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Cubase打ち込み体験記 〜筒美京平サウンドを再現できるか?〜

昭和歌謡ブームがささやかれている。

音楽系YouTuberが動画をたくさん出していたり、

特集写真

雑誌で特集が組まれたり(すべて2021年〜2022年刊行)

@kkkoha33

3/2で高校を卒業しましたっ!この高校に通ってよかったなって心から思うし、大好きな人達に出会えて幸せ者です♥️ありがとう!!#学園天国 #運命の女神様よ #高校 #高校生 #卒業 #卒業式 #高校卒業 #jk #jkブランド #こはる #制服

♬ Gakuen Tengoku - Finger 5

TikTokで流行っていたり、

こういう動画がめちゃくちゃ再生されてたり、

今をときめく藤井風さんがカバーしてたり、

Z世代のためのアイドルグループが取り入れていたりと、兆しと呼ぶには大きすぎるリバイバルだ。「勝手にしやがれ」といえば昭和きっての名曲だが、そのタイトルが若い女性とともに写っているのはちょっと異様だ。しかしこれを出しているのは天下のソニーミュージック。やはりマーケットニーズがあるのだろう。

そんなブームにそそのかされて、私も最近すっかり昭和歌謡に凝っている(山口百恵が「ハマっている」のことを「凝っている」と言っていたので真似してみた。いらん情報ですね)

そしてこの記事は、昭和歌謡をやりたくてDTMをはじめてみた筆者の打ち込み体験記のようなものである。

・なぜ昭和歌謡がブームなのか?
・実際に打ち込んでみた結果
・DTMの未来予想

という無茶な内容でがんばって書いてみた。昭和歌謡が好きな人にも、DTMが好きな人にもお楽しみいただけるとうれしい。熟練DTMerにはちょっと物足りないかもしれませんが、コメントでアナログ感を出すためのアドバイスをいただけたりしたら泣いて喜びます。

▼昭和歌謡ってなに?

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『歌謡曲 ─ ─ 時代を彩った歌 たち』より

昭和歌謡の定義には諸説あるので、今回は「昭和に制作された歌モノ」くらいの理解で読み進めていただきたい。歌の表現力が魅力的なジャンルだが、生楽器の演奏も同じくらい魅力的だ。

当時のレコード(!)音源も、ストリングスや管楽器のレコーディングは生楽器が普通だったし、「夜のヒットスタジオ」をはじめとする人気テレビ番組でも歌手が生バンドをしたがえて演奏することが当たり前だった。

打ち込み主体の現代からは想像もつかないけれど、当時DTMなんてものは未発達だったし、なにせ昔は景気がよかった。人を雇って生楽器で音楽するのが当たり前だったのだ(当事者ぶってるけど後追いのゆとり世代です)

高度経済成長からのバブル景気、日本が元気モリモリだった頃。
まさに「アンタの時代はよかった~」ってカンジだ。
(若い子に沢田研二ネタ伝わらないゾ?)

▼人気の理由は?

ここでちょっと、人気の理由を勝手に分析してみた。

①アイドルグループからソロアイドルへの揺り戻し
…AKB48やももクロからつづくグループアイドルのブームがさすがに長すぎた? ステージで一人立つ姿がかっこよく見え始めた?

②洗練されたポップスから粗削りな「歌謡」への揺り戻し
…日本語を崩さない歌、わかりやすい歌詞が恋しくなった?

③「企画ありき」のインパクトが病みつきに
…当時はプロデューサーのアイデアから名曲が生まれることもしばしばあったらしい。「馬鹿にしないでよォ~」で有名な山口百恵の「プレイバック Part 2」は「テープをキュルキュル巻き戻す曲をつくってくれ」というプロデューサーの無理難題なアイデアから生まれたらしい(そんなことありえるのか)

でもたしかに、あのインパクトは音楽だけにフォーカスしていては生み出せないのかもしれない。

④音楽的クオリティの再評価
…クラシックやジャズをルーツとする作・編曲家による本格的な楽曲が豊富だった。歌手も五線譜で曲を歌っていたらしい。そのクオリティが今、再評価されているのかも?

・・・つらつら書いたが、平たく言うと「古いものが逆にイイ」という理由で流行っているのではないかと思う。平凡な結論でスイマセン。

ちなみに冒頭で写真を掲載した『BRUTUS』歌謡曲特集では、なんとサカナクションの山口一郎氏が中森明菜のコーナーを執筆している・・・

それほどのブームなのだ。多かれ少なかれこの波はDTM界隈にも及ぶだろう。

▼DTMでアナログが流行る(のか)

ここで勝手にDTMの未来予想をしたい(急にどうした)

①昭和歌謡ブームがあるのなら、昭和歌謡が目的でDTMを始める人が増える
メーカーは収益最大化のために、初心者の囲い込みをがんばる
①②より、DTMでアナログ感を出すための廉価なソフト音源が爆増する

・・・はい、QED(ちょっと待て)

さて、こんなガバガバの未来予想はさておき(さておくんかい、)いくらブームとはいえDTMで昭和歌謡をやるヤツなんているのか? という声が聞こえてきそうだ。

しかし、昭和歌謡をやるためにDTMを始めたのは何を隠そう私である。

カラオケの人工的な音では満足できなくなって、打ち込みで納得いく音色をつくってみたい。なんならそういうテイストの曲を自分で作ってみたい。でも生演奏で人を雇うなんてできないから、DTMで作ってみたい…。

そんな動機でCubaseに手を出したのだが、近年のおうち時間の充実化をふまえると、こうした需要は今後さらに増えていくだろう。

で、そんな駆け出しDTMerの私が実際につくった音源がある。
ここからはそれを題材に、DTMで昭和歌謡をやることの難しさについて考えてみたい。さっきの未来予想にもつながります。

▼お前、ほんとに昭和歌謡なのか…?

課題曲は平山みき「ビューティフル・ヨコハマ」
知る人ぞ知る昭和の名曲だ。

巨匠・筒美京平による作曲・編曲が光る一曲。スタンダードなバンド編成に、生楽器のホーンセクションとストリングスが加わっている。ピョイーンって鳴るシンセもかっこいい。
(ほんとは歌声も大好きなんだけど、今回は泣く泣く割愛します)

で、これを耳コピして打ち込んでみたのが次の動画である。

はい、そこはかとない「これじゃない感」が漂っていますね。
1つずつみていきましょう。

ストリングス
残響を出すためにエフェクトをかけたものの、弦の擦れ〜音の立ち上がりがぼやけてしまった。アンサンブル感も出せていない。

エレキギター
左チャンネルのカッティング、生演奏感がZERO。ワウペダルのカッティングの打ち込み方も調べてみたけど分からなかった。右チャンネルはパターン音源に頼ったものの使いこなせなかった。

左のギター抽出。たしか何かの動画を参考にして、カッティングノイズと実音を2トラックに分けて打ち込みで再現したんだったと思う。うまい人はリアルな質感を出せるんだろうが、いやーこれは悲惨だ。京平先生ごめんなさい(逆に図々しいわ)

まぁ平たく言うと「アナログ感が出ない」ということに集約されそうです。他にも昭和歌謡特有の左右極端な音の振り分け、マスタリングなどかなり妥協してしまっていて根性のなさが見てとれる。

で、苦肉の策としてどうしたかというと、「カバー」と割り切ってでごまかすしかなかった。完コピを諦め、アレンジを変えた。

っていうかイントロ、これじゃコナンのテーマソングやがな。ドラムとかシンセとか何かチャラい。筒美京平も天国で「お前、ほんとにワシの昭和歌謡を打ち込んだのか?」と嘆いていることだろう。

で、この機会にアナログの質感出しに再チャレンジしてみることにした。ただし、いきなり全部は厳しいのでストリングスと管楽器のイントロ部分にしぼって2つの手法を講じてみたいと思う。

該当部分(比較用)

▼【リベンジ】アナログ感を出す

①クオンタイズをずらす

まずはこちらの記事に紹介してあったものをやってみた。

左のバー(語彙力)からディレイを効かせるのが手っ取り早くできそうだったのでやってみた。トランペット・トロンボーンのBrassトラックは1つにまとめていたが、片方だけディレイをかけるために2トラックに分けた。
(めんどくさがりなのでこういうのが地味にしんどい)

金管はトロンボーンパート、サックスはバリトンを17msほど遅らせてみた。入りがパラついて自然なズレが生まれた(ホンマか?)

②サチュレーションで歪ませる

サチュレーションとはあったかい系の歪みである(雑やな)

倍音を増幅させることでアナログ感を足すといった話だった気がするが正確には覚えていない。ここでは適用前との違いがわかりやすいよう50%も加えてみた…ものの、デジタル音を無理やりザラつかせた感じが耳に刺さってしまいビミョー。でも最初の状態よりはマシか?

・・・と、手前味噌ながら2つの手法を試してみた。筒美京平に限らないが、やはり昭和歌謡のアナログ感を初心者がしっかり再現するのは長い道のりになりそうだ。駄文を連ねる暇があったらMIXの勉強をしろとのお叱りが聞こえてきそうだが、今回試したことをきっかけに今後がんばっていこうと誓った(ホントだぞ!?)

このあとアナログ感の正体についてググってみた。
↓こちらの解説が勉強になったのでよければご覧ください。
https://zzstylesound.com/plugins-feel-like-analog/

▼結論:DTMの未来予想

さきほど示した未来予想は、

①昭和歌謡ブームがあるのなら、昭和歌謡が目的でDTMを始める人が増える
メーカーは収益最大化のために、初心者の囲い込みをがんばる
①②より、DTMでアナログ感を出すための廉価なソフト音源が爆増する

というものであった。先ほどの打ち込み音源をお聞きいただくと、その意味、その切実さをお分かりいただけるのではないだろうか。

DTMをやってみて分かったのは、打ち込むだけも難しい。それなのに昭和歌謡のあたたかい質感、アナログ感を出すためにはミックスやらエフェクターやらいろんなことを調べなければならない。そしてそのうえで、紹介されていたエフェクトなんかが自分のマシンに入ってるかチェックして、そこから実際につまみやボタンをいじりまくってあーでもないこーでもないと言いながらイイ感じの音を探さなければならない。正直言ってこれは初心者には酷である。これだけ大きなジャンルなのだから、もっと手軽にあの感じを再現できるようにしてほしい。意志薄弱のゆとり人間としては切実にそう思うのだ。

それゆえさっきの未来予想である。昭和歌謡に特化したソフト音源が廉価で、なんならフリーで手に入るようになれば、初心者であっても挫折することなく憧れの生音をつくり出すことができる。昭和歌謡ブームは市場開拓のチャンスである。DTMの偉い人、どうかここはひとつ。私たちの未来は、あなたたちの未来でもあるんだ(好き勝手言ってんな??)

で、実の話、さっきの曲の耳コピをした後、私はCubaseをしばらく放置してしまった。ひらたく言うと挫折である。耳コピだけでも大変なのに音作りまでがんばれないし、プラグインを買う余裕もなかった。しかし放置してる間に分割払いだけは進む。そんな残念な状況が3か月も続いてしまったのだ。

以上が、初心者の制作をかんたんにすることがDTMの未来に大事だと考える根拠である。続けば楽しくなって、課金の機会が増え、DTM市場にお金がまわる。私のような挫折者を生み出して顧客を損失しないためにも、メーカー各社にはより一層テッテー的に初心者を甘やかす方向でもろもろの開発を進めていただきたいものだ(イイカゲンにしろ)

▼結論:DTMの未来予想②

さすがにふざけすぎたので、もう1つの結論を提示したい。

アマチュアの間で、DTMレクチャーや演奏の受注・発注が盛んになる。

宅録環境の発達によって誰もが手軽に音楽制作できるようになった今、アマチュアの間でも発注が気軽に行われるようになるだろう。これはプロに限ったことではない。インターネットと決済手段さえあれば、どこの誰とでも仕事ができる。

そしてそれができるコミュニティが最近立ち上がった。
ゼロカラシティである。

「ゼロカラカンパニー」を経営するDTM講師・月岡彦穂氏が立ち上げたオンラインコミュニティ。メンバー同士の質問、アドバイス、コラボ、音楽の聴かせあいができる、DTMerのための「街」だ。

この街には初心者から熟練までDTMerが在籍していて、楽器で収入を得ている人も多数参加している。この記事を書いている時点で発足から1週間ほどだが、チャットやZoomで情報交換や音楽制作が日々おこなわれていて、かなり熱量の高いコミュニティになっている。

そして「趣味としての音楽」はさることながら、ゼロカラシティでは仕事の受注・発注も歓迎されている。DTMerの自由な経済活動を推奨する月岡氏の理念のもと、メンバーが自分のスキルと報酬を提示し、それにマッチした仕事を依頼する環境が用意されている。

・・・お分かりいただけただろうか?

そう、今回の私の悩みはゼロカラシティですべて解決できる。MIXが得意な人にアドバイスをお願いすることだってできるし、ギターが弾ける人にカッティングを発注することもできる。初心者一人ではたどりつけなかったレベルまで自分を引き上げてくれるDTMer、ミュージシャンがたくさんいるのだ。

今後さらにこのコミュニティのメンバーが増えていけば、さらに多様な楽器のレコーディングを発注することも可能になるだろう。ウッドベースの生音感が出せずに悩んでいるなら、ウッドベース奏者に録音をお願いすることができる。ハーモニカの音を取り入れてみたくなったら、アレンジの相談や演奏依頼ができる。そんな夢のような楽しいことを可能にしてくれるコミュニティ、それがゼロカラシティだ。

「なんだ、人に頼ってばかりじゃないか」との声が聞こえてきそうだが、そんなことは決してない。誰かの助けでつまずきを解消し、理想の音に近づくことができたなら、今後の制作モチベーションはますます上がるにちがいない。ゼロカラシティには、そのためのチャンスがいくつも存在する。そして自分の成長の成果をしっかり発表していけば、それを喜んでくれる仲間がいる。この街では誰もが音楽で人を喜ばせられる。とてもステキではないか。

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最後は音楽の話で締めくくろう。今回は70年代の曲を例にしたが、
たとえば80年代のこういう音色ってDTMで再現しやすいものなんだろうか?
有識者の方、ぜひ解説をお願いしたい。あるいは作ってみてほしい。
5000円までなら発注しますんで。

・・・では記事のまとめ。筒美京平をはじめとする昭和歌謡の黄金時代はすばらしかったが、ゼロカラシティのようなコミュニティがある現代も、音楽愛好家にとって楽しい時代であるにちがいない。

▼終わりに

実はこの記事も、ゼロカラシティメンバーの依頼によって制作されたものです。依頼主のスズさん、そしてゼロカラシティをつくってくれた月岡さんに感謝!

ゼロカラシティは、DTMがメインテーマではありますが音楽にまつわる色んな経験ができるステキなコミュニティです。迷っている方はぜひ一度遊びにきてみてください。すてきなメンバーがあなたを待っていますよ。

追伸:作曲はじめました。お聴きいただけたら嬉しいです!

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