるようにMOREPLUSが新しい仕事服をご提案したいと思います。

・「食」がテーマの家庭で育つ

・子供が真ん中で広がる世界

・子育ては食事を食べさせる事

・居場所とお出汁の関係

・丁寧にひかれたお出汁のように、香り引き立つ仕事服

「食」がテーマの家庭で育つ


荘司さんは人情の町、墨田が地元でいらっしゃいます。ご両親は「はりや」と言う酒場を経営されていて、幼い頃から食事で人をもてなす文化が身近にある環境で育ちました。
幼い頃からご両親の作る食事やお酒を求めて来るお客様、そこで生まれる会話やコミュニケーション、人が集う場所に「食」があるのが日常だったようです。



元々は税理士事務所で働かれていた荘司さん。勤めながらもご自身でお店を始めたいという思いは常にあったそうですが、子育ても忙しくタイミングを見ていたといいます。
勤めている時に食生活アドバイザーの資格を取得。ご自身の食の知見を広げた事をきっかけに、周囲のお母さん達との会話の中で子育てと食事の悩みを知ります。
初めての子育てで食事まで気が回らない、実は簡単なのにコツを知らないだけ、料理のことをよくわかってない人が多いなって感じたそうです。子育て中のお母さん達の手助けになれたら良いなと思う事が重なり、NPO法人の中で、食の応援サポートをしながら、お店をやっていくビジョンが固まっていきました。
荘司さんご自身が子育てをしながら、一番大事なのは「食」だなと感じたといいます。
「それをおろそかにしているのを見て、そういう事を伝えたいなと思った。」



子供が真ん中で広がる世界


長年勤めてきた税理士の仕事は実は向いてないと思っていたという荘司さん。
若い頃とは違い、仕事の切れ味に違和感を覚えた時辞める事を決めたそうです。
当時45歳、まだ一番下の子は保育園に通っていた頃で小さかったけれど
お金以外の事はなんとかなると考えて、ご友人の紹介で吾妻橋にお店を出す事になりました。

「繋がりを作っていく事は大変だけど、得意な方なのでそんなに不安ではなかった。」

吾妻橋に出来た店舗は、1階に革小物のアトリエがあり、2階がアトリエで作った商品を展示する場所と食事をする場所が一体になっている店舗でした。
二階にあるから「二階の食堂」。この初代のネーミングが今も続いているんですね。

二階の食堂を運営スタートした頃の生活は、昼も夜も二階の食堂を営み合間の時間に自宅で子どもたちの食事を作ったり、仕込みをしたり、というような日々でした。子どもとの時間が少なくて気がかりに思えてきた頃、鐘ヶ淵の物件に出会い、ご自分で店舗を構える決断をされたました。

「鐘ヶ淵なら、両親の実家も近いし、子供達も学校が終わった後に立ち寄れる場所になる。私にとって鐘ヶ淵の物件との出会いは運命だった」といいます。

吾妻橋の店舗をオープンして間もない時期だったので、しばらくは吾妻橋も人を雇って運営しながら2店舗見ていたそうですが
2店舗運営は体力的にも金銭的にも厳しい状況があったので、1年3ヶ月程で閉店。
鐘ヶ淵の二階の食堂に専念する事となりました。



「主婦の方々の働ける場を作りたいと思っていたんです。」

荘司さんはお店を始める時に主婦の方が働ける場所を提供したいとずっと思っていたといいます。ご自身も子育てをしてきたからわかる、お母さん達の働きたいけど、迷惑かけてしまうかもしれないという悩み。
子供が小さい内は病気になったり、急に熱を出す事はよくある事です。急に来れなくなると飲食店は大変になっちゃうけど、主婦の方にはお料理が好きな方って沢山いらっしゃるから
子供を理由に諦めていた主婦の方達が働く場を作りたかった。穴が空いてしまった時は自分が埋めたら良い、そう思っていたといいます。

「飲食やって良かったなって思えるのはそういう人たちと働けた事。子供が元気で具合悪くもなく、みんなが楽しそうに出勤してるのを見ると良かったなって思いますね。」


子育ては食事を食べさせる事


NPO法人「すみだすくすくネットワーク」で活動もされている荘司さん。
すみだすくすくネットワークでは、子育て環境をよくしていこうという活動を中心に行っているそうです。具体的な例として子育て中の方を応援したり、交流する場を作る事を目的としている「すみだ子育てメッセ」と言うイベントや社会貢献の一環として、大田区の近藤さんの始められた「子供食堂」という活動を参考にした「すみだ食堂飲食店の会」などの活動があります。
子育て環境が良くないと言う街の課題に触れた事をきっかけに、何が?どんな所が良くないのか?を飲食店をされている立場から考えて活動をされています。

二階の食堂では月に何度か(不定期に)ワークショップを開催されています。
鐘ヶ淵の時から開催しているそうなのですが、当時は加工食品診断士という資格も取られて食品添加物の講座を開催されていたそうです。
「飲食をやっている人から言われたら説得力あるじゃないですか。私もそうだったけど、どうなの?という事を資格を取って知識を得た事で冷静に見定める事ができて視界がクリアになった」と言います。
「子育てしているママに食品添加物をピンポイントで、取っていいもの、取ってはいけないもの、という風に伝えるのでは無くて、知識として持っておいてもらい、折り合いをつけて生活をしてほしいと思ったんです。毎日忙しいから全部手作りでやりなさいなんて言えないですよね。自分を責めるのでは無く、やれる事はやろう、できない時はしょうがないという感覚を広げたかったんです。」

NPOでの活動も、二階の食堂で行われる講座やワークショップも「食」が共通のテーマにあって食を通して子育てをしている方の助けになりたいと言う気持ちが荘司さんを動かす原動力になっているのだと、これまでの活動のお話しを聞いていると感じられました。


「子供を育てることは食べさせること、っていうことをずっと思ってやってるんだけどその枠の中では全部同じなんですね。」


お出汁と居場所の関係性


「うちは両親が飲食をやっていて、お出汁をひいてやっているのが当たり前なんですよ。
周りを見たときにそれが当たり前じゃないんだって。子育てをしてからみんな買ったものを食べてるんだとか、という事に気づきました。」

手作りが好きなスタッフが集まっている二階の食堂デリカフェ。現在では約10名のスタッフが荘司さんのレシピをお客様へ提供してくれています。
二階の食堂は定食を始め、カレーやパスタ、ラーメン、デリメニューにはフライや揚げパン等種類が豊富です。カフェタイムの焼き菓子や子どものおやつに小さなパン等もラインナップしていて、何度も通ってコンプリートしたくなってしまいます。もちろん、無添加。体に優しいお食事です。
スタッフの中には子育て中の方もいらっしゃって、楽しく働いている。子育て中でも働けるよっ、一度相談に来てくださいって求人を出す時には伝えるようにしているそうです。
いつかスタッフがそれぞれ独立してもやっていけるように、一人一人が輝けるようにしたいと語る荘司さん。既にいずれは自分の店を出したいと公言しているスタッフも居ると言います。
「人とのつながりは会った回数ではなくて、思いで集まってきますよね」

これまでのお話しを伺ってきて感じたのは、荘司さんはお料理の土台を支えてくれるお出汁のような存在なのだと。
作る人によって、提供したい人によってお料理は様々に変化しますが
お料理を引き立たせて、人の心をホットさせてくれる温かい食事には
お出汁がしっかり支えてくれている。
二階の食堂のスタッフが一人で独立してやっていく時にも、荘司さんというお出汁が
土台にあるから、きっと多くの人に愛される街の顔になる事でしょう。
二階の食堂デリカフェのように。

「手作りの食事を提供する飲食店、これって普通ですよね?」

初めてインタビューをした時の荘司さんの言葉が忘れられません。
いつから手作りではない食事を提供するお店が増え始めたんだろう。
荘司さんのお出汁が日本中の街に広がってほしいと心から願っています。


丁寧にひかれたお出汁のように
香り引き立つ仕事服


実はアパレルで働いていた経験をもつ荘司さん。お洋服は元々お好きで、育児や仕事に忙しくする中でもご自身に似合うもの、人に気を遣わせないものを知った上で身につけているように感じました。
お料理を作る事は勿論、事務仕事もこなし、人と会って打ち合わせもあるので、カジュアルすぎるのもイメージではないと感じました。
澄んだお出汁の色、香り、お出汁がお料理を引き立たせるように
荘司さんの、基本を大切にする気持ちの強さ、そして自分ではなく周りの人を引き立たせる場所を作りたいと思う気持ちにはやっぱり白いシャツかな。


お子さん連れのお客さんも多く、小さい子にも優しく話しかけてくれる荘司さん。
優しい白と、グレーのエプロン、きちんと清潔感もありながらキチンとしている印象。大事ですよね。

着る人の拘り、人柄を印象付ける役割もある(当たり前な事ですが)洋服。
ご自分で始めた方々にあった仕事服には、その方のこだわりや印象が込められているのだと感じた。
その方の舞台衣装になる「暮らしの中の仕事服」をスタイリングしたり、デザインする事の魅力を感じられた機会となりました。

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