クラギ弾き語りマラソン(22曲目)

今週は岡崎体育から藤圭子までいろんな曲にチャレンジできて非常に楽しかった。こんな選曲してるチャンネルはうちくらいだろう。まぁ演奏が伴わないと視聴者は増えてくれないのが1億総クリエイター時代の世知辛いところだが、泣き言はさておき、そんな楽しかった1週間の仕上げとなる曲の振り返りを思いつくままに書いていく。

#22 宇多田ヒカル「Pink Blood」(2021年10月29日撮影)

この日は半休をとって午前中に会社の退勤ボタンを押したその指でココイチの出前をオーダーし、到着後それを食べてすぐ寝落ちして14時に目を覚ますという自堕落な前半戦だった。そこから巻き返しを図って撮影したのが今回の動画である。トッピングで追加したチーズ分のカロリーで乗り切ったようなもんである。

さらに悪いことにこの日、爪の削り方を失敗したのでコンディションは本当に最悪である。長いからとりあえず切っちゃえ、と思って爪切りでパキパキやった結果、右手薬指の爪を短くしすぎてしまいかえって接弦時ガチャガチャ鳴るようになってしまった。

勤勉なクラシックギタリストなら初手は爪切りではなく金属ヤスリでじっくり攻めるところであり、私の怠惰さが招いた失態としかいいようがない。ヒゲの永久脱毛のように爪の成長停止措置がいつか可能にならないものか。そう思うくらい爪の手入れが苦痛である。私の意思を超えて起きる変化が私を縛ることが本当にうっとうしい。

・・・前置きが長くなったが、そんな状態で撮った演奏なのでやはり納得からは程遠いテイクしか撮れなかった。後日改めて撮影という選択肢も検討したが、この弾き語りマラソンはあくまで修行であるのでここは平日毎日更新という掟を守ることを優先してこのテイクでアップロードした。全体でみると、「コンセプトよし/ただし演奏は悪し」という本企画でありがちな振り返りになるだろうう。

アレンジのコンセプトは「引き算」である。原曲のフレーズや伴奏パターンを模倣することも試したが、この曲の魅力をクラギ弾き語りというスタイルで引きだすにあたって模倣は必ずしも必要ではないと判断したので八分音符のアルペジオを基調とする奇をてらわない伴奏に落ち着いた。

さらにその判断の根拠には、Pink Bloodという時代の先端をいくサウンドの楽曲が相手であってもクラギの音色をもってすれば鑑賞にたえるサウンドになるのではないか、音数の少なさと豊かな音色が逆に聴き手の想像力を刺激するのではないか、といった仮説もある。コード譜をみたとき4つのコードだけが循環する内容だったのでカバーが成立するか心配だったが、アルペジオのパターンを変えるだけでも雰囲気の変化を演出できることが分かった。今後も役立つ試金石になったと思う。

演奏のコンセプトは「柳のようなしなやかさ」「悠久」である。画一的な価値観にとらわれないゆるやかさ、そして誰にも頼らない強さを表現する歌詞から想像したのが柳の揺れる様子であるので、そういうイメージで演奏した。コンセプトをそうやって言語化できたのはよかったと思う。しかし肝心の演奏は悔いが残るものになった。歌が体になじむ前に撮り終えることになったので、細部の表現とか正確さに全くこだわることができていない。なんなら無意識に宇多田ヒカル本人の歌唱を安易にモノマネしているシーンまであって自分で聞き返すと萎えてしまうまである。

・冒頭「Pink Blood…」の繰り返し終盤のほうの緩急の付け方が甘い。あとPin[k]の発音さすがにもう少し明瞭にやるべきだった
・中盤「誰にも言わなくても…」のパートを低音で歌うという判断はよかったが、ここは切れ切れではなく全体をつなげて歌ってもよかった。
(「かっこ悪いからヤメ」の響きは豊かかつシャリシャリした低音が出せてイイ感じなのでそのイメージを全体に適用すべきだった)
・終盤「サイコロふって…」のパートはもはや思考停止しておりモノマネ入ってしまっている。ちょっと芯がなさすぎたので歌い方を工夫すべきだった

具体的にはこんなかんじである。細部は上げればきりがないので割愛する。次うたうときは気を付けたい。私の独自性が勝手に出てくれた部分をメモしておくなら「自分の傷を癒せるのは・・・」という部分の歌い回しである。何も考えずに本家とちがう歌い方がポロっと出てきたのでこういう体験は「自分の歌唱」をつくるうえでのヒントとして大事に覚えておきたい。

次にギターに関してだが、アレンジが思った以上にうまくいったので、あとは演奏の精度を上げられればいいかなと思う。集中力をキープすることと、爪をちゃんと手入れすることが大事である(そんな初歩的な…)

ちょうど1週間前にmiletのinside youの振り返りでも書いたとおり、やはり近年の、ヒップホップ的感覚を通過して以降のJPOPにクラシックギターのサウンドはかなり合っているように思う。さらに主観をまぜるなら、ギター一本タテに構えて存在感を醸すチャレンジングな演奏スタイルも、インディペンデントさという意味で、ヒップホップと共通するように思う。やはりヒップホップとクラシックギターの接続は今後テーマとしていきたい。(余談ですがトラップとかヒップホップのビートってなぜか「神殿」ってかんじがするんですよね)

そしてもう一つテーマとして振り返り記事にすでに書いてあるのが、昭和歌謡と現代JPOPの接続である。なので藤圭子のカバーの翌日に今回宇多田ヒカルの最新曲を演奏したのだ。その結果得られた気づきは・・・宇多田ヒカルの歌詞が七五調でちょっと和風だということくらいだ。(サイコロふって/出た数進め…みたいなね。ってそんな猿でもわかる気付きでいいのかよ!)

むろん私が求めているのはもっと深いレベルの気づきであるのだがいかんせん演奏に手一杯なので色んなことに気づく余裕が今全然ない。なので演奏⇒動画UPしたというこの経験を、今後宇多田ヒカルと藤圭子の歌の関係について考えるための自分の中のとっかかりとしてしっかり覚えておくようにしたい。具体的なことは何もわからないがいまそんな気分で先が楽しみである。

今回の振り返りはこんなところだが、動画概要欄にも書いたとおりPink Bloodは私にとって大事な曲なので今後またどこかでチャレンジしたい。何なら人前で演奏してみたいとも思う。冒頭の入りの歌と和音で儚い空気感をつくれることなど新鮮な発見があったし、そういう演奏をできる可能性について自信もうまれた。今の私の演奏力はたとえるなら発音能力は発達していないけど喋りたい言葉は自分の中にあるという、赤ちゃんのようなものだ。ここからは確かな技術を身に着けていく必要があり、安定した呼吸がもっとも課題であるように思う。

それを難しくしているのがご近所を気にして音量が変わってしまうことだったり、バイクの騒音で毎回集中力がリセットされてしまったりすることなのだが…バイクが本当にうるさい。ノーミスで演奏できたと思ったら最後にバイクの爆音が入ったりしてそういうとき本当に殺意がわくまである。できるなら良い環境に引っ越したいところだが、半年間は引越し資金など蓄えられそうにないので、もう半年は、不足したこの環境で演奏クオリティを上げるという心身の修行期間だと思って、環境に責任転嫁することなく自分に厳しく演奏動画を撮影していきたい。もちろん歌を楽しむ気持ちも忘れずに。明日からの5日間を乗り切ったら1週間休みをはさむ予定なので、まずは次の5曲を人に聴かせることのできるクオリティでしっかり作っていきたい。

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