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【買物論文】ドラッグストアのID−POS分析。「定量調査との乖離が大きく、実データでしか正確にはわからない事」と「実データを分析する前に、見るべき視点を整理する必要がある事」

“買物“に関する論文をピックアップ
して考察していきます。
ピックアップする論文の特徴は、
特徴1:
実務に使えそうな、分かりやすい結果が出ている
特徴2:
結果に対して、気持ちや行動が考察ができる
特徴3:
もっと深掘りたいと思う

⚫︎今日の論文の紹介
ブロッククラスタリングによるドラッグストアにおける商品カテゴリーの購買分析
山田 浩喜, 佐藤 忠彦

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbhmk/49/1/49_83/_pdf/-char/ja

この研究では、ドラッグストアが扱っている薬、化粧品、食品などさまざまなカテゴリーを対象に、どんな人がどんな物の購入頻度が高いのか?
を分析しています。

特徴としては、
「どんな人が」を4つのクラスター化
「どんなものを」を3つのクラスター化
それぞれを掛け合わせて分析しています。

ドラッグストアを、「週1利用している人」は約3%。定量調査と比べるとかなり少ない。

論文で使用されているデータは、TrueDataから提供された、2017年から2019年の2年間分のID-POSを使用しています。
特定店舗、特定チェーンではなく、複数の店舗のデータ。

全顧客7664名分のデータに対して、2年間で週1回以上(2年間で96回以上)のデータが224名おり、全体の約3%です。

これは思っていたよりも少ない印象。
というのも、定量調査で、ドラッグストアに行く頻度を問うと、
週1以上の人は、20%から30%くらいと回答している結果が多いからです。
例えば、以下のようなデータ。

マイボイスコム ドラッグストアの利用に関するアンケート調査(第9回)

ID−POSは商品を購入しないとデータとして残らなかったり、購入時にポイントカードなどのIDを出さないといけなかったり、実際の利用頻度よりは低く出るとは思うのですが、10倍の開きは見過ごせないなと思います。
定量調査だけを信じて、経営判断を下すのは危険であり、実際の行動データを分析することの大切さを感じます。

週1以上ドラッグストアに来店している人が、よく購入しているのは、「お菓子」と「飲料」

商品カテゴリー別の平均購入回数を高いものから順に並べたランキング。
週1以上ドラッグストアで購入しているお客さんは、菓子、パン・シリアル類、デザート・ヨーグルト、麺類などの食品、清涼飲料やアルコール飲料などの飲料をよく購入しているます。
その他日用品では、衣料用洗剤や、衛生紙用品・用具、口中衛生用品などの日用雑貨が多いです。

論文より

ドラッグストアは医薬品や化粧品が単価が高く、主な利益源として力を入れているケースが多いが、「頻度」という軸で見た時は、食品や飲料のようにスーパーの補完的に使われている商品の品揃えの充実が重要になってきます。

クラスター分析から見い出す、マーケティング施策は「品揃えの優先度」と「価格優位性」

論文では、
「どんな人が」を4つのクラスター化(A、B、C、D)
「どんなものを」を3つのクラスター化(1、2、3)
し、誰がどんな商品をよく購入しているか?を分析しています。
例えば、
・顧客クラスターA とCは商品を全般的に購入しているが、顧客クラスターDは購入回数の多かったり少なかったりするカテゴリーがある。
・カテゴリークラスター2を購入している人は、顧客クラスターCである。

それによって、品揃えを強化するべきカテゴリーや、逆に品揃えの優先度が低いカテゴリーを示唆していたり、他者と比べて高くないことが重要なカテゴリーを示唆しています。

一方で、なぜそうなのか?という理由を明らかにするに、性別、年代という限られた情報しかないため、性年代と比べてクラスター化までした方が分析精度が格段上がるのか?というのがわからないところです。

また、今回のデータは「頻度」という部分に焦点を当てているが、「売上」や「利益」で見た時にどいう判断が適切なのかは変わってくると感じました。

店舗全体の状況をデータで丸裸にしてより売上を上げるために有効活用したい、というのはどこの会社も掲げている課題です。

しかし、この論文からの気づきとしては、「定量調査との乖離が大きく、実データでしか正確にはわからない事」と「実データを分析する前に、見るべき視点を整理する必要がある事」があるという事です。

今度はそのへんをまとめて行きたいなと思います。


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